表彰番組・事績
日本民間放送連盟賞/2000年(平成12年)入選・事績
平成12年日本民間放送連盟賞 ”NAB Awards 2000” 入選・事績
日本民間放送連盟賞は12年度から次のように変更されています。
- 番組部門の種目中、ラジオ・テレビとも「娯楽番組」を「エンターテインメント番組」と改称しました。
- CM部門のテレビについて、第1種・第2種を併せて一本化しました。
番組部門 †
↑ラジオ報道 †
↑最優秀 <九州朝日放送> 少年調書 ~16歳の自殺 遺族は何と闘ったか~ †
↑P:濱田克則 D:渡辺真由子 N:奥田智子 制作:穐好幸男
福岡県のある私立高校生が、98年の暮れに自殺した。前日に同級生グループから恐喝されていたことが判明したが、捜査当局や学校側は事件にまつわる情報を遺族に開示しない。番組では、事件の真相解明を求め、加害少年と学校を相手に民事訴訟を起こした遺族の、1年にわたる努力と苦悩を通し、少年審判の問題点を炙り出す。膨大な「加害少年の供述調書」の開示により、事件の全容が明らかになる過程を丹念に取材。被害者への情報開示のあり方や加害少年の人権問題など、昨今の少年法改正論議に一石を投じる作品である。
優 秀 <札幌テレビ放送> 報道特集 「支払われなかった火災保険」 ~地震免責と闘った奥尻島民~ †
↑P:林 健嗣 D・記者リポート:佐藤 渉 N:谷口祐子
93年7月の「北海道南西沖地震」で、奥尻島・青苗地区は、津波とともに火災の被害を受け、住宅や店舗189棟が全焼。しかし、各損害保険会社や火災共済を取り扱う団体は、契約約款の「地震免責条項」を理由に、火災保険や共済金の支払いを拒否した。番組では、火災保険など約11億円の支払いを求め、「地震免責」の有効性を争った裁判の意義を検証。訴訟を起こした被災者の生々しい訴えを通して、生活に密着した問題点を浮かび上がらせる。
優 秀 <文化放送> 疑惑 ~あるサッカー少年の死 †
↑P:塚本茂 D:森田輝己 N:白井静雄
98年10月、当時中学3年のある生徒が、同学年の少年から暴行を受けて亡くなった事件について、加害少年に「保護観察処分」との地裁判決が下った。番組では『加害少年が現職警察官の子弟であり、身内をかばった不十分な捜査や警察・検察の報告が、このような軽い処分となった背景にあるのでは』との疑惑を検証。被害者の両親や目撃者のインタビューなどを基に、緻密な取材で、権力犯罪ともいうべき問題点に鋭くメスを入れた作品。
優 秀 <信越放送> ある日突然、ことばが…。 ~失語症・手探りの歩み~ †
↑P:丸山憲司 D:荒井有美 N:山下真須美
言葉の聞き取り、発声、読み書きが不自由になる失語症。番組では、脳動脈瘤破裂により、失語症と右半身麻痺に陥ったある女性をクローズアップ。彼女の言葉を回復しようと奮闘する夫や家族の愛情深い取り組みを通して、医学的にも未解明であり、社会的にも理解が進んでいない失語症の実情を検証する。失語症治療の現場を取材し、言語聴覚士養成の遅れや、保険点数が低く抑えられている現状などを具体的に提示した意義は大きい。
優 秀 <北日本放送> 灰色の海 †
↑P:山口林一 D:宮腰昌隆 N:伊藤惣一(フリー)
日本で初めて「排砂ゲート」を備えた、黒部川上流の「出し平ダム」。91年から8回にわたって行われた排砂は、ダムの寿命を延ばす切り札と注目された一方、富山湾を漁場とする漁師からは、海への悪影響が指摘され、反対運動も起こっている。電力会社から県漁連に支払われた補償金の配分や、補償交渉の合意内容の不透明さをめぐって争う関係者の肉声が問題の生々しさを伝え、権力構造の外側に追いやられる漁民の姿を鋭く描写する。
優 秀 <和歌山放送> ラジオドキュメンタリー 男たちの選択・名門住友金属野球団廃部 †
↑P:鈴木裕範 D:鴻池 尚 N:三久美千子
リストラ策の一環で解散した社会人野球の名門、住友金属野球団。番組では、突然の解散に戸惑いながらも、人生の選択を余儀なく迫られた2人の元野球団員の進退に着目した。自宅で行ったインタビューでは、夫人の想いや子どもの声を織り交ぜ、本人を支えるかけがえのない家族の存在を強く浮かび上がらせる。企業運動部の廃部を通して、企業に頼る日本のアマチュアスポーツの限界や、企業と地域振興との関係を浮き彫りにした作品。
優 秀 <南海放送> まだ夜明け前 ~冤罪はなぜ起こったか~ †
↑P:田中和彦 D・構成:永野彰子 N:保持卓一郎 出演 浜田寿美男(花園大学法心理学教授)
知人女性宅から通帳と印鑑を盗み、現金50万円を引き出したとして、窃盗罪などで起訴されたAさん。1年1カ月の拘置の後、判決4日前に真犯人が現れ、無罪が確定した。捜査当局がAさんの起訴に踏み切った大きな理由は自白だった。番組では、ウソの自白をしたAさんの苦悩を追い、自白に至る人間の心理や、改善されない自白偏重の捜査当局の意識を分析する。冤罪の構図のみならず、冤罪を生み出す司法のあり方自体を追及する作品。
ラジオ教養 †
↑最優秀 <朝日放送> こんな話がおました いま甦る西条凡児の話芸 †
↑P:川崎宏 D:橋本祐子 N:道上洋三 技術:乾 正
希代の漫談家であり司会者であった西条凡児がこの世を去ってから7年。その絶妙の話芸を録音したテープが大量に発見された。番組は、この貴重な音資料を駆使し、凡児の風刺精神、毒舌のインパクト、さらに司会者としての変幻自在のやりとりを鮮やかに蘇らせる。上岡龍太郎、桂米朝、立川談志の分析を通じて、現代が失ってしまった話芸の面白さに再評価を加えつつ、批判精神の衰えたメディアの現状をも検証する力作である。
優 秀 <山形放送> YBCラジオ・スペシャル 「スイカ屋の母ちゃん」 †
↑P:阿部啓治 D:阿部邦幸 構成・脚本:山県昭彦 出演:阿部敬子
人口2万人の農村都市である山形県尾花沢市に、アジア各国から100人以上の花嫁が嫁いできている。番組の主人公の阿部敬子さんは、本業のスイカ農家のかたわら、彼女たちのための日本語教室で講師を務める一人。その開放的で偏見のない性格は異国から来た女性たちの心をとらえ、やがて花嫁たちの明るい感性が尾花沢の閉鎖的な慣習を変え始めた。魅力ある市井の語り手を得て、東北の一隅で芽生えつつある変革を伝える佳作である。
優 秀 <ニッポン放送> 塚越孝の土曜ニュースアドベンチャー 母の日スペシャル「この母ありてこの子あり~ツッパリから雑草魂まで」 †
↑P:田村光弘 D:木村 篤 N: 塚越 孝 構成:日高 博
少年犯罪が多発し、社会問題化する現代。しかし、親と子、とくに母と子が常に向き合っている家庭、厳しくも温もりのある家庭であれば、子どもは道を踏みはずさないのではないか。そうした実例を大相撲の力士やプロ野球選手の育った家庭に求め、母親の生きざま、そして子育ての苦労を紹介。率直なインタビューにより、わが子に対する一途で大きな愛情を吐露させて、「母の日」にふさわしい"母親賛歌"に結実させた秀作である。
優 秀 <静岡放送> SBSラジオギャラリー 「うさぎとカメのリターンマッチ★世紀末版」 †
↑P:原 尚弘 D・構成・脚本:牧野真美 出演:伊藤圭介、大石岳志
「イソップ物語」が語られた時代から2500年の時を超え、うさぎとカメが月の「静かの海」でリターンマッチを演ずるという、奇想天外のファンタジーである。月面からのラジオ生中継という笑える設定のなかに、各国に伝わるうさぎとカメの興味深いエピソードを散りばめ、専門家のまじめな話も屈託無く聴かせる。ラジオならではの想像力あふれる作品であり、演出・構成・脚本の三役を兼ねる制作者のみずみずしい才気を感じさせる。
優 秀 <北日本放送> いつか皆んなで笑いたい ―あるお母さんの記録― †
↑P:石黒一成 D:小林美悠紀 N:根岸 朗(シグマセブン) 構成・脚本:山県昭彦
名も無き市井の人にも、かけがえのない人生がある。その一人として、新湊市でタコ焼き屋を営む68歳の境チエ子さんに焦点を当て、苦難の生い立ち、結婚、夫の発病、露天のタコ焼き屋からの再出発、息子同士の生体肝移植など、何事にも一生懸命に接してきたその半生を綴る。彼女の人間味あふれる声が魅力的で、豊かな時代が置き忘れてきた大切なものを、聴く者に思い出させる。
優 秀 <山陰放送> 山陰放送少年少女合唱団創立40周年記念 「へるん先生の雪おんな」 †
