表彰番組・事績
日本民間放送連盟賞/2003年(平成15年)入選・事績
平成15年日本民間放送連盟賞 ”NAB Awards 2003” 入選・事績
日本民間放送連盟賞は12年度から次のように変更されています。
- 番組部門の種目中、ラジオ・テレビとも「娯楽番組」を「エンターテインメント番組」と改称しました。
- CM部門のテレビについて、第1種・第2種を併せて一本化しました。
番組部門 †
↑ラジオ報道 †
↑最優秀 <和歌山放送> ラジオドキュメンタリー 問う、バッジの重さ~和歌山市民の選択~ †
↑プロデューサー 船越保夫 ディレクター 鴻池 尚 ナレーター 寺門秀介
汚職事件で逮捕され裁判中の和歌市の前市長が、有罪が確定すれば失職するという中で今年4月の市議会議員選挙に立候補、トップ当選した。前市長は、33年前の市議会議員補欠選挙を皮切りに、県会議員選、市長選、県知事選、衆院選と計14回の選挙に挑み9回当選、「趣味は選挙」と言い切るほどの人物である。その特異な人物像を過去の選挙時の演説やスキャンダルに応えたインタビュー録音を効果的に使いながら浮き彫りにするとともに、選ばれる側と選ぶ側双方の民主主義の成熟度を現代日本の縮図として提示している。
優 秀 <青森放送> ~北朝鮮引揚げの記録~「杳き日のことにはあらず」 †
↑プロデューサー 野月輝昭 ディレクター・構成 小田桐信子 ナレーター 大竹辰也 出演 天内みどり
1945年、敗戦の混乱の中で2000人余りの日本人が北朝鮮に取り残され、八戸市の高校教師で当時12歳の天内みどりさんも1年間、母妹とともに平壌の収容所で生活した。3年前に出版した天内さんの手記は話題を呼び、多くの読者から手紙や電話が寄せられた。番組はその手記と証言をもとに、12歳の少女の北朝鮮引き上げの体験から“今”を問う。絶望的な状況下にあってなお凛とした天内さんの姿勢が十二分に描かれている。
優 秀 <ニッポン放送> 「ただいま」を聞くまで…母・横田早紀江の祈り。 †
↑ディレクター 宮崎裕子 ナレーター 渡辺城太郎 構成 日高 博 出演 横田早紀江
日々大量に送り出されながら物珍しさや衝撃的映像に目を奪われがちな北朝鮮報道。その中で、忽然と姿を消した娘を探し続け、国家的犯罪の被害者の母親として突然歴史の表舞台に立たされてしまった横田早紀江さんの、慈愛や情念を丁寧に取り上げた完成度の高い作品。「物語の世界にいるようだ」。繰り返される映像によって希薄になってしまった拉致被害者の等身大の“ことば”を、ラジオという媒体が見事によみがえらせている。
優 秀 <信越放送> SBCラジオスペシャル「エイズ・HIV~関心が薄れる中で~」 †
↑プロデューサー 善財 優 ディレクター・ナレーター・構成 舩戸導洋
有効薬の開発などで関心が薄れつつあるエイズは、実は水面下で感染が拡大し爆発的に増加する恐れすらある。依然として残る誤解や偏見のため患者の声は社会に届きにくく、近年の性体験の低年齢化がその背景にある。患者らの悩みを交換するネットワークの存在、守られにくい個人情報の現状、高校生を対象にしたセミナーの試みなどを丹念に取材し、確かな医学知識を伝えながら関心の薄れと深刻な現状のギャップを明らかにしている。
優 秀 <中部日本放送> 娘が消えた~行方不明・残された家族の1644日 †
↑プロデューサー 羽雁 彰 ディレクター・構成 山室雅子 ナレーター 加藤由香 テクニカルディレクター 舘 一孝
ある女性の行方不明事件を取り上げ、残された家族の心の軌跡を追う。行方不明直前に会った男性が捜査で判明するが、関与を否定し黙秘を続けるだけ。父親は「事件なのか事故なのか、このままでは死にきれない」と漏らす。年間に提出される家出人捜索願いが10万件、うち理由の判明しない特異家出人が2万7000人にのぼる現在、喪失感を抱えたまま生活する家族の姿には、「気の毒な家族」の一言では片付けられない普遍性が感じられる。
優 秀 <中国放送> 変えなくては 変わらなくては がん治療 †
↑プロデューサー 大原健嗣 ディレクター・構成 増井威司 ナレーター 本名正憲
世界で抗がん剤治療が進む中で、なぜ日本の医師は積極的に抗がん剤治療を行わないまま「もう治療法はありません」と死の宣告をするのか。広島の一人のがん患者が、東京で世界標準の抗がん剤治療を続ける医師の治療を受けながら、「医者には医者に、患者には患者にできることがある。待っているだけでは何も変わらない」と「癌と共に生きる会」を立ち上げる。厚生労働省の認可行政のあり方を含め医療の根源的問題に取り組んだ秀作。
優 秀 <南日本放送> MBCラジオスペシャル 北朝鮮工作船事件・巡視船船長の緊迫の9時間 †
↑プロデューサー 田上憲一郎 ディレクター・構成・脚本 諏訪園真人 ナレーター 古川広生
2001年12月、東シナ海に現れた不審船(北朝鮮工作戦)との間で、海上保安庁の巡視船は戦後初の銃撃戦を経験した。日本のテロ対策、安全保障論議にも大きな影響を与えたこの事件で、しかし現場取材を行った報道機関は皆無、事件を検証するための情報は限られている。半日間に及ぶ攻防を、巡視船船長のインタビューを縦軸に、海上保安庁の撮影ビデオの“現場音”を巧みに使いながら構成し、迫真性に富む証言記録となっている。
ラジオ教養 †
↑最優秀 <山梨放送> 音楽夢譚~ギタリスト深沢七郎 †
↑プロデューサー 児玉久男 ディレクター 荻野弘樹 出演 三上 寛
山梨県石和町に生まれ文学界に大きな足跡を残した作家の深沢七郎。「とにかくギターを弾いて、それで足りない部分は小説を書いてきた」と自ら語るように、深沢は根っからのギタリスト、音楽家でもあった。ギタリストとして残した唯一のレコード『深沢七郎ギター独奏集/祖母の昔語り』を紹介しながら、深沢の“魂の表現”を伝える。深沢のギター演奏が圧倒的であるとともに、ギターでしか伝えることのできない作家・深沢七郎の世界を見事に表現している点が高く評価される。
優 秀 <山形放送> 知られざる古里 ~酒田日満工業学校のこと~ †
↑プロデューサー 阿部啓治 ディレクター・ナレーター 松浦正登 音声 斎藤健太郎 出演 斎藤桃子
酒田市が日満技術工養成所の誘致に成功したという戦時中の新聞記事を基に、山形県史にも記載のない酒田日満工業学校で何が行われていたのかを取材する。卒業生の一人を探し当て、学校の本当の姿を聞くとともに、戦争犠牲者としての半生を語ってもらう。そこには記録に残ることのない戦争の悲惨な足跡があった。戦争が民衆に何をもたらすかというディレクターの思いがストレートに伝わる作品。
優 秀 <ニッポン放送> ニッポン放送スーパーステーション「ドナー家族の思い~問われる臓器移植」 †
↑ディレクター 杉本さつき、森田耕次 ナレーター 児玉 清 構成 外山信行
臓器移植法が施行されて55年が経過したが、実際に脳死者から臓器提供を受けたのは、23例にとどまる。「提供した見返りにお金をもらった」などと、いわれのない中傷を受けたというドナー家族。彼らの複雑な思いを中心に、臓器提供を受ける「レシピエント」や移植コーディネーターの意見を交えながら、臓器移植の実態に迫る。あまり伝えられることのないドナー家族の生の声を取り上げ、社会のありようを正面から描いている。
優 秀 <福井放送> 「絆」 †
↑プロデューサー 島嵜正行 ディレクター 内田哲朗 音効・編集 岩下直浩 出演 浜本雄幸
2002年10月、北朝鮮から一時帰国した地村保志・富貴恵夫妻が、「一時帰国」から「永住帰国」を決意するまでの心の支えとなったのが家族の「絆」だった。番組は富貴恵さんの兄、浜本雄幸さんが書き綴った帰国後の180日間の日記をもとに、地村夫妻が永住帰国を決意するに至った心境の変化を振り返る。拉致被害者家族の思いが上手にまとめられており、今後も継続的な取り組みが期待される。
優 秀 <ラジオ関西> 谷五郎のOH!ハッピーモーニング †
↑プロデューサー 吉田秀子 ディレクター・構成 内藤 泉 出演 谷 五郎、藤原正美
今やパソコンは一家に一台を超える勢いで普及している。また、音声ソフトの発達により、「欲しい情報」を「欲しい時」に「自分の手」で入手できるインターネットは、視覚障害者にとっても大きな力となりつつある。多くの障害者にITが大きな武器になっている実例などを紹介しながら、ラジオが発信できる「心に響く情報」とは何かを考える。障害者を取り巻くさまざまな現実的な問題を、ラジオらしい切り口で伝えている。
