一般社団法人 日本民間放送連盟

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表彰番組・事績

日本民間放送連盟賞/2007年(平成19年)入選・事績

平成19年日本民間放送連盟賞 ”NAB Awards 2007” 入選・事績

日本民間放送連盟賞は18年度から次のように変更されています。

  1. 「特別表彰部門」として『青少年向け番組』(番組を対象)および『放送と公共性』(事績を対象)の2種目を新設しました。
  2. 前年までの「放送活動」「統一キャンペーンスポット」の2部門をとりやめました。

番組部門

ラジオ報道番組

優 秀 <STVラジオ>果実酒はどこへ ~酒税法ってなんですか

プロデューサー 山谷 博  ディレクター 眞鍋浩史  ナレーター 急式裕美

ペンションで30年来、宿泊客に振舞ってきた果実酒が税務署から酒税法違反を指摘され、処分しなければならなくなった。だが、改めて調べてみると、酒税法が時代にそぐわないことがわかった。オーナーの無念さを伝えた放送が波紋を呼んで、酒税法への疑問は国会審議でも取り上げられ、税務署も次第に強硬な姿勢を変化させていく。一連の報道が酒税法見直し論議のきっかけとなり、キャンペーンとしても成功している。

優 秀 <文化放送>脳死移植10年の証言 第1部 ~進まぬ現実 第2部 ~アメリカの医療現場から

プロデューサー・取材 嶺岸宏枝  構成 石井 彰  技術 奥沢賢一  出演 鈴木純子

臓器移植法成立から10年を機に日本の脳死臓器移植の現状をリポートした第1部と、年間7,000例もの手術が行われ医療として確立しているアメリカに取材した第2部で構成。2007年2月現在、日本の移植は50例にとどまり、手術の機会を求めて海外に渡るケースは後を絶たない。その一方で、臓器売買や病気腎移植といった問題が発生している。関係者の証言などから“放置されたテーマ”、日本の移植医療のあり方を探った意義は大きい。

優 秀 <信越放送>栗林忠道からの手紙 ~それぞれの返信~

プロデューサー 久保正彰  ディレクター・ナレーター 生田明子  技術 宮澤拓朗  出演 秋草鶴次

映画「硫黄島からの手紙」で第二次大戦の硫黄島の戦いに改めて光が当てられた。戦いを指揮した栗林忠道中将は長野市松代町の出身。遺影、遺品の手紙、遺骨代わりにアメリカから贈られたという硫黄島の石などが生家に保存されている。番組では、硫黄島からの生還者や親族へのインタビューを交えながら、硫黄島から届いた手紙を読み解き、硫黄島の戦いに関心を持った地元高校生の心の変化を追いながら、平和への思いを伝える。

優 秀 <北陸放送>MROラジオ特別番組 2007年能登半島地震「山が動いた。~深見地区、帰れず~」

プロデューサー 野村 未来子  取材・ディレクター 八田静輔  構成 正岡 謙一郎  語り 森本レオ

青い海が広がり山の緑が美しい輪島市門前町深見地区。2007年3月25日午前9時42分、能登半島沖でM6.9の地震が発生。生活は一変した。がけ崩れで道路は寸断され、裏山の亀裂で集落への出入りも規制されてしまう。家に帰れるのは1~2年先と聞いた時の住民たちの動揺。過疎地域が地震に見舞われてからの2ヵ月間を丁寧な取材で追った。非常時に、マイクを向けられた取材対象がありのままを語る姿に、局への信頼感が感じられる。

優 秀 <毎日放送>アスベストの終わらぬ悲劇

プロデューサー 大谷邦郎  ディレクター 文箭祥人  技術 亀田悠一

日本全国に広がっていることが明らかになったアスベスト被害。国がもっと早くアスベストの危険性を公表していれば、被害は出なかったのではないか――。1940年に「石綿肺の発生状況に関する調査報告」が医師であり厚生省の役人であった人物によって書かれ、1972年には環境庁が海外の被害状況を報告していた事実がわかった。これから本格化するアスベスト被害に、責任の所在と救済のあり方について問題提起を試みた番組。

優 秀 <山陽放送>和ちゃんとワシ ~中年独身男の母親介護記~

ディレクター 石原正裕  アシスタントディレクター 森岡賢一  出演 野田明宏  ナレーター 東馬紀江

認知症を伴う家族の介護は、体験した者でなければその複雑な気持ちを理解できない。思うように動いてくれないことへの苛立ち、実の子どもでさえ他人と思ってしまう記憶喪失、体の機能衰退とその後始末。次第に追い詰められ、心中に至ることもある。介護地獄の中で悩み迷いながら、それでも母を介抱する野田さんのありのままを描いた秀作。ラジオならではの“空気感”が巧みに表現され、中年独身男性の介護に新鮮味すら感じさせる。

優 秀 <南日本放送>MBCラジオスペシャル 空白 ~志布志事件・暴走捜査の闇

プロデューサー 有山貴史  ディレクター 諏訪園 真人  ナレーター 美坂理恵

県議会議員選挙に絡んで多額の現金授受があったとされた事件で、鹿児島地裁は被告全員に無罪判決を言い渡した。が、判決までの経過を辿ると、執拗に自白を迫る取り調べや、裏づけのないまま進んだ強引な捜査が浮かび上がる。「でっち上げでは」との声に捜査当局は応える姿勢を見せず、真相をうやむやのまま葬ろうとの方針が見え隠れする。山間部の小集落を襲った強制捜査の顚末を取材班が丹念に追い、捜査の問題点を検証する。

ラジオ教養番組

最優秀 <青森放送>RABラジオスペシャル「哲ちゃんとちょんみ」~二人の条約の13年

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プロデューサー 大友寿郎  ディレクター 三浦明子  詩の朗読 青山良平

83歳の詩人・桜井哲夫(本名=長峰利造)さんは、17歳の時にハンセン病と診断されて以来、療養所生活を続けている。学生時代に桜井さんと出会った金正美(キム・チョンミ)さんは、他の入所者とは違う雰囲気を持つ彼の魅力に惹かれていき、互いをおじいさんと孫とする“二人の条約”を結ぶ。「哲ちゃん」と「ちょんみ」の二人三脚の旅は、ローマ法王との謁見に発展する。哲ちゃんの詩集に法王庁から感謝状が届いたのだ。
二人の深い信頼関係を軸に、哲ちゃんの詩とちょんみの飾らない語りを織り込みながら、差別や偏見を乗り越える心の交流と人生模様を伝える、迫力のある番組。