↑P:成瀬經男 D:木山一男 N:荒井由岐子
山陰放送では地域文化活動の一環である合唱団の40周年を記念して、松江ゆかりのラフカディオ・ハーン(小泉八雲)の「雪女」からオリジナル合唱曲を制作。番組では、その発表会を録音中継するとともに、ハーンこと「へるん先生」の人物像をドキュメンタリー・タッチで探った。美しく、優しく、そして冷淡な雪女とは、へるん先生にとって失われた母の記憶であったことが、曾孫の小泉凡さんへのインタビューから浮き彫りとなる。
優 秀 <琉球放送> 希望と自信の鐘 ~沖縄愛楽園物語~ †
↑P:仲村一夫 D:具志堅勝也 N:金城まり子 出演:愛楽園の人々
名護市にあるハンセン病療養所「沖縄愛楽園」では、沖縄サミットを機に、ドイツ首相を園に招聘する運動を開始した。戦時中、米軍の総攻撃を受けた愛楽園を救ったドイツ人医師と、彼を通じて寄せられたドイツ国民の暖かい支援に感謝するためであり、同時に、愛楽園をより広く知ってもらうためである。医師の慈愛の精神が結実した「希望と自信の鐘」を象徴に掲げ、ハンセン病への偏見をなくしたいとの祈りを込めた作品である。
ラジオエンターテインメント †
↑最優秀 <朝日放送> ラジオドラマ ~もみの木の物語 †
↑P:橋本祐子 N:松谷令子(ライダーズ・カンパニー) 出演:三國連太郎 技術:塩浜昭男
樹齢200年のもみの木「スプルース」と、森に迷い込んだ少年「伸」との心の交流を描くラジオドラマ。悩みを抱える伸を時にさとし、時にやさしく包み込んで見守るスプルースは、いつしか伸の父親のような存在となるが、森林開発のため突然切り倒される。そして40年後、伸は思わぬ形でスプルースと運命の再会を果たす。悠久の時の流れを感じさせる進行と効果的なSEにより、聴く者の想像力に訴える秀作。
優 秀 <青森放送> 99RABラジオチャリティーミュージックソン 生ラジオドラマ 汽笛が聖なる夜に降る †
↑P:鳴海征子 D:小山田文泰 脚本:畑澤聖悟(フリー) 出演:伊奈かっぺい 他
クリスマスの午前3時。深夜放送「電リクミッドナイト」がいつものように始まった。普段はほとんどリクエストが来ない時間帯だが、この日は「家出した子どもを捜してほしい」という母親からの電話に続き、聞き覚えのある様々な声が、次々とその少年を見たという情報を寄せる。「過去」を走る夜汽車に乗っているという少年の正体は…。全ての進行を生で行った緊張感が存分に伝わり、上質のラジオドラマとして高い評価を得た。
優 秀 <ニッポン放送> ニッポン放送マジカルミュージックツアーCountdown2000 「吉田拓郎スペシャル」 †
↑P:吉田雄生 D:橋内慎一 N:小口絵理子 出演:吉田拓郎
70年代、日本の音楽の流れを変えたアーティスト・吉田拓郎が、自らの走り抜けた時代を語るスペシャル番組。かつては深夜放送のパーソナリティとしても活躍した独特の語り口で、70年代から90年代をどのように生き抜いたかを、数々のエピソードと音楽を交えて紹介する。率直なメッセージひとつひとつが印象深く、次世代へのエールとなってリスナーの心に響く。2000年という節目にふさわしく、吉田の魅力を十分に引き出した作品。
優 秀 <エフエム埼玉> K's Transmission presents 検証! 中津川フォークジャンボリー †
↑P:山村太郎 D:谷 朝美(フリー) 構成:田家秀樹 出演:坂崎幸之助(THE ALFEE)
ロックバンド「THE ALFEE」のリーダー、坂崎幸之助のレギュラー番組「K's Transmission」の中で、特別企画番組として放送。69年から71年まで3回行われた「中津川フォークジャンボリー」の経緯を追い、坂崎自身が当時の関係者や出演者から、時代背景や思い出を聞くドキュメンタリータッチの作品となっている。時代が変化する今、もう一度この歴史的イベントをひも解き、現在の音楽シーンへの影響や痕跡を探る試みが評価された。
優 秀 <福井放送> 20世紀探訪 「りんごの旅路」 †
↑P:工藤順雄 D:鳴尾 健 N:宮沢好美
現代の日本人にポピュラーな果物となったりんごは、どのように日本中に広まり、愛されるようになったのか。幕末から明治にかけてりんごが上陸した日本は、その後の時の流れの中で、どのような変化を遂げたのか。番組では、文学作品や戦後の流行歌に様々な形で登場するりんごを通じて、20世紀の日本を検証していく。丁寧な取材で日本の時代背景とりんごを結び付け、明治以来の近代化の足跡を巧みにたどる構成が高い評価を得た。
優 秀 <広島エフエム放送> 9ジラジ †
↑P:山本幹雄 D:永富久之(フリー) N:山口雅美
番組の軸は、リクエストによる音楽チャートのカウントダウン。毎週火・水曜日放送という編成を生かし、火曜日は男子リスナー、水曜日は女子によるチャートとしている。また、リスナーからの悩みを様々な視点で考える「9ジラジ ラジオ討論会」という仕組みを取り入れ、放送中に募集したメッセージを紹介して、リスナーにエールを送る。聴取層の中心である中高生の心情を、的確に捉える番組パーソナリティの力量が出色。
優 秀 <エフエム沖縄> FMヒューマン・ドキュメンタリー 登川誠仁のせいぐわーやいびーん †
↑D:山川悦史 N:富田めぐみ
激動の昭和史を生き抜き、平成の世にリアルな沖縄の熱い魂を唄い続ける琉球民謡界の大御所、登川誠仁。「誠小(せいぐゎー)」の愛称で親しまれ、楽しい語りと早弾きの名手としても知られている。番組は、公開録音で行われたインタビューを中心に構成。一番弟子の照屋政雄、登川が出演した映画「ナビィの恋」の中江裕司監督など、周囲の人々の言葉を交えて登川の実像に迫り、沖縄の生き生きとした生活感覚を描く、地域性あふれる作品。
ラジオ生ワイド †
↑優 秀 <山形放送> 秋山裕靖の快汗 「ダイナマイトサンデー」 †
↑P:阿部啓治 D・構成:藤田明久、平吹浩志 出演:秋山裕靖
日曜の午前10時~午後4時放送。中央からの膨大な情報やニュースの中で、見逃されがちな県内各地域の人物や、心暖まる話題などを紹介。ラジオカーのコーナーでは、県内の街の話題をリアルタイムで数回リポートする。また、午後1時過ぎからの「ドッカントーク」では、山形大学の土屋和恵教授が、政治・経済・社会問題など多岐にわたるテーマを取り上げ、時の話題やゲストの人となりを浮き彫りにするなど、幅広い構成となっている。
優 秀 <東京放送> BATTLE TALK RADIO アクセス †
↑P:三条毅史 D:石垣富士男(フリー) 出演:小島慶子、宮崎哲弥
月~金曜の午後10時~11時40分放送。98年10月にスタート。毎回、硬軟取り混ぜたテーマを日替わりで設定し、リスナーが電話やFAX、インターネットで討論に参加する。今回は「小中学生に携帯電話を持たせること」について討論。賛成派、反対派双方の意見を尊重しつつ、論点を浮き彫りにしていく構成が特徴となっている。年齢的なセグメンテーションにこだわらない、本格的なリスナー参加型討論番組として高く評価される。
優 秀 <山梨放送> 朝ぴん広場 †
↑P:児玉久男 D:小林かおり
日曜の午前7時~9時放送。高齢者同士の茶飲み場的なコミュニケーションの場所となることを目指し、99年4月にスタート。朝食前の様子や健康の秘訣などをうかがう「朝めし前のひと仕事」、ホームページでみつけた高齢者の本音を紹介する「フリートーク」、金婚式を迎えた夫婦を訪ねる「金婚さん、いらっしゃい」、活動に励むクラブやサークルを紹介する「ほっと倶楽部通信」などのコーナーから成る。高齢者に聴きやすく、暖かい番組である。
優 秀 <北日本放送> コンビニラジオ 相本商店 いらっしゃいませ~ †
↑P:石黒一成 D:平木三弥子 出演:相本芳彦、武道優美子
月~金曜の午後0時30分~5時放送。リスナーの意見を積極的に紹介する構成で、99年からはインターネットのホームページに寄せられた意見を音声変換するソフトを導入、新たなファン層を拡大している。今回は、毎週木曜日に放送される「富山県民100万人アンケート」で、北陸新幹線の必要性について寄せられた意見や関係者インタビューなどを紹介。賛否の分かれるテーマも取り上げ、地域ジャーナリズムを担う姿勢が高く評価される。