優 秀 <南海放送> 50年ラジオ 第一章 ~ラジオを創った男達~ †
↑プロデューサー・取材・構成 田中和彦 ディレクター 柴田秀樹 ナレーター 片倉ごん 音楽担当 和田耕一
2003年10月に南海放送は50周年を迎える。創業期、ほとんど全員が素人だったため高校野球の名門校に紅白戦をしてもらい実況練習をした第一号アナウンサー、本放送開始ぎりぎりで本免許が下りたことをタクシーの中で聴き涙した技術担当者など、放送現場で奮闘した一期生の姿を、インタビューを中心に構成。あえてラジオ番組で自社の原点を振り返り、新たな一歩を踏み出そうという姿勢が評価される。
優 秀 <九州朝日放送> 業の肯定 ~落語家 粗忽家勘朝の人生訓~ †
↑プロデューサー 二木清彦 ディレクター松清一平 ナレーター 神田 紅、沢田幸二
月に一度、福岡市中央区の唐人町商店街で開催される内浜落語会。主宰者の粗忽家勘朝は落語歴27年で、23年になる本業の小学校教員歴よりも長いキャリアを持っている。人の欲望、事の成り行きをすべて受け入れる「業の肯定」という落語独特の価値観。江戸時代から培われてきたこの価値観を実践するかのような生き方を、軽妙な落語とともに取り上げる。登場人物の素直な語りが、番組全体にリアリティーを与えている。
ラジオエンターテインメント †
↑最優秀 <毎日放送> ドラマの風「海よ空よ風よ」 †
↑ディレクター 中村 理 脚本 森脇京子 出演 佐川満男、宮田圭子
理由もなく大学生の息子を殺された被害者の父親と加害者少年の母親の心の葛藤を描くラジオドラマ。被害者の父親は事件後離婚し、息子がやり残した全駅弁食べ歩きの旅が唯一の生きがいとなる。一方、加害者の母親は、息子の罪を背負い込み、毎週、被害者の父親に手紙を書き続ける。旅を続けながら手紙を読むうち、固く閉ざされた父親の心が少しずつ開かれていく姿を見事に描き出している。重いテーマの中にも、各地の駅弁の魅力を詳細に描写するなどエンターテインメント性も盛り込み、完成度の高い作品に仕上げている。毎週60分の枠を設け、継続してラジオドラマ制作に取り組む姿勢も高く評価された。
優 秀 <青森放送> 五月の空に子守唄 †
↑プロデューサー 渡辺英彦 ディレクター 小山田文泰 脚本・演出 畑澤聖悟 調整 山本鷹賀春
さつきは、幼児期に母親に虐待を受けたことで今も子供恐怖症に悩んでいる。その心を癒すため東京から故郷津軽に帰る。故郷でさつきは、生をまっとうできなかった子供たちが集まる不思議な幼稚園に迷い込む。子供恐怖症を起こしながらも子供たちと付き合う中で、さつきは本当の自分姿を見つける。幼児虐待を題材に命の大切さと愛の普遍性を、超現実の世界を舞台に描き心ゆすぶられる。生音による効果音も番組に深みを持たせている。
優 秀 <TBSラジオ&コミュニケーションズ> TBSラジオスペシャル「60歳のラブレター」 †
↑プロデューサー 北山有一郎 ディレクター 坂元敏也 ナレーター 大沢悠里 出演 小林桂樹ほか
60歳の時に夫、妻に宛てたラブレターを編纂したベストセラー『60歳のラブレター』を題材に、作家の秋元康氏が舞台用脚本を作成し、6人の名優が日替わりで演じて好評だった朗読劇。番組では、書籍のラブレター数編を紹介するとともに、小林桂樹さんの朗読劇を代表として放送した。「夫婦とは?」というテーマを、ラジオの持つ“語り”を通じてリスナーにしみじみと訴える。小林さんの朗読劇も感動的である。
優 秀 <山梨放送> YBSラジオスペシャル さてもチンドン大行進 †
↑プロデューサー 児玉久男 ディレクター 山田有子 ナレーター 浅川初美 構成 山県昭彦
チンドン屋の発祥から現在までの歴史を丹念に追った番組。戦争、高度経済成長期、バブル経済の隆盛と崩壊、商売の浮き沈みを実体験してきたチンドン屋の親方達の語りとチンドンの音で構成する。「チンドン屋は歴史あるエンターテインメント性溢れる商売」と若い後継者が現れはじめているという時代の変化も紹介する。チンドン屋の魅力とともに文化的な資料要素も盛り込んだ佳作。
優 秀 <福井放送> 親父たちのための歌声広場 †
↑チーフプロデューサー 松川欽哉 プロデューサー・構成・演出 福本 実 出演 清田精二、天谷由佳
青春時代に夢中になって歌ったフォークソングを、5人の素人親父たちがギターを片手にスタジオで熱唱する。現代の若者たちの音楽観を嘆く、なぎら健壱が“フォーク解説者”として出演し、歌だけでなくトークで番組に厚みをもたせた。フォークソングの魅力を充分に引き出すとともに、世代を超えて楽しめる作品となっている点が評価される。
優 秀 <四国放送> ラジオドラマ「阿波藍の唄が聴こえる」 †
↑プロデューサー 佐藤博治 ディレクター 岩澤 敏 脚本 山本むつみ 出演 二木てるみ
北海道でタウン誌の編集をしている裕子は、雑誌企画をきっかけに徳島出身としか判らない祖母の過去を調べることになる。徳島にわたり、縁続きのおばあさんから昔話しを聞くという形で番組が進行する。祖母は芸者で、藍染の染料「すくも」作りの職人・定次郎と許されない恋に落ち、二人で家族を捨てて北海道に移住した。構成の巧みさとともに、明治時代の徳島の風俗やすくも作りの様子が伝わる、ラジオドラマの王道を行く作品。
優 秀 <エフエム沖縄> オール宮古方言シンガー 下地勇大いなるヒストリープロローグ †
↑プロデューサー 垣花勝也 ディレクター 山川悦史 ナレーター 中村一枝 出演 下地 勇
下地勇さんは宮古島の方言だけで歌うシンガー。彼の歌は、地元の風習や習慣、原風景を優しく、時にコミカルに綴る。CDデビューしていないにもかかわらず、地元ではメジャー級の人気を博している。下地さんの歌う歌詞は、宮古島以外の人はほとんど理解できないが、下地さんの地元への思いやエネルギーは音楽を通じて誰の耳にも伝わり、知らず知らずに引き込まれてしまう。ローカルの中のローカル文化を発掘した番組である。
ラジオ生ワイド †
↑優 秀 <青森放送> 月曜バザール †
↑プロデューサー 三浦明子 ディレクター・構成 藤田晴央 技術 白瀬公二 出演 夏目浩光
月曜の午後2時~3時放送。青森県出身の歌手、麻生詩織とRABアナウンサー夏目浩光がパーソナリティーをつとめるレギュラー番組。今回の舞台は7年前、番組にりんごの木を贈ったりんご園。麻生の歌にクイズ、トークを織り交ぜ農園の空気を伝える。パーソナリティーのコンビネーションや、麻生のインタビュー時の津軽弁とMC時の標準語の巧みな使い分けが耳に心地いい。暖かさとユーモアのある番組構成も高く評価される。
優 秀 <ニッポン放送> うえやなぎまさひこのサプライズ! †
↑プロデューサー・ディレクター 松島 宏 ナレーター うえやなぎまさひこ
水曜の午前8時30分~11時放送。ラジオの持つ“ぬくもり”や“思いやり”を大切にしながら、ITをフル活用して聴取者とのTwo Way Radioを実現。電車を乗り間違えた受験生のためにJRが“温情”停車した新聞記事を取り上げたところ、すぐに父親から感謝の電話が入るといった生ワイドならではの同時進行の特性が十二分に生かされていると同時に、パーソナリティーうえやなぎの受け答えのバランス感覚と柔軟性がリスナーを魅了し、安定感のある番組となっている。
優 秀 <新潟放送> サタデーラジオ応援隊「あの街この街てつが行く」 †
↑ディレクター・構成 近藤正典 出演 杉原 徹
土曜の午後1時~3時放送。今年4月より4時間のスタジオワイドを2部構成にし、1部はスタジオの外で収録。パーソナリティー杉原徹がギター片手に街へ飛びだし、住民と触れ合いながら元気を分けてもらうのがコンセプト。この日は新潟市の隣、豊栄市郊外での田植えにTシャツと海パンの姿で臨み、遊び感覚を盛り込みながら実感ある言葉で稲作をリポートする。リスナーの想像力を喚起し、地域に密着したラジオ作りを実現している。
優 秀 <北陸放送> 石川名物!GOGOは本多町3丁目 †
↑プロデューサー 北 英一 ディレクター・構成 野村未来子 ディレクター 白井正司 出演 笹原忠義ほか
