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(お知らせ)緊急・公開シンポジウム「“青少年有害環境”問題とメディアの自律~規制立法は必要か」を開催

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「"青少年有害環境"問題とメディアの自律」をテーマに、民放連主催の公開シンポジウムが2月2日、東京・千代田区のグランドアーク半蔵門で開かれた。
  有害な環境や情報から子どもを守る目的で、自民、民主の両党が通常国会への提出を準備している規制法案をめぐって、民放の代表、規制推進派の議員らが意見を戦わせた。シンポジウムには、学生や市民など100人を超える一般参加を含め550人が詰め掛け、会場から質問や意見を募りながら、有害情報を法規制するか、メディアの自律に委ねるべきかを話し合った。

シンポジウムは、当日、NNN24(CS)、BS日テレ、JNNニュースバード(CS)で生中継されたほか、日本テレビが2月12日(月・祝)午前2時20分~3時20分の1時間枠で録画ダイジェスト版を放送、フジテレビは2月10日(土)放送の『週刊フジテレビ批評』(午前5時30分~6時)で概要を紹介した。

パネリスト(敬称略)=写真左から、原寿雄・「放送と青少年に関する委員会」委員長(ジャーナリスト)、萩原敏雄・民放連放送基準審議会委員(日本テレビ専務)、山本潔・民放連副会長兼放送基準審議会議長(RKB毎日放送会長)、<濱田純一・東大大学院情報学環教授=コーディネーター>、石井道子・参議院議員(自民党「青少年を取り巻く有害な環境対策の推進に関する小委員会」委員)、水島広子・衆議院議員(民主党「有害情報から子どもを守るための基本法制定」プロジェクトチーム事務局長)、今井佐知子(日本PTA全国協議会会長)。

自民党、民主党の法案説明、これに対する反論で口火が切られた2月2日の公開シンポジウムは、放送界の自主的な取り組み、日本PTA全国協議会の調査などと続き、会場からの質疑応答を含め、公的規制の是非をめぐり議論が展開された。この中で民放側は「法案は表現の自由を侵害する内容になっており、強く反対する」と主張し、国会提出を撤回するよう求めた。

◎表現の自由
  「法律で番組を規制するのは、憲法で保障された表現の自由を侵害し、事前検閲、メディアの国家統制に道を開きかねない。民主主義を危うくする危険性を否定し得ない」。山本潔・民放連副会長兼放送基準審議会議長は、民放連が法制化に反対する理由を明快に述べ、両法案の国会提出を撤回するよう求めた。萩原敏雄・民放連放送基準審議会委員がこれに続き、「両法案は“青少年のため”という耳障りのいい言葉を使っているが、これに惑わされてはいけない」と注意を促した。
  原寿雄・放送と青少年に関する委員会(青少年委員会)委員長は「表現の自由に対する規制は、食品添加物の規制や車の排ガス規制とは根本的に違う。表現の自由が狭められることは、ほかの自由や基本的人権が狭められることを意味する」との認識を示した。
  これに対し議員側は「表現の自由を不当に侵害しないと法案でうたっている」(石井道子・自民党参院議員)、「表現の自由と子どもが健康に育つ自由という二つの権利の比較考量の問題だ」(水島広子・民主党衆院議員)との意見が出され、議論は平行線をたどった。

◎自主的な取り組み  民放連は1999年6月の理事会で6項目の「青少年と放送問題」の対応策を決めた。山本氏は、6項目の実施状況を説明するとともに、「青少年委員会と、放送と人権等権利に関する委員会(BRC)が放送界のオンブズマンとして機能している」と強調した。
 萩原氏は自社を例に▽番組審議会委員に主婦の代表も入れている▽青少年問題への取り組みはホームページにも掲載している――など、よい番組を作るために行っている方策を報告した。  原氏は、昨年4月以来の青少年委員会の活動を紹介、「視聴者からの意見はホームページなどで公開している。視聴者と放送局を結ぶ開かれたルートができたことの意味は大きい」と述べた。
  放送界の自主規制について議員から肯定的な評価がなされた一方、「すべてのメディアで自主規制が行われているわけでない」(石井氏)、「法案は民間の自主規制を促すのがねらい」(水島氏)など、法制化の必要性が繰り返された。

