一般社団法人 日本民間放送連盟

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表彰番組・事績

日本民間放送連盟賞/2002年(平成14年)入選・事績

平成14年日本民間放送連盟賞 ”NAB Awards 2002” 入選・事績

日本民間放送連盟賞は12年度から次のように変更されています。

  1. 番組部門の種目中、ラジオ・テレビとも「娯楽番組」を「エンターテインメント番組」と改称しました。
  2. CM部門のテレビについて、第1種・第2種を併せて一本化しました。

番組部門

ラジオ報道

最優秀 <山梨放送> ラストパスをください~血液難病治療の現場から~

P:児玉久男 D:荻野弘樹、小沢睦美 出演:大柴堅志 

自社のアナウンサーが急性骨髄性白血病のため43歳で急死した。このことをきっかけに企画したキャンペーンの一環として、血液難病とは何か、骨髄移植とは何かをわかりやすく解説しながら、患者さんのメッセージを交え、ドナー登録を呼びかける報道番組。事前取材とライブとのバランスもよく、複雑で難解な社会的テーマをわかりやすく、また、ドラマ性も織り込むことで飽きることなく聴かせ、山梨県民のバンク登録への意識の低さや施設不足を訴える、地域メディアとしての「ラジオ」の特性が遺憾なく発揮された作品。

優 秀 <北海道放送> HBCラジオドキュメント 沈黙の闇~札幌・小学生行方不明事件~

P:五十嵐浩二 D:神原康行 N:田村英一 技術:小沼 秀

18年前に札幌で発生した小学生行方不明事件の女性被告は黙秘権を行使した。被害者の両親は、真実を知ることを阻まれた。黙秘権という憲法で保障された人権が時として犠牲を強いること、裁判が「証拠による事実認定の場」であることの社会的不条理を浮き彫りにし、日本の司法、刑事事件の問題点を炙りだした作品。事件の丁寧な調査と取材、巧みな構成が評価される。

優 秀 <ニッポン放送> ニッポン放送 スーパーステーション『命宿る日まで~体外受精の最前線』

D:森田耕次、杉本さつき N:松岡洋子 構成:外山信行

将来の体外受精のため卵子を凍結保存した難病の女子高生、第三者からの卵子提供による体外受精で出産した高齢女性、さらに卵子提供を斡旋する業者らの貴重な証言インタビューで構成。体外受精を中心に近年急速に進歩する生殖医療の現状と同時に、法整備が追いつかない日本の問題点を指摘する。視点が明確で番組としてのまとまりがあり、登場する女性達が語るストーリーに思わず惹き込まれる。

優 秀 <北日本放送> 漂う一票 -痴ほう性老人と選挙権-

P:尾崎義文 D、構成:宮腰昌隆 N:伊藤惣一  

昨年10月、人口29,000人ほどの富山県の町で町長選挙が行われた。ところが選挙から12日後、わずか8票差で落選した候補者が特別養護老人ホームにおける疑惑を告発した。重い痴ほうのお年寄りが入所する特養での投票率は100%。投票ははたして有効か無効か――。日本の高齢化社会と並行して今後ますます重要性が指摘されるテーマ選びの良さと、真の民主主義とは何かを、いずれ老人になる万人のリスナーに問いかける秀作。

優 秀 <朝日放送> ドクターのいない夜~小児科救急は今

P:道勇嘉彦 D、構成:佐々木安博 N:堀ちえみ 技術:小西剛生

小児科救急が急減しているのは近年の少子傾向によるものでなく、小児科の保険点数の低さによる不採算性や小児科医不足などが原因で、待ち時間に反比例した簡略な診察に不満を募らせる親たちと、過酷な労働を強いられる小児科医との悪循環は加速している。医師、親、行政担当者のインタビューを通じ、社会的構造から個人レベルの問題点までが満遍なく盛り込まれ、構造と現象を双方向に捉えた手法が高く評価される。

優 秀 <中国放送> イギジャ~韓国人・元徴用工被爆者裁判~

P:大原健嗣 D、構成、脚本:三村千鶴 N:山原玲子  

戦時中、朝鮮半島から広島に強制連行され、三菱重工業で徴用工として過酷な労働を強いられ被爆した韓国人たちが、1995年、未払いとなっている賃金の支払いを国と会社に求めて裁判を起こした。「三菱広島元徴用工被爆者裁判を支援する会」のメンバーである日本人教師の支援活動と裁判の過程を丁寧に追い、戦後補償という日本人にとって避けて通れないテーマを正面から取り上げ、戦争を知らない世代にもわかりやすく伝えている。

優 秀 <九州朝日放送> 殺人犯を養子にして 犯罪被害者を癒すために

P:近藤久夫 D:野村友弘 N:奥田智子 構成:臼井賢一郎

一昨年、佐賀市で起きた殺人事件の控訴審で、被告の減刑を求める異例の嘆願書が、被害者の遺族から提出された。その裏には、面識のなかった被告を養子にした女性が、遺族の怒りを聞き、心の傷に耳を傾け、そして和らげるという地道な努力があった。被告に認められた権利に比べ、犯罪被害者たちの救済や権利はあまりにも不十分。犯罪と被害者の救済・癒しにスポットを当てた意欲作。

ラジオ教養

最優秀 <九州朝日放送> ニワトリからの贈りもの~熱血先生、生命(いのち)の授業~

P:脇水謙一、笹栗哲朗  D:大迫順平 録音:橋山武史  

高校生がニワトリを育て、最後は生徒自らがさばいて食べる「生命の授業」。子どもたちに何とか命の尊さを教えようと、久留米筑水高校の高尾忠男先生が企画した授業である。ニワトリの成長とともに膨らんでいく生徒たちの心の葛藤。「命を学ぶためにニワトリを殺すなんて、どこか矛盾している」と訴える生徒たちの反発を、高尾先生は真正面から受け止める。音声に臨場感があり、番組を聴く人にも"命とは何か""生きた教育とは何か"を問いかける。

優 秀 <青森放送> RABラジオドキュメント おじぎ草の我が人生~詩人・桜井哲夫のまほろばは

P:小田桐信子 D、N、構成:三浦明子 出演:桜井哲夫、金 正美  

青森県北津軽郡鶴田町生まれの詩人、桜井哲夫さんは17歳でハンセン病と診断され、群馬県吾妻郡草津町にあるハンセン病施設栗生楽泉園に入所した。桜井さんは不自由な体になりながらも、ふるさと"津軽"への思いを詩で表現してきた。桜井さんと「孫」として付き合いを続けている在日コリアン三世の金正美さんの話も交え、桜井さんの心の軌跡をたどる。桜井さんの詩と声を通じて感動が伝わってくる作品である。

優 秀 <ミュージックバード> 松本英彦追悼特別番組 松本英彦フォーエバー・イン・鳥取

P、D、構成:岩崎育郎 N:永田実  

亡くなって2年、テナーサックス奏者の松本英彦をしのぶ声はいまも絶えない。ジャズテナーの巨人というイメージが強い松本英彦だが、実際は音楽を分け隔てなく愛し、貪欲に未知のジャンルに挑戦し続けた。松本の晩年における童謡唱歌への取り組みに着目し、音楽を通して次の世代に伝えたかったことを探る。松本英彦の多岐にわたる活動を、ジャズを中心にわかりやすく描くとともに、ミュージシャンとしての人物像も的確に表現した。

優 秀 <山梨放送> 巻上公一の極楽声帯紀行

P:児玉久男 D:荻野弘樹 N:浅川初美 出演:巻上公一 

テクノポップバンド「ヒカシュー」のボーカリストとして活躍する一方、声の可能性を求めて活動を続けてきた巻上公一さんが、世界各国の「声の芸術」を紹介する。南シベリアのトゥバ共和国に伝わる1人二重歌唱法の「ホーメイ」(喉歌)、イタリアのコーラスグループの即興カンツォーネなどを例に、頭で考えるのではなく、「声」そのものを楽しむ方法を提案する。声の可能性を実感できる構成で、番組テーマが的確に表現されている。

優 秀 <中部日本放送> その日まで~暁学園 祖父江文宏の24年

P:羽雁 彰 D:山室雅子、長谷川達也 TD:舘 一孝 

児童養護施設暁学園には、2歳から17歳までの50人の子どもたちが共同生活を送りながら、自立の道を模索している。7割が親の虐待を逃れてきた子どもたち。子どもたちから「園長スケ」と呼ばれている祖父江文宏園長は、心に傷を負った子どもたちすべてに温かいまなざしを送る。「今、目の前にいるこの子を救わなければ、おしなべてすべての子どもの幸せなんてない」。登場人物のひとつひとつの言葉が印象深く感動的な作品。