優 秀 <和歌山放送> 小林むつろうのラジオni おまかせ 紀州人~毒婦事件の裏に漂う 「不穏の気」 †
↑D:岩井隆清
月~金曜の午後1時~2時50分放送。番組は、リスナーから電話で寄せられた意見や質問について、スタッフが調査し、コメンテーターや大学教授などに取材を行い、一定の結論を見出す構成。今回は「"紀州はみかんと謀叛人の本場である"といった作家の名前と、その理由を知りたい」との要望を検証。「毒入りカレー事件」が起こった背景や関連性に触れ、地域性や歴史的背景をうまくまとめた好奇心あふれる内容となっている。
優 秀 <中国放送> ラジON †
↑P:牧野睦夫 D:亀井弘龍 出演:沖 繁義 アシスタント:若林麻衣子(広島市立大学生)
日曜の午後10時~11時54分放送。明日から学校という、中高生が憂鬱になる時間帯に「頑張ろう」という気分にさせる番組を目指している。FAX・電話・Eメール・葉書等でリスナーとコンタクトを取り、パーソナリティがリスナーに語りかける"2ウェイコミュニケーション"を重視。ヒットチャートの作成を各学校に依頼するなどの地域密着性に加え、真摯に子どもたちに対応し、彼らを応援するパーソナリティの姿勢に好感が持てる。
優 秀 <南日本放送> 1107 MBCラジオDAY ~われら鹿児島応援団~ †
↑P:住吉大輔 D:上野知子 出演:采野吉洋、上野知子
周波数にちなみ、11月7日の生ワイド番組を拡大し、スペシャル版として、午前9時~午後7時放送。11回目となる今回は「挑戦」をキーワードに、「冒険・スポーツ」「産業・芸術」「インターネット」の3ゾーンを設け、レポートや中継で"チャレンジ"している人たちを紹介。リスナーも電話・FAX・Eメールで番組に参加した。また、番組中に「インターネットラジオ」に挑戦。約2万件のアクセス達成など、未来思考の構成が高く評価される。
テレビ報道 †
↑最優秀 <熊本放送> 第14回 民教協スペシャル 記者たちの水俣病 †
↑P:山本文雄 D:村上雅道 N:竹下景子
朝日新聞科学部の西村幹夫記者は、かつて水俣病の取材・報道に携わった反省から、水俣病の年表作りを続けている。病気に対する偏見・差別を生み出すことになった誤報、全国を水銀パニックに陥れ、水俣病に対する学術的研究までストップさせてしまった過剰報道など、水俣病に関する報道は多くの禍根を残した。西村記者をはじめ、当時報道に携わった記者たちへのインタビューを通して、水俣病報道が持っていた光と影を浮かび上がらせる記念碑的な秀作。
優 秀 <秋田放送> NNNドキュメント'99 リストラされた農民 †
↑P:山下健一郎 D:石黒 修 N:永井一郎 出演:男沢泰勝
秋田県大潟村の農民・男沢泰勝さんは1999年3月、国の所有となった農地で田植えを強行した。彼は、17年前に国の減反政策に反対して米の過剰作付けをし、入植時の契約に反することを理由に、国に提訴された。98年11月に、最高裁は男沢さんに農地の明け渡しを求める判決を確定する。男沢さんが植えた稲の青田刈りを国が強行するシーンは、国の酷さ、政策の無意味さを訴えてやまない。
優 秀 <東京放送> 筑紫哲也NEWS23スペシャル ”信じるということ” †
↑P:斉藤道雄 D:黒岩亜純ほか
幾多の神話が解体してしまった現代社会で、それでも信じられるものがあるとすれば、それはいったい何かを、1999年の年末に当たり、問い掛ける。キリスト生誕の地であるベツレヘムからの中継、植物状態からの復帰を励ます家族の姿、インターネット占いを信じる若者、過酷な取り立てをした商工ローン会社の元社員などをコラージュ風に描く。レギュラー・ニュース番組にもかかわらず、時代性を感じさせる大胆な企画である。
優 秀 <信越放送> SBCスペシャル 「さまようゴミ ~ある不法投棄からの検証~」 †
↑P:田代深志 D・構成:堀川篤志 N:那須重信
増加の一途を辿る産業廃棄物の不法投棄。長野県安曇野に黒いビニールに包まれた圧縮ゴミのブロックが2000個あまりも捨てられた。同一グループの犯行と見られる連続不法投棄事件の被害は、3つの市4つの村の計8カ所に及び、同じゴミがフィリピンに不法輸出されていたことも発覚した。手配中の不法投棄業者へのインタビューも交えながら、不法投棄はなぜ起きるのか? どうして防げないのか? を探る力作である。
優 秀 <北日本放送> 未来への記憶 ~巨大ダムは何を残したか~ †
↑P:山口林一 D:桐谷真吾 N:伊藤惣一(フリー)
黒部川の出し平ダムで、たまった土砂をゲートから流しだす最初の「排砂」が1991年に行われた。この排砂により、ダムに溜まった土砂が変化したヘドロが海や川に流れ出し、漁業に大きな被害を与えた。河口付近で刺し網漁を営む漁師たちは、漁獲量の減少に悩み、関西電力が漁業団体に行った漁業補償の配分の不透明さにも疑問を感じている。漁師らが訴えるようにヘドロの被害は続いているのか、海底の水中撮影や堆積物の土壌分析など、さまざまな角度からヘドロの行方を追跡し、巨大ダムの抱える悩みを浮き彫りにする。
優 秀 <毎日放送> 映像90 残された人々 ~在日韓国人軍属の戦後補償~ †
↑P:山本利樹 D:坂井克行 N:小山紀一 C:薮野吉宏
第二次大戦中、20万人を超える韓国・朝鮮人が日本の軍人・軍属として徴用され、戦場に赴いた。戦後、日本国籍を失った在日韓国・朝鮮人は、日本国籍を持たないがゆえに、「戦傷病者戦没者遺族等援護法」の対象外とされ、いかなる戦後補償も受けられないできた。番組は滋賀県に住み、1993年に日本国を相手に戦後補償を求める裁判を起こしたカンプジュン姜富中さんに焦点を当て、見捨てられ、取り残された彼らの無念と国の無策に迫る。
優 秀 <山陽放送> 生涯被告 ~身ぶり手ぶりの裁判20年~ †
↑P:谷本保夫 D・構成:曽根英二 N:谷 育子(江崎プロ) 撮影:藤井智照
1980年、岡山市に住んでいた、45歳のろうあの男性が600円の窃盗容疑で逮捕された。彼は読み書きも手話もできず、意思を伝える方法は身ぶり手ぶりだけだ。彼に「黙秘権」の意味は伝わったのか。果たして裁けるのか。彼と彼を支える支援者を20年の長期にわたって、追いつづけたドキュメンタリー。裁判所は公判を停止しただけで、彼を死の直前まで、被告の立場に置きつづけた。刑事訴訟法の不備、司法の正義を深く考えさせる。
テレビ教養 †
↑最優秀 <北陸放送> ここより行くところなし ~奥能登に生きる老夫婦の物語 †
↑P:八田静輔 D:中崎清栄 構成:辻本昌平(フリー) その他:西川嘉一
奥能登の過疎地で暮らす老夫婦。農業だけでは生活が成り立たず長年に渡って出稼ぎを続けてきた。現在は妻のトミさんだけが出稼ぎに行き、高齢の夫、好雄さんは一人で奥能登の厳しい冬を迎える。出稼ぎで得た金は農業の赤字埋めに使われる。苦しくともなお、先祖伝来の土地に生きる老夫婦の、ありのままの生活を3年間にわたり取材。地域の抱える問題を美しい映像とともに告発した、地方民放の原点ともいえる秀作である。
優 秀 <北海道放送> 老いの食卓 ~2000年ニッポンの配食事情~ †
↑P・D・構成:溝口博史 D:八木真美、佐々木延彦、芳賀 恵
食事宅配システム「札幌ふれあいフーズ」の利用者は年々増加している。一人で食事をとる老人が増えているからだ。しかし、市や国の助成金は夕食分しか出ず、土・日・祝日は休みになるなど、食事に対する福祉政策が行き届いているとはとても言えない。「食事の配達」を通じて、日本の高齢化社会が抱える問題や老人たちの人間模様を描く。時事性、意外性、地域性を併せ持ち、社会に問題を投げかける力作である。
優 秀 <テレビ朝日> 田原総一朗の人間発掘スペシャル ~神話になったセールスマン! 盛田昭夫のアメリカ物語~ †
↑P:日下雄一、加納 満(テレビ朝日映像) D:柿崎拓哉(テレビ朝日映像) 構成:日野原幼紀
無名の小企業から日本を代表する企業となった「ソニー」。その設立者の一人である、盛田昭夫氏の世界を相手にした奮闘ぶりを描く。当時、日本製品が粗悪品の代名詞であったアメリカで、様々な苦難にあいながらも、その知恵と行動力で成功を収めていく盛田氏。証言や再現ドラマを多用した巧みな編成により、その人物像をわかりやすく描き出した完成度の高い作品である。