月~金曜の午後1時5分~4時25分放送。日替わりパーソナリティーの火曜は、県下きっての毒舌トーク笹原忠義アナに、優しい語り口の理系人間・橘俊江アナがアシスタント。夜中のニューヨークから最新情報を伝える人気コーナー「ニューヨーク松井情報」では、松井の大ファン笹野がリスナーとバトルトークを展開。コーナーの多様さに硬軟パーソナリティーのトークを加えた飽きさせない構成で、作り手の力量を感じさせる。
優 秀 <朝日放送> フレッシュアップモーニング ファイト! 土曜日です †
↑プロデューサー 荻原知明 ディレクター 奥川和昭 出演 妹尾和夫、高野あさお
土曜の午前5時30分~8時29分放送。リスナーに葉書や電話で参加してもらいながら、パーソナリティーの妹尾和夫・高野あさおの気取らないキャラクターを活かし、「ほんの少しのファイト」を受け取ってもらう番組。この日は「母の日」の前日で、母親に感謝の葉書を贈った娘に電話をしたり、妹尾がウクレレで「おふくろさん」を熱唱したりするなど「母への感謝」を散りばめた放送に。暖かい人柄や思いが伝わってくる。
優 秀 <山陽放送> 谷五郎の旅はつづくよ †
↑プロデューサー 中尾俊直 ディレクター 河津早苗 出演 谷 五郎、西田多江
土曜の午前9時30分~午後1時59分放送。「空間の旅」「時間の旅」「心の旅」の3つの旅を柱に、想像力で旅へいざなうヒーリング番組。案内人は、関西出身のタレント谷五郎とアナウンサー西田多江。この週は「声」をテーマに取り上げ、「やまびこ」と「こだま」の違いといった話題あり、面白いルンバありと盛りだくさん。メリハリのあるSEと音楽で飽きることなく聴かせる。
優 秀 <RKB毎日放送> 仲谷一志アワー サプリメントスタジオ †
↑プロデューサー 藤井義久 ディレクター 宮岡朋治 出演 仲谷一志、久米ゆき
木曜の午後12時~2時放送。今年3月31日にスタート。福岡、北九州の主に都市圏エリアのステージやイベント情報、週末のレジャー情報を心地よい音楽とともにおくる。5月29日の放送は、六月博多座大歌舞伎を前に中州で行われた「船乗り込み」を中継でリポート。非日常的な行事の華やかさや賑やかさが手に取るように伝わり、またスタジオのアナウンサー・西田との掛け合いもテンポがよく、上質の“タウン情報”番組である。
テレビ報道 †
↑最優秀 <フジテレビジョン> ニュースJAPAN・SP 検証C型肝炎 †
↑プロデューサー 熱田充克
C型肝炎感染者は全国で推定200万人。感染拡大の背景には、輸血や予防接種などの医療行為があった。アメリカのドラッグ中毒者から採取した汚染血液を原料にした血液製剤は、なぜ、安全性を疑問視されながらも生産、投与が続けられたのか。すでに全面回収された血液製剤の実物を入手して遺伝子解析を実施するなど、徹底した取材で汚染のメカニズムを明らかにしていく。取材力、分析力、表現力を存分に活用し、メディアの力をあらためて社会に示した功績は賞賛に値する。
優 秀 <北海道放送> 誤判の生贄 ~魂の画家 死刑囚・平沢貞通~ †
↑プロデューサー 五十嵐浩二 ディレクター 山岡英二 ナレーター 田村英一 撮影 長谷川孝幸
55年前、12人が毒殺された「帝銀事件」の犯人として死刑判決を受けた、画家・平沢貞通。判決の根拠は自白のみ。無実を訴え続けたまま、39年間の独房生活の末に獄死した。死後に発見された捜査記録などの「新証拠」によって、判決の根拠を揺るがしていく。裁判制度のあり方を鋭く追及するとともに、彼が獄中でも描き続けた絵や俳句などを通じて、人間・芸術家としての平沢貞通を表現する、優れたドキュメンタリーにもなっている。
優 秀 <長野放送> NBS月曜スペシャル おおきく遊べ ~「生きる力」を取り戻す実践から~ †
↑プロデューサー 山口慶吾 ディレクター 伊藤晴彦 出演 柳沢秋孝ほか カメラマン 鈴木信哉ほか
昔に比べて体を動かさなくなった現代の子どもたちは、体力面のみならず精神面でも「悪化」しているとの指摘がある。運動と脳の関係を調査している松本短期大学の柳沢教授が実践している、現在の環境の中で遊びを30年前に戻す取り組み「運動保育プログラム」を紹介。子どもたちの変化を追いながら、現代の子どもを取り巻く環境に科学的な警鐘を鳴らし、その解決に向けた提案をも示す。巧みな構成力が評価される。
優 秀 <石川テレビ放送> 失われた信頼 ~検証・石川銀行破綻~ †
↑プロデューサー・構成 赤井朱美 ディレクター・脚本 米澤利彦 ナレーター 高田伸一 出演 吉住幸則
債務超過に陥っていた石川銀行が50年の歴史に幕を下ろした。経営陣による乱脈経営が原因だ。預金は保護されたが、破綻直前まで繰り返された増資による新株券は紙くずとなった。株の引き受け者には、融資の見返りに無理やり買わされた取引先や年金暮らしの高齢者もいた。地方での出来事を丹念な取材と丁寧な解説で検証するとともに、地域報道の枠を超えて今日の金融政策が抱える根本的な問題を追及した、完成度の高い作品。
優 秀 <朝日放送> 私は別人 ~見えざる障害、高次脳機能障害~ †
↑プロデューサー 石高健次 ディレクター 大津容子 ナレーター 酒井雅代 撮影 高橋靖史
救急医療の発達により、昔なら助からなかった命が助かるようになった。その半面、運動麻痺などではなく、記憶や意識など脳の高次元の働きが阻害される「高次脳機能障害」を持つ人が出てきた。一見して「障害者」とは分からないため、職場や学校での理解が得られにくい。精神障害者とも身体障害者とも認定されず、福祉制度の谷間で見捨てられている彼らの苦悩をリアルに描き、福祉・医療制度のあり方を社会に強く問いかけている。
優 秀 <山陰放送> 1歩後退3歩前進 ~BSEのりこえ新たな決意~ †
↑プロデューサー・ディレクター 谷田人司 ナレーター 宇田川修一
2001年のBSE(狂牛病)国内発生は、鳥取県の肥育農家中本さん夫婦にも大きな衝撃と深刻な損失を与えた。夫婦で育てた「安全」な牛までが売れない。彼らは多くの農家たちとともに行政への支援を求める行動を起こす一方、生産者と消費者との信頼関係を築くべく、メールでの情報発信や生産現場見学の実施などを進めていく。全国的な問題である「食の安全」を地方や個人の視点からとらえていく、その手法も新鮮である。
優 秀 <南日本放送> 小さな町の大きな挑戦 ―ダイオキシンと向き合った川辺町の6年― †
↑プロデューサー 田上憲一郎 ディレクター・ナレーター・構成 山縣由美子 出演 亀甲俊博
鹿児島県川辺町ではダイオキシンを含む焼却灰を23年間もの間、素掘りの谷に捨て続けていた。1997年、全国的にダイオキシン問題が噴出。行政と住民が対立する地域が多い中、川辺町では情報公開を進めることで町民たちとの協力体制を確立、ダイオキシン問題解決に向けた新技術の開発に成功する。6年間にわたるきめ細かい取材をベースに、深刻な問題をときにはユーモアを交えて構成した、制作者の意欲が感じられる作品である。
テレビ教養 †
↑最優秀 <北海道テレビ放送> 霧の日記~アリューシャンからの伝言~ †
↑チーフプロデューサー 上杉一紀 ディレクター 山田礼於 構成 大辻民樹 出演 緒形直人
60年前、アッツ島で日本軍守備隊が玉砕した。その戦死者のひとりでアメリカ留学の経験もある軍医・辰口信夫が戦地に残した日記には最後まで家族愛に満ちた言葉が残されていた。単なる戦争マシンでしかないと考えていた日本軍にも人間性豊かな人々がいるのだという事実に感動した米軍関係者により日記は英訳され、60年もの間アメリカ人に読み継がれている。立ち入りが厳しく制限されているアッツ島での取材を通し、当時を振りかえりながら戦争を日米両国の人間的視点からとらえた国際性豊かな作品。映像は、資料としても貴重である。
優 秀 <日本テレビ放送網> ザ!鉄腕!DASH!! †
↑プロデューサー 今村 司 ディレクター 高畑伸彦 構成 田中直人
自給自足を試みて2000年に建設した「DASH村」で、アイドルタレントTOKIOが米作りに挑む姿を追った。干ばつ、台風、害虫、そして収穫。米作りの苦労や喜びを、高齢者が持つ古来からの知恵を巧みに交えながら、堅苦しくなることなく教えていく。教養的な観点からはもちろん、巧みな構成で番組での出来事や喜びを視聴者と共有することに成功した点も高く評価される。
優 秀 <長野放送> NBS月曜スペシャル 「聴診器を温めて~ある医療改革者の遺言~」 †
