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(報道発表)自民党「青少年健全育成基本法案骨子(案)」等に対する民放連意見の発表について

 社団法人 日本民間放送連盟〔民放連、会長=日枝 久・フジテレビジョン会長〕は、本日(7月29日)、自民党が議員立法により国会提出を検討している「青少年健全育成基本法案骨子(案)」等に対する意見【別紙】をとりまとめ、放送と青少年問題特別委員会の亀渕昭信委員長(ニッポン放送社長)、山本雅弘副委員長(毎日放送社長)が、自民党内閣部会・青少年の健全育成に関する小委員会の田中直紀委員長へ提出いたしましたので、お知らせいたします。
 意見書では、「青少年環境対策に関する昨年の基本法案の名称を変えて、『青少年健全育成基本法案』と『青少年を取り巻く有害社会環境の適正化のための事業者等による自主規制に関する法律案』とに再構成しているが、マスメディアの表現の自由を損ね、国民の文化的な価値観にまで国家が介入するという法案の問題点はまったく変わってはいない。表現の自由や文化に関わる問題は、法規制によらず自主規制で対応すべきである」などとしたうえで、同法案の国会提出方針を撤回するよう求めています。


2003年7月29日
自民党「青少年健全育成基本法案骨子(案)」等に対する意見
(社)日本民間放送連盟

 放送活動を通じ、福祉の増進、文化の向上、教育・教養の進展、平和な社会の実現などに貢献することが、われわれ放送事業者の使命であることは言うまでもない。そのうえで、これまでの見解などでも示したように、青少年が健やかに育つために適切な社会環境が必要であることは、われわれも十分認識している。しかし、人はさまざまなものと出会い、その善し悪しを判断することを学んで成長していくのであり、青少年への“悪影響”を国家が一方的に判断して押し付ける考え方には賛同できない。「表現の自由」に関わる問題は、自主自律の原則のもとで自主規制により解決していくべきものである。しかも、放送界の自主的な第三者機関「放送倫理・番組向上機構(BPO)」の「放送と青少年に関する委員会」をはじめ、マスメディア各界での自主自律の取り組みは着実に実を結びつつある。
 こうした潮流のなかで、今回自民党内で検討されている新法案のような“官主導”による介入は、国民とマスメディアとの望ましい関係づくりを阻害するものであり、本質的で実効のある問題解決にはつながらない。今一度、このことが再認識されるべきである。

 昨年自民党内で議員立法を目指して検討された「青少年有害社会環境対策基本法案」は、青少年の健全育成という美名のもと、憲法で保障されている「表現の自由」を行政の監視下に置き、国民一人ひとりの文化的な価値観の形成に国家が踏み込むものであり、断じて認めることのできない内容のものであった。だからこそメディア各界はもとより、全国各地で多くの有識者が強い懸念を抱き、撤回を求めたほか、一部与党も「表現の自由」との関連で問題があるとして賛同しなかった、という経緯がある。
 今回の新法案は、端的に言えば、昨年の基本法案の名称を変えて「青少年健全育成基本法案」と「青少年を取り巻く有害環境の適正化のための事業者等による自主規制に関する法律案」(以下「自主規制法案」)の2つに再構成しただけのものであり、国による「表現の自由」の監視という本質は全く変わっていない。核心となる立法事実も依然不明瞭である。旧法案同様に重大な問題を抱える法案を、またもや立法化しようとすることには、全くもって理解に苦しむと言うほかはない。
 昨年の基本法案と比べると、事業者等に設立・加入の努力義務があり、苦情処理などを行う「協会」に対して、主務大臣が「勧告、公表」できる権限が新法案では消えてはいる。しかしながら「協会」が事業者等に対し「助言、指導及び勧告」を行う一方、主務大臣等は、「協会」に対し「助言、指導」ができるうえ、事業者等に対しても直接「助言、指導その他必要な措置」を講ずる、といった権限は残されており、旧法案との根本的違いを見出すことは困難である。むしろ、事業者等による規約・協定の設定・締結にあたって、主務大臣が定める、内容、作成手続きの透明性・客観性などが不明な「指針」への留意を新たに求めるなど自主規制の内容にまで踏み込む、行政による介入の危険性が強まっている面さえある。付言すると、そもそも新法案には社会秩序を重んじ自主規制の強化に努める業界であればあるほど、行政による過剰ないし不必要な規制を招くという矛盾がある。
 これらを含めて今回の「青少年健全育成基本法案骨子(案)」「自主規制法案骨子(案)」には、旧法案に引き続き、メディアへの行政の介入を招く恐れの強い多くの問題点がある。基本理念にのっとるとは言えない表現規制、メディアに協力責務を課す行政主導の善導キャンペーン、助言・指導による主務大臣の事業者等への無限定な関与、行政管理下の公益法人監視センターの設置など、昨年の意見(平成14年2月21日)で指摘した点は置くとして、あらためて以下に主な問題点をあげる。