優 秀 <信越放送> SBCスペシャル 「いまを生きる~土屋竜一・35歳」 †
↑P:宮島周二 D:岩崎信子 N:小山菜穂子 構成:野沢喜代
進行性筋ジストロフィーにより、徐々に身体が不自由になった土屋竜一さん。シンガーソングライターの彼は、車椅子から歌い続けていた。しかし、ついに呼吸筋までもがおかされる。声を失いかねない気管切開手術に挑み、「スピーキングバルブ」をつけての会話に挑戦、強い意志と訓練により声を取り戻す。様々な困難に遇いながらも、常に夢と希望を失わない竜一さんの姿を通じて、生きることの意味を問う。
優 秀 <毎日放送> 映像90 カミングアウト ~先生のレズビアン宣言~ †
↑P:山本利樹 D:井本里士 N:石田敦子 カメラ:稲岡和彦(毎日映画社)
高校教師の池田さんは、同性愛者である。その性的志向が周囲に知られてしまうことに怯え、苦しみ続けていた。そんな彼女と在日韓国人3世の郵便配達員が出会う。自分のヘルメットや、配達通知にハングルで本名を書く彼は、「マイノリティーである自分の存在を自然に認識してくれれば」と語る。彼の考えに触発され、同僚や生徒たちに、自分がレズビアンというマイノリティーであることを告白していく。大胆かつ繊細な秀作である。
優 秀 <広島ホームテレビ> 川の約束 †
↑P:真期孝夫 D:酒井立夫 N:鈴鹿景子(フリー) 構成:倉本裕子(フリー)
中国山地を流れる江の川沿いの山里で、川魚漁によって生計をたてていた被差別部落出身の兄弟、健二さんと康弘さん。二人は、差別構造の改革には教育が必要だと痛感し、十分に教育を受けられなかった部落の人を集めて、高校の通信教育を開始。子供たちに対しては体験学習を通じて、地域を支えてきた部落の人々の伝統や生きざまを、16年にわたって教えている。短い時間で難しいテーマを深く捉えた、完成度の高い作品となっている。
優 秀 <サガテレビ> 絆 ~家族の詩~ †
↑P:永尾三明 D・構成:広橋時則 N:瀬戸正子(フリー)
隻腕で片足が不自由な父。自閉症と診断され、かつ知的障害を持つ長男。5人家族の冨永さん一家には2人の障害者がいる。父の俊博さんは、スポーツを人並み以上にやることで強靭な精神力を養った。長男の貴博さんの自立を促すための方策を模索する家族。姉の真理さんと走ったロードレースは貴博さんに自信を与え、少しづつ自立していく。障害という視点からだけでなく、親子愛や兄弟愛という視点からも家族をとらえた秀逸な作品。
テレビエンターテインメント †
↑最優秀 <讀賣テレビ放送> Kissだけじゃイヤッ! †
↑P:梅田尚哉 D:山口剛正 出演:島田紳助、熊谷真美
午後11時台に全国放送している同名番組を再編集したスペシャル版。恋愛中の若いカップル4組がスタジオに相次ぎ登場し、思わず爆笑のエピソードや熱い告白を披露するコーナーを中心として、ENGによるフォロー取材で番組に厚みを出す構成。聞き手の島田紳助が良き兄貴分として、また同世代の娘をもつ父として彼らと対峙し、現代の若者の素顔と本音を巧みに引き出す。時代の空気を伝える視聴者参加番組として、評価される。
優 秀 <北海道放送> 大仁田厚の 俺たち「傷だらけやり直し」組 †
↑P:溝口博史 D:河野 啓 N・出演: 大仁田厚 撮影:後藤 仁(HBCフレックス)
この番組に登場するのは、かつて高校を中退したり、小中学校で不登校を経験した生徒たち。彼ら「傷だらけやり直し組」が見違えるほどに成長していく3年間を追いながら、人間として大切なものは何かを、視聴者に向けて暖かく問いかける。北海道放送が10年余にわたり継続取材している北星余市高校を舞台に、自らも26年ぶりに高校卒業証書を手にしたプロレスラー大仁田厚が綴りあげた「熱血学園レポート」である。
優 秀 <東京放送> 「ウンナンのホントコ!」 春よ恋々早く来いSPECIAL †
↑P:荒井昌也 D:杉本 達(ウイルスプロダクション) 構成:高須光聖(カイト)
何かの目的に向かって必死の人、仮想の世界に突然投げ出された人、さまざまな状況で人間がみせる「ホントのトコロ」を笑いと涙で伝える新感覚のバラエティー番組。とくに「未来日記」コーナーは、一般公募の見知らぬ若い男女が、与えられたシナリオに沿って擬似恋愛を演じるさまを追う人気企画で、ドラマともドキュメンタリーとも異なるテレビ的面白さが新しい。
優 秀 <テレビ静岡> エスパルス 「健太・真田の男の選択」 ~語られなかった真実とは~ †
↑P:高野満好 D:長谷川和人 N:鈴木敏弘 インタビュアー:渡辺雅彦
99年、清水エスパルスが悲願のJリーグ第2ステージ初優勝を果たすうえで、原動力となった長谷川健太、真田雅則の両選手。一見、順風満帆に見える二人のサッカー人生だが、優勝までの7年間には、さまざまな挫折もあった。激しいポジション争い、チーム存続の危機、移籍の誘いなど、優勝した今だからこそ話す真実を、ロングインタビューで掘り起こした作品。地元局と選手との信頼関係の深さが窺われる。
優 秀 <中部日本放送> スジナシ †
↑P:伊藤 司 D:鎌田耕次(フリー)、松浦洋子 出演:笑福亭鶴瓶(松竹芸能)
笑福亭鶴瓶とゲストの大物俳優が、スジつまり台本ナシで、簡単な設定だけをもとに即興でドラマを演じる。まさにぶっつけ本番で、共演者間の腹の探り合い、駆け引き、呼吸のずれ、技量の競い合いなどをそのまま見せ、その一瞬一瞬の緊張感を視聴者と共有する異色の深夜番組。視聴者だけでなく、演技者や制作スタッフもドラマの展開が読めないという面白さが新鮮。現代人の共感を呼び、アンコール放送の要望も多数寄せられている。
優 秀 <広島ホームテレビ> 広島東洋カープ球団創設50周年特別番組 もうひとつの伝説 ~スカウトたちの球団史~ †
↑P:清永敏裕 D:小川泰成 N:佐藤政道(大沢事務所)
地方球団、しかも親会社をもたないことによる資金難からスタートし、ついに黄金時代を築いた広島カープ。そのユニークな球団史を、多くの有望選手を発掘してきたスカウト陣に着目して描いた意欲作である。高額の入団契約金ではなく、自らの足で、そして無名選手の将来性を見抜く眼力でチームを強化した男たち。その秘められた喜怒哀楽を地元局ならではの視点で謳いあげ、見る者の共感を呼ぶ。
優 秀 <熊本県民テレビ> 阿蘇猿回し奮闘記 ~月見・だんご、汗と涙の800日~ †
↑P:井上誠一郎 D:傘 功治(西日本映像)
およそ1000年の歴史をもつといわれる伝統芸能の「猿回し」。その一つである「阿蘇猿回し劇場」に、調教師志望の二人の若い女性が入門した。独特の風習や伝統に戸惑いつつも、厳しい修行を重ね、晴れの舞台をめざす二人。番組は、順調に上達する紺野さんを遠景に据え、師匠から厳しい叱責を受ける南さんに焦点を当てる。伝統を受け継ぐ難しさと相方の猿との葛藤、そしてプロとしての成長ぶりを丹念に記録した作品である。
テレビドラマ †
↑最優秀 <フジテレビジョン> 少年H †
↑P・D:杉田成道 P:西岡善信(映像京都) 脚本:竹山 洋 原作:妹尾河童
太平洋戦争直前の1940年夏から42年夏の神戸を舞台に、自由がなくなり、少しずつ息苦しくなる社会の中で、たくましく生きる少年たちの姿を描く。主人公は、キリスト教信者の家に育つ「H」と呼ばれていた少年。Hの家に同居している朝鮮人、"アカ"として連行される若者、徴兵を忌避して自殺する映画技師、Hの友人の父である極道の男などを通し、時代の空気が表現される。少年たちのまなざしのリアルさが印象的で、的確な関西弁、当時の風俗の正確な描写など、丁寧な演出を通して、ベスト・セラーとなった原作を見事にテレビドラマ化した名作である。
優 秀 <日本テレビ放送網> 大地の産声が聞こえる ~15才いちご薄書 †
↑P:酒井浩至 D:雨宮 望 脚本:市川森一 音楽:三枝成彰
中学3年生のいちごは、高校受験を控えながらも、家族の絆と自然を大切にする教育方針によって、夕飯づくりや妹の世話など家事の手伝いをさせられている。この教育方針に反発するいちごだが、優等生として受験勉強にまい進していた男友達の死、母の故郷である宮崎県椎葉村への旅をとおして、母たちの生き方を理解していく。そして、母が4人目の子どもを自宅で出産するのに立ち会ったいちごは、生命の力強さに圧倒される。いちごを演じた池脇千鶴の好演が光り、巧みに織り込まれた実際の出産シーンが強い衝撃を与える。日本社会が抱えている思春期のあり方の問題を考えさせる感動のドラマ。