↑プロデューサー 山口慶吾 ディレクター・構成 宮尾哲雄 ナレーター 小山菜穂子
諏訪中央病院の元院長であり、国会議員でもあった今井澄さんの生き方を追った。インターン制度の廃止要求を発端とした東大闘争のリーダーだった彼は、医師となり「病院のいらない地域づくり」を目指して、病気の予防活動に力を注ぐ。聴診器を手で温めて診察する姿に表れるように、常に患者の立場にたった医療を心がけていた。今井さんの人生を通して、患者本位の医療とは何かを深く考えさせるヒューマンドキュメント。
優 秀 <石川テレビ放送> もう一つの学校 ~金沢中央高夜間部の1年~ †
↑プロデューサー・ディレクター・脚本 赤井朱美 ナレーター かわのおとや 構成 佐藤公彦 出演 髭與志雄
年間10万人を超える高校中退者。その受け皿のひとつ、金沢中央高校夜間部を1年にわたり取材した。中途退学者、不登校経験者など挫折を味わった若者の成長と、彼らに正面から向き合う教師たちの日常を描きながら、今、教育現場に必要なものは何かを探る。長期にわたり築き上げた取材対象者との信頼関係をベースに、若者の感情の揺れや葛藤を自然なカメラワークで表現した秀作である。
優 秀 <朝日放送> 光は遠くにありて ~拉致被害者家族の闘い~ †
↑プロデューサー・ディレクター・構成 石高健次 ディレクター 宮沢洋一 ナレーター 寺田 農 撮影 小林暢介
北朝鮮は2002年9月の日朝首脳会談で拉致の事実を認めた。その後、被害者5人は祖国の土を踏んだが、その家族の処遇や死亡と発表された他の拉致被害者8人の真相はいまだ闇の中である。拉致が「疑惑」だったころからの10年間に及ぶ積極的な取材で築きあげた信頼が、記者会見や集会などでは見せない親たちの悲痛な思いを引き出していく。現在進行形で結論が出ていない問題に正面から取り組んだ意欲作である。
優 秀 <広島テレビ放送> ~スーパーモデル御用達~ ニッポンの筆 世界に挑む †
↑プロデューサー 望月公正 ディレクター・構成 堀川惠子 編集 道閑慎一 撮影 藤田一成
広島県熊野町は全国シェア8割を誇る書道筆の産地。近年は需要が減り、倒産する業者が相次いでいる。そんな中、倒産寸前の状態から化粧筆に転向し、世界のメイクアップアーティストに認められるまでに成長した企業を追った作品。ものづくりの原点を伝えるとともに、職人肌の社長と合理主義者である息子との間の会社経営をめぐる溝や葛藤を伝えることで、現代社会の一面を浮き彫りにした厚みのある番組になっている。
優 秀 <長崎放送> だんだん坂こえて †
↑プロデューサー 大野陽一郎 ディレクター 城代奈美 ナレーター 林田繁和 撮影・編集 中島三博
斜面に整然と並ぶ家々や情緒溢れる細い路地は、坂の町、長崎の魅力のひとつだ。しかし、長い階段や細い路地は住人に深刻な問題を与えている。だんだん畑に建てられた住宅地には車が入れず、車社会に慣れた若者は土地を離れ、老人ばかりのコミュニティーになっていく。坂が老人を外出から遠ざける。坂の町の日常と行政の対応を巧みな映像表現で淡々と伝えていくことで、自然な形で視聴者に「人間の居場所とは何か」を問いかける。
テレビエンターテインメント †
↑最優秀 <信越放送> 民教協スペシャル 「いのちと向きあう~皆の宗・高橋住職の挑戦」 †
↑プロデューサー 善財 優 ディレクター・構成 野沢喜代 ナレーター 樹木希林 出演 高橋卓志
長野県松本市の神宮寺は、古い歴史を持つ臨済宗の名刹である。高橋卓志住職は、禅寺の伝統を引き継ぎながら、福祉、医療などさまざまな社会問題に取り組んでいる。納得できるお葬式を実演・提案する「お葬式の見本市」など多彩な催しが行われる。「生きている人間の苦悩に向き合うのが本来の仏教」。重いテーマを明るく、笑いとユーモアに包んで行動する高橋住職の活動を、住職の母親の視点から取り上げる。住職のキャラクターを力まずに表現することで、番組全体を上質なエンターテインメントに仕上げている。
優 秀 <札幌テレビ放送> 平和ってなんですか… 札幌こどもミュージカル500日の軌跡 †
↑プロデューサー 今田光春 ディレクター 山本典弘 ナレーター 酒井法子 撮影 山口亮彦
2002年8月9日、札幌の子どもたち50人が長崎市で「原爆」をテーマにしたミュージカルを上演した。平和の大切さを伝えなければとの思いで舞台に取り組む「札幌こどもミュージカル」代表の細川眞理子さんに対し、子どもたちには戦争の悲惨さをはじめは理解できない。しかし、当時の体験者から話しを聞くことで、より臨場感のあるミュージカルが創られていく。「戦争世代」と「平和な世代」の交流を通じ、平和の尊さが伝わる力作。
優 秀 <テレビ東京> 田舎に泊まろう!スペシャル †
↑プロデューサー 大島信彦 ディレクター 井関勇人 構成 松井 尚 総合演出 五十嵐洋文
有名人が田舎を訪ね、普通のお宅に突然お願いして一泊させてもらい、翌日、一宿一飯のお礼に何かを残して帰京するという新感覚の紀行番組。田舎の一般家庭の暮らしぶりを通し、都会生活からは失われつつある人情やおおらかさを丁寧に描く。“意外な訪問者”を受け入れる人々の反応やタレントの人間性がうまく描き出されるとともに、地方の魅力を十分に感じさせてくれる。
優 秀 <北陸放送> 雑草の駅 †
↑プロデューサー 西川嘉一 ディレクター 中崎清栄 ナレーター 上原一美 構成 辻本昌平
山間の寂れた町にある「のと三井駅」は2001年春に廃駅となり、商店街はより一層人が集まらなくなった。駅周辺のおじさんたちは寂れた町を少しでも人の集まる所に戻そうと、廃駅でのイベントを始める。ハワイアンの演奏でのビアガーデン、錆びた線路に走らせるおんぼろトロッコ。何をやっても空回りで人は集まらないが、彼らの取り組みには何か伝わるものがある。小さな町に暮らす人々を暖かい眼差しで映像化することに成功している。
優 秀 <読売テレビ放送> 西田二郎の「無添加ですよ!」 †
↑プロデューサー 勝田恒次、小坂展子 ディレクター 西田二郎 構成 倉本美津留
事前準備も何の仕掛けもない視聴者参加番組が本当に成功するのか。大阪駅で街行く人に「携帯電話を持って京都方面へ走ってもらえませんか?」と交渉するところから番組がスタート。走れるところまで走ってもらい、次の走者へと繋いで行きながら、京都駅までの44.6kmの走破をめざす。すでに生活の一部となっている“携帯電話”に反応する現代人のさまざまなリアクションを引き出し、笑いを誘う意欲的な作品。
優 秀 <瀬戸内海放送> うなぎのしっぽ、捕まえた!? †
↑プロデューサー・ディレクター 満田康弘 撮影 有吉俊典 出演 板東英二、乾貴美子
日本人になじみの深い魚であるウナギ。我々にとって身近な魚でありながら、その生態はいまだに謎に包まれている。東京浅草の老舗鰻屋を舞台に、激減する天然ウナギに代わり外国から輸入される養殖ウナギの現状や世界各国の食文化、ウナギ研究の最前線を紹介しながらさまざまな角度からウナギの謎に迫る。硬軟の話題をうまく織り交ぜ、見る者を最後まで飽きさせない巧みな構成は見事である。
優 秀 <長崎放送> ナガサキノニナイテ 長崎を救え! †
↑プロデューサー 大野陽一郎 ディレクター・構成 大田由紀 ナレーター 熊切秀昭 撮影・編集 宮下康弘
観光客の数は減り、建造中の豪華客船の火災までもあり、長崎はこのところあまり元気がない。これではいけない!と長崎の大学生が集まり、長崎を元気にするPRのCMを制作しようと立ち上がった。本格的な作品を制作するために、映画監督の緒方明さんがアドバイザーとして参加し、監督の指導のもと、チームそれぞれでCM制作は進む。3カ月間のCM作りを通して変わっていく現代の若者の活力をうまく映し出し、好感が持てる作品である。
テレビドラマ †
↑最優秀 <WOWOW> センセイの鞄 †
↑プロデューサー 大村英治、藤田純夫 ディレクター 久世光彦 原作 川上弘美
37歳で一人暮らしをする月子と、初老を迎えた高校時代の国語の先生との、再会と恋愛と別れを描く秀作。主人公の二人に加え、先生の元の妻や、月子の同級生、二人が再会する居酒屋のおやじなど、登場人物一人ひとりの人生が浮かび上がってくる久世光彦の演出が素晴らしい。主役の小泉今日子、柄本明、脇役の樹木希林、加藤治子、モト冬樹らの俳優陣もしっかりとした演技で、ドラマの世界を支えている。原作、脚本の構成も見事で、音楽やカメラの使い方にも隙がない。人と人とのふれあい、男女のぬくもり、感情の微妙な揺れ、そうした暮らしのヒダのなかから、生きることの美しさ、豊かさを感じさせるテレビらしいドラマである。
