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(報道発表)自民党「青少年有害社会環境対策基本法案」に対する意見の発表について

 社団法人 日本民間放送連盟(民放連)〔会長=氏家 齊一郎・日本テレビ放送網CEO・会長〕は、2月21日、自民党が議員立法により国会提出を計画している「青少年有害社会環境対策基本法案」に対する意見をとりまとめ、発表いたしました。
 意見書では、「自民党法案は、国民一人ひとりの文化的価値観に国家が踏み込むものであり、断じて認められない」「国民の情報選択の自由を狭めるものである」「対策協会はマスメディアの分野では設立されるべきではない」「『表現の自由』や文化に関わる問題は、法規制によらず自主規制で対応すべきである」などとしたうえで、同法案の国会提出を撤回するよう求めています。


自民党「青少年有害社会環境対策基本法案」に対する意見

 自民党内で今国会への提出が検討されている「青少年有害社会環境対策基本法案」は、青少年の健全育成という美名のもと、憲法で保障されている「表現の自由」を行政の監視下に置き、国民の一人ひとりの文化的な価値観に国家が踏み込むものであり、断じて認めることのできない内容である。
 同法案は、昨春段階のものから一部修正され、マスメディアを含む各分野の事業者が「 青少年有害社会環境対策協会」を設立し、これを通じて各分野の主務大臣が事業者を監視する仕組みを取り入れている。これをもって、立案者は「あくまで事業者に自主規制を求める法案である」と主張しているが、主務大臣が対策協会に助言・指導、勧告を行い、さらには公表という”見せしめ”措置をとる以上、対策協会は国の出先機関となりかねない性格をもつ。また、内閣総理大臣が強い監督権限を有する「青少年有害社会環境対策センター」が直接、事業者に介入する点は、旧法案とまったく変わっていない。このような規制は、国民の情報選択の自由を狭めるものであり、強く反対せざるを得ない。
 青少年が健やかに育つために適切な社会環境が必要であることを、われわれ民間放送事業者は十分認識している。しかし、人はさまざまなものと出会い、その善し悪しを判断することを学んで成長していくのであり、青少年に何を与え、何を与えないかを国家が一方的に判断する考えは誤っている。「表現の自由」に関わる問題は、自主規制で解決していくべきものであり、放送界の自主的な第三者機関「放送と青少年に関する委員会」をはじめとして、マスメディア各界では自主自律の取り組みが実を結びつつある。そうした潮流のなかで、同法案のような”官主導”の介入は、国民とマスメディアとの望ましい関係づくりを阻害するものであり、問題の本質的な解決にはつながらないことを改めて指摘したい。
 「青少年有害社会環境対策基本法案」には、具体的に以下のような多くの問題点がある。

○ 法案では、「青少年有害社会環境」の定義に「性・暴力に関する価値観の形成に悪影響を及ぼす」「性的・暴力的逸脱行動、残虐な行為を誘発・助長する」「青少年の健全な育成を阻害するおそれのある」等の表現を使用しているが、こうした定義はあまりに幅広くかつ曖昧であり、法律が恣意的に運用される危険がある。とくに、青少年の「価値観の形成」にまで国家が介入することは、甚だ問題である。また、「事業者が供給する商品・役務(サービス)」すべてに規制が及ぶため、国民の生活環境全般がその対象となる。

○ 国・地方公共団体の実施する有害社会環境対策に対し、事業者が協力する責務を有するとの規定は、行政主導のキャンペーンへの参加の義務付けであり、マスメディアへの行政の介入を容認する結果につながる。

○ 事業者・事業者団体に、「青少年有害社会環境の適正化のための協定または規約」を締結・設定し、主務大臣または都道府県知事に届け出ることを求めているが、言論・表現にかかわる領域に行政が直接介入することは、自由主義社会の根本理念と対立するものである。

○ 「青少年有害社会環境対策協会」の規定は、各業界の自主性を尊重する形を一見とっているかのようにみえるが、行政が対策協会に助言・指導・勧告・公表権を有する以上、行政による事業者への介入に他ならない。協会の設立・加入および届け出は、各業界による自主規制を否定し、行政の管理下におくものである。言論・表現に関わる分野においては、とりわけ公権力から独立したチェック・システムが望ましい。

○ 主務大臣等が、対策協会の「業務運営が著しく不適切であると認めるときは、その改善に必要な措置をとることを勧告できる」とあるが、「著しく不適切」といった曖昧な判断基準では、恣意的に運用されかねない。勧告の範囲も「必要な措置をとるべきこと」と、極めて広い。さらに、事業者が勧告に従わない場合は、「公表」という一種の行政処分を行うこともできる。これは、憲法で保障されている「表現の自由」や「検閲禁止」に反する恐れが強い。

○ 主務大臣等が事業者・事業者団体に対し「情報の提供、助言・指導その他必要な措置を講ずる」とあるのも、行政によるマスメディアへの無限定な関与となりかねない。

○ さらに、内閣総理大臣が強い監督権限を有する公益法人「青少年有害社会環境対策センター」の設置は、行政府のより直接的な関与を許し、マスメディアへの公権力の介入を招くおそれが極めて強い。

○ これらの行政措置を行う際に、事業者の異議申し立ての機会も設けられておらず、適正手続きが保障されていない。

 放送事業は他のマスメディアとは異なり、国家が電波を監理しなければならないという物理的な理由から、放送法・電波法による規制を受けてきた歴史を持つ。その特殊性から、放送法は、国家が「表現の自由」を侵さないための模範的な姿を示している。放送事業者には番組基準の制定およびそれの順守、番組審議会の設置およびその審議の公表、番組審議会からの意見尊重--などが義務づけられているが、主務大臣たる総務大臣は番組基準の内容や番組審議会の運営のありように口を出す権限は与えられていない。憲法21条に基いて構築されたこの放送法のしくみを、青少年有害社会環境対策基本法案は破壊してしまうのである。
 われわれ民間放送事業者は、このように自主規制を尊重する放送法のもとで、青少年問題について積極的に対応してきた。最近の取り組みは次のとおりである。

○ NHKと共同で視聴者からの意見や苦情を受け付ける自主的な第三者機関「放送と青少年に関する委員会」を平成12年4月に設立。同12月に民放テレビのバラエティ番組に対する見解を公表し、局側はこれに真摯に対応した。こうした委員会とテレビ局とのやりとりも踏まえ、テレビ局が自主的に番組内容を改めるということが日常的に行われている。

○ 「青少年の知識や理解力を高め、情操を豊かにする番組」を各放送事業者が週3時間以上放送。(各局において平成11年秋改編から指定番組を公表)

○ 午後5時から9時までの児童・青少年の視聴に配慮した時間帯の設定。(民放連・放送基準および同解説文に明記)

○ 青少年には刺激が強いと思われる劇場用映画などを放送する際、時間帯の選択や内容の一部カットといった対応に加え、番組の冒頭で事前表示を行い、保護者に注意喚起を行っている。

 こうした自主的努力を無視した法案が検討されていることは極めて残念である。「表現の自由」に国家がみだりに干渉しないことは、民主主義の基本原理の一つであり、青少年有害社会環境対策協会のような機関はマスメディアの分野で設立されるべきではない。”文化”に対する価値観が関わる分野では、法規制によらず、”大人の良識”に基づく自主規制により問題解決を図るべきである。自民党が同法案の国会提出を撤回することを要望する。

以上
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この件に関する問い合わせ:民放連[番組部]

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