優 秀 <朝日放送> きづきの瞬間(とき)~ボランティアの向こう側に~

P:塩浜昭男  構成・脚本 奥村康治  N、出演:笑福亭銀瓶  出演:岩崎なおあき 

ボランティア活動についての議論が盛んな今、なぜボランティアにこんなに多くの人々が関心を寄せるのか、という疑問を出発点に、落語家、タレント、アナウンサーがさまざまな角度から考察する。さらに、ボランティア活動を実践している人々にインタビューを試み、その活動の裏側にある原動力を探った。「ボランティアは良いこと」だけで終わらせずに、それぞれのボランティア観を素直に表現しており好感が持てる。

優 秀 <山陽放送> 神懸り・神楽のルーツを求めて~神崎宣武のライフワーク~

P:石野常久 D、N、構成:中尾俊直 出演:神崎宣武、李 相日 

「人々の暮らしと文化の成熟」をメインテーマに研究を続けている民俗学者の神崎宣武さんは、研究生活の集大成として、現在、備中神楽のルーツを探ることに専念している。また、韓国の民俗学者との交流を通じて、韓国の民俗芸能と神楽の共演、シンポジウムを成功させた。神崎さんの神楽のルーツ探しは、忘れられようとしている昔と今を繋ぐ作業である。日本人の原風景を探るという壮大なテーマに挑んだ意欲作。

ラジオエンターテインメント

最優秀 <毎日放送> MBSドラマの風「夜の取調室」

P、D:柚山康彦 出演:南条好輝、紅 萬子  原作:藤本義一

藤本義一氏の戯曲「男女浮世回舞台(おとことおなごのいろごといろいろ)」をドラマ化。ホテルで腹上死した老人をめぐって取り調べを受ける中年娼婦と刑事。かみ合わない2人の会話が進むうち、亡くなった老人の日常生活が浮かび上がる。テンポある台詞回しで、深刻な老人問題の一端にもさりげなく触れる人情コメディーとして、完成度の高い作品に仕上がっている。2001年4月から週1回の60分ドラマ枠を設け、継続してドラマ制作に取り組む放送局の姿勢も高く評価される。

優 秀 <青森放送> 伊奈かっぺいとおかしな仲まツ in むつ 公開ラジオドラマ ひとつ積んではわれのため

P:鳴海征子 D:渡辺英彦 演出:佐藤元伸  脚本:畑澤聖悟 

日本3大霊場の一つ、恐山があるむつ市で、"イタコの口寄せ(降霊)"をテーマにした公開ラジオドラマを収録。男イタコを生業とする伊太郎が、インチキな口寄せで悲喜劇を巻き起こす。会場に集まった1,000人の観客は、時に効果音作りに参加し、一体となってドラマを盛り上げる。伊奈かっぺい氏ら出演者が駆使する方言の魅力も満載。公開ドラマという企画が功を奏し、会場の楽しげな雰囲気を味わうことができる。

優 秀 <ビー・エス・コミュニケーションズ> ラ・カンパネラ~鐘のある音景(けしき)

P、D:小西勝明 N:白川次郎  音響:光石 誠  出演:神田 紅

東西の様々な場所で親しまれ、生活のリズムを刻みながら、人々の暮らしを彩ってきた鐘。番組では、古今東西の文学や芸能を織り込みながら、フジコ・ヘミングが奏でる「ラ・カンパネラ(小さな鐘)」とともに、時を超え、海を越えて鐘を巡る旅を綴る。鐘の音の違いで東西文化を比較する試みが興味深く、高音質で展開するBSデジタル放送の特性を生かした意欲的な作品。

優 秀 <FM NACK5> J-POPスクールスペシャル~浦和ロック伝説~

P:田中秋夫 D:谷 朝美 N:坂崎幸之助 構成:田家秀樹

1970年代初頭、日本のロックミュージック黎明期に、埼玉県浦和市(現さいたま市)を舞台に、自分たちの音楽を通して時代にメッセージを発信しようとした若者たちのドキュメント。イベント企画・主催に取り組んだアマチュア集団「浦和ロックンロールセンター」の主要メンバーや、イベントに参加したアーティストらのインタビューを中心に、当時のライブ音源を交えて構成。丹念な取材で、関係者の情熱を思い起こさせる力作。

優 秀 <北日本放送> 音楽プロデューサー須藤晃スペシャル「みんなノイズを聴きたがる~UNDER CURRENT・歌の奥に~」

P、出演:須藤 晃 P、D、構成:上原 誠  N:金田亜由美  聞き役:渡辺一宏

人々はきれいな音でなく、レコードから伝わるアーティストの人間味ある部分や、レコーディング時の空気感=ノイズを聴きたがっているのでは――。音楽プロデューサー須藤晃氏が、音楽を通じて目指したことや伝えたかったことを、自身が手がけた故・尾崎豊氏、故・村下孝蔵氏、玉置浩二氏、浜田省吾氏の楽曲とともに綴るエッセー的な番組。歌は大切なことを伝えるためにあるという須藤氏の想いが、率直な語り口から印象深く伝わる。

優 秀 <南海放送> 夏井いつきの一句一遊

P:田中和彦 D、構成:矢野浩美 出演:夏井いつき、藤田晴彦 

朝ワイドのコーナー番組として2001年にスタート。一つの季語をお題として一般から俳句を募集、全国区の新進俳人として活躍する夏井いつき氏が選句して紹介する。月曜は誰もが思いつくような「類想類句」に喝を入れて指導、火・水曜はややレベルが高い句を紹介、木曜は俳句講座やフリー企画、金曜は優れた句を紹介し、最優秀の一作品となる「天」の句を選ぶ。夏井氏の細やかな感性が、辛口批評と裏腹に聞き手を暖かく包み込む。

優 秀 <長崎放送> 武智船長漂流記~人間、なかなか死なないもんだ

P:中村 毅 D:松本篤彦 N:寄川淑仔 語り:中尾 恕

船は2001年7月20日に長崎県の崎戸港を出航したが、エンジントラブルに見舞われて漂流し、8月26日には千葉県の犬吠崎東方沖にあった。救出された漁船「繁栄丸」の武智三繁船長。番組では、武智船長自身が、生死の狭間を体験した漂流時の様子や当時の心境を、淡々と、時にユーモラスに振り返る。その飄々とした語り口からは、奇跡的に生還した直後に「なかなか死なないもんだ」と言わしめた武智船長のユニークな人柄が感じられる。

ラジオ生ワイド

優 秀 <IBC岩手放送> 幸見の週刊おじさん白書

P:村上憲男 D:中村好子 パーソナリティー:菊池幸見 

日曜の午後12時30分~2時30分放送。「釜石シーウェイブス」の応援コーナー、地元書店の店長たちが本の紹介をする「おやじのベストセラー」、方言により綴られた詩を朗読する「方言詩の世界」などバラエティー豊かなコーナーに加え、リスナーからのメールに直接電話で答え「生」の声を届けている。また、プロ野球などのスポーツ経過を随時挟み込むことで「静」と「動」が共存し、教養と郷愁と趣味が鼎立する構成は見事。

優 秀 <ニッポン放送> 西川貴教のAll Night Nippon SUPER!

D:岡部 豊 N、出演:西川貴教 構成:石川昭人 ゲスト:児玉 清

火曜の午後10時~午前0時放送。パーソナリティー西川貴教が理想の父親として尊敬する児玉清氏をゲストに迎え、10代のリスナーと「父親とは何か」「家族とは何か」を考える。普段とは違う"大人のゲスト"児玉氏の説得力ある言葉に10代のリスナーからの反響も多く、深夜番組の定番「オールナイトニッポン」がより良い大人へと導く重要なメディアであることを再認識させる。最後までリスナーを引っ張ってゆく力がある。

優 秀 <長野エフエム放送> 小林夏樹「BE UP! MORNING」

P、D、構成:坂井一正  出演:小林夏樹  レポート:高寺直美 

金曜の午前7時30分~10時50分放送。この日はパーソナリティー小林夏樹の故郷・木曽にちなんで「信州の森と木」がテーマ。木曽漆器を給食で利用する地元小学生や木曽ヒノキの育林に従事する方たちのインタビューなどを盛り込み、小林の目線から森林の役割や木材の重要性が伝えられる。鳥の声やBGMも効果的。作り手のメッセージが明確で、パーソナリティーの力量が遺憾なく発揮された秀作である。

優 秀 <東海ラジオ放送> 宮地佑紀生の聞いてみやーち

P:徳丸敦也 D:早川貴嗣 出演:宮地佑紀生、神野三枝 

月~金曜の午後1時~4時放送。日常生活で何気なく使われる「言葉」の中からテーマを設定し、個性あふれる2人のパーソナリティーがスピード感たっぷりの名古屋弁でリスナーのFAX、メール、ハガキにコメントする。今回のテーマは「甘やかし過ぎだわ~」。パーソナリティーのテンポとパワー、芸の域に達しているしゃべりで駆け抜ける3時間は圧巻。その自由奔放な構成で、ラジオの特性を際立たせていると言える。