◎全国PTA調査~   日本PTA全国協議会は20年前から青少年に有害な環境の調査をはじめ、15年前からテレビ番組の調査も行っている。「保護者として、子どもに“見せたくない番組”“見せたい番組”を明らかにし、テレビ局に改善を求めている」と説明した今井氏に対し、萩原氏は「視聴者の意見は真摯に受け止めている」としながらも、PTA調査の集計方法・分析や公表の仕方について疑問を呈し、昨年度のケースを例に挙げて具体的に反論した。

◎会場との質疑   石井、水島両議員にそれぞれの法案に対する評価を聞きたいとの質問に対し、水島氏は「自民党案は公的規制色が強いので反対だ。自民党案ならば(法規制は)ないほうがいい」と発言、石井氏は「民主党案と自民党案の差異はほとんどない。公権力が介入するように受け取られているが、民間ベースの青少年社会環境対策センターが情報収集や苦情処理にあたるので、その批判はあたらない」と答えた。~   番組基準の作成などを放送事業者に義務付けた放送法との二重規制になるとの質問に対して、石井氏は「放送法第3条の2は“公安および善良な風俗を害しない”となっているが、青少年の有害環境はこの条項だけでは解決できない。放送法との二重規制ではない。18歳未満の青少年を特に配慮した」と反論した。

◎まとめの一言
  山本氏=自民党案に盛られた「青少年社会環境対策センター」は法に基づき作られるので公的規制だ。自主規制を尊重するとのことだが、法律はいったんできてしまうと独り歩きするから危険だ。
  萩原氏=メディアを法で規制しても青少年問題は解決しない。このことを改めて強調したい。
  原氏=自民党は青少年社会環境対策を国民運動として展開するとしているが、表現の自由への介入とともに、行政がこの運動を指導する危険性も指摘したい。


●シンポジウム会場で出された質問

*会場で、参加者の方から質問用紙を提出していただきました。当日は時間が限られていたため、全部の質問をご紹介することができませんでしたが、今後の議論の参考とするために、提出された質問をほぼ原文のまま(下線等を含め)、全て紹介します。

*見出しは便宜上、民放連が付けました。

★印は会場で取り上げられた質問です。

(順不同)

◆法制化を急ぐ必要はあるのか
〈質問者〉不明
〈質問内容〉法制化は言論の自由へ大きなかせをはめる危険性があると思います。今井さんがおっしゃられたように、今は動きはじめた自律の行方を「見守る」ことが大切な段階だと感じていますが、なぜ今法制化を急ぐのでしょうか。

★民主党案の提出は自民党法案成立を促進? 自民党は民主党案をどう評価?~ 〈質問者〉市民
〈質問内容〉(水島先生に)民主案であれば表現の自由を侵さないとして、民主案が実現する見通しがあるのでしょうか。いかに優れた中身でも現在の政治情況の中では関係がなく、実現する見通しは立たないでしょう。自民案に対して反対するのか、一定の修正を得て賛成するのかの選択であって、民主案は選択肢になりません。自民案に対してどう対応するおつもりかお聞かせ下さい。反対なのに対案を打ち出せば、自民案審議のベースに乗り自民案成立に協力する役割を果たすだけに終わるでしょう。 (石井先生に)民主案をどう評価されますか。自民案を取り下げて、民主案をベースにする可能性が少しでもありますか。個人的意見でかまわないのでお聞かせ下さい。

◆民主党の動きは権力規制を強化するのでは?
〈質問者〉政党関係者
〈質問内容〉私は、メディアへの公権力の規制は反対の立場です。水島さんのおっしゃる「子どもが健康に育つ権利」はたしかに大切であると思うし、今現在、メディアが劣悪な状況にあることは、ある意味事実だと思います。また、水島さんの意気込みはある種理解もできます。ただ政治は数の世界で動いており、仮にこの法案を良かれと提出されても、与党の数が多ければ、一度委員会審議、本会議審議になれば、結局、数の力で水島さんの最大に嫌だとおっしゃってる「メディアへの権力の規制」を強めるだけの最悪な結果を生むだけなのではないでしょうか? そこの部分が非常にみていてあやういし、逆に規制強化の側に結局つかわれるだけの危険な部分であると思います。水島さんは、そこのところをどのようにお考えか聞かせて頂ければ幸いです。

◆民主党は自民党案をどう評価するのか?
〈質問者〉未記入
〈質問内容〉水島先生はどうして自民案ではない独自の案を作られたのですか? 本当に対策が必要であるなら超党派で活動すべきでは。自民案に何か不都合な点でもあるのですか?