優 秀 <テレビ朝日> 君の手がささやいている 第三章 †
↑P:黒田徹也、東城祐司(MMJ) 演出:新城毅彦 脚本:岡田惠和
生まれながらに聴覚障害を持つ美栄子の結婚と出産を描いた前二作に続いて、子どもの成長とともに降りかかる困難とその克服が描かれる"第三章"。幼稚園・小学校と成長していくにつれ母親の障害に気づいていく娘、そして、その障害がからかいの対象にもなる。子どもの急病、夫の転勤、同じ障害を持つ友人の結婚などのエピソードも織り込まれる。第1作から主役を演じる菅野美穂と武田真治の手話を交えた繊細な演技も美しく、過剰な演出を避けた素直なつくりが好感を呼ぶ秀作である。
優 秀 <テレビ東京> 山田太一ドラマスペシャル 小さな駅で降りる †
↑P:佐々木彰、小川 治、高倉三郎(東京映画新社) D:松原信吾(木下プロダクション)
食品専門の中堅商社に社長直属の営業戦略部が新設され、組織の合理化に取り組んでいる。彼らは、人間的つながりを重視する古い商慣習を廃そうとして、社内から疎まれながら、激務に追われている。この営業戦略部長と腹心の部下のそれぞれの妻は、無能な経営者の下で馬車馬のように働かされる夫たちを見て、営業戦略部を中傷する怪文書を会社に送りつける。妻たちの反乱を軸に、日本の会社社会のあり方を鋭く問う。構成の確かな脚本が生かされた構築性の高いドラマである。
優 秀 <毎日放送> スペシャルドラマ 「遠藤周作没後三年特別番組 夫の宿題」 †
↑P:伊東雄三 D:山本 実 脚本:竹山 洋 出演:竹中直人ほか
病魔と闘いながら作家活動を続けた遠藤周作の生涯を通し、生と死の問題、家族の看護・介護、死をいかに迎えるかについて問いかける。原作は妻・順子さんの同名の著書。ドラマは臨終を迎えようとする遠藤氏の病床シーンを随所にカットインしながら、母との触れ合い、順子さんとの出会い、『海と毒薬』の執筆に対する右翼の脅迫、肺結核との闘病などのエピソードでつなぐ。医療のあり方への批判という視点も加味され、遠藤氏の面影を生き写しにした竹中直人の演技、昭和30年代の暮らし振りの細やかな再現が作品のリアリティを増している。妻の献身、夫婦のふれあいが心を打つ佳品である。
優 秀 <讀賣テレビ放送> 永遠の仔 第1話 †
↑P:今村紀彦 D:鶴橋康夫 脚本:中島丈博 出演:中谷美紀ほか
同名のベスト・セラー小説を原作に、2000年春に放送された連続ドラマの第1話。幼児虐待を受け、同じ児童精神科病棟に入院していた1人の少女と2人の少年、3人は成人し、それぞれ看護婦、弁護士、刑事になっていた。第1話では、少女に性的虐待を加えた父が17年前に誰かに殺されたことを暗示しつつ、17年ぶりに3人が再会するまでが描かれる。緊迫感のある展開、繊細な時間感覚、見事な作劇――脚本と演出の力量とこだわりが、いかんなく発揮されている。幼児虐待という重いテーマに迫り、現在の子どもたちが抱えるストレスの影響をも考えさせる問題提起形の作品である。
CM部門 †
↑ラジオ第1種(20秒以内) †
↑最優秀 <静岡エフエム放送> 春華堂/うなぎパイ・秋の夜長 †
↑P:松本直子 D:三ツ井康雄(スタジオ・アド) 構成・コピー:中村 信(コスタ) 出演者:古賀千春(フリー)
秋の夜長に交わされる、ある熟年夫婦の会話。妻の「ところで、うなぎパイって、どうして『夜のお菓子』っていうの?」という問いかけにたじろぐ夫。年甲斐も無く夫に甘える妻のしつこさが、どこか不気味でもありユーモラス。うなぎパイのパッケージに記されている「夜のお菓子」というコピーを強く印象づけるCMである。
優 秀 <文化放送> 松下電器産業/ナショナルワインセラー・87年もの †
↑D:五井千鶴子 構成・コピー:糶川航嗣(大広) SE:玉井和雄(フリー) 録音技術:久保田正三
ワインは、生産された年によって、出来、不出来があるという。「山田君、87年ものは出来が良くないって本当だねえ…」という部長のつぶやきに、山田君はてっきりワインの話だと思い返事をする。しかし、部長は「いーや、社員の話だ」と一言。当たり年のワインでなくとも、理想的な環境で熟成させることができるワインセラーの商品性を、社内事情に置き換えて表現。部長の「山田君も、もう少し待ってみるか…」という言葉に、思わずほっとさせられる上手い作品。
優 秀 <エフエム東京> パルコ/チックタック・チックタック †
↑P:小林昭夫(パルコ) D:山口景子 構成・コピー:武藤雄一(フリー) 音楽・SE:五代儀彦秀(アストロミュージック)
「オリジナル音楽+秒針のチチチチという音+サウンドロゴ」から成るCMパーツを組み合わせて作ったCM。特に秒針の音とサウンドロゴが、独特のリズムを作り出し、「チックタック」というネーミングを訴求することに成功している。5秒、5秒、10秒と切り離しても放送できることが、このCMの売りでもある。まさに「時間と遊ぶ」「時間を彩る」時計ショップならではの作品と言える。
優 秀 <エフエム栃木> 下野新聞社/企業PR・栃木の新聞 †
↑P:三田 清 D:千田和宏(アビックスタジオ金沢) 構成・コピー:田名瀬新太郎(フリー) 出演者:高田伸一(フリー)
「小山に住む田中孝さんちの犬のタローが、日光の猿のニュースを見て笑っている写真付きの記事を、宇都宮の主婦山田ユウコさんが、お盆の佐野の実家に里帰りした時に読んでいる。そんな栃木の新聞です。」文字にするとほんの数行だが、県北、県央、県南各地区の地名を上手く織り交ぜ、20秒を最大限に有効利用したコピーと演出が光る。
優 秀 <北日本放送> 北日本放送/自社PR・「抱いてやる??」篇 †
↑P:宮内 敬 D:林 美和子 構成・コピー:高瀬智江(プランニングオフィスアズ) 音楽・SE:中村香住(ネットワーク)
上司から「おい、飲みに行こうか。今夜はオレがだいてやっぞ」と言われてもセクハラなどと大騒ぎしてはいけない。富山の方言で「だいてやる」は、「おごってあげる」という意味。地元の方言をモチーフに、その言葉本来の意味をユーモラスに伝えている作品である。方言に親しみ、自社にも親しんで欲しいという願いが込められた自社PRCMの佳作である。
優 秀 <毎日放送> 井ノ坂/お酒のスーパー井ノ坂・なんださか井ノ坂 †
↑P:芝野昌之 D:奥林秀晃(関西録音) 出演者:西 靖、松井 愛
井ノ阪は、大阪岸和田にあるお酒のスーパー。このCMでは、ビール瓶を吹いて蒸気機関車の汽笛を表現、ビールの栓を抜く音シュッ、ポン、という音で機関車の走る様をリズミカルに演出。そしてウイスキーを注ぐリズムにあわせ、「なんださか、こんなさか、おおさか、いのさか」というナレーションの語呂合わせが軽妙である。CM最後の「安い」という一言が効果的。
優 秀 <エフエム中九州> 焼肉ぱいんひる/焼肉ぱいんひる・肉欲の世界 †
↑P:永松英視 D:岐部俊夫 構成・コピー:松原政夫(フリー)、永渕幸利(フリー)
「あんたなんか、肉欲のかたまりよっ」「おまえこそ肉欲まる出しじゃないか」男女の生々しい会話、と思いきやジューっという肉を焼く効果音、続いて「それ行け、焼肉ぱいんひる」というナレーションが入る。「肉欲」という言葉のインパクトと、ユーモラスな演出でリスナーを上手に惹きつけるCMである。何より、聞くと焼肉が食べたくなるから不思議だ。
ラジオ第2種(21秒以上) †
↑最優秀 <エフエム東京> サントリー/サントリー南アルプスの天然水・小さな響き †
↑D:林屋創一、山口景子 構成・コピー:河野良武(博報堂) 音楽・SE:中山恵文(中山音響効果事務所)
南アルプスの豊かな森の雪解けの頃、雪の結晶が水になる音が、アリたちの行進の音が聞こえる。そして梅雨には、カタツムリの心臓の鼓動が。新開発の特殊マイクで拾った自然界の微細な音は、むしろ静寂な森の様子を想起させる。長尺を活かし、商品である「南アルプスの天然水」の故郷のイメージを豊かに伝える上質なメッセージが込められた作品である。
優 秀 <北海道放送> JTB/熟年海外旅行・97才のおじいさん編 †
↑D:吉村貴仁 音楽・SE:上野裕二(ミュージックキャップ) 録音技術:霜田千晶 N:上田なおみ(フリー)