優 秀 <ラジオ関西> 王様ラジオキッズ

P:吉田秀子 D:池添哲也  出演:木村三恵  ゲスト:和泉智子

日曜の午後2時~4時放送。行楽帰りの車中で退屈をもてあそぶ幼稚園児から10歳までをメインターゲットに据えた作品。手塚治虫のリボンの騎士を紹介した「王様!名作劇場」、キッズリスナーのクイズ対決「王様決定!クイズ大会」、さらに「お父さん・お母さんが子どものころ好きだった曲ベスト10」など親子で楽しめるコーナーが満載。斬新な視点で企画の独自性を有しているだけでなく、生ワイドとしての完成度でも高評価を得た。

優 秀 <西日本放送> 情報てんこもりラジオでドン

P:枝園文彦 D:片岡三佐子、村上洋子  出演:笑福亭学光ほか

月~金曜の午後1時~4時20分放送。瀬戸内海の島を巡るシリーズ第一弾、高松港から見える男木島が今回の舞台。島のシンボルである灯台の紹介、漁師さんや郵便配達をしている女性へのインタビュー、段々畑や石段の様子のレポート、腹話術による小学生との交流など、パーソナリティー笑福亭学光が肌で感じた島の温もりと島ならではの時間の流れが伝わってくる。都会の喧騒を一瞬忘れさせてくれる作品である。

優 秀 <宮崎放送> GO!GO!ワイド

P:湯浅和憲 D:藤澤賢太郎 出演 川野武文、坂井淳子 

月~金曜の午後1時~5時5分放送。看板コーナーの一つ「けんかでGO!GO!」では、2人のパーソナリティーが一つのテーマでトークバトルを展開。リスナーにどちらに賛成か投票してもらい、結果発表で勝者およびリスナーの意見を紹介する。農作業中の人、外回りの営業マン、家事の手を休めた主婦などさまざまなシチュエーションで、ラジオを聴いている人々にAMラジオを身近に感じさせる、スタジオ生ワイドの代表的な作品。

テレビ報道

最優秀 <毎日放送> 映像'01 出所した男

P:山本利樹 D:里見 繁 N:西 靖  カメラ:荒 利幸 

殺人事件の犯人として、懲役10年の刑期を満了した男が出所した。彼は初犯、模範囚でありながら、裁判から服役中も一貫して「無罪」「えん罪」を訴えていたため、刑期が満了するまで服役することとなってしまった。法治国家日本の捜査機関と司法システムの問題点を、出所したひとりの男性の闘いを通じて鋭く追及した番組。関係者へのち密な取材を通して、誰にでも起こりうる「えん罪」への構造を明らかにしていく完成度の高い作品である。

優 秀 <札幌テレビ放送> カニが消える…密輸ビジネスの実態

P:五味 宏 D:山内康次 N:工藤準基 海外コーディネート:ウラジミール・ラブリネンコ

2000年にロシアから輸入されたカニは日本の統計で86,000トン、ロシアの統計では3,000トンと約28倍もの開きがある。ロシア当局によるたび重なる「密輸が行われている」との指摘を日本側は黙認してきた。結果、カニの価格は急落し、国内業者を圧迫。一方、ロシア船による乱獲でカニ資源は枯渇寸前の状況だ。不正の構造を追及するだけではなく、水産資源保護、日本人の「食」の問題などを幅広く社会に問いかける力作。

優 秀 <フジテレビジョン> 眠れない3歳児・感動の看護婦最前線16

P:黒岩祐治、中嶋常人  D:半谷加代子

眠ると呼吸が止まってしまう難病「中枢性低喚気症候群」に苦しむ3歳児・伊藤翔吾君。眠るときには人工呼吸器を装着しなくてはならない。難病に苦しむ家族に、父親のリストラ、家庭内不和、保育園探しの難航など、さまざまな問題が襲いかかる。取材班は、家族との信頼関係を構築した上で1年半にわたり長期密着取材を行った。病状のみならず、難病を抱える家族を取り巻く社会の現実をも映し出す、優れたドキュメンタリー番組となっている。

優 秀 <新潟放送> 公約~検証・十日町市長選挙~

P:大沢道義 D:土田匡志 N:田巻直子  構成:宮島敏郎 

有権者が判断を下す最大のポイントである公約。新潟県十日町市長選挙では「温泉施設は作らない」ことを公約に掲げた候補が当選したが、その後、市議会の反対から公約を撤回した。破棄された公約の責任は誰にあるのか。日本の典型的な地方選挙を「公約」という切り口から迫り、民主主義制度のあり方をあらためて問い直すとともに、地方の政治構造の問題点についても一石を投じる意欲作である。

優 秀 <富山テレビ放送> 投票しますか~特養老人ホームと選挙~

P:中西 修 D、構成:小島裕一 N: 坪井章子 

富山県入善町長選挙はわずか8票差で当落が決まった。選挙結果に不服の候補者が、特別養護老人ホームでの不在者投票に異議を申し出る。特養では職員が痴呆性老人の投票意思を確認のうえ投票するが、同ホームにおける投票率は100%。県選管はありえない投票率であるとして「選挙無効」の裁決をくだした。投票意思を判断する基準はいまだない。高齢社会を迎える日本における現実的な課題を、巧みな構成で視聴者に問いかける秀作。

優 秀 <山陽放送> 生きとった証し

P:曽根英二 D:萩原雅恵 N:森くにえ 撮影:宮崎 賢 

ハンセン病患者の宇佐美治さんが、岡山県邑久町長島国立ハンセン病療養所「長島愛生園」で暮らしはじめて53年。園内の建物を借りて小さな資料館を作り、隔離の歴史を伝えている。あきらめた初恋、家族との別離など、宇佐美さんの実体験を通してハンセン病患者苦難の歴史を伝えるとともに、今を生きる患者たちの苦悩も描き出す。ハンセン病問題をあらゆる角度から浮き彫りにした取材力、構成力が評価できる。

優 秀 <琉球朝日放送> 告発~外務省機密漏洩事件から30年 今語られる真実

P:仲里雅之 D:土江真樹子 N:浜田治貴 構成:野澤和之

沖縄本土復帰返還交渉に隠された密約を暴いた新聞記者、西山太吉さんは、情報の入手方法をめぐって有罪判決を受け、ジャーナリズムの世界から追われていった。あれから30年。沈黙を貫いてきた西山さんが当時伝えたかった密約の真実を、豊富な資料と関係者へのインタビューにより明らかにしていく。粘り強く綿密な取材によって明らかにされた事実が、今なお残る沖縄や日米外交の問題点をあらためて認識させる。

テレビ教養

最優秀 <RKB毎日放送> 炭坑美人~闇を灯す女たち~

P:木村栄文 D:渡辺耕史 撮影:森永浩司  編集:平山誠一

わが国の近代化や戦後復興を支えた炭鉱が次々と姿を消し、人々に忘れ去られようとしている。その炭鉱で働く女性たちがいた。男たちとともに地底をはいずりまわり、想像を絶する過酷な労働に従事してきた彼女たちは、今、70~90代。しかし、その表情からは「誇りと思っちょりますけん」と、魅力的に齢を重ねた元炭坑婦たちの力強く底抜けに明るい人生が伝わってくる。石炭産業の歴史の裏面を記録するのみならず、今を生きる日本人へのメッセージにもなっている。

優 秀 <テレビ岩手> NNNドキュメント'01 貧乏に幸あり ガンコ親父と7人の子どもたち

P:村田憲正  D:遠藤 隆  N:平野 文  構成:佐藤幸一 

冬には氷点下15度にもなる岩手県田野畑村で、夏も冬も牛を山に放つ自然農法「山地酪農」を営む吉塚さん一家。経済的に苦しい中、大家族が力を合わせ、父のこだわり農法を支える。理想を追求する父の厳しさと愛情が、子どもたちを大きく成長させていく。7年間にわたる長期取材を通して、物の豊かさでは得られない、心の豊かさを視聴者に問いかける。現代日本の失われた生活をさわやかに、心地よく伝えてくれる。

優 秀 <BS朝日> 宿命の越境者 イサム・ノグチ~ドウス昌代が辿った6年の軌跡~

P:斎藤裕彦、加納 満  D:木原 均  構成:岩井田洋光

世界中で彫刻、庭園造りなどに大きな足跡を残した日系芸術家、イサム・ノグチ。日米の混血児として生まれたイサムは、日米どちらの世界からも"帰属"を拒まれ、その狭間で生きることを余儀なくされた。そのイサムの生涯を、自身もアメリカに渡り自分とは何かを問い続けた作家、ドウス昌代が辿る。綿密な取材と美しい映像によって、彼の数奇な運命や作品を分かりやすく伝える、クオリティーの高い番組となっている。