優 秀 <ニッポン放送>ラジオハートフルストーリー 車いすのパティシエ

プロデューサー 瀬尾 伊知郎  ディレクター 福田大介、白川陽子  パーソナリティ うえやなぎ まさひこ

平日朝のレギュラー番組『うえやなぎまさひこのサプライズ!』の人気コーナー「10時のちょっといい話」から、感動的な実話を紹介。同コーナーを基に出版された書籍の朗読、実話の主人公への取材、リスナーからの反響などで番組は構成される。殺伐としたニュースが多い中、市井の人の生きざまを丁寧に取り上げ、大晦日に心温まるエピソードを届ける。雰囲気のある朗読により、リスナーの共感を呼ぶ作りとなっている。

優 秀 <FM NACK5>命の船 病院船氷川丸

プロデューサー 清水 誠  構成 田家秀樹  出演 中村治雄(PANTA)  ナレーター 西村文江

横浜の山下公園に係留されている豪華客船・氷川丸は戦前、「太平洋の貴婦人」と謳われ、華やかに就航していたが、戦時中は一転、病院船として徴用された。当時、従軍看護婦であったロックミュージシャンPANTAの母は、赴任先であるペナンから氷川丸に乗船し、1945年2月、沈没の危機にさらされながら、命からがら帰国を果たす。関係者への取材を通じ、亡き母への思いと氷川丸の重い歴史が重ね合わされていく。PANTAが自らのルーツを探る過程で明らかになる史実と証言は、リスナーを引き込む。

優 秀 <中部日本放送>おっちゃんがいてくれた ~恕(じょ)心館(しんかん)・松井弓夫の13年~

プロデューサー 羽雁 彰  取材・構成 山室雅子  ナレーター 松浦亜弥  ミキサー 舘 一孝

1994年以来、1,000人以上の不登校、ひきこもりの子どもたちを「恕心館」で預かってきた、元高校教諭の松井弓夫さん。地域の人々にも支えられながら、子どもたちに真正面から向き合ってきた松井さんは、子どもたちから親しみを込めて「おっちゃん」と呼ばれている。しかし、この3月、惜しまれながらも恕心館は閉館する。リアリティのある音を通じて、地域の情景、人々の営みが脳裏に浮かび、松井さんという人物の魅力が最大限に描写されている。「人」と「音」がリスナーを惹きつける番組。

優 秀 <毎日放送>人型ロボットの未来 ~明るい陽射しと広がる影~

プロデューサー・ディレクター 大谷邦郎  ミキサー 田中貴久

研究・開発が加速する人型ロボットの世界。明るい面が強調されることの多い分野だが、専門家や研究者、弁護士、脳神経外科医らへのインタビューから、開発に潜む光と影が浮き彫りにされていく。番組では、これらの取材過程をドラマ仕立てにし、日本と世界でのロボットの捉え方の違いや、研究の成果や課題を面白くわかりやすく伝える。人間が持つ素晴らしい能力が、ロボットを通して明らかにされる。人型ロボットの二面性を分析する新しい試みであり、映像に頼らずにロボット開発の最前線に迫る構成が評価できる。

優 秀 <山陰放送>美保関事件 ~時の足音 今聞こえたり~

プロデューサー 大沢 忍  ディレクター 荒川和也、荒井 由岐子  朗読 桑本充悦

1927年8月、島根県美保関沖で、旧海軍の軍艦4隻が夜間演習中に衝突、119名が死亡するという、旧海軍史上未曾有の大惨事があった。軍事機密の壁に阻まれ、広く知られることのなかった事件。発生から80年を経て、沈没した駆逐艦艦長の遺児、五十嵐邁さんによるノンフィクション小説を基に、地元の人々の記憶や証言が徐々に掘り起こされていく。一般にはあまり知られていない出来事を発掘する中で、それを追いかける人間ドラマや、戦争の惨禍を後世に語り継ぐことの大切さを伝える、教養番組に相応しい内容。

優 秀 <エフエム鹿児島>きばれ!さつまっ子 ~郷中(ごじゅう)教育に学ぶ~

プロデューサー 佐藤 孝  ディレクター 森山和代  出演 有賀真姫、井門宗之ほか

西郷隆盛をはじめ、大久保利通や東郷平八郎などの国家的なリーダーを輩出してきた薩摩の国には、地域のつながりを大切にする「郷中教育」というシステムが存在した。番組では、“先輩が後輩を教え導く”という理念に基づいた郷中教育の紹介を通じて、現代の日本の教育に活用できる部分をクローズアップしていく。400年もの昔から鹿児島で継承される取り組みから、地域のネットワークと教育のあり方を探る企画は、地域の結びつきが薄い現代に向けた、熱いメッセージと言える。

ラジオエンターテインメント番組

最優秀 <青森放送>RABラジオ特別番組 山の声

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プロデューサー 橋本康成  ディレクター 山本 鷹賀春  演出 須藤喜夫  出演 アーサー・ビナード

自然をこよなく愛するアーサー・ビナードさんは、レギュラー番組出演のため毎月、青森を訪れている。まだ雪深い4月、山荘を営む芦沢吉朗さんの案内で初めて八甲田に登ったビナードさんは、ブナ林を吹き抜ける「山の声」を聞き、山麓では気づかなかった春の訪れを感じ取る――。ビナードさんの言葉から八甲田の情景がありありと浮かび、リスナーも一緒に山中を歩いているような感覚になる。自然音の使い方や間の取り方、構成、音楽など、あらゆる要素から想像力が喚起され、聴く者を飽きさせない心地よい番組。

優 秀 <文化放送>ラジオ生ドラマ 「芝浜」

プロデューサー 長谷川 実  ディレクター 吉住 由木夫  脚本 村上大樹  効果 玉井和雄

社屋の浜松町への移転にあわせて、浜松町という土地柄、年末の季節感と落語を題材に企画された生ドラマ。落語「芝浜」と現代の夫婦の物語を同時進行させるという独自の構成に加え、台詞、音楽、効果音、ナレーションのすべてを生で行うという試みに挑戦している。役者、演奏者、効果音それぞれの力量が名人芸的な表現力を持ち、「生でここまでできるのか」という驚きを生む。生ドラマの面白さを改めて伝える傑作。