香港、中国、アメリカ、インド、エジプト、モンゴル、アマゾン、シルクロードなど、JTBの海外ツアーにいつもひとりで参加しているという佐野昌治さんは、現在97歳。80歳にして海外旅行に目覚めたという佐野さん自身の語る旅の魅力は、どんなコピーよりも効果的である。そして、高齢や一人参加などの理由で、旅を躊躇しているリスナーに安心感を伝えることにも成功している。
優 秀 <エフエム東京> 島根県/自治体PR・タタラ †
↑P:林屋創一 構成・コピー:中山佐知子(ランダムハウス) 出演者:段田安則(シス・カンパニー) SE:柳原利正(ゴリラサウンド)
島根県の製鉄の歴史は古代にも遡る。日本古来の製鉄方法を示す言葉でもあり、なおかつその道具を示す言葉であり、製鉄場そのものを示す言葉でもある「タタラ」。CMでは「タタラ」を人間の身体に例えながら、その言葉の意味を順に解説していく。フイゴをはじめとする様々な音が、「タタラ」の躍動感を伝え、島根県の歴史を感じさせる秀逸な作品である。
優 秀 <福井放送> 福井放送/自社PR・音のハーモニー(台所編) †
↑P:工藤順雄 D:鎌田兼行 出演者:鳴尾 健 録音技術:土田 正
普段、台所で何気なく使っているモノから、個性的な音が出る。水を張ったコップで奏でるドレミの音。バケツを蹴る音、水滴の音、まな板をたたく音、ストローで水泡をたてる音、スポンジでコップを洗う音。そんな様々な音の組み合わせで音楽を演奏するCMである。個性的な音の組み合わせによって、個性的なパーソナリティの集まりである自社ラジオのイメージを表現しており、楽しい雰囲気が伝わる作品となった。
優 秀 <毎日放送> 龍角散/タイガーバーム・右足くんと左足くん †
↑P:芝野昌之 D:奥林秀晃(関西録音) 出演者:西 靖、大月 勇
ジョギングをしている中年男性の右足と左足が会話しているというストーリー。ちなみに右足くんは標準語、左足くんは芦屋で暮らしていた頃が忘れられないので関西弁である。快調だった左足くんがだんだん元気を無くし、それをかばった右足くんも筋肉疲労に襲われる…。そこで、男性がタイガーバームを塗ると、両足とも元気百倍で駆け出していく。掛け合い漫才を思わせるテンポの良い作品。軽妙なコピーが秀逸。
優 秀 <エフエム大阪> 大阪市/人権啓発・ヒューマニティ大阪「車椅子の気持ち」編 †
↑P:岡村 修 D:市川 隆(ティー・オー・シー) アイディア・企画:大久保佳昭(ビッグフェイス) 構成・コピー:桂ケイタ(ビッグフェイス)
擬人化された車椅子がこの作品の主人公。電車にから降りた車椅子の人への疑問を問い掛ける子供に対して、見てみぬふりをさせる母親。階段を上がりたい様子を知りながら、手伝わない若者。居酒屋に入ろうとすると「店長、車椅子の人ってお酒飲んでいいんですか?」と小声で尋ねる店員。様々な偏見や無理解に嘆く気持ちを車椅子に代弁させることで、難しいテーマを暗くならず、またわかりやすく表現することに成功している。
テレビ †
↑最優秀 <日本衛星放送> 日本衛星放送/自社PR・「走る女」篇 †
↑P:三須一郎 D:関口 現(電通テック) アイディア・企画:鏡 明、澤本嘉光(電通)
街角を懸命に駆ける若い女性。橋の上には、彼女を待ち、しきりに時計を気にする青年がいた。女性は、狭い路地を走り、見知らぬ家に踏み込み、国際マラソンのコースに紛れてランナーを次々追い抜いていく。そしてついに彼女が男のもとへ…。駆け寄った男に、彼女のラリアートが炸裂。彼女は倒れる男に目もくれず走り去って行った。彼女を走らせる理由は、「見たい番組があるから」。そのメッセージが強烈に伝わる力作である。
優 秀 <IBC岩手放送> IBC岩手放送/自社キャンペーン・エコキャンペーン~木炭自動車編~ †
↑P:中林佳明 D:杉本吉武 音楽・SE:五十嵐浩一(IBCビジョン) 撮影:菅原淳一(杜の風)
盛岡で木炭業を営む千葉さんは、自家用車を木炭自動車に改造、しかも車検をパスさせ公道を走れる車に仕立てた。自分で作った炭をガソリン代わりにし、チッソ酸化物排出ゼロ、二酸化炭素も制御されたクリーンなエンジン。このユニークな車と千葉さんのほのぼのとしたキャラクターが、視聴者を惹きつける魅力となっている。エネルギー問題を、大上段に構えることなく、効果的に訴求している。
優 秀 <福井放送> 福井放送/自社PR・福井の響き †
↑P:工藤順雄 D:小原千正 N:宮沢好美 編集:白崎勝典
禅宗の修行道場として広く知られている曹洞宗大本山 永平寺。起床から、一日の全ての行事が打音の合図で伝えられるため、全山に鳴り響く音が荘厳な雰囲気を醸し出している。これまで撮影を許されなかった修行僧たちの修行映像と、全山に響く多彩な音に、人々の心に響き続けたいという自社の夢が託された作品である。永平寺750年の歴史の重さが、作品の格調を高めている。
優 秀 <南日本放送> 南日本放送/自社PR・かごしまが好きですMBC「カセダウチ編」 †
↑P:中間芳昭 D:亀田晃一 音声:末広豪志 N:重富真美
鹿児島県知覧町で毎年小正月に、神様に仮装した集落の人が新築の家を回り、家内繁栄を願う奇祭「カセダウチ」が行われる。「カセダウチ」は、「よく稼いで建てた家」という意味。この作品には、豊かな地域文化と人々の笑顔が見事に表現されている。「かごしまが好きですMBC」というスローガンを掲げている同社の、地元に密着したローカル放送局としての姿勢がストレートに伝わってくる佳作である。 ラジオCM第1種(20秒以内)
技術部門 †
↑最優秀 <讀賣テレビ放送> CM差し替え時のチラミエ除去装置の開発 †
↑研究・開発担当者:中島良隆
発局から送られてくるCM映像に重畳された開始および終了コードを監視し、CM映像の差し替えを円滑に行うことにより、発局のCM映像や番組が一瞬送出される、いわゆるチラミエを完全に防止する装置を開発・実用化した。これにより、従来の技術では除去することが困難であったチラミエの防止が可能となり、安定したCM映像の差し替えの実現に貢献した。
優 秀 <北海道放送> ヘリコプター中継用見通しエリアナビゲーター「ヘリナビ君」の開発 †
↑研究・開発担当者:桂 信生、小松尚史、土田保樹
ヘリコプター中継において、GPSによる位置データと国土地理院の数値地図標高データを利用し、地図上に自機の位置や基地局からの見通しエリア等の情報をリアルタイムに表示してナビゲートするシステムを開発・実用化した。これにより、複雑な地形でも安定した中継と安全なフライトが可能となり、ヘリコプター中継伝送の発展に貢献した。
優 秀 <テレビ朝日> マルチフォーマット・カラーバー †
↑研究・開発担当者:安部 学、阿部良幸、吉田喜平、春日康志、監物 直
16:9のHDTVから4:3のNTSCなど各種の映像フォーマットに共通して利用できる新たなカラーバーを開発・実用化した。これにより、フォーマット変換で新たにカラーバーを差し替える必要がなくなるとともに、各フォーマットのモニター調整が容易となり、マルチフォーマット時代の運用技術の向上に貢献した。
優 秀 <フジテレビジョン> HDTV中継が可能なFPU受信システムの構築 †
↑研究・開発担当者:若月盟雄、岩尾洋英、小池一洋
IF集中方式を採用することにより、既存の受信設備を生かしつつ、HDTV中継も可能な多値FMデジタル方式のFPU受信システムを開発・実用化した。これにより、HDTV系設備費が軽減するとともに、アナログ・デジタル混在運用や異なる変調方式のデジタルFPUの運用が可能となり、経済性と汎用性が両立したHDTV番組制作に貢献した。
優 秀 <中部日本放送> 立体ひまわり動画自動作成システム †
↑研究・開発担当者:伊藤行人、野口博和、八幡 篤
気象衛星「ひまわり」の赤外画像(雲強度情報)を取り込み、パソコンで立体雲画像を動画として自動的に作成する安価なシステムを開発・実用化した。これにより、雨雲が発達・衰退する様子をわかりやすく表示することができ、新たな映像表現を取り入れた気象情報システムの発展に貢献した。
優 秀 <毎日放送> 比較監視システムの開発 †
↑研究・開発担当者:宇田碇一、井上 豊、野畑智樹