優 秀 <信越放送> SBCスペシャル「漂流カゾク~日系ブラジル人の今」

P:善財 優  D:窪田 勝  N:三島さやか

長野県に住むブラジル人は2万人に及び、その数は10年前の100倍にも膨れ上がっている。しかしながら、行政も地域社会も受け入れ態勢が整っているとは言えず、上田市役所で外国人相談窓口を担当する掘之内テレーザさんのもとには相談が絶えない。日本に来たブラジル人の子どもの3人に1人は未就学の状況にあると言われる。解消されない言葉の壁、地域社会との壁を、粘り強い取材によって浮かび上がらせた秀作。

優 秀 <北陸放送> ふるさとのレール~輪島穴水間廃線・線路がつなぐ物語~

P:西川嘉一 D:中崎清栄 N:上原一美 構成:辻本昌平

年間約1億円の赤字を抱えた奥能登「のと鉄道」輪島―穴水間の廃線が決まった。ふるさとを離れていく高校生、働くことを生きがいとしている荷担ぎのおばちゃん、年々寂れていく町を少しでも明るくしようと努力する地元の人々――。さまざまな思いをレールで繋いで、過疎地に暮らす人々の生活と思いを伝える。深刻なテーマを、ユーモアと巧みな構成力で表現している。

優 秀 <毎日放送> 映像'02 つれあい~丹後・味土野(みどの)物語~

P:山本利樹 D:井本里士 N:石田敦子 カメラ:宮下正幸

わずか5戸7人が暮らす過疎の村、京都府弥栄町味土野。この地で自給自足の生活を送るかたわら、障害者のボランティアを続ける梅木好彦さんと、重度の障害を持つ辻本久代さんは互いに惹かれあい結婚することとなった。味土野の厳しくも美しい自然を背景に、夫婦の心のふれあいを描く。暗くなりがちな問題を細やかに表現することにより、現代のおとぎ話のような、ささやかな幸福感を与えてくれる作品。

優 秀 <岡山放送> 近くて遠い空~タンチョウと飼育員の3,600日~

P:三村公人  D:太田和樹  N:藤田淑子  構成:高橋 修 

タンチョウは自然界での生息数が世界でわずか2,500羽ほどに過ぎない希少な鳥である。番組では、岡山県の自然保護センターで、タンチョウを大空に帰す活動に取り組む井口萬喜男さんを追った。野生復帰への鍵は「人間との共生」。人間とタンチョウとの接点から、現実社会のさまざまな問題が浮かんでくる。美しい映像とタンチョウの野生復帰への取り組みを通じて、人間社会の問題や心の豊かさとは何かをあらためて考えさせる。

テレビエンターテインメント

最優秀 <テレビ西日本> 日韓親善ライブ 笑ってチョゴリ!

P:清水 徹  D:生駒央正  構成:元祖爆笑王  脚本:清水 東 

2002年は日韓共催のサッカーワールドカップ開催の年であり、日韓両国の友好関係はますます深まっている。しかし映画、音楽などと比べ、いまだ相互に伝わっていないジャンルが「お笑い」。日本のお笑いが韓国に受け入れられるかどうかを試すべく、ポカスカジャン、いつもここから、アメリカザリガニの3組のお笑いタレントが韓国へ渡り、現地の人たちの前で韓国語のお笑いライブを敢行する。2002年の"いま"を伝えるにふさわしいエンターテインメント番組である。

優 秀 <青森放送> 盲目の名馬 タカラコスモス

P:橋本康成 D:本宮修司ほか N:秋山博子

青森県立三本木農業高校馬術部に盲目の馬がいる。数年前まで大学馬術界で知らない者はいないほどの名馬だったタカラコスモス。4年前に病気で失明し、処分される運命だったこの馬を三本木農業高校で引き取ったのだ。タカラコスモスの世話を1年の時から任された女子部員の成長を、馬との交流を交えながら描く。母親となった馬と、世話をしている少女の気持ちのふれ合いを表現して好感が持てる作品。

優 秀 <東京放送> 世界ふしぎ発見!

P:重延 浩  D:本郷幸高、斎藤龍太  構成:藤岡俊幸   

「世界ふしぎ発見!」は、我々の祖先が作り上げてきた偉大な歴史の遺跡や遺産を世界中で取材し、そのすばらしさや不思議を紹介するドキュメンタリー番組であると同時に、その歴史をわかりやすくクイズ形式に仕立てたバラエティー番組である。プレインカ篇の今回は、インカ帝国を「冒険」というキーワードで取材した。映像の美しさ、レポーターの取材など、構成が洗練されていて完成度が高い。

優 秀 <信越放送> SBCスペシャル なんだ?なんだ!なんだ!!信濃の国

P:善財 優  D:笠原公彦  N:坂井志満  出演 伊奈かっぺい

長野県には大人も子どもも、県民のほとんど全員が歌うことのできる「信濃の国」という歌がある。102年前に作られたその歌は、歌詞が難しいうえに6番まであるにもかかわらず、結婚式、同窓会などことあるごとに歌われている。どうしてそこまで、長野県人はこの歌が好きなのか。歌の生い立ち、歌詞、メロディー、長野県の特異性などさまざまな角度から面白く、まじめに考える。歌を通じて、長野県の県民性をうまく表現している。

優 秀 <中部日本放送> 鉄くずキラリ

P、D:藤井 稔  N:平畠啓史 構成 松永英隆 出演 鈴木俊輔 

世の中には役立たないロボットを作り続ける61歳の男性。山の中の工場で、ひとりっきり、鉄くずを使って作っている。ヒマがあるといつでも好きなハーモニカを吹いている。「好きな時に、好きなことを、好きなだけやる」――ただ、それだけ。生きがい探しに苦心する現代日本の中高年。ひょっとすると、ひとつの理想形なのかもしれない。取材対象の男性と制作者との距離感が絶妙で、番組のメッセージも心地よく感じられる。

優 秀 <朝日放送> オレ達のいちばん長い日~M-1グランプリ・若手漫才の頂点を目指して~

P:島海久慎、簾畑健冶、谷 良一  D:辻 史彦 

若手漫才師の№1を決める「M-1グランプリ2001」が昨年12月に行われた。参加資格は、「コンビ結成から10年以内」の一文だけ。全国で1,603組が栄冠を目指したが、決勝には中川家、ますだおかだなどプロの漫才師10組が顔を揃えた。生放送、ゴールデンタイムの全国ネット。そこは若い彼らが今まで経験したことのない過酷な戦場だった。若手漫才師たちの舞台では決して見せない緊張や苦悩をリアルに伝えている点が評価される。

優 秀 <南海放送> クマガイ草~小さな村の小さな奇跡の物語~

P:大西康司  D:寺尾 隆  N:永江孝子

人口わずか270人あまりの西日本一小さな村、愛媛県宇摩郡別子山村。この村で「クマガイ草」という、山から姿を消しつつある花を咲かせる1人の老人がいる。92歳の近藤清さんは、一杯の焼酎を楽しみ、畑を耕し、汗をぬぐい、40年間、花を育て続けている。そしてその花を見るために1年に1度、2,000人もの人が村にやってくる。40年間もの営みと近藤さんの人間的な魅力が、印象的な映像で映し出されている。

テレビドラマ

最優秀 <毎日放送> 毎日放送開局50周年記念 ドラマスペシャル「ごきげんいかが?テディベア」

P、D、脚本:薮内広之  撮影:山田 央  演出補:竹園 元   美術:内田公幸

母を突然喪ったことで家に引きこもっていた高校生の娘が、その喪失感を埋めるために旅をし、その中で成長していく姿を描く。娘が訪ねる先は、母の遺志により脳死による臓器移植が行われた人たち。HDカメラを用いながら、脳死臓器移植時の実写風映像を埋め込んだり、メインキャスト以外の登場人物に設定どおりの素人を起用するなど、ドキュメンタリーを意識したつくりが成功している。セリフの少ない脚本を、主役の山田花子、その父の大杉漣、心臓の移植を受けた女性の手塚理美らが好演する。脳死臓器移植やテレホンクラブなど現在的なトピックスを背景に用いながら、命とは何かという普遍的なテーマを考えさせる見事な作品である。娘が、母の心臓をもらった女性と出会う場面は感動的だ。

優 秀 <東京放送> 日韓共同制作ドラマ「フレンズ」

企画:貴島誠一郎  D:土井裕泰  脚本:岡田惠和  出演 深田恭子ほか  

韓国と日本のごくごく普通の若い男女のラブストーリーを、日本と韓国のスタッフが共同制作した記念碑的作品。香港で偶然出会った2人は、言葉も通じないなかで何かを感じあう。深田恭子が演じる日本女性は韓国語を学んで、ウォンビンが演じる韓国人男性とメールを交換していく。いくつかのすれ違いを経ながら関係を深めていく2人。深田恭子の健康的な魅力と、日韓の溝を感じさせない軽やかなストーリー展開が、新しい時代の始まりを予感させる。

優 秀 <WOWOW> TOYD(トイド)