優 秀 <長野エフエム放送>FM長野超常現象スペシャル THE U・F・O ~アナタは今夜奇跡を目撃する~

プロデューサー・ディレクター 田中利彦  パーソナリティ 丸山 周  リポーター 小林 新  技術 横内 究

茅野市の車山高原にリスナー300人を集め、公開生放送で“UFOを呼び出そう”という番組。未知の世界への夢を忘れつつある現代、会場からのUFOへの呼びかけや、リスナーの目撃情報などを交えながら、皆で夢を追いかける壮大な時間を提供する。
最近のトレンドからはずれつつあるUFOを取り上げる姿勢にラジオらしさが感じられるとともに、一生懸命「無意味なこと」を実践するパワーに圧倒される。生放送だから成立した、ライブ感を存分に伝える好企画。

優 秀 <福井放送>僕たちのRadio Days 山谷親平物語

プロデューサー 福本 実  構成・演出 重盛政史  取材 岩下直浩  ナレーター 岩本和弘

民間放送草創期に、自局で日本初の生ワイド番組を進行し、日本初のパーソナリティを名乗った山谷親平。「絶望は愚か者の結論なり」「継続は力なり」などの言葉とともに、62年の“ラジオ人生”を全うした。1956年の「芦原大火」、1963(昭和38)年の「38(さんぱち)豪雪」で、地域住民の視線に立った報道姿勢を貫いた山谷の人間像を、語録、証言、再現ドラマなどを基に描き出していく。
“ラジオパーソナリティの父”の魅力を題材に、活力あるラジオの時代を甦らせている。ラジオ自身がラジオの意義を考えようとする番組の姿勢は高く評価できる。

優 秀 <朝日放送>笑福亭銀瓶 ドリーム・オブ・マイライフ

プロデューサー・ディレクター 戸谷公一  構成 戸高 真弓美  出演 笑福亭 銀瓶

韓国語での落語に取り組む笑福亭銀瓶の活動にスポットをあて、韓国公演の模様や、師匠・友人らの証言を挟みつつ、韓国語落語に傾倒する銀瓶の胸の内に迫る。淡々と自らの本心を吐露するその語り口から、噺家としての真面目な姿勢や率直な性格とともに、韓国語落語の先に何を見ているのかが伝わってくる。
韓国公演の様子からは、文法の似た言語の使い分けを通じて“母語とは何か”という文化的な関心が喚起される。

優 秀 <南海放送>さようなら道後スペシャル「微笑み返し ~7人のゴースト~」

作・構成・プロデューサー 田中和彦  ディレクター・音楽担当 和田耕一  出演 戒田節子、桝形浩人

11月12日、本社移転に伴い最後の日を迎えた南海放送・道後局社屋。社内では昔からスタジオに現れる「霊」の噂が絶えなかったが、移転の日が近づくにつれ、その目撃例が増えていった。番組では、その霊を先輩たちの「ゴースト」と設定し、関係者への取材を通じて、南海放送の歴史を振り返る公開生ドラマに仕立てた。リアリティのあるエピソードと、懐かしさとともに未来への展望が込められる構成が、リスナーを惹きつけ離さない。

優 秀 <長崎放送>長崎に来ちゃった! 関東女のビックリ移住体験

プロデューサー 池田 みどり  ディレクター 村岡麻衣  ナレーター 塚田恵子  出演 友成由紀ほか

長崎に引っ越してきた、のざわのりこさんの漫画「長崎に来ちゃった!」をベースに、長崎ならではの行事、名物、風習に対するカルチャーショックを、のざわさん自身の体験を基にコミカルに伝える。シンプルでありながらも作り込まれた構成で、長崎の風習をラジオでアニメ仕立てに表現。エンターテインメントとしてのエッセンスを充分に兼ね備え、楽しく聴ける番組。

ラジオ生ワイド番組

優 秀 <青森放送>あおもりTODAY・木曜ラジオ雑貨店 ~民謡の先達を訪ねる・鎌田稲一(かまだいないち)~

プロデューサー 橋本康成  ディレクター 渡辺英彦  出演 古池 雄、松木宏泰ほか

ワイド番組内のレギュラーコーナーで、民謡界に大きく貢献した先達たちに光をあて、伝統・文化継承の大切さを伝える。今回の放送では、歌手・吉幾三の実父、鎌田稲一を紹介。鎌田は、一般にはほとんど知られていないが、実は津軽民謡の名手であり、旧金木町の伝統芸能「嘉瀬の奴踊り」を青森県の無形文化財にまで高めた人であった。鎌田の功績を振り返り、吉もまた鎌田家の芸の系譜の中にあることを浮き彫りにする。吉に「父にはかなわない」と言わしめた鎌田の哀愁を帯びた歌声が心に染みわたる。

優 秀 <文化放送>ドコモ団塊倶楽部 岡林信康

プロデューサー 石川秀二  ディレクター 塚本 茂  出演 岡林信康、弘兼憲史ほか

“団塊の団塊による団塊のためのラジオ番組”をコンセプトに、「島耕作シリーズ」などでお馴染みの漫画家・弘兼憲史と、団塊ジュニア世代の石川真紀アナのレギュラー陣が毎回、“団塊パーソナリティ”をゲストに迎えてトークと音楽を楽しむ。今回のゲストは、デビュー早々“フォークの神様”として崇められながら、70年代初めに田舎へ引っ込んでしまった岡林信康さん。“伝説の人”の本音をうまく引き出し、人間的な面白さ、数々のエピソードをじっくりと味わえる貴重な一本。

優 秀 <FM NACK5>NACK AFTER5 君の笑顔忘れない・・・いのちの風

プロデューサー 山村太郎  ディレクター 河村 靖  パーソナリティ ケイザブロー  構成 新井芳昭

月~木曜放送の夕方ワイド番組内で、最新ニュースや社会問題をテーマに、リスナーと意見を交わすコーナー。3日間にわたり“生と死”について考えた。30歳代という若さで癌と闘う「池ちゃん」から寄せられたメールをきっかけに、自らの母や先輩を癌で亡くしているパーソナリティのケイザブローや、多くのリスナーを巻き込んで、ラジオならではのコミュニケーションが始まる。パーソナリティや番組に携わるスタッフの真摯な姿勢が、リスナーの大きな共感を呼び起こしている。

優 秀 <福井放送>げんき一番 SPレコード特集

プロデューサー 福本 実  ディレクター 廣瀬隼也  パーソナリティ 岩本和弘、堀内 久美子

月~金曜の朝8時15分~午後0時20分放送。毎日一つのテーマを決めて、リスナーからの電話・FAX・メールを通じて番組展開している。この日の放送では、懐かしの「SPレコード」を特集。自宅にしまい込んだSP盤の持参をリスナーに呼びかけ、実際にスタジオで再生しながら、当時の時代背景や思い出話を語ってもらう。リスナーから上手にエピソードを引き出していく技は、パーソナリティの真骨頂発揮にかかる。予想を超えた展開に期待感を抱かせる、ラジオの魅力を最大限に発揮している。