複数の検出部と一つの判定部をそれぞれ相互にネットワークで結び、映像・音声信号を必要に応じて圧縮することで、伝送路を選ばず、かつ様々な信号の比較を可能とする監視システムを開発・実用化した。これにより、従来、ネット受け番組などで重複していた監視業務を一本化することが可能となり、多チャンネル時代を見据えた監視業務の効率化に貢献した。
優 秀 <朝日放送> ラジオCM放送確認書作成アドバンスシステム †
↑研究・開発担当者:長尾圭祐、塩飽武志、大西敦士、初田和彦
マスターでデジタル音声信号に重畳されたCM素材コードを読み取るとともに、DAFの出力信号との波形比較を行ってCM送出確認を行い、その結果データをもとに放送確認書を発行するシステムを開発・実用化した。これにより、ラジオCM放送確認書作成までを一貫して行うシステムが構築され、ラジオCM放送確認の一層の信頼性向上に貢献した。
放送活動部門 †
↑ラジオ †
↑入 選 <札幌テレビ放送> STVラジオ 今、運転しているあなたに ~スピード取締り情報 †
↑実施責任者:坪内弘樹
ラジオを聞きながら車の運転をしているリスナーに向けて、スピード取締り情報を伝達。スピード超過に対する意識を高めることにより、スピードの減少を促す。この「スピードダウンの呼びかけ」とも言える情報提供は年間1800本にもなる。スピード取締り情報もリスナーから寄せられるなど、ラジオの持つ特性を十分に活かして、「交通事故死者数全国ワースト1」という地域社会のもつ問題の解決に貢献している。
入 選 <文化放送> 文化放送パンゲア計画 †
↑実施責任者:長谷川実
パンゲアとは、地球上の大陸がまだ一つだったときの超大陸の名称。番組では、1990年から10年間にわたり、世界中の当時10歳だった子供たちからの手紙を20歳になるまで伝え続けた。一人一人の子供たちの声を丁寧に紹介したドキュメンタリー企画である。また、チャリティー写真展などの関連イベント開催のほか、手紙が学校の副読本に予定されるなど、国際理解の進展に大きく貢献しており、大変意義深い活動である。
入 選 <静岡放送> 阪神大震災以降のラジオ防災スペシャルと地震防災に関する放送活動 †
↑実施責任者:荻野悦生
「東海地震」の震源地と想定される静岡。阪神大震災を教訓に、聴取者の防災意識のさらなる向上が求められる。静岡放送では、地元コミュニティーFMと連携した番組を含めた防災特番を11本放送。また、災害に見舞われた地域に「災害救援金」を寄託するなどの実践的な活動のほか、防災意識啓発のために識者の本を出版するなど多方面にわたる活動を展開。報道のみならず、そのフォローアップも行うという姿勢は高く評価される。
入 選 <福井放送> ラジオ放送講座 いきいき長寿セミナー †
↑実施責任者:高橋節子
急速に高齢化を迎えている日本。老後をもう一つの人生と捉え、より豊かな人生を過ごしてもらうため、各界の有識者に高齢化社会を生きる術を語ってもらう番組を1990年にスタート。聴取者は放送をただ聞くだけではなく、福井県すこやか長寿財団と連携した、スクーリングなどにより「生涯学習」を楽しんでいる。放送だけにとどまらず、地域社会や日本全体が抱える高齢化という大きな問題を前向きに捉えた活動として評価。
入 選 <ラジオ関西> AM神戸での 地域防災ネットワークづくり 大震災から2000日の歩み †
↑実施責任者:三枝博行
阪神・淡路大震災での被災体験と震災報道の教訓を活かし、8つの「防災関連事業や活動」に参画。放送に関しては災害時の地域社会ニーズを想定し、地元マスコミとの「緊急報道相互援助協定」を結んだほか、緊急時に学校情報を放送するシステムを構築、県域の全コミュニティーFMと連携し『兵庫県地域ラジオネットワーク連絡会』をスタートさせるなど、経験を活かした実践的で画期的な制度となっている。
入 選 <山陰放送> 歌の輪ひろがって40年 ~山陰放送少年少女合唱団~ †
↑実施責任者:河野祥三
「地域の子供たちの健全な育成を推進すること」を目標に続けられた活動は今年で41年目となる。音楽関係への人材も多く輩出しているが、活動は音楽の指導だけにとどまらず、合唱を通じた人格形成の実践の場となっている。また、海外の合唱団との交流や、地元出身のラフカディオ・ハーンの怪談を題材としたオリジナル曲を歌うなど、その活動期間の長さとともに、地域文化に大きく貢献している点も高く評価できる。
入 選 <宮崎放送> 「21世紀に残したい宮崎の子守歌」 コンサートの開催及び放送、CDの制作 †
↑実施責任者:湯浅和憲
「子守歌の宝庫」である宮崎において、1982年以降、様々な番組の中で子守歌を紹介。その集大成として、県立芸術劇場での「子守歌」コンサートを開催し、コンサートを元にしたCDを県内の小中学校に無料配付した。地方の文化遺産ともいえる子守歌を積極的に発掘し、伝え、保存することにより、世代を超えて文化が継承されていく。文化の担い手としての放送局の力をあらためて示した意義ある企画である。
テレビ †
↑入 選 <北海道テレビ放送> 有珠山噴火被災地支援 ~地域データ放送を使った情報提供活動~ †
↑実施責任者:樋泉 実
1998年に開始された、テレビ電波の隙間を利用した地域データ放送サービスを有珠山噴火被災者向けに活用。受信端末は紙芝居のように自動的に情報を流すことにより、情報弱者である子供から老人まで誰もが利用できるように工夫され、地元自治体からのお知らせ、迷い犬の情報など、地元に密着した幅広い情報を避難所に提供した。災害時だけではなく、今後の放送活動の可能性を示唆するような意義ある活動である。
入 選 <テレビ朝日> ザ・スクープ 桶川市女子大生殺害事件 猪野詩織さんはこうして殺された 警察のウソを徹底検証 シリーズ(全5回) †
↑実施責任者:茅野臣平
ストーカー行為を繰り返されたあげく刺殺された猪野詩織さん。彼女や家族たちは警察に繰り返し対応を要請していたが、捜査依頼を無視し続けただけでなく、名誉毀損での告訴の取り下げも迫るなど警察の対応は冷たかった。番組ではこの事件の経過と警察の対応を徹底した取材により明らかにしていく。警察不祥事の根の深さを社会に問うとともに、マスコミによる報道被害を自己検証している点も高く評価したい。
入 選 <長野放送> NBS健康キャンペーン ~元気な地域社会作りを目指して~ †
↑実施責任者:師田栄一
全国有数の長寿県である長野県で、開局以来放送活動の根幹の一つとして行ってきた「健康キャンペーン」。レギュラー番組「健康ばんざい」では、18年間にわたり県内の医療専門家を招いて健康知識の啓発を続けているほか、「NBS月曜スペシャル」では医療、介護に関するドキュメンタリーを制作。さらには専門医を招いて、がん講演会を開催するなど幅広い活動を行っている。地道な活動を長年にわたり一貫して行っており、意義深い。
入 選 <福井放送> 海を越えたキャッチボール2000 ~福井・ロシア少年野球交流の軌跡~ †
↑実施責任者:森本茂樹
ロシアと福井の少年の野球を通じた交流は1990年に始まった。テレビを通じて視聴者に、道具不足のロシアに中古野球用具を贈ることを提案。全国から集まった3000点もの野球用具をロシアに贈呈し、その後は相互訪問による親善大会が続けられている。また、番組やニュースにおいても交流を紹介するだけではなく、環日本海地域の「今」「歴史」「生活」「人」などを伝えることで、相互理解を深めることに大きく貢献している。
入 選 <讀賣テレビ放送> 「犯罪被害者」 一連の継続報道 †
↑実施責任者:堀川雅子
事件報道の主眼は「加害者」におかれ、「犯罪被害者」の声が社会に届けられることは少なかった。その中で、神戸小学生連続殺傷事件などの凶悪事件の続発に際して、被害者側と信頼関係を築くことにより、徹底してプライバシーに配慮したインタビュー取材を実現。また「犯罪被害者」に関する法整備の現状や米国での状況などの特集を多数放送したほか、犯罪被害に関するシンポジウムも開催。先見性のある、粘り強い報道姿勢は称賛に値する。
入 選 <山陽放送> 一連の豊島産廃に関わる報道活動 †
↑実施責任者:曽根英二