監督:森 淳一  脚本:香川まさひと  撮影:柳田裕男  出演:内田剛志、櫻井淳子  

近い将来、現実に起こるかもしれない身近な恐怖を題材としたミステリーホラー。タイトルのTOYDはロボットの名前で、胎児をイメージさせるその不気味な造形が番組全体のトーンを象徴している。小学校6年生の充は、携帯電話を使って遠隔操作できるTOYDを高圧電流が流せるように改造し、自分を虐待してきた母を殺す。その充を追う刑事と、充の友達でもある彼の娘、その親子関係にも大きなひびが入っていた。児童虐待を題材に、人間があたかもロボットであるかのように扱われる現代社会の歪みが透けて見える。

優 秀 <中部日本放送> 山田太一スペシャル「再会」

P、D:山本恵三  脚本:山田太一   出演:長塚京三、倍賞美津子

夫と2人の子どもを捨てた妻が、6年後突然家族の前に姿を現す。6年の間に、自衛隊のブルーインパルスのパイロットだった夫は警備会社の教官に、15歳だった息子は葬儀会社の社員に、娘は結婚して小さい子どもを抱えて育児に奮闘中。妻の再婚相手は死去していた。家族の会話が見事にセリフ化され、夫婦の距離感の微妙な変化を長塚京三、倍賞美津子の2人が好演する。一度別れた夫婦が、再度家族になろうと決意するまでの過程を通し、改めて日々の暮らしが持つ微妙な味わいを表現した秀作である。

優 秀 <名古屋テレビ放送> 名古屋テレビ開局40周年記念 SABU~さぶ~

P:原口 淳、池上 司  監督:三池崇史  脚本:竹山 洋

表具職人の栄二とさぶは、江戸下町の経師屋で幼い頃から住み込みで働き、兄弟以上の信頼関係と友情を育んできた。ある時、盗みのぬれ衣を着せられた栄二は人足寄場送りになってしまう。寄場の中でもがきながら成長していく栄二、その栄二に変わらぬ信頼を寄せるさぶと、栄二に思いを寄せる2人の女性を中心とした若者群像が、清新な感動を与える。藤原竜也、妻夫木聡、田畑智子、吹石一恵の4人を起用し、山本周五郎原作の時代劇を若者向けのドラマに仕上げた演出の力量が素晴らしい。

優 秀 <朝日放送> 時効~流氷に消えた最愛の逃亡者~

P:深沢義啓、古賀正行  監督:村田 忍  脚本:安井国穂

ドラマは、少しずつ明らかになる殺人の動機を縦軸に、殺人犯と彼の娘、彼を追う刑事の3人の人間模様を横軸に展開する。刑事は殺人犯を追いながら、父に代わって娘の成長を見守る気持ちにもなっている。「時効」を目前に明かされる殺人の動機は、違法な脳死臓器移植で娘を助けた医者をかばうことであった。渡瀬恒彦、岡本綾、藤竜也の俳優陣に、緻密に構成された筋立てがあいまって、視聴者をラストシーンまで一気に惹きつける。サスペンスドラマであると同時に、親子の愛情のありようをも考えさせる感動作である。

CM部門

ラジオ第1種(20秒以内)

最優秀 <エフエム中九州> みのる企画/焼肉ぱいんひる「獣医vs薬剤師」(20秒)

D:高瀬裕章  構成、コピー:中田克平(フリー)  録音技術:陣内 稔(中央録音システム)

焼肉店での男性二人の会話。「えーと、肋間筋に、横隔膜筋に舌(ぜつ)、全部2人前ね」「お前ね、自分が獣医だってことひけらかさずに、普通にカルビとハラミとタンって頼めよ」。獣医の友人にそう言った男性は薬剤師。「あっ、タンは塩化ナトリウムでね」。コミカルで、テンポの良い二人のやり取りについ笑ってしまう。ある種の言葉遊びだが、駄洒落や語呂合わせの手法を使った作品が多い中、こうした着眼点のよさが最優秀賞のきめ手となった。

優 秀 <札幌テレビ放送> 札幌テレビ放送/自社PR「ラジオな面接 野球編」(20秒)

P:岡崎みどり  コピー、演出、SE:大針三治  出演者:木村洋二、明石英一郎

擬人化されたラジオが、面接を受けているという設定の作品。フルネームは「AMラジオ」、特技は「野球」。リスナーに「聞こえること」「聴くこと」の楽しさを伝え、自社のラジオ放送を身近に感じて欲しいという企画意図が、上手く演出されている。ラジオの特性を、限られた時間で的確に表現している点が高く評価された。

優 秀 <エフエム東京> ガリバーインターナショナル/クルマ買取り専門店ガリバー「愛車の価値・査定する男」(20秒)

P、D:林屋創一 構成、コピー:斎木良二(テイクニャン) 録音技術:鈴木弘和(エムアイティギャザリング)

車が走り去る通過音の後に男の声で「135万円」と一言。続いて別の車らしい通過音の後には「85万円」の声。走り抜ける車を瞬時に査定しているらしい。次の車は18万円、その次は何と1000万円! 通過音を巧みに使い分け、車買取専門店の無料査定と高価買取というセールスポイントを全面にアピールした作品。乗り込んだタクシーまで思わず査定してしまう最後のオチも効果的。

優 秀 <エフエム栃木> 下野新聞社/企業PR「使いみち」(20秒)

P:三田 清  D:佐藤正昭(スリーエス) 構成、コピー:田名瀬新太郎(フリー) 出演者:後藤貴子

夫が新聞を探している。妻は「知らないわよ。あたしのパソコンで下野新聞のホームページを見れば?」。 今やインターネットのホームページ、携帯電話のサイトなどから新聞社が発信する情報を得ることは、ごく普通のことである。それなのに夫は「いや、いいよ」と及び腰。しつこく詰め寄る妻に夫は小さな声で「足の爪切ろうと思っただけだから…」。情報技術の進歩で急速に変化する暮らしと、変わらない日常のコントラストを描いた洒脱なCM。

優 秀 <山口放送> 金子石材/墓石の製造・販売「リフレッシュ篇」(20秒)

P:藤田史博 D:佐々木忠義 構成、コピー:千葉正則(フリー) 音楽、SE:澄田真美 

墓石という商品をアピールするのは、結構むつかしい。あまり重々しくても、また軽率な表現でもリスナーに不快感、抵抗感を与えてしまう。そう考えたCM制作者が選んだキーワードは"癒し"。 幽霊の老夫婦が「良い墓に入ると癒されるなあ」と語り合う設定は、ほのぼのとしてなごめる雰囲気。ローカル広告主の意向を上手く表現した作品である。

ラジオ第2種(21秒以上)

最優秀 <文化放送> わがみ堂/企業PR「Eternity-永遠なるもの」(110秒)

P:深田雅弘(ビーコン) D:五井千鶴子 構成、コピー:松井琢磨(ビーコン)

長尺のCMには、リスナーに様々な知識や情報を伝える内容のものが多い。その中でもこの作品は、紙の腐食により危機にさらされているバッハの自筆楽譜の修復に和紙が使われていることを伝えて、審査員全員の心を捉えた。和紙の特性が、バッハの楽譜を再生し、さらに長期保存を可能とするという事実は、聴く人を大いに惹きつける。音楽を上手く使った演出も効果的である。 "和紙"そのものの魅力を伝えることが、和紙専門店である広告主の最大のPRとなることは言うまでもない。

優 秀 <札幌テレビ放送> 大阪屋/企業PR「鐘の前で聞こえる音」(80秒)

P、構成:岡崎みどり  コピー、演出、SE:大針三治  N:明石英一郎

大阪屋は、入手困難なアンプ、スピーカー、ケーブルなどこだわりのオーディオ機器を数多く揃えた店である。豊富な知識をもとに、顧客の納得する「音」が見つかるまで、時間をかけてオーディオ環境を提供していくことを信条としている。札幌の時計台の前に店を構える同店の「音」へのこだわりを、時計台の鐘の音とともに表現した佳作。

優 秀 <青森放送> 青森県警察本部銃器対策室/銃器対策キャンペーン「雀の鉄砲 編」(60秒)

P:佐藤元伸  出演者:落合こず恵  音楽、SE:三上国美  録音技術:新井田一彦

「雀の鉄砲」というのは、イネ科の植物で、花を引き抜く時に音がすることからこの名前がつけられたらしい。青森県警の銃に関する情報提供を呼びかけるキャンペーンの一環として制作されたCMで、銃器対策室で探しているのは本物の銃だが、ナレーションの人物は同じ鉄砲でも「雀の鉄砲」を探しているというストーリー。銃とはかけ離れた穏やかな表現を選択し、リスナーに情報提供の呼びかけを上手くアピールしている。

優 秀 <文化放送> 松下電器産業/ナショナルのあかり「あかりのぬくもり」(90秒)