優 秀 <エフエム京都>MOVING FILE

編成担当 森津 晃四郎  プロデューサー・ディレクター 鳥井孝彦  ディレクター 臼井 真由美  出演 三嶋真路

土曜の夜7~10時放送。“大人の好奇心を刺激するニュース”“酒席的トピックス”を心地よい音楽に乗せて紹介する。番組全体のストーリー性を極力控え、アクセントとなるコーナーを最小限にし、リスナーが聴きたいところから気軽に聴ける構成とした。「ラジオのデッドタイム」と呼ばれる時間帯を逆手にとり、“自分の意思や価値観でラジオを選択したリスナー”への新しいアプローチは、意欲的で好感が持てる。

優 秀 <広島エフエム放送>LUNCH BREAK☆STYLE

プロデューサー 屋形英貴  ディレクター 山口雅美  ミキサー 高田博美  AD 正迫 由佳里

月~木曜の午前11時30分~午後1時放送。今回の放送週は、4月22日の「良い夫婦の日」に向けて、特別企画“ラジオの向こうから愛を叫ぶ”を実施した。最終日には二人の主婦が電話出演し、ラジオ越しに夫へのメッセージを話してもらったほか、月~水曜の放送を通じてメッセージを受け取ったパートナーから、喜びの声が多数届く。パーソナリティがリスナーに寄り添いながら作るラジオ空間が心地よい。

優 秀 <宮崎放送>こかちゃん・みっちゃんのGO!GO!ワイド

プロデューサー 福田直子  ディレクター 深田裕美  出演 粉川真一、高瀬 みち子

月~金曜の午後1時~4時5分放送。曜日ごとに変わるパーソナリティの個性を生かし、リスナー参加型のコーナーなど幅広い話題で展開する。今回の放送は、木曜の目玉コーナー「とんちでGO!GO!」で、ゴールデンウィークにちなんで「ン」と「ク」が入った面白い回答を募集。落研出身の粉川アナと、鋭い突っ込みの高瀬アナが、ユーモアたっぷりに紹介する。二人の対等な掛け合いが小気味よく、機転のきいた効果音や、連休で訪れる県外客の声を拾う工夫などで、大いに楽しませる。

テレビ報道番組

最優秀 <北海道文化放送>石炭奇想曲 夕張、東京、そしてベトナム

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プロデューサー 吉岡史幸  ディレクター 後藤一也  カメラマン 後藤佑喜  編集 定居孝行

財政破綻した、かつての炭鉱町・夕張市。南部地区では商店街の閉店が進み、老人たちの拠り所だった市の連絡所も閉鎖された。一方、日本は過去最高の石炭消費量を記録。東京の電気は、その4分の1を石炭が作り出しているという。政府は石炭を安定確保すべく海外に目を向け、ベトナムの炭鉱開発に釧路の炭鉱マンを派遣し、技術を伝えている。 夕張とベトナムの新旧炭鉱町の栄枯盛衰や、人々の姿、喜びや悲しみなど、「石炭」というキーワードから見えてくる“今”を美しい映像とともに描いた。石炭をめぐる需要と供給の問題や採掘の最前線など、新鮮な発見にも満ちている。

優 秀 <日本テレビ放送網>ネットカフェ難民 ~漂流する貧困者たち

プロデューサー 智片健二、日笠昭彦  ディレクター 水島宏明  撮影 長田太平

東京の夜、格安のネットカフェに、一夜を明かすために荷物を抱えた人々が入っていく。“ネットカフェ難民”と呼ばれる彼らは、大半が登録制の日雇い派遣で、モノのように扱われ、低賃金で不安定な労働を余儀なくされている。彼らをさらに追い込む、保証人不要の消費者金融業といった貧困ビジネスも存在し、先の見えない毎日に心を病む人もいる。
タイムリーな問題の実態と背景に迫るとともに、国や社会への問題提起も果たしている。

優 秀 <長野放送>NBS月曜スペシャル 枯れ葉剤被害は終わらない ~報道写真家・中村梧郎の30年~

プロデューサー・ディレクター 宮尾哲雄  ナレーター 上小牧 忠道  取材 内山純一  撮影 山岸賢一

ベトナム戦争で使われた枯れ葉剤の被害の実態を30年にわたり追い続けている中村さん。番組では、彼が長年撮ってきた、べトさん、ドクさんら被害者の現状を取材。今なお障害児が生まれている事実を追った。一方、彼の長年の願いだった、ニューヨークでの写真展開催を通して、「テロも、戦争で無差別に民衆を殺すのもいけない」と語る中村さんの想いを伝える。モノクロの写真は、事実のすべてを語る力に溢れている。

優 秀 <東海テレビ放送>約束 ~日本一のダムが奪うもの~

プロデューサー・ディレクター 阿武野 勝彦  撮影 塩屋久夫  編集 山本哲二  ナレーター 小西美帆

貯水量日本一の岐阜県・徳山ダム。ほとんどの集落が湖底に沈むこととなった旧徳山村の住民は、全村移転に同意した際、水資源開発公団(=当時)と、水没する道路の代わりに彼らが所有する山林へ続く道路網の建設を約束する「公共補償協定」を結んだ。しかし、町村合併に紛れ、約束は反故にされてしまう。公団側との協定締結時の総務課長ら村民の無念さ、怒りと、故郷への執着、移住後の厳しい現実を映し出すとともに、公団、県庁、国土交通省の役人らへの取材を長期間展開し、行政の問題点を鋭く突いた。

優 秀 <毎日放送>VOICEスペシャル「今、問われる 部落解放運動」

プロデューサー 高山裕之  ディレクター 東田尚巳、松下宗生

奈良市での、部落解放同盟幹部だった市職員の長期病気休暇問題や、京都市職員の優先雇用をめぐる、部落解放の運動体幹部による金銭授受疑惑について、関係者の証言と独自取材で真相に迫った。
同和行政と部落解放運動という、難しい題材に挑戦した果敢な検証・調査報道は、スクープ性も高く、関西地区における同和行政論議を促すきっかけとなった。