優 秀 <北海道テレビ放送> スペシャルドラマ 夏の約束 †
↑プロデューサー 四宮康雅 ディレクター 多田 健 音楽 増本直樹 撮影 小川洋一
母の希望に背いて東京で女優となった娘が、母が倒れたことを知り、5年ぶりに知床に帰ってくる。5年の間に母は見知らぬ少女と実の娘のように接していたことを知り、ショックを受けるが、再び倒れた母を前に、テレビドラマの主役になるチャンスを捨てて、母の側にいる選択をする。ふるさととは何か、人生で成功するとはどういうことなのか、そうしたことも考えさせられる。夏川結衣、倍賞千恵子の二人の演技にも好感がもて、娘と母との情愛のありようが、知床の自然を背景に爽やかに描かれている。
優 秀 <フジテレビジョン> 天使の歌声~小児病棟の奇跡~ †
↑プロデューサー 栗原美和子 ディレクター 光野道夫 脚本 龍居由佳里 出演 松浦亜弥
2歳のときに卵巣がんになり6歳までを小児病棟で過ごした、実在の少女より子と、それを支えた母親のドラマ。のちにミュージシャンとなった少女と母親の手記を原作に、難病を克服した人への同情や憐憫ではなく、共感を基調とした作品に結晶させた。ドラマは14歳になった少女の揺れ動く気持ちを追いながら、生きることの意味を問いかける。少女は、病気とともにあった自分の人生と普通に生きてきた同級生の間のギャップに悩み、小児病棟でともに過ごした子どもたちの中で自分だけが生き残ったことを知り、煩悶する。そんな彼女を支えるのは、小児病棟で学んだピアノと音楽だった。主演の松浦亜弥の演技も素晴らしく、出色の作品となっている。
優 秀 <中部日本放送> 山田太一スペシャル2002 「旅の途中で」 †
↑プロデューサー・ディレクター 山本恵三 脚本 山田太一 出演 竹下景子、奥田瑛二
「一日、奥さんを100万円で貸してもらいたい」「一緒に歩くだけでいい」。老紳士が突然、初対面の夫に切り出す。場所は豊橋市の理容店。この荒唐無稽な申し出に、夫婦仲に微妙な隙間風が吹いていた理容師夫妻の気持ちは揺れる。奇妙なデートを始めた妻は、若いときの老紳士の妻に似ていると言われる。老紳士は痴呆症となった妻の介護に疲れ、交通事故にあった妻を病院におきざりにして、逃避旅行中であった。高齢化社会の介護問題を背景に、リズム感のある会話のやりとりを通して、夫婦とは何か、人生とは何かが描かれる。山田太一の脚本にもとづく、手堅くまとまった品の良い作品である。
優 秀 <毎日放送> こどもの日ドラマスペシャル「シンシア~介助犬誕生ものがたり」 †
↑プロデューサー 日高英雄 ディレクター 竹園 元 脚本 清水有生 出演 富田靖子
このドラマは、交通事故により重度の障害者となった木村佳友さんと妻・美智子さん、そして介助犬であるシンシアの実話をもとにしている。介助犬とは、肢体の不自由な障害者のために、物を拾い上げ、扉を開けるなど日常生活を手助けする犬のこと。木村さんたちの努力が実り、2002年5月に成立した身体障害者補助犬法でようやく公的に認められた。作品は、木村さんの交通事故、子犬であったシンシアとの出会い、介助犬としての訓練などを描くことで、まだまだ知られていない介助犬の実態を伝える。障害を乗り越えていく夫妻の絆を軸に、人と人、人と犬の心の通い合いが感動を呼ぶ。
CM部門 †
↑ラジオ第1種(20秒以内) †
↑最優秀 <文化放送> 吉野家ディー・アンド・シー/牛丼「なみが、きた」(20秒) †
↑ディレクター 五井千鶴子 音楽・サウンドエフェクト 玉井和雄(フリー) 録音技術 久保田正三
波の音で始まる。その音がひときわ高くなり、大きな波が打ち寄せたその後に、「なみが、来た」と重厚な一言。一体何のCMなのか?と思ったところ、「吉野家の牛丼、並盛り280円」というナレーションでしめくくられる。「波」と「並」の語呂合わせは決して目新しくなく、シンプルな作りだが、インパクトがあり完成度が高い。演出の力を感じる作品である。
優 秀 <文化放送> かつみ不動産/企業PR「ですけど…」(20秒) †
↑ディレクター 五井千鶴子 音楽・サウンドエフェクト 玉井和雄(フリー)、内ヶ崎秀行(フリー) 録音技術 久保田正三
夫が出て行ってしまい、広いマンションから手頃な部屋に住み替えを考えている女性が、不動産屋に相談している。地域に密着した地元の不動産屋は、取り扱う物件のあらゆることに通暁しているため「ひと部屋空いてはいるんですけど…」と口ごもる。「ですけど?」女性の問いに、「隣にダンナさまが住んでいらっしゃいます」。ユーモラスな表現が広告主の好感度を高めることに成功している。
優 秀 <エフエム栃木>下野新聞社/企業PR「読んでる人は 編」(20秒) †
↑プロデューサー 桜井健雄 ディレクター 山崎志朗(アビックスタジオ金沢) 構成・コピー 田中真輝(フリー) 出演者 風李一成(フリー)
「おおーい!誰かいませんかー。おーい」男が叫んでいる。どうやらあたりに人影が無いらしい。男の悲痛な声は続く。「おおおーい!誰か返事してくれえー! 一体何があったんだよー!」何の説明もないまま「読んでる人は知っている 下野新聞」というナレーションでCMは終わる。サスペンスタッチの展開、ラジオならではのイマジネーションを刺激する手法に工夫が凝らされた印象に残る作品である。
優 秀 <中部日本放送> ヤマサちくわ/ヤマサのちくわ「アマリリス」(18秒) †
↑プロデューサー 羽雁 彰 ディレクター 江良純治 出演者 住宅正人(笛演奏/岡山市在住)
誰もが知っている「アマリリス」の曲が、笛のような音色で聞こえてくる。ナレーションによって、実はちくわで作った笛で演奏されていることが明かされる。リスナーの興味を引き付けておいて、「うまいちくわは、食べればわかります」と締めの言葉。ラジオCMの特性を十分に発揮した作品である。
優 秀 <エフエム中九州> 熊本日産自動車/企業PR「透明人間」(20秒) †
↑プロデューサー・ディレクター 瀬裕章 構成・コピー 小林真也(フリー) 録音技術 陣内稔(中央録音システム)
透明人間が、熊本日産自動車にこっそり侵入する。姿が見えないはずなのに、店員から「いらっしゃいませ」と歓迎される。「あれ?何でわかるの?」。いぶかしがる透明人間に「だって心と心が通じ合っていますから」との返事。絵にできない“透明人間”というキャラクターの選択が、リスナーの想像力を喚起させインパクトのある作品である。
ラジオ第2種(21秒以上) †
↑最優秀 <ニッポン放送> 日本音楽著作権協会/企業PR「おやじ」(90秒) †
↑プロデューサー 藤井正博、梅津 裕(日本音楽著作権協会)ディレクター・構成・コピー 中山佐知子(ランダムハウス) 構成・コピー 岡田真平(ランダムハウス)
我々の生活に欠くことのできない音楽。このCMでは、ヤクルトスワローズの私設応援団長であった故岡田正泰さんと応援歌「東京音頭」にまつわるストーリーを通して、音楽の魅力を伝えている。音楽のそばにはいつも物語があり、次の時代にも新しい音楽と物語を生むためにJASRACが存在しているというメッセージを、声高にではないが、しっかりと伝える秀逸な作品である。
優 秀 <文化放送> ハウス食品/企業PR「もとの速さで」(60秒) †
↑ディレクター 五井千鶴子 音楽・サウンドエフェクト 玉井和雄(フリー) 録音技術 久保田正三
現代は、歩くスピードや話すスピードなど、全てのスピードが速くなってきている。音楽の「中くらいの速さ」も、20年前と比べるとずいぶんテンポアップされている。そしてかつてはゆっくりだった食卓の風景も。メトロノームの音を効果的に使って、食生活の乱れを指摘し、食事を楽しむ習慣、食卓の文化を支える企業姿勢を上手くPRしている。
優 秀 <エフエム東京> サントリー/樽ものがたり「リスの忘れもの」(180秒) †
↑プロデューサー 林屋創一 ディレクター 巻島英司(電通)構成・コピー 中山佐知子(ランダムハウス) 出演者 久世星佳(シス・カンパニー)