D:五井千鶴子 構成、コピー:糴川航嗣(大広)  録音技術 久保田正三

「あかり」と「ひかり」は良く似た言葉だが、声に出してみると微妙にニュアンスが違う。「蛍の光」の歌詞を「蛍のあかり」と変えて歌ってみると、なんだかしっくりしない。歌の歌詞だけでなく慣用的な表現でも、2つの言葉は確かに使い分けられている。「ひかり」という言葉と様々に対比することによって、「あかり」という言葉の持つぬくもりを見事に表現した作品である。

優 秀 <エフエム東京> 東芝/企業PR 伝達技術「4年前のある日」(120秒)

P:林屋創一 D:中山佐知子(ランダムハウス) 構成、コピー:江口順也(電通) 音楽、SE:柴田 玲

サッカー・ワールドカップ開催を控えた時期に放送するため企画された作品で、4年前のフランス大会時、インターネット上で共有された表舞台の華やかさの裏に隠された多くの出来事を淡々と伝えている。ワールドカップに関する、ニュースにはならない大量の情報も、IT技術によって私たちの手元に届く。東芝がワールドカップのオフィシャルITパートナーとして、その技術を支えていることが効果的に伝わってくるCM。

優 秀 <毎日放送> 龍角散/タイガーバーム「よっこらしょ!」(120秒)

P:馬場康之 D:奥林秀晃(関西録音) 出演者:柏木宏之、関岡 香

腰痛を抱える女性とその女性の"腰"が会話しているというシチュエーションの作品。身体の大黒柱だからという理由で、何故か"腰"は男性、男性は痛むと目覚める虎を飼っているという設定。日常生活でも様々に負担のかかっている部位なのに、この女性はフラメンコまで習い始めて…。痛みのあまり吠える虎も、タイガーバームを塗るとすっかり大人しくなってしまうというオチ。何よりテンポの良さが光るCMである。

テレビ

最優秀 <北海道放送> 歌志内興産/北海地鶏「元炭鉱マンが作る地鶏」(60秒)

P:長嶺岩敏 D:長谷川孝幸(HBCメディアクリエート) 構成、コピー:砂川一茂(フリー) SE:依本慎也(セントラルオフィス)

かつて炭鉱で働いていた男たちが心血を注いで育てているのが「北海地鶏」。彼らは、炭鉱で培ってきた様々な専門技術を応用し、ひな鶏の育成に活かしている。ローカリティあふれるテーマに、ドキュメンタリー風の作りで、説得力がある。炭鉱の閉山で元気のなくなっていたお父さんたちが、生き生きと働く様子を見事に伝えていて、視聴者に勇気を与える作品との高い評価を得た。

優 秀 <北海道放送> 鷹栖農業振興公社/オオカミの桃「野生が似合う味」(60秒)

P:長嶺岩敏 D:杉本岳洋(HBCメディアクリエート) アイディア・企画:斉藤浩樹(HBCメディアクリエート) N:田村英一

オオカミと心を通わせ、じゃれあう男性の映像はインパクト十分。果たして何のCMかというと…。この作品は「オオカミの桃」というユニークな名前のトマトジュースのCMである。「オオカミの桃」とは、トマトの学名(ラテン語)の直訳で、動物のオオカミとは直接は関係ない。しかし、オオカミとトマトジュースという取り合わせの奇抜さが、一層視聴者の興味を引いて印象に残る。

優 秀 <長野放送> JA大北農業協同組合/長野県産米「腰ヒカリ」(15秒)

P:岩村陽一  D:黒田弘志(ビデオ企画)  P、アイディア、企画:梨子田真(ビデオ企画)   

長野県内の消費者に、長野県産米をアピールするためインパクトの強いCMを、と企画した作品。田植えを終えてから約一カ月間は、水の管理が大切なため、農家の人々は夕暮れになると懐中電灯を片手に畔道を巡回する。CMではその畦道の巡回の様子をコミカルに演出。腰に懐中電灯をあてて、「コシヒカリ!」と、恥ずかしそうにポーズを取る農家の人々の姿が微笑ましい。

優 秀 <朝日放送> アスミック・エース エンタテインメント/企業PR「『映画館で会いましょう』篇」(60秒)

P:長谷川健 D:八木敏幸(フリー)  アイディア、企画:加藤正宏(ニッポンムービー大阪)  撮影技術:森下直輝(フリー)

公園のベンチにドーナツと缶コーヒーを手にしたサラリーマンが座っている。そこに突如国籍不明の殺し屋が現れ、続いて閃光と共にタイムトラベラーが迷い込む。平凡なサラリーマンの周りで次々と繰り広げられるシーンは、彼を現実から映画の世界へと誘う白日夢らしい。ふと我に返った男は一言つぶやく。「映画でも見るか…」。 映画の予告編を思わせる演出で、映画の魅力を上手く伝えている力作。

技術部門

最優秀 <フジテレビジョン> ニュース・レポーティング・システム(NRS)の開発

研究・開発担当者:岡村智之、大橋則彦、新川 力、新井清志 

効率の高いアドレッシング技術および階層的なファイル構造を活用し、巨大な画像イメージデータを極めて高速に画像表示させ、その画像をタッチパネル付モニタと組合せることにより、自由にスクロール・拡大縮小の操作が可能なシステムを開発・実用化した。これにより、新聞や雑誌の記事などをキャスターが自ら画面を操作しつつ紹介することが可能となり、画期的な演出手法の実現に大きく貢献した。

優 秀 <札幌テレビ放送> 直視用・再撮用色温度2値同時表示モニタの開発

研究・開発担当者:柿崎 香、小川秀樹

1フィールドを2つのサブフィールドに分割し、一方には再撮用に最適な色温度を、他方には逆補正の色温度を交互に表示させたうえで、カメラ側のシャッターを再撮用サブフィールドに同期させて撮像するとともに、目視では2つのサブフィールドを平均した最適な色温度になるという、色温度2値制御機能を持つ映像表示装置を開発・実用化した。これにより、バックモニタを再撮する際に生じるカメラ再撮と目視での最適な色温度の違いによる問題を解決し、演出効果を高めることに貢献した。

優 秀 <東京放送> リアルタイム情報画面送出システム

研究・開発担当者:柿沼 司

オンラインで取得した気象・交通・株式等の情報をもとに自動作画した各CG情報画面を一括管理したうえで、各スタジオサブ側で容易に画面選択できるようにし、リアルタイムに更新される画面をオンエア時に利用可能とするシステムを開発・実用化した。これにより、各種情報ごとに専用システムや映像系統の新設を行うことなく、各CG情報画面を自由に送出可能とするなど、情報画面送出システムの発展に貢献した。

優 秀 <東京放送> 800MHz OFDMデジタルFPU遅延プロファイルアダプタの開発

研究・開発担当者:梶原 巧  

800MHzOFDMデジタルFPUを使用する際の電波の伝播状態を簡易にモニタに表示させ、リアルタイムで使用可能状況の予測・監視ができるようにするとともに、こうした受信状態情報をスイッチングセンターに伝送可能なアダプタを開発・実用化した。これにより、センターで集中監視を行い、良好な受信点の信号を自動選択することにより、安定した映像中継が可能となり、ロードレース中継技術の発展に貢献した。

優 秀 <日本テレビ放送網> 「♪フィル波ーモニー♪」(地上デジタル放送用フィールド状態検出システム)の開発

研究・開発担当者:佐藤 誠、片柳幸夫、石田昌之、田中正克 

地上デジタル波とアナログ波の各チャンネルおよびチャンネル相互の受信状態を自動的に検出するとともに、デジタル波のモードやガードインターバル期間を自動検出するなど、受信状態の解析をサポートする測定システムを開発した。これにより、地上デジタル波に対する妨害原因を効率的に解析することが可能となり、地上デジタル放送のフィールド状態の検出技術の発展に貢献した。

優 秀 <テレビ朝日> 「世界水泳2001」競泳中継でのバーチャル映像技術の開発と運用

研究・開発担当者:高梨賢一、酒井陽寿   

バーチャルCG技術を駆使することにより、競泳中継において、プール水面に各レーンの選手の所属国国旗や世界記録のラップタイムに合わせたラインをリアルタイムで表示可能とするシステムを開発・実用化した。これにより、演出・映像効果を飛躍的に高めることが可能となり、バーチャル映像技術の新たな運用展開に貢献した。

優 秀 <南海放送> FPU自動追尾支援システムの開発

研究・開発担当者:乗松義弘、苅山晃典、冨永哲史、鶴田彰一   

回転装置に市販製品を利用するなどして、費用の低廉化・重量の軽減化を図るとともに、種々のGPSデータフォーマットに対応可能な機能やGPSデータ受信ができない場合のバックアップ機能も盛り込んだ可搬型FPU自動追尾支援システムを開発・実用化した。これにより、GPSデータを利用するFPU自動追尾が低コストで容易に可能となり、移動中継における伝送業務の運営向上に貢献した。