優 秀 <山口放送>祖国とは ~ドミニカ移民の50年~

プロデューサー 竹村昌浩  ディレクター 長尾 聡  ナレーター 伊藤惣一  カメラマン 山本 透

「土地無償譲渡」の約束が果たされないまま、ドミニカの日本人移民は辛苦の50年を過ごした。2000年、「本当の気持ちではない」としながら祖国相手に裁判を起こした移民たち。その一方、提訴せず外務省に協力した移民たちとの間で、日系社会は分裂する。2006年、東京地裁は国の不法行為を認めつつも「賠償請求権の時効は消滅」とする判決を下す。判決を聞けぬままこの世を去った人々の墓に、国の謝罪文を供える息子たち。のしかかる借金など彼らの困難は続く。三世代にわたる移民の10年間の姿を克明に追った。

優 秀 <鹿児島テレビ放送>私たちは日本人です ~ドミニカ移民 50年の叫び~

プロデューサー 山口修平  ディレクター 四元良隆  ナレーター 益岡 徹  出演 嶽釜 徹

主人公は鹿児島県出身のドミニカ移民、嶽釜さん。父の夢に押し切られ、ドミニカへ渡った一家には地獄の日々が待っていた。「家族を犠牲にしてすまなかった」と言い残し亡くなった父の言葉を胸に、国を訴えた嶽釜さんたち。2006年の判決後、彼らは「移住50年の節目を日本人として迎えたい」として、控訴を取り下げ、国の和解案を受け入れる。番組では、嶽釜さんらの姿を通し、“国家とは何か”を問うとともに、当時のドミニカ政府が、隣国に対する“人の盾”とするために移民を受け入れた事実なども伝えている。

テレビ教養番組

最優秀 <南日本放送>祖国よ ~ドミニカ移住は問う~

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プロデューサー 田上 憲一郎  ディレクター 諏訪園 真人  ナレーター 植田 美千代  撮影 前田政樹

半世紀前、カリブ海の楽園で大規模農業ができると信じてドミニカ共和国に渡った249家族1,319人を待っていたのは、塩の吹き出る砂漠や、石が累々と転がる不毛の大地だった。日本政府が移住条件として提示していた「農業に適した広大な土地の無償譲渡」を求め続ける移住者と、不誠実な対応に終始する政府。ついに移住者が祖国を訴えた。東京地裁は2006年6月の判決で請求を棄却するも、移住の失敗の責任は国にあったと認定。その後、首相のお詫びで半世紀にわたる問題は一応の決着をみたが、移住者の不信感は今も消えない。綿密な取材で“国とは何か”を浮き彫りにし、現代社会に鋭く投げかける力作。

優 秀 <山形放送>焼き芋夫婦の鎌倉冬物語

プロデューサー 本間和夫  ディレクター 大沼 潤  ナレーター 佐藤博子

毎年冬になると、古都・鎌倉にリヤカーを引いて焼き芋を売り歩く老夫婦がやってくる。山形県山辺町の吉田政男さん、とよさん夫婦が、冬の出稼ぎとしてこの町で焼き芋を売り始めて40年。純朴な人柄を慕い、行く先々で二人を待つお馴染みさんたち。もらい火による家の全焼など、困難を乗り越えながら一家を支えてきた吉田さん夫婦と、鎌倉の人たちとの交流を描く。心温まる映像の中に、人間の生きざまと文明批評を映し出している。

優 秀 <フジテレビジョン>日本中が泣いた!笑った! 中村勘三郎襲名公演 家族が支えた 664日全記録

プロデューサー 丹羽和重、近藤孝子  総合演出 松木 創

2005年3月、十八代目・中村勘三郎、世紀の大襲名。約2年間にわたり行われた襲名公演は、歌舞伎史上最高の、全国70万人の動員と160億円の売り上げを記録した。番組は、各地に残る伝統ある芝居小屋や高校の体育館での公演など、前代未聞の襲名公演に挑戦する勘三郎に密着。膝のケガを負った長男・勘太郎のリハビリや、先代から中村屋に仕えてきた中村源左衛門の死など、舞台裏の出来事を家族の絆で乗り越えていく姿も追う。勘三郎の魅力を存分に伝える、完成度の高いヒューマンドキュメンタリー。

優 秀 <長野放送>NBS月曜スペシャル 大地が僕らの学校だ! ~すざか農業小学校の1年~

プロデューサー 宮尾哲雄  ディレクター 榊原 真紀子  ナレーター 上小牧 忠道  撮影・編集 吉川勝義

長野県須坂市の豊丘地区に開校した「すざか農業小学校」は、同市が始めた事業で、授業は小学校の休日を利用して月2回ほど、遊休農地で行われる。校長や先生役を務めるのは地元の農家の人たち。番組は、公募した学校も学年も違う子どもたちが、田植えから稲刈り、野菜の種蒔きから収穫までを体験しながら成長していく姿を描く。子どもたちが農作業から学んでいく記録としても意義深く、番組づくりの新たな可能性を感じさせる。

優 秀 <石川テレビ放送>息子 飛生(ひゅう)へ ~奥能登で暮らす母と子の記録~

プロデューサー・ディレクター 赤井朱美  撮影 近堂清司  編集 黒田道則  構成 岩井田 洋光

石川県珠洲市で暮らす渡邊キャロラインさんと息子の飛生(ひゅう)くん。陶芸家だった夫亡き後も珠洲に残り、夫の志を受け継ぐように焼き物に挑戦する母親に、思春期に入った飛生くんは反発する。そんな息子に正面から向き合うキャロラインさん。やがて母親の生き方を少しずつ理解していく飛生くんの成長を見極めたキャロラインさんは、息子をアメリカへ旅立たせることを決意する。番組は、約2年間にわたり、二人の日常を丹念に取材。能登の風景を効果的に織り交ぜつつ、親子の絆や故郷の在り様をさりげなく描き出す秀作。

優 秀 <朝日放送>人間の筏 ~広島・長崎、二重被爆者 90歳の旅立ち~

プロデューサー 石高健次  ディレクター 稲塚秀孝  カメラマン 小林暢介、三浦貴広

広島と長崎で二度被爆した二重被爆者の存在は、2006年に完成した記録映画『二重被爆』により、初めて広く知られることになった。映画出演をきっかけに、これまで一切、語ることのなかった二重被爆の体験を語り始めた山口彊(つとむ)さん。ほかにも4人の二重被爆者を紹介しながら、「人間の筏」という山口さんの言葉の重みとともに、原爆被害の知られざる一面を明らかにする。語り部の体験に沿って“継承”の意味を誠実に描きながら、戦争抑止に向けたメディアの役割をも考えさせる番組。