ウイスキー特有の色や香味は、樹齢100年を越えるオーク材を利用した樽によってもたらされる。その樽の木は、家具材として再利用され、テーブルや椅子に生まれ変わる。このCMは、森で100年、樽で半世紀以上、さらに家具として数十年を生きるホワイトオークの一生を180秒で描いた力作である。ホワイトオークを一人で演じた語り手の力量も、高く評価された。
優 秀 <中部日本放送> 全国珠算教育連盟 愛知県支部/そろばん「宇宙でパチパチ」(45秒) †
↑プロデューサー 羽雁 彰 ディレクター 江良純治 出演者 長嶝高士(アーツビジョン)
コンピュータが作動しなくなってしまった宇宙船が作品の舞台である。このままでは地球に帰ることができない…とそのとき、いきなりそろばんを取り出し、計算を始める船長。船長の「ご名算」により、危機を脱するというストーリーである。そろばん教室のターゲットである小学生の興味を引くと同時に、コンピュータの時代にあってもそろばんの良さを伝える企画意図が的確に表現されている。
優 秀 <南日本放送> 坂元醸造/坂元のくろず「あんたがたどこ“す”」(39秒) †
↑プロデューサー 中間芳昭 ディレクター・出演者 上野知子 出演者 小澤達雄
「坂元のくろず」は、米と米麹と天然水を原料に、野天に並べた壷で発酵・熟成する伝統的な壷作りの米酢である。このCMは、わらべ唄「あんたがたどこさ」の替え歌とナレーションで構成されている。木魚の音に乗せた歌で、懐かしさと素朴さを表現しつつ、替え歌の歌詞で「坂元のくろず」の美味しい飲み方まで紹介している。商品の親しみやすさを上手く表現した点が評価された。
テレビ †
↑最優秀 <石川テレビ放送> 石川テレビ放送/自社PR「『石川さんだね』篇」(15秒) †
↑プロデューサー 堀勘四郎 ディレクター 山内秀範(阿?) 音楽・サウンドエフェクト 小川小一郎(ドゥクリエイション) アニメーション 柳谷内正志(バルデザイングループ)
開局35周年を迎えるにあたって、石川テレビ放送では「石」の文字を人の顔にデザインしたキャラクター“石川さん”を作った。このCMは、川を流れてきた石からまるで桃太郎のように“石川さん”が誕生するという誠にシンプルなアニメーションである。このシンプルすぎるとも言える潔さが印象的で、好感度の高い作品である。
優 秀 <北海道放送> ハコダテ・スローマップ/ハコダテ・スローマップ「スローライフを…函館で」(60秒) †
↑プロデューサー 進藤幸治 ディレクター 泉 雄貴 音楽・サウンドエフェクト 依本慎二(セントラルオフィス) 撮影 稲沢英俊(HBCメディアクリエート)
観光都市函館を、ガイドマップとは違った切り口で紹介する地図が「ハコダテ・スローマップ」である。地図に掲載されているスポットは、「スロー」をキーワードに選ばれている。スローフードを提供する店、スローライフに欠かせない場所、それら「ありふれた日常」の風景を、魅力的に表現した作品である。思わず「ハコダテ・スローマップ」を手に、函館の街を訪ねたくなる作品に仕上がっている。
優 秀 <中京テレビ放送> トヨタ自動車/企業PR「椰子の実」(90秒) †
↑プロデューサー 伊豫田祐司 ディレクター 水原 弦(博報堂) 構成・コピー 高橋 真(博報堂) 音楽・サウンドエフェクト 福岡ゆたか(フリー)
民俗学者柳田國男は、渥美半島先端にある伊良湖岬に漂着した椰子の実を拾い、日本人は黒潮の流れに沿って「海上の道」をやってきたという考えを終生持ち続けた。このCMは、柳田國男と島崎藤村の「椰子の実」の歌のエピソードを軸に、印象的な海の映像を織り交ぜて、地球環境の大切さを訴えるトヨタ自動車の企業姿勢をPRすることに成功している。
技術部門 †
↑最優秀 <フジテレビジョン> 統合型 字幕制作・送出システムの開発 †
↑研究・開発担当者 西山清之、中沢 学
テレビ文字多重放送の機能のうち、字幕放送に必要不可欠な機能を集約したうえ、制作・送出現場のノウハウを活かし、操作性・運用性の高い、ノート型パソコン上で動作する字幕放送用制作・送出統合ソフトと超小型インサーターを開発・実用化した。これにより、既存のマスター設備を改修せずに、低廉かつ容易に字幕放送の実施が可能となり、民放事業者における字幕放送の普及・拡充に大きく貢献した。
優 秀 <札幌テレビ放送> デュアル回線セントラルキャスティング方式プログラム差替えシステム †
↑研究・開発担当者 猪飼正和、野尻武文、原 敏志、長坂清治
メイン回線である道内用配信回線にサブ回線として放射状の圧縮回線網を加え、これらをネットキュー信号とそのユーザーズビット情報により演奏所から自動的に切り替え、道内基幹局ごとにCM・番組のローカル差替えを行うシステムを開発・実用化した。これにより、道内基幹局の無人化を図るとともに、早朝時間帯のローカル差替えや緊急の素材変更などが容易に対応可能となり、地域に密着した情報提供の充実に貢献した。
優 秀 <エフエム東京> JFN情報ネットワークシステム †
↑研究・開発担当者 青木 滋、川島 修、仁平成彦
ADSLや光ファイバーなどのインターネット網を用いた仮想専用線(VPN)を構築してJFNネットワーク38局を結び、電子ファイル化した音声番組をオンライン配信し、各局の編成・キューシート情報を一元管理するシステムを開発・実用化した。これにより、迅速な番組配信と運用コストの大幅な削減を実現するとともに、各局間の番組編成情報の共有化が可能となり、番組配信・情報システムの発展に貢献した。
優 秀 <毎日放送> TS統合監視装置の開発 †
↑研究・開発担当者 小川輝範、井上 豊、堀 誠、藤田泰成
多チャンネル放送や携帯端末向け放送・データ放送などの複数サービスを一つに束ねた地上デジタルテレビ放送のTS信号を、送出系統内の複数ポイントで監視するとともに、これを法定同録したり、さらに番組内容検索等も可能とする統合的な監視装置を開発した。これにより、デジタル放送の送出系統内の不具合に対し、瞬時に対応することが可能となり、複数サービスの安定的な送出・運用に欠かせない自動監視システムの発展に貢献した。
優 秀 <朝日放送> バーチャルスタジオ キャリブレーション補助ソフト †
↑研究・開発担当者 月野 昌、水町勝利
汎用スタジオでのバーチャルスタジオ運用において、CG空間と実空間の整合性をとるための調整が簡単に行えるよう、カメラのポジションやレンズの光軸・ズームカーブのキャリブレーション作業を補助するソフトウェアを開発・実用化した。これにより、バーチャル技術に熟達していなくとも、精度の高いキャリブレーション作業が短時間で可能となり、スタジオ使用効率の向上と制作技術の省力化に貢献した。
優 秀 <読売テレビ放送> アナ変対策周知に効果的な中継局スーパーシステム †
↑研究・開発担当者 上田孝爾、林 俊明、谷知紀英
テレビ文字多重放送技術を活用する中継局スーパーシステムの開発・研究を長年継続して行い、演奏所からのリモコン制御やタイマー機能などにより、中継局単位で文字スーパーが表示可能なシステムを実用化した。これにより、アナログ周波数変更対策対象エリアの視聴者に対し、放送による告知を限定的に行うことが可能となり、アナログ周波数変更対策作業の効率化に貢献した。
優 秀 <中国放送> 狭い土地での中波アンテナ高能率化と短期間での指向性アンテナへの変更工事 †
↑研究・開発担当者 岡本義信、近藤寿志、平田公靖、河内庸彦
中波放送送信所の移転にあたり、アース面積の確保に工夫を施し、狭い土地においても高能率な中波送信アンテナを開発・実用化するとともに、完成間際での同アンテナの無指向性から指向性への変更工事を、周到な検討を尽くし、短期間で確実に実現した。これにより、新たなアース設置方法の有効性とともに、モデル実験およびコンピュータシミュレーションを用いた設計手法の有用性を示し、中波放送送信技術の発展に貢献した。
放送活動部門 †
↑ラジオ †
↑入 選 <青森放送> 「あおもりTODAY それ行け!お天気追跡隊」地域の天気をテーマにした放送活動とその成果 †
↑実施責任者 夏目浩光
気象予報士の工藤淳をゲストパーソナリティーに、聴取者から寄せられる質問・疑問、全国の気象予報士への電話インタビューなどを通じ、生活に密接にかかわる天気の基本知識をみんなで楽しく共有できる番組。放送開始以来4年間で紹介した知識・情報は冊子「お天気ガイドブック」にまとめリスナーに無料配布している。自然に対するおそれや自然の恵みにも、聴取者の関心を呼び起こさせてくれる。