瀬戸内海の小島、豊島における産業廃棄物不法投棄問題を1990年にスクープ。その後も自局ニュース内の特集をはじめ、JNN「ニュース23」において、生中継や特集を20数回放送。また、豊島をとりあげたドキュメンタリー番組を5本制作したほか、出版活動も実施。関連する講演やシンポジウムの放送も行った。粘り強い取材により、事件を風化させることなく社会に対して問題を提起し続けており、高く評価される。
入 選 <宮崎放送> サクラ咲け! ~ボランタリーな街を作ろう †
↑実施責任者:橋口義春
地域に根付きつつある市民活動が、サクラのように21世紀に花開いて欲しいとの願いを込めた企画。ミニ番組企画と生活情報生番組を連動させて、宮崎県内の様々な分野の市民グループの活動を半年間のシリーズで放送した。放送をきっかけにシンポジウムも開催されるなど、各分野のボランティアグループのネットワーク化に大きく貢献。地域における放送局のあり方を示した、意義深い活動である。
統一キャンペーンスポット部門 テーマ:「守ろう地球環境」 †
↑ラジオ †
↑最優秀 <エフエム東京> 日本の名字 †
↑制作責任者:林屋創一
30万種類もある日本人の名字。その中で自然にまつわる漢字を使った姓名の人は多い。中世から続く姓も、明治以降の新しい名字も、元はといえば身近な地形や風景に由来している。祖先たちは、日本の豊かな自然を慈しんで自分たちの名前にまで取り入れてきた。自然の名前を持つものとして、自分たちの名前のオリジンである「日本の風景」がいつまでも変わらないよう願う。身近な題材に着目して、巧みなメッセージを投げかけてくる。
優 秀 <北海道放送> 北海道~寒くたってアイドリング・ストップ †
↑制作担当者:吉田隆志
地球温暖化防止の有効な対策である自動車のアイドリング・ストップを推進する視点から、北海道内の冬期のアイドリング過多状況の打開を呼びかける。ドイツにおける踏切待ち停車の際のエンジン停止の法的義務付けやJAF調査による"排気量1500CCの車の5分間のアイドリングで約160リットルのCO2が発生する"具体例を織り交ぜ、温暖化対策キャンペーンを効果的に訴求している。
優 秀 <エフエム東京> 午前5時の約束 †
↑制作担当者:林屋創一
羽田からプロペラ機でわずか40分の距離にある三宅島は、日本に生息する500種を超える野鳥の半数近くの種類が確認できるバードアイランドでもある。この作品は、早朝の三宅島の野鳥のコーラスをふんだんに聞かせることで自然環境の大切さを実感させ、ナレーションやBGMを極力抑えた構成が、聴取者のイメージを脹らませ余韻を残す内容となっている。
優 秀 <毎日放送> 山の都 大阪 †
↑制作担当者:中村 理
水の都大阪の珍しい山の話。日本一低い4.5メートルの天保山などを紹介しつつ、平気でゴミを捨てる人の心の貧しさ、モラルの低さをいさめ、"山は低いがモラルは高い"とゴミのポイ捨て防止をユーモラスに呼びかける。大阪弁の効果か、辛口の内容ながらいやみがなく、かえって面白く聞かす手法は秀逸である。
優 秀 <朝日放送> レイクパピルス †
↑制作担当者:成宮恒雄
琵琶湖に生える1年草の葦(ヨシ)は、立ち枯れたまま放置すると腐食し水質汚染の原因となるが、レイクパピルスは、この葦を刈り取って原料とした紙。この作品は、琵琶湖の葦が、春に芽を出し冬に枯れるまでの1年間で1本あたり約2トンの湖水を浄化する働きを持つことから、葦原の手入れの必要性をアピールするため、レイクパピルスを使ったコンサートプログラムが発行された実績を題材として、地球環境保護の意識を喚起する。
優 秀 <朝日放送> こんな未来 †
↑制作担当者:成宮恒雄
地球が汚染されてしまった近未来を想定し、かつての美しい自然現象を見知っている祖母へ孫が質問するストリー立て。「空って青かったの」「雪は本当に真白だった?」「もう見れないの」―祖母が遠い過去の空、雪、風などに思いを馳せながら語るその表現が詩的で美しく、あらためて当たり前のように存在している自然のもろさ、大切さを心に刻み込む作品となっている。
優 秀 <山口放送> 鳴き砂の浜が消えてゆく †
↑制作担当者:村田俊子
キュッキュッと音をたてる"鳴き砂"は、ごくわずかなチョークの粉が入ってもその現象は生じない。余りにも環境に敏感で儚いゆえに鳴き砂は美しい海の証しであり、そのつぶやきが汚染されていく海、温暖化による日本の砂浜の危機を必死に訴える。叙情味のあるナレーションと相俟って、貴重な音が効果的に使われ、自然の大切さを優しく謳いあげている。
テレビ †
↑最優秀 <毎日放送> 苦渋の選択・大台ケ原の自然保護 †
↑制作責任者:礒澤亮祐
日本の南限とされる貴重な唐桧(とうひ)が群生する大台ケ原。急速に進む立ち枯れは、今では全体の30%に及ぶ。その原因は、国立公園という安全な楽園で爆発的に増えた鹿が樹皮を食い荒らすため。人間による鹿の駆除が行われている大台ケ原の現状を伝え、自然を守る名目で、もう一つの自然を犠牲にすることが許されるのか、複雑で難しい環境問題が増える21世紀の自然保護のあり方を問いかける。
優 秀 <北海道放送> 小清水原生花園の野焼き †
↑制作担当者:河村 靖
北海道の小清水原生花園では、繁殖力の強い外来植物が繁殖し、貴重な原生植物が減少していってしまった。この壊れかかった原生花園を取り戻すために「野焼き」は始められた。自然を守るために人が火を放つ。一見、矛盾した行為に見えるが、原生花園は確実に再生に向かっている。自然を守るとはどういうことか、そのために人は何ができるのか。人間にとっての永遠の課題を提起する。
優 秀 <札幌テレビ放送> 流氷の天使・「クリオネ」が消える!~温暖化するオホーツク~ †
↑制作担当者:阿久津正行
オホーツク海に押し寄せる流氷は、プランクトンを育み、豊かな海の源である。その流氷の下に生息する「クリオネ」は、神秘に満ちた愛らしい姿から"流氷の天使"と呼ばれ、流氷とともに沿岸住民にとって貴重な観光資源となっている。しかし、地球温暖化の影響で、肝心の流氷が消滅してしまう可能性が指摘されている。"天使の危機"は豊かな海を失う"人間の危機"でもあることを訴える。
優 秀 <IBC岩手放送> 木を植える神父 †
↑制作担当者:角舘郁也
岩手県二戸で45年にわたり布教活動を続けるスイス人神父、シュトルムさんはこの20年間たった一人で山に木を植えつづけている。工事や伐採でハゲ山となった土地に、山から拾ってきた木の実を教会で育て植樹しつづけ、その数は20年間で50種類、5000本にものぼる。森が再生するとともに最初は好奇の目で見ていた地元の人々も、「木を植える神父」としてその活動を認めるようになった。その静かで地道な活動を通して自然と共生することの大切さを伝える。
優 秀 <中京テレビ放送> 北の大地の約束 †
↑制作担当者:伊藤 眞
夏場のアラスカは、動物たちにとって楽園となる。北アメリカのトナカイ「カリブー」も1万頭を超える群れで、子育てにやってくる。一方、人間にとってのアラスカは、アメリカ大陸随一の油田地帯である。楽園を守りつつ油田を開発すること。これが動物たちと人間との約束。そのため、この地を通るパイプラインは、カリブーたちの移動を妨げないよう、地上から持ち上げてある。人間と動物たちとの共生、そのひとつの形を紹介する。
優 秀 <讀賣テレビ放送> 統一キャンペーンスポット「最後の告白」編 †
↑制作責任者:吉川秀和、盛 敏隆
日本では現在2人に1人は携帯電話を持っている。その一方で次々と新しい便利な機能やデザインを持つ新機種が登場し、短いサイクルで使い古され、捨てられている。携帯電話の廃棄物の山は何の利用価値も無いように思われるが、実はその基盤およそ7万台分からは金1kg、銀7kgがとれる。作品では打ち捨てられた携帯電話が「体の中は宝物」と最後のメッセージを残し、便利さの陰に見落とされている事実に迫る。
優 秀 <讀賣テレビ放送> 統一キャンペーンスポット「ちょうちょ、緊急避難中」編 †
制作担当者:吉川秀和、盛 敏隆
九州以南にしか生息しないはずの亜熱帯性の蝶、「ナガサキアゲハ」が奈良県明日香村でもここ4、5年頻繁に見られるようになった。地球の温暖化により生息地を徐々に北上させてきたのだ。過去50年間の温暖化のスピードは従来の8000年分の変化に相当するという。身近に見られる動植物の生息にも確実に変化をもたらしている事実を題材に、地球への警鐘を静かに奏でる。