優 秀 <テレビ新広島>因島造船物語 撓鉄(ぎょうてつ)と生きる人々

プロデューサー 山下雄三、川口修治  ディレクター 前田典郎  企画 田中浩樹  ナレーター 棚田 徹

広島県の東南部にある因島。この島に、かつて世界でも有数の建造量を誇った造船所がある。その作業場で、日々鉄板と向き合う「撓鉄(ぎょうてつ)」の職人たち。造船独特の工程である撓鉄は、火と水を巧みに操って船体の鉄板を曲面に撓(たわ)ませる作業だ。つまずきながらも、熟練工から技術を学んでいく若い職人の姿を通して、物づくりの世界の普遍的なテーマを浮かび上がらせる。

テレビエンターテインメント番組

最優秀 <南海放送>あした、天気になあれ

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プロデューサー 大西康司  ディレクター 寺尾 隆  ナレーター 永江孝子

愛媛県今治市大浜地区の漁師町。その小さな路地裏にある一軒のお好み焼き屋には、日々「ご近所さん」たちが訪れる。お目当ては店の名物お母さん「ミーコちゃん」だ。皆それぞれ悩みを抱えつつも語り合い、寄り添い合い、笑い合いながら、しっかりとつながって生きている光景は、どこか懐かしく温かい。ご近所さんたちの味わい深いユーモアやミーコちゃんの豪快な笑い声が、見る者の心をなごませる一方、過疎・高齢化・介護など、現代社会が抱える諸問題をさりげなく問いかける。3年間の地道な定点観測の成果が隅々にまで行き届いた、丁寧な構成・演出が光っている。

優 秀 <札幌テレビ放送>平和の旋律 ~細川眞理子が奏でた25年~

プロデューサー 今田光春  ディレクター 山本典弘  ナレーター 森口博子  撮影 山口亮彦

25年間にわたって「札幌こどもミュージカル」を主宰する細川さんは、平和への願いを込めて一本のミュージカルを創作する。原爆投下後の長崎で戦災孤児の救援に尽くしたポーランド人・ゼノ修道士の物語である。戦時中の苦しさをなかなか実感できない子どもたちと向き合いながら作品は完成。2002年8月の長崎公演を経て、ついに2006年4月、ゼノ修道士の故郷の大聖堂で上演。言葉の壁を超えて現地の人々に感動を与える。平和の尊さを、音楽を通じて次代に伝えようとする細川さんの想いに素直に感動できる番組。

優 秀 <BSジャパン>ムンクを奪還せよ! 「叫び」回収までの84日 囮(おとり)捜査官チャーリー・ヒルの挑戦!

プロデューサー 新村正夫、 中谷直哉  ディレクター 黒田 由布子  構成 冨田紀子

1994年2月12日早朝、リレハンメル五輪の開会式当日、ノルウェー国立美術館から、同国が誇る天才画家ムンクの「叫び」が盗み出された。打つ手なしのノルウェー警察の依頼で登場したロンドン警視庁の囮捜査官チャーリー・ヒルは、犯人側との命がけの駆け引きの末、84日間で無傷の「叫び」を回収する。スリルある再現ドラマやヒルの証言に、画家や作品の知識をふんだんに盛り込み、知的好奇心を存分に満たす仕上がりとなっている。

優 秀 <山梨放送>六輔 藝の旅 “芸”はどうしてくさかんむり?

プロデューサー 加藤高章  ディレクター 荻野弘樹  出演 永 六輔、富田智美

永六輔出演の“テーマ紀行”シリーズ。9回目のテーマは「芸」。その漢字の成り立ちである「土」との関係を、市川団十郎発祥の地とされる山梨県市川三郷町、舞踊家・田中泯さんらの手で75年ぶりに土間の舞台として復活した甲府「桜屋」、白磁など民芸の美を伝えた浅川巧ゆかりの北杜市高根町などを訪れ、解き明かしていく。永の圧倒的なうんちくと、番組の濃密さは圧巻。富田アナとの凸凹コンビぶりも絶妙である。

優 秀 <北陸放送>うめめがやってきた ~写真家 梅 佳代の世界~

プロデューサー 真田 茂  ディレクター 岡本佳奈  撮影 久井裕彰  ナレーター 上坂典子

26歳の新人写真家・梅佳代。彼女のファースト写真集『うめめ』の売上が8万部を超えた。日常の何気ない瞬間を切り取る彼女の写真は多くの若者から支持され、「木村伊兵衛写真賞」を受賞。篠山紀信も注目する。環境の変化に戸惑いながらも、少しずつ成長していく梅は、かつて「何もない田舎は嫌。絶対に抜け出す」と決意した故郷・能登町で初の写真展を開く。「愛を持って撮る」をモットーとする梅。その写真を支える独特の世界観と自然体の魅力を存分に引き出すことに成功している。

優 秀 <テレビ大阪>感涙! 時空タイムス

プロデューサー 森川健一、財津茂彰、橋本健司  ディレクター 五十嵐 洋文

明るい未来へのキーワードを探すため、忘れ去られた新聞記事から出発する“過去への時間旅行”をコンセプトにした新感覚番組。この回では「1972年の沖縄返還」に注目し、日本本土からの現金大輸送、交通ルール変更によるパニック、返還当日に結婚式を挙げた夫婦のエピソードなどを紹介。新聞記事を入口に、当時の騒動ぶりを丹念に調べ上げ、関係者のその後の人生も追跡取材した。切り口が新鮮で、映像資料の持つ力を再認識させる。文字どおりタイムマシンに乗った感覚で楽しめる番組。

優 秀 <長崎放送>鯨(くじら)唄(うた)がきこえる

プロデューサー 大田 壽満夫  ディレクター 中島三博  カメラマン 木戸 雅  ナレーター 林田繁和

370年の伝統を誇る「長崎くんち」。7年に1度、万屋町が「鯨の潮吹き」を奉納する年が回ってきた。黒光りする重さ2トンの「背美鯨」を操る17人の根曳衆の厳しい稽古。老朽化した「背美鯨」の100年前の木製の土台や、傘鉾の垂れに泳ぐ180年前の長崎刺繍の魚を、一切の妥協を許すことなく復元・新調する姿。10月の本番に向けて町の総力が結集する。迫力ある映像で、伝統を守る人々の思いと現代に息づく共同体の熱気が伝わってくる。

テレビドラマ番組

最優秀 <日本テレビ放送網>14才の母 ~愛するために生まれてきた~

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プロデューサー 村瀬 健  ディレクター 佐藤東弥  脚本 井上 由美子  出演 志田未来ほか