◆国民全部を縛る法律との認識はあるのか?
〈質問者〉民放局員
〈質問内容〉民放連シンポジウムなので放送に限って
(1)(今井さん中心)子どもたちの声が聞こえてないのは何故か。見たい番組、見たくない番組、テレビは不要なのか。
(2)(石井さん中心)先生、警察、役人(官)、政治家は有害環境ではないのか。報道表現の自由に守られた今の政治家をはじめ、国民全部が自らを縛る法律であることの認識はどこまであるのか。

★言論・表現の多様性が大切
〈質問者〉市民運動団体代表
〈質問内容〉昨年、映画「バトルロワイアル」が国会で取り上げられましたが、私のまわりでもこの映画を見た人の評価は非常に分かれています。このように、表現物に対する評価の基準は、決して確かなものがあるわけではありません。そこに公的な判断が入りこむことを非常に危惧します。水島さんもまた、「言論・表現の自由」を規制することは民主主義の後退につながると言われました。とすれば、子どもに有害なものがあるからといって、公的規制に飛びつくのではなく、あくまで「言論・表現の自由」――つくる自由、見る自由、見ない自由を確保して、問題を解決する道を探るべきではないでしょうか。子どもの多様性を大切に考えておられるのと同じ様に「言論・表現」の多様性を保障すべきではないでしょうか。特に「言論・表現の自由」の領域に、政府(公権力)の介入が及ぶことについて、どうお考えでしょうか?

◆規制立法より、メディアの自浄努力とメディア・リテラシー教育を
〈質問者〉民放局員
〈質問内容〉なぜ“法律による規制”が必要なのか? たしかに“悪い番組”はあるかもしれない。しかし、その悪い番組も“見る人”がいるから成り立っている。そして子どもはどこでテレビを見ているか? それは“家庭”ある。 “悪い番組”を良くしていくために必要なのは(1)メディアの自浄努力と、(2)親・学校・社会のメディアリテラシー教育である。答えは明確である。青少年保護を名目とするメディア規制立法は必要ないと考える。

★相互批判による自浄作用は期待できない
〈質問者〉ジャーナリスト
〈質問内容〉民間と民間との議論で自主規制をやっていくのが民主主義の道という主旨の発言をされていましたが、以前からよく目にすることに、テレビアナウンサーやコメンテーターが一緒になって抗議の会見をされ、それをテレビで放映するということがあります。あれには一視聴者としては、とても圧迫感を感じます。民放連を批判する放送局が存在しない現状の中、互いの批判による自浄作用は期待しにくいように思いますが。

★「放送と青少年に関する委員会」の委員構成について
〈質問者〉大学生
〈質問内容〉「放送と青少年に関する委員会」など第三者審査機関の委員を専門家に限っているのはなぜですか? PTAをはじめ学生(小・中・高・大ほか)の代表者も委員として加える方がより生の意見に接することができるのではないですか?

★自主規制と公的規制の関係について
〈質問者〉大学教員
〈質問内容〉(1)民放連放送基準、各社の番組基準の位置づけ?
(2)法による自主規制促進というが、現行放送法との関係をどう整理するのか?~ (3)石井さんが挙げた映画、出版、広告は、それぞれ業界が自主基準を制定している。新たに基準をつくるべき業界とは何か?

◆自主規制を通した住みわけの未来像は?
〈質問者〉CS放送関係者
〈質問内容〉自主規制を通じて達成される“住みわけ”の未来像とは、どのような形態を想定されているのでしょうか?