放送活動部門

ラジオ

入 選 <山形放送> 県少年弁論大会を40年にわたり放送

実施責任者:松浦正登  

10代の青少年たちが、みずみずしい意見を述べ合う山形県少年弁論大会は、今年で41回目となる。山形放送では山形新聞、県防犯協会連合会などとの共催で大会運営に携わるとともに、その熱弁の模様を第1回大会から放送している。時代を映し出す青少年の主張を広く伝えることによって、地域の行政施策へのフィードバックを目指した取り組みは地域社会への貢献度も高く、その活動の継続性とともに高く評価される。

入 選 <ニッポン放送> ニッポン放送商店街支援活動

実施責任者:吉田亜希子

メガストアなどの参入により衰退の一途をたどる商店街。ニッポン放送では「人と人が温かく触れ合う」というAMラジオとの共通点を活かし、レギュラー的に商店街支援を実施している。首都圏で210の商店街、約2万軒のお店が参加するまでになった「商店街レシートキャンペーン」や商店街からの生放送の実施など、その活動は幅広く機知に富んでいる。地域密着メディア・ラジオの特性を地域の活性化に結びつける好企画。

入 選 <山梨放送> ラストパスをください~骨髄バンク登録推進キャンペーン

実施責任者:小沢睦美

自社アナウンサーの有野修司氏が急性骨髄性白血病で亡くなったことをきっかけに、血液難病治療の実態を知ってもらい、骨髄移植についての理解を求めるキャンペーンを展開。特別番組の放送や血液難病治療の応援ソングの発売、さらに生放送と一体化させたドナー登録会を実施した。多数の聴取者が集まり、骨髄バンク登録推進月間中の県内ドナー登録者数は全国3位に。作り手の思いが昇華され、着実な成果を生んだ。

入 選 <中部日本放送> 子供を救おう!未来を守ろう!

実施責任者:山室雅子  

子どもたちへの虐待を伝えるニュースが次々と流れる中、児童虐待の現状を伝えることによって子どもが「未来への宝」であることを再認識させるべく、放送局を挙げて活動に取り組んだ。愛知県東海市の児童養護施設「暁学園」を取り上げたドキュメンタリー番組やスペシャル番組の放送、オリジナルCDの販売や募金活動の実施など、多角的な活動を展開。社会問題を真正面から、継続して取り組む力強い活動である。

入 選 <毎日放送> 巨大地震に備えて~震災番組「ネットワーク1・17」を中心とした地震防災放送活動

実施責任者:田中智佐子 

震災番組『ネットワーク1・17』は阪神・淡路大震災の年に放送を開始し、震災を語り継いできた。当初からのコンセプトである「被災者に向けた、被災者のための、被災者の支えとなる番組」はそのままに、98年からは次の地震への呼びかけに力を入れている。1週間に起きた地震について解説し、地震の基礎知識を伝える「週間地震概況」やCM枠を利用したキャンペーンなどにより防災意識を高め、「減災のための放送」の実現を目指す。

入 選 <山口放送> ラジオ番組・ニュース・スポットが一体となった「環境美化キャンペーン」~山口放送環境美化財団とともに~

実施責任者:野村晃平   

1975年から実施している「環境美化キャンペーン」を山口放送環境美化財団とともに推進。緑化活動や河川愛護優良モデル地区指定団体の表彰を行うとともに、ニュースや番組、スポットキャンペーン等を通じて県民に紹介している。また、ふるさとの川をテーマにした俳句を募集。優秀作をスポットで放送するなど、多彩な活動を展開することによって、さまざまな人々を巻き込んだ環境美化の輪を地域に広げることに成功している。

入 選 <大分放送> OBSおはなしワールド

実施責任者:西村敏雄   

1990年の集中豪雨によって壊滅状態となった大分県竹田市の小中学校の図書救援キャンペーンを契機として、童話朗読番組の放送や、イベント「OBS おはなしワールド」を11年にわたり継続している。番組で募集した創作童話作品は盲学校へ寄贈されたり、学校での授業に取り上げられるなど、番組を超えた広がりを見せている。番組とイベントが有機的に連動した、ラジオの原点を見るような地域に根ざした活動である。

テレビ

入 選 <青森放送> 生テレビ「そういえば…校歌」~ピアニスト岡田照幸 校歌を旅して~その成果

実施責任者:山本鷹賀春

誰もが通った小学校は、地域社会の中心的な役割を担ってきた。地域の人たちと子どもを結ぶもの、それが世代を超えて歌い継がれている校歌である。ピアニストの岡田照幸さんが各地に出かけ、ピアノの伴奏とともに地域の人たちに校歌を歌ってもらう。番組をきっかけに子どもたちや地域との交流も深まり、校歌の作曲や編曲の依頼も寄せられるなど、着実に反響は広がりつつある。校歌を軸に人々のさまざまな思いを映像化してみせる点も巧みである。

入 選 <テレビ東京> トレンドたまご

実施責任者:持永秀樹

「トレンドたまご」(トレたま)は、経済番組「ワールド・ビジネスサテライト」の定番コーナーとして1998年にスタートし、今年9月に1000回を迎える。ベンチャー企業が手がける、今後ヒットしそうな商品・技術・サービスの"たまご"をネタに、レポーターの体験や実験をもとに、ありのままを伝える。「トレたま」という言葉が社会的な影響を持ち始めているとともに、低迷する経済社会の中で、企業・人間への可能性を明るく示してくれる。

入 選 <長野放送> 「よみがえれ諏訪湖キャンペーン」の成果

実施責任者:山口慶吾

1990年に放送した特別番組「よみがえれ諏訪湖~西独の成功例に学ぶ~」をきっかけに、諏訪湖の浄化運動を一層盛り上げようとキャンペーンをスタート。スポットの放送、番組の制作、ニュースでの特集などで、自然豊かな湖を復活するための対策を訴えてきた。その結果、水泳大会がおととしから復活するまでに諏訪湖の水質が改善された。地元を巻き込んだテレビ局ならではの展開は、全国の浄化運動の手本となる成功例と言える。

入 選 <福井放送> テレビ家庭教育番組「幼児の世界」放送と教育活動への貢献

実施責任者:井上寿美枝 

テレビ家庭教育番組「幼児の世界」は1974年にスタートし、今年で29年目を迎える。番組放送後、出演した専門家に直接答えてもらう電話相談を実施するなど、一般的な子育て情報を送るだけにとどまらず、個人的かつ具体的な悩みの相談にも応えている。取材テープを再編集してビデオを制作し、教育現場でも活用してもらうなど、多層的な取り組みを行っている。地道な活動を長期間続けており、放送局の志が強く感じられる。

入 選 <読売テレビ放送> ~激震が襲う日~ニューススクランブル「月刊!地震ファイル」を中心とした活動

実施責任者:吉田 満  

震災報道の風化を懸念し、2001年からニュース番組内で「月刊!地震ファイル」を継続的に放送している中で国は昨年、M8.4と言われる南海地震の発生確率を50年以内80%と発表した。視聴者にこの南海地震への関心を高めてもらうため、特別番組を1月に放送し、5月にはシンポジウムを開催した。この結果、議員立法として地震対策法案が国会に提出されるに至った。震災への関心が低くなっていく中での継続的な活動が評価できる。

入 選 <山陽放送> イブニングニュース・月曜特集「どうにかならぬか」

実施責任者:曽根英二

RSKイブニングニュースの特集コーナー「どうにかならぬか」宛てには、毎日多くのファクス、電話、メールが寄せられる。視聴者からの要望をもとに、身の回りのどうにかしてほしい問題を取材、どうすれば改善できるか解決の糸口を探っている。「道路の不具合」「落書き」など、行政の対応の遅れを指摘するものからモラルに関することまで、地域に密着した問題ばかり。メディアが視聴者と一体となり地域に貢献している活動と言える。

入 選 <九州朝日放送> KBC水と緑のキャンペーン

実施責任者:徳永 至

「KBC水と緑のキャンペーン」は生命の源である"水と緑"の大切さを訴え、その基盤となる自然や環境の保護をさまざまな角度から取り上げる企画である。植樹活動やリサイクル活動をテーマにした番組の放送や、視聴者の参加を呼びかける基金活動などを柱に、社内の各セクションが連携して多角的な活動を展開している。環境汚染が進む中、放送局として何ができるかを考え、地域に関心の輪を広げることに貢献している。

統一キャンペーンスポット部門 テーマ:「守ろう地球環境」

ラジオ

最優秀 <毎日放送> ふんころがしの独り言 (60秒)

制作責任者:村上晴久  

奈良公園は毎日1トン近くもの鹿の糞が排泄されているにもかかわらず、美しい自然公園として名高い。その秘密は鹿の糞を昆虫・フンコロガシが餌として消化、大地に返すといった動物と昆虫・樹木による生態系がバランスよく保たれてきたからであるが、近年鹿が観光客の捨てるビニール袋などのごみを食べ、死んでいくケースが多発し、生態系が崩れ始めている。こうした現実をフンコロガシの視点からユーモラスに描き、人々が引き起こしている環境破壊に警鐘を鳴らすインパクトのある作品。