ごく普通の家庭に生まれ、ごく普通の生活を送っていた14歳の女子中学生が、ふとしたことから1年先輩の恋人と関係し、妊娠する。親や同級生、教師たち周囲の驚きと困惑。幼くして新たな命を身ごもり、生み、育てることの責任と重みや困難に直面し、悩む主人公。放送当初、その設定や風俗的関心からセンセーションを巻き起こした連続ドラマの発端から、娘の妊娠を知る親の衝撃までを丹念に描く第1話と第2話。
連ドラの一部分でありながら、完結性もあり、完成度も高い。最も微妙な世代と言われる「14歳」に斬り込み、絵空事ではなく、一般家庭にも起こり得るリアリティを持たせながら、温かい目線の演出で社会的メッセージを発する。性と愛の問題を正面から扱いながら、セリフや表現に細やかな配慮が行き届き、子どもを持つ家族で見てほしい番組。

優 秀 <テレビ朝日>相棒 season5 元日スペシャル「バベルの塔」

チーフプロデューサー 松本基弘  プロデューサー 西平敦郎  脚本 古沢良太  監督 和泉聖治

天才的頭脳を持ち警視庁一の変人と言われる刑事と、お人好しの熱血刑事の二人が主人公。刑事ドラマの枠を超え、お茶の間に定着した人気シリーズの拡大スペシャル版。
元日の放送ということもあり、殺人のない展開ながら、込み入ったストーリーを手際よくさばき、意外な結末まで飽きさせない。手練のバイプレイヤーを配した登場人物の個性溢れる描き分け、東京の空撮を駆使したスケール感とサスペンス、携帯電話など小道具の使い方も秀逸。「刑事ドラマとはかくあるべし」を実感させる、上質なエンターテインメントとして一級の出来栄えである。

優 秀 <フジテレビジョン>のだめカンタービレ

プロデューサー 若松央樹、清水一幸 ディレクター 武内英樹  脚本 衛藤 凛  出演 上野樹里ほか

音楽大学を舞台に、天才的ピアニスト「のだめ」こと野田恵と、指揮者志望のイケメン千秋真一の恋模様を中心に、世界的指揮者や落ちこぼれの音大生など、個性あふれる登場人物たちが織り成す青春群像劇。全11話連続シリーズの第1話。
人気コミックスに材を得ながら、単純な映像化ではなく、コミックスとドラマの違いを突き詰め、格闘させた形跡が見える。キャスト陣の捨て身の演技も楽しく、軽いタッチの中に、音楽に真剣に取り組む学生たちの真摯な姿勢も浮き彫りにされ、教養小説的な味わいも。一般には敷居の高いクラシック音楽を、ドラマの中でわかりやすく説明し、じっくり聞かせ、幅広い世代に馴染み深いものにした功績も高く評価される。

優 秀 <毎日放送>テレビCMの日SP(スペシャル) ドラマ「メッセージ」

プロデューサー 藪内広之 ディレクター 井坂 聡  脚本 長谷川 康夫 出演 藤木直人ほか

視聴者の日常になくてはならないテレビCM。1960~70年代に活躍し、“CM界の黒澤明”“30秒の狙撃手”と呼ばれた不世出のクリエイター・杉山登志。彼の人生を辿り、手がけた数々のCMを散りばめながら、テレビCMの魅力を再発見しようという企画。
過去と現在が交錯し、数多くのCMや資料映像で当時の世相を浮き彫りにする構成は秀逸。特に杉山の名作群は、いま見ても新鮮でインパクトがあり、それだけでも充分見応えがある。その分、人物に迫りきれなかったきらいも残るが、物づくりをおろそかにしがちな現代へのメッセージは確実に伝わってくる。

CM部門

ラジオCM 第1種(20秒以内)

最優秀 <中部日本放送>川上産業“プチプチ/もっと潰して!”(20秒)

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プロデューサー 松本 徹  ディレクター・出演者 大園康志、森合康行 構成・コピー 松永英隆(フリー)  音楽・サウンドエフェクト 伊藤健二(サウンド バース)

「うちの会社は、潰してもらったほうがありがたいですけどね」――。CMでこう訴える川上産業は、気泡緩衝材(空気のツブが並んだビニールシート)を製造・販売している会社である。CMでは、同社の商品の中でも特によい音を響かせる『ひまつぶし用 プッチン スカット』を使いながら、「潰されるほど 潰れない会社」という同社のコンセプトを、印象的にアピールしている。
プチプチ音が効果的に使用され、リスナーの印象に残るCMとなっていることに加え、“潰す”という言葉をあえて広告に使う斬新なアイデアが高く評価された。

優 秀 <STVラジオ>STVラジオ“自社PR/「真実を…」編”(20秒)

プロデューサー 岡崎みどり  ディレクター 大針三治 出演者 森中慎也(札幌テレビ放送)、吉川典雄(札幌テレビ放送)

念願のマイホームを手に入れ、「仕事、頑張らなきゃな……」と心に誓うお父さん。でも近所の奥さんたちには「なんか、宝くじにあたったみたいよ!」「親の保険金が入ったって聞いたわよ!」と噂になっている。挙句の果ては「なんかご主人、会社のお金に手をつけたみたいよ…」とあらぬ方向に。無責任者な“世間の噂”をユーモアを交えて表現するとともに、「真実を伝える」という報道機関の役割を、押し付けがましくなく訴えることに成功している。

優 秀 <文化放送>明星食品“一平ちゃん夜店の焼そば/人生相談 罪な主婦”(20秒)

ディレクター・構成・コピー 見目幸伸  出演者 金月真美(青二プロダクション)、西脇 保(青二プロダクション)  録音技術 久保田正三

お昼のワイドショーでおなじみの人生相談。今日も“個性派キャスター”が、悩める奥さまに鋭い質問を浴びせかける。でも、奥さまがいま夢中になっているのは、「一平ちゃん 夜店の焼きそば 塩だれ味」なのだ。「黒こしょう入りマヨネーズ味」を忘れることができない彼女に、司会者は「罪なおいしさだ」と一言。お色気たっぷりの演出で、聴いていて楽しい作品に仕上がっている。

優 秀 <エフエム東京>味の素“Jino薬用育毛ローション・フォレスティーノ/湯上り”(20秒)

プロデューサー 石井利始(アサツー ディ・ケイ)  ディレクター 林屋創一 構成・コピー 三井明子(アサツー ディ・ケイ)  出演者 加藤忠生(アサツー ディ・ケイ)

風呂あがりお父さん。「おい、ドライヤーどこやった?!」と奥さんに声をかけるが反応はない。「ママ、ドライヤーどこやった?」「なあ、ドライヤー!」と、これでも反応がない。最後にお父さんが一言、「あ、乾いちゃった……」。髪の薄いお父さんに本当にありそうな日常生活の一コマを取り上げ、育毛ローションをアピールする。愛らしくて、ちょっと寂しいお父さんの姿が、思わず目に浮かんでしまうほど、完成度の高いCMとなっている。