入 選 <ニッポン放送> ティーンズリスナーに向けた防災啓蒙活動 †
↑実施責任者 田中厳美
20秒のスポット「防災一口メモ」を1980年から放送し、防災の啓蒙活動に努めてきた。昼間のアダルト向けゾーンで放送されてきたその「防災一口メモ」が、今年3月発生した埼玉北部の地震を契機に、夜間のメインターゲットである若者へ向け大幅改編され、4月新たにスタート。「オールナイトニッポン」のパーソナリティーを起用した親しみやすさと啓蒙スポットの完成度の高さから、ティーンズリスナーの反響も大きい。
入 選 <山梨放送> ラジオと童話~読み聞かせが育む親子の絆 †
↑実施責任者 小沢睦美
童話を朗読し、放送後の「親子の語らいの時間」を設けてもらうことを狙いに平成12年スタート。当初より番組の枠を越え、子育てサークルや教育現場・図書館でのおはなし会、創作童話絵画展など県民と直接ふれあう機会を設けてきた。初のレギュラー・ネット番組として長野、新潟でも放送される。「親子の絆」を核に聴取者や地域とのつながりを大切にした活動内容に、今後さらなる広がりが期待される。
入 選 <福井放送> 歌でつくる聴取者(リスナー)との輪 「世界にたったひとつ…あなたの歌をつくります」 †
↑実施責任者 岩本和弘
リスナーから募集した歌詞に曲をつけ、作詞者宅を訪問して曲を披露する双方向型の番組。スタートから4年、完成した曲はおよそ150曲。またコーナーから生まれた曲をまとめて披露する「リスナー参加型コンサート」は番組の枠を超え、大きな広がりをみせている。パーソナリティーとリスナーの1対1の関係にとどまらず、リスナー同士の出会いを築き、局と出演者、地域社会が共感から行動へと一大ムーブメントを引き起こしている。
入 選 <京都放送> KBS京都の水害防災への取り組み~防災キャンペーン~ †
↑実施責任者 野田清行
災害が起こったら地域メディアには何ができるだろうか――。淀川水系が氾濫した場合を想定した特別番組の放送が大きな反響を呼んだ。災害の危険性を一方的に伝えるのではなく、パーソナリティー、アナウンサー、ディレクター、報道スタッフ、リスナーが一緒になって被災地を訪れ、水害のすさまじさを体感するツアーも決行。こうした立体的かつ継続的な取り組みは災害予防の啓蒙活動として評価に値する。
入 選 <山口放送> 17日は節目の日 阪神淡路大震災8年と5か月の放送活動 †
↑実施責任者 勝津正男
阪神淡路大震災から8年余。被災地での取材活動は、震災3日後の「毛布を送ろう!」との呼びかけを契機に始まった。1カ月後、毎月17日を「節目の日」に決め被災地の様子を伝え、リスナーと双方向で地震や自然災害について考え続けた。並行して「災害マニュアル」を見直し、より実践的なものに改訂。ラジオの即時性を生かした独自ネットワークも構築した。活動内容は神戸の地元メディアでも紹介され、反響を呼んだ。
入 選 <南日本放送> 「風の島唄」と奄美民謡をめぐる活動 †
↑実施責任者 上野知子
奄美特有の文化「島唄」は元ちとせさんで全国的な脚光を浴びたが、生活の中で島唄を歌う機会は急速に減り、後継者不足が危惧される状況にある。そうした中、平成9年にスタートした活動は、日本復帰50年の節目を迎えた今年、集大成となる島唄コンサートを開催するに至った。ふるさとの象徴「島唄」を全国へ、さらに世界へ発信し、番組とタイアップさせながら継続させることに成功した力強い企画である。
テレビ †
↑入 選 <テレビ岩手> 「いわての花鳥風月 冬編」 †
↑実施責任者 野田喜代志
自然とともに生きた先人の確かな知恵と風土を活かした普通の暮らしの中に、岩手の「花鳥風月」を探す。残しておきたい岩手の四季と生活を再確認してもらうのが狙い。冬編では、馬の里・軽米町で農耕馬を飼育する細谷地家の生活を中心に、寒さを利用した食べ物、雪を利用した保存法などを取り上げた。番組はDVDにして各教育機関に配布している。地味ながらも、地元・岩手の日常生活を掘り下げ、見直しした点は評価に値する。
入 選 <東京放送> ニュースの森「森田さんお天気ですかァ?」 †
↑実施責任者 武石俊孝
夕方の「顔」となって今年で15年を迎えたお天気キャスター森田さん。動く天気図、エリア別時系列天気予報、ウェーザーナビなど最先端技術をいち早く取り入れた天気予報に加え、季節にこだわった生中継、天気にまつわる面白情報などの工夫を凝らし、現在の天気番組の原型を作ったパイオニアといえる。キャスターの問題意識も明解で、民放ならではの「視聴者に親しまれ、信頼される」天気番組の質の向上に大きく寄与したといえる。
入 選 <長野放送> NBS「道キャンペーン」 †
↑実施責任者 小林新一
総延長で全国4番目という長野県の「道」をキーワードに、「シリーズ番組」「イベント」「出版」を3本柱にキャンペーンを展開。番組は年3~4本制作され、ゴールデン枠で放送。食や芸能など街道文化を集めた「信州夢街道フェスタ」、外国の街道・古道に学び新たな提言を求めた「国際みちシンポジウム」など連動イベントがうまく融合している。地元みこしの復活など、地域に密着した地道な活動が地元・長野県の活性化に結びついている。
入 選 <名古屋テレビ放送> メ~テレワイド スーパーJチャンネル「怒~なの!」 †
↑実施責任者 田中俊男
視聴者=市民の「怒り」の声を代弁し社会に叫ぼうと2002年5月よりスタートした週1回のニュース・コーナー。なかでも公費の無駄遣いを検証する企画にこだわり、最近は取材拒否さえうけるほどに浸透しつつある。取材は「見る」「聞く」「調べる」「疑似体験」しながら解決の糸口を模索する形で一貫し、放送をきっかけに実際、問題解決につながったケースは数多い。地元に密着したテレビ局の一つの役割を示すものとして、称揚に価する。
入 選 <朝日放送> 国家と世界を動かした 拉致報道 †
↑実施責任者 石高健次
2002年9月17日の日朝首脳会談で、北朝鮮・金正日総書記は拉致を認め、謝罪。その結果、拉致被害者5名が24年ぶりに故国への生還を果たした。始めて政治が動いたきっかけは、「横田めぐみさん拉致疑惑」の発掘・報道にあったといっていい。10年以上にわたる拉致取材と映像の積み重ねは、日朝首脳会談以降の放送活動の面でも、事件の全体像検証や新たな事実の発掘を可能にした。その功績とともに、今後とも拉致被害者の救出と全容解明に期待される役割は大きい。
入 選 <山口放送> 母親たちと共に ~テレビ家庭教育番組「はつらつ山口っ子」30年の活動~ †
↑実施責任者 赤瀬洋司
1973年から家庭のあり方と教育の原点を考えていこうと番組はスタート。少子化が進み、子育ての社会基盤が変化した現在、母親たちの不安や悩みは一層大きくなっている。3年目からは視聴学習グループをつくり、番組モニターや意見交換会などを開催しているが、任期(1年)を終えたあとも自主的な活動を続けている母親がほとんど。当初の局主導の活動は、いまやその枠を越えて広がっており、大きな成果を上げている。
入 選 <南日本放送> ハンセン病問題に関わる一連の報道活動 †
↑実施責任者 陶山賢治
「らい予防法」が廃止された1996年、未曾有の人権侵害の実相を明らかにすべく取材チームがつくられ、以後放送回数は160回を超える。ハンセン病訴訟の勝訴後にシンポジウムを開き特別番組で放送すると同時にブックレットで出版。責任の所在を7年間にわたり追及した息の長い活動は、ブックレットを県内すべての小中高校に寄贈し教材として活用されている点も含め、ハンセン病問題の県民への啓蒙に大きく貢献している。
統一キャンペーンスポット部門 テーマ:「守ろう地球環境」 †
↑ラジオ †
↑最優秀 <J-WAVE> 氷のささやき(60秒) †
↑制作責任者 大谷 恭代
南極の氷は、何万年も前の空気を大量に含んでおり、悠久の時を感じさせる。本作品は南極の氷が溶ける時のパチパチという、泡のささやきのような音を聴かせることで、聴取者を惹きつける。昨今の環境破壊によって、南極の氷も近未来には汚い氷になってしまうかもしれない。我々は、心の洗われる、氷のささやきをこの先も聴き続けることができるだろうか。本作品の、静やかで確然とした環境保護への訴えかけは余りにも痛切である。氷とともにささやきかけるナレーションも秀逸。
