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第64回民間放送全国大会/井上会長あいさつ

 日本民間放送連盟会長の井上でございます。

 主催者を代表いたしまして、一言ごあいさつ申しあげます。

 

 本日は、私たちが日頃ご指導、ご支援いただいております各界の方々に、ご多忙の中、多数ご臨席いただいております。壇上と会場双方の、ご来賓の皆さまに心より御礼申しあげます。

 

災害とニュース

 今年の日本列島は、多くの自然災害が発生しました。4月に熊本地震があり、つい先日は、鳥取で大きな地震がありました。また台風もかなり多く発生しました。温暖化の影響でしょうか、日頃は台風の被害に遭わない北海道や東北まで被害が生じましたし、集中豪雨もありました。私たち民放事業者にとりましては、こうした災害時に、視聴者の皆さま、国民の皆さまにまず正確な情報を、そしてどのように安全を確保するかといったことをきちんと伝えるという義務があります。日頃もそれに向けて努力しているわけでありますが、昨今はテレビ・ラジオ以外にもネットを活用しまして、広く情報の伝達に努めておられるわけです。

 昨日、博多の駅前で大きな陥没があった際に、なんといっても現場の方からの速報、投稿動画のようなものが有効に役立ちました。それと同時に、これらの情報が確かなものであると検証して報道できるのは、私たち放送局だと思っております。今後も、そうした新しいメディアも使いながら、災害時においても充実した放送サービスを継続し、視聴者の皆さまにご安心いただきたいと思います。

 

各局の活躍

 最近、各地の放送局が制作したドキュメンタリー番組に優れた作品が多いと感じております。このあと発表される日本放送文化大賞のノミネート作品のような番組が多く作られていることは、各局の地道な努力が結実したものであり、とても喜ばしいことだと思っております。

 放送コンテンツの海外展開についても、最近、各社が大変熱心に取り組まれています。先日のカンヌの「MIPCOM」では、多数の地方局にご参加いただきましたが、放送コンテンツの海外展開は、国としても重点施策として進められる分野ですので、民放連としても、その下支えになれば、と考えております。

 

ネットの活用について

 先日、総務省がNHKの放送をネットで同時配信させる方向だという全国紙の記事には、驚かれた方も多いと思います。

 今の段階で、私からはっきり方針といったものを申しあげるだけの情報もありませんが、いくつか気になる点、対応が必要だと考える点を挙げたいと思います。

 

 ①民間放送は、地域免許を基盤として成立しております。この点は総務省にも政策の立案において、常にお忘れなくお願いしたいことです。

 

 ②NHKが更に巨大化することには、危惧を抱いております。今後とも、「NHKと民放の二元体制」を維持したいと考えておりますので、配慮をお願いしたいと思います。

 

 ③私たち、テレビ業界では、スタート時、当時としては最先端の映像・配信の技術であった、アナログモノクロ放送で始まりました。先人たちは、立ち上げの際の、巨額な設備投資に苦労されたことと思います。その後、カラー放送が始まりましたが、カラーになったからといって収入が増えたわけではなく、各局とも苦労されたことと思いますが、良質な番組を制作し、視聴者の支持を得て、放送は発展してきました。そして、先般のデジタル化です。設備投資の負担などには苦労いたしましたが、アナログに比べて画面は明瞭になり、テレビの媒体価値は向上したと思います。

 技術の進歩を日常の生活に取り入れ、何らかの形で商品化し、次の世代へいかにしてつないでいくか、これが喫緊の課題だと考えています。

 そして、現在、4K・8K放送、そして、ネット配信という新しい技術の進歩に直面しています。私たちが最強の映像配信メディアとして存在していくためには、こうした技術進歩に背を向け、逃げ去るわけにはまいりません。番組内容はもちろん、新技術に積極的に対応していってこそ、次の時代の展望が開けると私は考えます。

 在京キー5局で始めた「TVer」は順調に推移し、在京社以外の各局からも参加をいただくようになったと伺っています。また、先ほどの鳥取県中部地震の際のネット対応や日本シリーズでのネット同時配信の取り組み等、新しい試みも生まれています。

 各局の中には、自社番組をネットで全国配信する局も出ており、ネットに対する対応は着実に進んでいる手応えを感じております。こうした取り組みを行っていかなければ、次の時代を拓くことはできないと考えております。

 

4K・8K放送

 4K・8K放送に関しては、NHKに続いて、12月に放送サービス高度化推進協会(A-PAB)がBSでの試験放送を開始します。9月にはBS実用放送のソフト事業者の公募・申請が実施されました。

 こうした技術革新により、ハイクオリティーな映像を視聴者にお届けできることは大変魅力的でありますが、どのようにマネタイズするかが課題です。地方局にとっては地上放送の4K化の動向が気になるところでしょうが、まずは技術開発の動向や、先行するBS放送の状況を注視し、魅力的な番組を開発してまいりたいと思います。

 

ラジオ

 ラジオは、FM補完放送が広がり、災害に強いラジオという機能が強化されておりますが、いかにして若い人をはじめ、より多くの方にラジオを聞いてもらうかという課題を抱えています。

 その対策として、このほどラジコと共同で、過去1週間に限り、後から番組を聴取できる「タイムフリー聴取機能」と自分のお気に入りの番組をソーシャルメディアによって友人と共有できる「シェアラジオ」の実証実験を開始しました。さらに、スマホでFM放送またはネット配信を切り替えて受信できる「ハイブリッドラジオ」の実現にも取り組んでおります。

 

 ラジオは、災害時においても、通信と違って輻輳や遅延もなく、確実に情報を届けることができ、頼りになるメディアですが、日頃から親しんでいただかなければ、いざという時にお役に立てません。今後もラジオの強靭化とともに、若い人たちに親しんでいただける努力を続けてまいります。

 

放送番組について

 ご記憶のとおり、昨年の民放大会以降、「放送法」をめぐる一連の議論がありました。「政治的に公平であること」や「事実を曲げない」といったことは、民放連の放送基準や各局の番組基準に記載されている原則です。そのうえで、何か問題があれば、放送事業者みずからの力で解決することが基本であり、自律的に放送倫理の向上を図るべきであると考えています。これが放送に課せられた使命です。さらに、放送界はBPO(放送倫理・番組向上機構)を自主的に設置しております。公権力から独立したBPOの仕組みを有効に機能させるためにも、会員各社の皆さまには、BPOの各委員会の意見・提言に真摯に耳を傾け、これを番組制作に活かしていただきたいと思っています。

 

 放送事業者は、決して巨大企業ではありません。しかし、社会への影響力は非常に大きな企業です。そのような認識を持ち、そのような企業で働いているのだという自覚を持って、単眼ではなく複眼で物事を見て、報道していただきたいと願っております。

 

 最後になりましたが、大久保・民放大会委員長をはじめ、一丸となって大会の準備を進めてくださった各社の皆さまのご協力に、心から感謝を申しあげ、ごあいさつとさせていただきます。

 

 

 平成28年11月9日

一般社団法人 日本民間放送連盟

会 長  井 上   弘

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