◆放送局は、放送番組の事後チェックの要求に応じるべき
〈質問者〉無所属
〈質問内容〉番組内容を事後チェックできるよう、放送後に要求によって、テープを公開できないか(オウム問題以来過敏になっているが、あれは事前に見せたから問題になった)。一瞬見逃したり、聞き逃したりして確認したいことがしばしばあるが、放送局は要求に応じてくれない。いまだに送り放しであることに変化はない。経営者が政治献金していることに問題はないか。

◆報道という観点の必要性、視聴率以外の判断基準など
〈質問者〉大学生
〈質問内容〉(石井さん)何事でも両論併記が原則だが、小委員会での規制される側の専門家は誰で、その人の意見は? 調査は青少年に対する影響自体に関するものは?(米では4000以上)
(今井さん)メディアの役割を娯楽という観点だけでなく、報道という観点から考えてみたらどう思うか? その時規制は妥当か? PTAの調査は子どもを無視しすぎでは?
(萩原さん)視聴率だけで番組が判断される事が問題であると思うが、視聴率以外の判断基準を教えてください。

★子ども部屋からテレビをなくし、スイッチを切るのが早道
〈質問者〉新聞記者
〈質問内容〉法制定を求めたり、放送局やスポンサーに要望するのもけっこうだと思いますが、子ども部屋のテレビを無くし、有害な番組が流れたらスイッチを切るのが最も早道のような気がします。テレビを見ることは国民の義務ではなく、誰も強制していないはずだと存じますがいかがですか?

★メディアの責任を言う前に、親や家庭の責任を考えるべき
〈質問者〉雑誌編集長
〈質問内容〉私は新宿の小学校でPTA会長を3年やり、数十件の子どもたちの問題(いじめ、不登校、非行など)を見聞きし、相談にのるなどした。その中でメディアが原因と思われるケースは皆無で家庭や親が問題と思われるケースがほとんどだった。(他に、教師その他大人の問題、本人の生まれつきの資質が疑われる問題はあったが)日本にテレビがない時代からいじめや非行はあったのだから、青少年問題の原因として親や家庭の問題をまず疑うべきなのは当然ではないか。ところがPTAは「自らの会員である」親の問題を、また政治家は「有権者である」親の問題をいずれもタナ上げにして、メディアの責任をいう。この態度はおかしいのではないか?

◆何を有害と判断するのか
〈質問者〉インターネット関係者
〈質問内容〉私はインターネット上の有害サイトをレイティング(小中学生向け)をしておりますが、具体的な対象を前に有害とは何なのだろうと迷っております。性、暴力共にどのような場面で、どのように表現された場合に(個人の感性ではなく)公正に有害と判断できるのでしょう。私は性に関しては全ての人の営みであり有害はないのではないかと考えています。

★「有害環境」のとらえ方について
〈質問者〉NPO代表
〈質問内容〉「有害環境」のとらえ方について 乳幼児期から長時間のメディア接触が常態化している今、
(1)光刺激や機械音が子どもの発達(脳、言語、五感)に与える影響、外遊びの激減が子どものからだの変化(視力、背筋力など)に与える影響についても視野に入れるべきでは…
(2)子どもがみる番組のコマーシャル規制は多くの先進国で実施されているが、この点についてはどう考えるのか。 「総量規制」「製造者責任」「危険可能性」という概念の導入が必要な時代では?

★テレビから“有害番組”をなくすだけで解決するのか
〈質問者〉専門学校生
〈質問内容〉テレビから青少年に害を与えるであろうという番組を無くすだけでは、青少年を有害環境から守ることは出来ないと思いますが、そのことについてはどのようにお考えでしょうか?

◆レンタルビデオがむしろ問題では?
〈質問者〉一般市民
〈質問内容〉シンポジウムだから意見を申しあげます。2つのスリカエがある。
(1)TVの放映内容以上に若者のTVとのつきあい方に問題がある。
(2)本当に有害なのは「レンタルビデオ」の内容にある。犯罪になるようなことも堂々とストーリーにできる。欧米にくらべてきれいでない。変態犯罪者Mは膨大なビデオコレクションを持っていた。

◆もっと議論を!
〈質問者〉映画監督
〈質問内容〉質問というよりはお願い。議論をしてください。各々の方の自説や立場としての提言を聞いていてもシンポジウムの意味がない。もっとパネラー諸氏の議論を!


シンポジウムの概要は「月刊民放(3月号)」(民放連、3月1日発行)に掲載されます。

以上
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