優 秀 <ニッポン放送> インコのピーちゃん(60秒) †
↑制作責任者 藤井 正博
現代の我々の生活はすっかり冷暖房に依存したものになっているが、実はそうした人間本位の行為が環境だけではなくペットにも悪影響を及ぼしている。ペットのインコ、ピーちゃんは普通なら年に一度生えかわる羽が何度も生えかわるようになり、鳴かなくなってしまった。病院で冷暖房の影響であると教えられた。羽が生えかわる時は激しい痛みを伴うという。ペットにとって優しい環境が省エネにも繋がり、地球環境を守ることになる、というメッセージがひしと伝わる作品である。
優 秀 <エフエム東京> 地球大家さん(60秒) †
↑制作責任者 山口 景子
賃貸住宅では、きれいに使えば退出時に敷金が戻ってくるのが通例である。本作品は、地球を大家さん、人類を地球に入居した住人という設定で、退出時のやり取りをユーモラスに描く。大家さんが、天井のオゾン層破壊、水回りの海洋汚染、庭の砂漠化など次々と目に余る汚れを指摘し、敷金の返還どころか追加料金を迫るというやり取りがコミカルに展開されるが、大家さんの指摘は現実の我々にとって決して大げさではない。追加料金の支払いを「それじゃあ50億年ローンで」とするあたり、なんとも耳が痛い。
優 秀 <中部日本放送> カエルの合唱(60秒) †
↑制作責任者 水野 真紀
カエルは、人間に比べて薄い皮膚で体が覆われており、少しでも環境が変化すると、すぐに影響を受けるデリケートな動物である。そのカエルが、田んぼの水路やあぜ道の整備、生息地である河川や湿地の破壊、酸性雨、農薬などの影響で減少しているという。本作品は、童謡「かえるのうた」を、実際の鳴き声も使用したラップ調の替え歌にし、かつては聞くことのできた、モリアオガエル、ダルマガエル、カジカガエルの合唱が、自然環境の変化でめっきり聞けなくなってしまったことを切実に訴え、環境破壊に警鐘を鳴らす。
優 秀 <毎日放送> 雨をみていたブナ(60秒) †
↑制作責任者 村上 晴久
大阪府南部に位置し、雨乞いの山としても知られる和泉葛城山の山頂には、国の天然記念物にも指定されているブナの原生林が広がっている。このブナの森は雨をたっぷり受け止め、やがてミネラル分を多量に含んで山を下り海に戻っていく。ところが最近では雨が集中的に降るために、雨が森で受け止められず、滋養の少ない水が海に流れていく。その結果、ふもとの漁港では海草が育たず、豊かな漁場が失われつつある。こうした現状をブナの長老の言葉で語らせ、そこに漁師の切なる訴えを交えて描く秀作である。
優 秀 <朝日放送> 心の声(60秒) †
↑制作責任者 高橋 寿英
赤ちゃんは言葉が話せないので、泣くという手段で意思表示をする。母親は赤ちゃんが何をして欲しいか、その心の声を泣き声だけで判断する。ソメイヨシノがこの50年で5日ほど開花が早くなったり、かつては九州でしか見られなかったナガサキアゲハが今では東京でも見られるのは、地球の温暖化が確実に進んでいることを如実に示す現象であることを訴え、赤ちゃんの泣き声と同じように、こうした現象こそが地球の心の声であり、自然環境の保護を求めている地球の泣き声に、母親のようにもっと心を傾けるべきたとする、訴求力ある作品。
優 秀 <南海放送> 資源を大切に!編(60秒) †
↑制作責任者 戎田 節子
産業廃棄物の不法投棄や、ゴミ処理施設の建設に際しての近隣住民とのトラブルなど、近年ゴミ問題はその深刻度を増している。本作品は、アナウンサーが、子どもとの素朴な問答をとおして「生活の中から出るゴミは、有限な地球の資源からできているのだから、物を大切に使わなければならない」ことを教えていく。問答の最後に子供が発した、「ゴミにしたら(地球の有限な資源からつくられた物が)かわいそうじゃもんね」という言葉に、環境保護への希望が感じられる。
テレビ †
↑最優秀 <中京テレビ放送> 「落葉の音色」~高山・大イチョウ~(60秒) †
↑制作責任者 白石吉彦
岐阜県・高山市の飛騨国分寺にそびえる樹齢1200年の大イチョウは、1年に1度晩秋の早朝の数時間のうちに一斉に落葉する不思議な現象をみせる。詩情豊かなこうした映像とまるで火が爆ぜるようなパチパチという音を立てて散るイチョウの葉の音色、感動しながら老木を見上げる人々の素直な表情。現代科学では解明されない神秘的な世界を通じてかけがえのない自然と地球の大切さが直截に伝わってくる。静かなナレーションと思わず視る者を引きつける映像が共感を呼ぶ秀逸なキャンペンーン作品である。
優 秀 <札幌テレビ放送> アイヌの心・木の帯(60秒) †
↑制作責任者 菊地璋子
自然と共存しその恵みを受けてきたアイヌの人達の自然に対する思いを美しい北海道の風景を巧みに織り混ぜながら描いた作品。自然の中に多くの神々を認め、自然への感謝と思いやりの心を守り続けている彼らが木の皮を剥ぐ時の習わしは、幹の3分の1周程度だけ剥ぐことと樹皮が風にとばされて木が枯れることのないよう、木の皮の帯を結び感謝の言葉を添える。自然を守ることが何よりも大切であるとのアイヌ古老の戒めの言葉が感謝の気持と現代人の自然に対する心がけのあり方を改めて思い起こさせる作品。
優 秀 <青森放送> よみがえる光(60秒) †
↑制作責任者 上原宏之
青森県のリンゴ農家にとって剪定ばさみは必要不可欠な道具。青森県名川町で“よく切れて長く使える”と評判の剪定ばさみを作る鍛冶職人が80年前に師匠が製作した剪定ばさみを修理し研ぎ直して蘇らせる。この作品は、「物を大切に使う」「必要な物は作って使う」という彼の言葉どおり、物を大切にする心とそれを実践する生き方に学ぶものがあることを津軽の自然を交えた映像で静かに訴える。
優 秀 <長野放送> 諏訪湖の御神渡り(60秒) †
↑制作責任者 宮尾哲雄
長野県・諏訪湖の厳冬期の風物詩として名高い「御神渡(おみわた)り」は、湖面の氷が寒暖差で収縮、膨張して亀裂となりせり上がる壮大な自然現象だが、近年は温暖化などの影響で発生しない年が多くなっている。この作品は、本年1月、5年振りに出現した「御神渡り」の起こる瞬間の撮影に成功、冒頭から迫力のある映像で視聴者を惹きつける。古来から農作物の吉凶をこの自然現象の出来具合で占う神事や江戸時代から発生日時などの記録が残っている事実を挿入しつつ、今諏訪湖という身近な自然に地球の温暖化の影響が及んでいることを強く訴えたながら、環境問題を考えさせる作品。
優 秀 <富山テレビ放送> 日本海ルネッサンス 森は海の恋人~循環と再生の文明~(60秒) †
↑制作責任者 中西 修
山の中にはためく大漁旗。一見して違和感のある導入部から富山湾の山と海の関係、海底湧水に象徴される太古から続く水循環の尊さ、自然との共生に取り組む漁師たちの姿を通じ、生命の循環と共生の必要性を巧みに訴えた作品。成長の限界が指摘され始めている現代の危機回避を意図し、山に降った雨が地表に取り込まれ地下水となり、10年以上をかけて海底から湧き出る海底湧水となる循環システムを示して、豊かな海は豊かな森に育てられるとわかりやすく表現した作品である。
優 秀 <毎日放送> 涸れゆく神の滝(60秒) †
↑制作担当者 三澤 肇
落差日本一を誇る那智の滝は、落ち口からの水流が三本あることから三筋の滝として信仰を集めてきたが、最近は深刻な水不足から三筋が二筋になってしまう。水不足の原因は、杉やヒノキの植林によって荒れた森では保水力の高い原生林が減って乾燥化が進んでいるため。観光地としても有名な那智の滝が上流からホースで水を引かなければ二筋となってしまう事実とその背景にある森の乾燥化をわかりやすく印象に残る美しい映像でわかりやすく表現し、植林という人工の森づくりのあり方を再考させる作品である。
優 秀 <読売テレビ放送> ドングリ大作戦(60秒) †
制作責任者 吉川秀和
乱開発により埋め立て地用の土砂が削られ、木々がなぎ倒されていくことに加え、不法に投棄される産業廃棄物が緑を荒地と化していく瀬戸内海の島々。タイトルの「ドングリ大作戦」とは、これらに対抗するために淡路島や小豆島、豊島など瀬戸内海の島々の26の小学校の生徒たちが10万個以上のドングリを拾い集め、秋に植えて水を遣り春に37,000本芽吹いたいうもの。生き生きとした表情で作戦に参加する子ども達のパワーが緑化の将来に期待を感じさせる作品。