  • 法案では、「青少年有害社会環境」の定義に「性・暴力に関する価値観の形成に悪影響を及ぼす」「性的・暴力的逸脱行動、残虐な行為を誘発・助長する」「青少年の健全な育成を阻害するおそれのある」等の表現を使用しているが、こうした定義は幅が広すぎ、公益性の概念としてもあまりに抽象的で曖昧である。とくに、青少年の「価値観の形成」にまで国家が介入することは、極めて問題が大きい。しかも、それらの判断は最終的には行政が行い、恣意的な判断が入る余地が十分にある。
  • 事業者・事業者団体に対し、青少年有害社会環境の適正化のため、商品・役務の供給方法その他青少年の健全な育成を阻害しないように順守すべき規準についての協定または規約を締結・設定し、主務大臣または都道府県知事に届け出ることを求めているが、言論・表現にかかわる領域に行政が直接介入することは、自由主義社会の根本理念と対立するものである。
  • しかも、協定・規約の締結・設定にあたっては、主務大臣が定める「指針」への留意を求めており、この旧法案にもない仕組みを通じて行政の管理・介入に道が開かれ、自主自律の原則が阻害されるものになっている。「指針」の内容や制定手続きの透明性・客観性なども不明であり、表現への介入・規制につながる可能性は否定できない。
  • 苦情処理などを行う「協会」は、一見して各業界の自主的機関のようにみえるが、事業者等に設立・加入の努力義務が課され、設立の際は届け出が必要なうえ、行政が助言・指導権を有する以上、行政の管理下に置かれる機関にほかならず、各業界による自主規制を否定するものである。言論・表現に関わる分野においては、とりわけ公権力から独立したチェック・システムが望ましい。

 放送事業は他のマスメディアとは異なり、放送法・電波法による規制を受けてきた歴史を持つ。その特殊性から、放送法は、国家が「表現の自由」を侵さないための模範的な姿を示している。放送事業者には番組基準の制定およびそれの順守、番組審議会の設置およびその審議の公表、番組審議会からの意見の尊重――などが義務づけられているが、主務大臣たる総務大臣は番組基準の内容や番組審議会の運営のありように口を出す権限は与えられていない。憲法21条に基づいて構築されたこの放送法の仕組みを、青少年健全育成基本法案等は破壊してしまうのである。

 われわれ民間放送事業者は、このように自主自律を原則とする放送法のもとで、青少年問題について積極的に対応してきた。最近の主な取り組みは次のとおりである。

  • 「青少年の知識や理解力を高め、情操を豊かにする番組」を各放送事業者が週3時間以上放送(各局において平成11年秋改編から指定番組を公表)。
  • 午後5時から9時までの児童・青少年の視聴に配慮した時間帯の設定(民放連・放送基準および同解説文に明記)。
  • NHKと共同で視聴者からの意見や苦情を受け付ける自主的な第三者機関「放送と青少年に関する委員会」(青少年委員会)を平成12年4月に設置。同12月に民放テレビのバラエティ番組に対する見解、平成14年3月に衝撃的な事件・事故報道の子どもへの配慮についての提言、同12月には消費者金融CMに関する見解を公表し、局側はこれに真摯に対応した。このような委員会とテレビ局とのやりとりも踏まえ、テレビ局が自主的に番組内容を改めるということが日常的に行われている。  なお、青少年委員会は、第三者機関の機能強化により本年7月1日に発足した「放送倫理・番組向上機構(BPO)」の一委員会として、新たなスタートを切った。
  • 視聴者や青少年委員会から改善要請のあった消費者金融CMについては、本年3月と7月、自主規制を一層強化する民放連見解を打ち出した。安易な借り入れを助長する表現の排除、貸付条件の明瞭化などに加え、児童・青少年の視聴に配慮する午後5-9時の時間帯では、いわゆる啓発型CMを除き放送を避けるとともに、時間帯にかかわらず、「青少年に見てもらいたい番組」、児童・青少年が主体となるアマチュアスポーツ等のイベント番組では、消費者金融CMを放送しないこととした。
  • 青少年には刺激が強いと思われる劇場用映画などを放送する際、時間帯の選択や内容の一部カットといった対応に加え、番組の冒頭で事前表示を行い、保護者に注意喚起を行っている。
  • メディアリテラシーの向上策として、地方局・学校・研究者グループなどと共同で実践的な研究を進めてきており、その成果を出版物としてとりまとめる予定である。

 こうした自主的努力を無視した法案が今回も検討されていることは極めて残念である。「表現の自由」に国家がみだりに干渉しないことは、民主主義の基本原理の一つであり、行政の監視を受ける「協会」のような機関は、マスメディアの分野では不要である。“文化”に対する価値観が関わる分野では、法規制によらず、“大人の良識”に基づく自主規制により、問題解決を図るべきである。 自民党が同法案の国会提出方針を撤回することを、重ねて強く要望する。

以上

この件に関する問い合わせ:民放連 番組部

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