優 秀 <文化放送> 未来の地球のためのビオトープ (60秒)

制作担当者:見目幸伸

ビオトープとはBIO(生き物)とTOP(場所)の造語で生物の生存空間のことである。一時は環境破壊や乱開発によって荒れ果てた川が、少しづつかつての美しさを回復する様子を、カヌーでの川下りを通じて聞こえてくる川魚の跳ねる音や生き生きした野鳥の鳴き声とナレーションで伝える。自然との共存・保護への意識をさらに一歩進め、自然を取り戻す、あるいは創り出すビオトープを地域や学校で盛んにし、自然を一層豊かにしたいという思いが、伝わってくる作品である。

優 秀 <エフエム東京> 「カラスなぜ鳴くの」篇 (60秒)

制作担当者:山口景子

東京に棲息するカラスは現在2万羽以上といわれ、人間に威嚇したり、生ごみを漁ったりとカラスによる被害は年々深刻化している。カラスがここまで増えたのは、人間がカラスの帰る「自然の山」を切り崩し、いびつな生態系を生み出したことに起因する。童謡「ななつの子」をベースにした軽快なラップを用い、カラスの立場から、"人間への感謝"という逆説的表現のユーモラスな替え歌で、聞く人を惹きつけながら、現実の環境破壊の影響に目を向けさせる音声媒体の特性を生かしきった作品。

優 秀 <エフエム東京> 「少年合唱団の未来」篇 (60秒)

制作担当者:山口景子

虫や花が登場する童謡を上手に歌う「東京FM少年合唱団」だが、歌詞に出てくる昆虫や草花を実際に見たことがない子供達が増えている。環境破壊が進み、身近な美しい自然が失われつつある現実を、歌詞の"蓮華の花"をラーメンを食べる時に使う"れんげ"かと思ったと無邪気に言う子供達の言葉を伝え、近い将来"太陽を見たことが無い"子供も出てくるのではないかと、環境破壊の深刻さを笑いのある「オチ」を交えながら訴える。

優 秀 <エフエムジャパン> 消える国 (60秒)

制作担当者:大谷恭代 

地球温暖化による海面上昇で南の珊瑚礁の島々は、海岸線を侵食され海の中に消えていこうとしている。南太平洋に浮かぶ小さな島国・ツバル共和国もそのひとつで、あと数十年で海の中に消えてしまう。このため、ツバル共和国政府は住民の移住を決めた。ひたひたと押し寄せる波の音と、こうした現実を切々と訴えるナレーションが見事にシンクロし、故郷を失い散り散りになる住民の哀歓と、事態の深刻さとを聴く人に直截に伝える作品。

優 秀 <エフエム愛知> 擬態語 (60秒)

制作担当者:杉田幸博   

葉が落ちる様子を表現するのにも、一枚の葉が落ちる様子は「ひらひら」、枯葉が次々と落ちる様は「はらはら」など、日本語は擬態語の数が世界で群を抜いて多い。こうした機微に富む感性豊かな表現の多さは、先人たちが自然を慈しみ、鋭敏な感性で観察し、生活の一部として取り込んできたからに他ならない。自然との関わりが深い擬態語に焦点を当て、聴く者の興味を惹く構成で、自然を大切にすることが自分たちの生活を豊かにすることであることをさりげなく訴える。

優 秀 <エフエム愛知> 日本の色 (60秒)

制作担当者:杉田幸博   

冒頭、平安時代の発音で源氏物語を再現し、聞く者の心を惹きつける。源氏物語に登場する山吹、桜、鶯、桔梗など、花や鳥の色から名付けられた雅やかな日本の伝統色が平安時代に集大成されたのは、平安人の自然に寄せる強い思いからだと述べ、自然保護の大切さを説く。現代人は平安時代から引き継がれた日本の伝統色を守ることこそが、自然環境の保護に繋がるのだと聞く人々の感性に訴えかけるナレーションが説得力に富んでいる。

テレビ

最優秀 <読売テレビ放送> 凶器、直行便 (60秒)

制作責任者:吉川秀和

太平洋に浮かぶ小さな島、ミッドウェー諸島。野生動物の楽園であるこの島で、絶滅の危機も叫ばれる「コアホウドリ」のヒナが相次いで死んでいる。原因は、砂浜に打ち上げられたプラスチック製品を餌と間違え、飲み込んでしまうためだ。そのプラスチック製品の中で目立つのが、なんと日本語の文字が刻まれた「使い捨てライター」。軽い気持ちで捨てたライターが6,000キロも離れたミッドウェーまで流され、凶器と化している実情をコンピュータの映像等を使って訴え、環境破壊に対する日本人の意識の低さに警鐘を鳴らす。

優 秀 <青森放送> モノを大切に、心を大切に (60秒)

制作担当者:藤田晴央

青森県弘前市のある私立幼稚園では明治時代から同じ積木を使い続けている。園児たちが遊ぶ様を素材に、"使い捨て"時代の現代のあり方を再考させる作品。代々の園児たちに引き継がれ使い続けられてきた積木、手すりが丸くなった木製のすべり台、黒光りする鉄製のブランコの一つ一つからは、人の心のぬくもりが伝わってくる。モノを大切にすることは、人の心を大切にすることであり、そのことが地球環境を守ることにつながる。使い捨てが当たり前の現代人に、角の丸くなった積木が語りかけるメッセージが共感を呼ぶ。

優 秀 <青森放送> 旅・絵だより (60秒)

制作担当者:鳴海征子

番組取材で家をあける機会の多い青森放送の社員でタレントでもある伊奈かっぺい氏は、なかなか一緒に過ごせないこども達へ、旅先からハガキによる「絵だより」を送り続けている。すでに8,000枚に達するハガキにはどれも美しい野山の景色が描かれ、"自然を大切に"という同氏の思いが込められている。いつの日かこども達と訪れたい各地の名勝が様変わりしていくことへの複雑な思いを、美しい絵だよりと「変わりゆくすばらしさと、変わりゆくさみしさを、絵だよりで残すより、本物で残したい」という静かなナレーションで直截に伝える作品。

優 秀 <東海テレビ放送> やしの実が教えてくれたこと (60秒)

制作担当者:中島精隆  

愛知県渥美町は毎年、石垣島から伊良湖岬に向けて、椰子の実を放流してきた。始めてから15年目にして、やっとひとつの椰子の実が流れ着く。拾ったのは地元の高校生。ゴミが漂う伊良湖の海しか見たことがない少年は、これをきっかけに、美しい「本当の海」を確かめるため、石垣島へと旅立った。石垣島の海の青さに驚き、感動する少年であったが、地元に住む老人からかつての海はもっときれいだったことを聞かされる。汚れた海しか知らなかった少年は、「椰子の実」をきっかけに「本当の海」について考え始めた。少年と同じように、視聴者に自然環境問題を考えるきっかけの「椰子の実」にしてほしいとの願いが伝わってくる作品。

優 秀 <中京テレビ放送> 「森」-「鹿」=自然保護? (60秒)

制作担当者:伊藤 眞 織田忠士  

大台ケ原では木々の立ち枯れが進み、"白骨化した森"へと姿を変えつつある。環境省は鹿の食害が原因であるとして、鹿を射殺することを決めた。しかし、人間は鹿の命を奪ってまで、貴重な自然を守ろうとしている一方で、山の奥までドライブウェイを作り、帯列を成した自動車が排気ガスを撒き散らしている。「生きるために木々を食べることが罪なのか」と殺されようとしている鹿の、悲しげな目の問いかけが、そうした人間のおごりに反省を促し、高い問題意識を提起している。

優 秀 <毎日放送> 神秘の池…生命の水(60秒)

制作責任者:越智 暁

毎年、春に姿を現し、秋には消えてなくなる不思議な池。池が水をたたえると、モリアオガエルが産卵にやってくる。卵からオタマジャクシが生まれ、カエルへと成長し、夏の終わりには冬眠のために、また山の中へと戻っていく。池はそれを見届けて、静かに姿を消す…。池が見せるさまざまな表情を幻想的な映像でつづり、自然の神秘さを伝えながら、毎年この池で繰り返される水と生命の循環を、いつまでも守り続けなければならないことを訴える。

優 秀 <毎日放送> 崩れゆく砂浜~ナホトカ重油流出事故から5年 (60秒)

制作担当者:三澤 肇

越前加賀海岸では、「イソスミレ」などの貴重な植物が根を張りめぐらせ、砂浜を守ってきた。ところが、この砂浜が崩れ始めている。5年前に沈没したタンカー「ナホトカ」から流出した重油が原因で、海岸から30メートルも侵食された個所もある。流出した重油が、今も砂と混ざった状態で海岸に残っている様子と、無残な姿をさらす海岸の枯れた植物の姿を、生々しい映像で伝え忘れられつつある重油流出事故がまだ終わっていないことを強く訴えかける作品。