優 秀 <エフエム東京>呉工業“KURE 5-56/「新しい自転車」篇”(20秒)

プロデューサー 林屋創一  ディレクター 中村由美  アイデア・企画 山口景子 録音技術 太田友基(音響ハウス)

「サビがいっぱい付いたら、新しいの買ってもらえるぞ」と、雨の中、自転車を外に出しっぱなしにする息子。翌日、「ちょっとー。自転車、すごいサビだから買ってきたわよー」とママ。息子が喜んだのもつかの間、ママが買ってきたのは「KURE 556」なのであった……。雨ざらしの自転車をめぐる、息子と母親の“攻防”をメインにしながら、“もっと物を大切にしようよ”というメッセージを伝えることに成功している。

ラジオCM 第2種(21秒以上)

最優秀 <エフエム東京>味の素“企業広告/NO MORE 朝食抜き”(120秒)

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プロデューサー 石井利始(アサツー ディ・ケイ)  ディレクター 林屋創一 構成・コピー 松本篤史(アサツー ディ・ケイ)  出演者 杉崎真宏(ワタナベエンターテインメント)、大隈いちろう(ワタナベエンターテインメント)

朝食の大切さが見直されているにもかかわらず、朝ごはんをとらずに出かける子どもたちが増えている。そこで、テストの点がふるわなかったタカシ君の“右脳”と“左脳”が会話する。左脳:「課題を克服すべく早急に対策を練り上げよう」。右脳:「朝食を食べないタカシ君の脳みそであるおれたちは、エネルギーが足りなくて働けるわけないんだよ」。でもタカシ君は遅刻しそうなので、今日も朝ごはんを食べずに、学校へ行ってしまうのだった……。
子どもに朝食をとらせない親を正面から批判するのではなく、笑いを交えて伝えることに成功した構成が高く評価された。

優 秀 <STVラジオ>帯広市農政部ばんえい振興室“ばんえい十勝/世界にひとつ”(120秒)

プロデューサー 岡崎みどり  出演者 吉川典雄(札幌テレビ放送)、服部義幸(調騎会会長・調教師) 音楽・サウンドエフェクト 大針三治

明治時代に北海道の開拓で活躍した農耕馬を祖先に持つ大きな馬たちが、約1トンのそりを引いて走る過酷なレース、「ばんえい競馬」。存続の危機を乗り越え、新たに出発した「ばんえい競馬」の魅力を、騎手・調教師のコメントや、実際のレースの音声を交えながら伝える。レースに携わる人たちの“生の声”を取り上げることで、「ばんえい競馬」の温かみのある魅力を、余すところなく伝えている。

優 秀 <中部日本放送>中部日本放送“自社PR/不機嫌なワライカワセミ”(95秒)

プロデューサー 松本 徹  ディレクター 大園康志、森合康行  構成・コピー 松永英隆(フリー) 音楽・サウンドエフェクト 伊藤健二(サウンド バース)

「ワライカワセミ」は、人が笑うとそれにつられて笑い出す習性がある鳥。今日も東山動物園では、ワライカワセミに笑ってもらいたくて、がんばって笑う人たちでいっぱいだ。その光景を眺めている白熊は嘆く。「ワライカワセミが来てから20年で、名古屋の平均気温は0.5度くらい上がっている。100年後には沖縄のような暑さになると言われている。ワライカワセミは笑いながら、泣(鳴)いているのに……」。暑さにまいっている白熊が愚痴っぽく話すことで、環境問題をリスナー自身の問題として捉えさせることに成功している。

優 秀 <エフエム愛知>名古屋学院大学“学校PR/留学生”(90秒)

プロデューサー 中山明美  ディレクター 庫元正博(電通) 杉田幸博(アセント) 構成・コピー 若原喜至臣(電通)

それぞれの言語が持つ面白さを、留学生の語りで構成する。スペイン語の“バカ”は日本語で「牛」を意味する。一方、タイ語で“カー”は「カラス」のこと。同じ響きなのに国によって異なる意味の言葉もあれば、まったく同じ意味を持つ言葉もある。これが言葉の面白さ、国際化の面白さである。留学生たちのたどたどしい日本語がほほえましく、言葉の面白さと大学の魅力が、自然な形で表現されている。

優 秀 <和歌山放送>和歌山放送“朗読教室受講生募集/武士の一分(たけしのいっぷん)”(50秒)

構成・コピー 三宅良治  出演者 中川智美(フリー) 小林睦郎(フリー) 宮上明子

和歌山放送の朗読教室の受講生募集CM。「武士の一分(ぶしのいちぶん)」という映画があったが、このCMのタイトルは(たけしのいっぷん)と読む。「上手」(じょうず、かみて)、「人気」(にんき、ひとけ)など、複数の読み方のある言葉を、テンポのよい男女の掛け合いで紹介し、日本語を読むことの難しさ、また、だからこその楽しさ・醍醐味を伝える。掛け合いによって、当該の漢字が眼前に現れるような気さえしてくる、これまでになかった斬新な手法が、高く評価された。

テレビCM

最優秀 <中京テレビ放送>中京テレビ放送“自社PR・地上波停波告知スポット/「デジタルがやってくる」篇”(60秒)

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プロデューサー 通木芳之(中京ビデオセンター) ディレクター 小島英幸(中京ビデオセンター) アイデア・企画  伊豫田祐司

おじいさんの仏壇に手を合わせ、語りかけるおばあさんのいつもの風景。でもこの日は2011年7月、おばあさんの家に長男が買ってあげたデジタルテレビが届く日なのだ。「でじたる?……。なんか“おそがい”わ(名古屋弁で「こわい」の意)……」と仏壇に語りかけるおばあさん。デジタル放送という得体の知れないものにとまどう主人公を、おもしろおかしく描き出すことによって、地上アナログ放送が停止する2011年7月が、一日一日近づいていることを視聴者に感じさせる。
“名古屋のおばあちゃん”の典型のような登場人物のリアルな戸惑いを、一見単純ながらよく練られた構図で描き出すとともに、放送局からのメッセージを伝えることに成功している。

優 秀 <静岡放送>静岡放送“自社PR/「漁師」篇”(60秒)

プロデューサー 大越毅彦(スプーン)  ディレクター 川西 純(電通テック) アイデア・企画 小松直樹(電通)、奈良岡将英  クリエイティブディレクター 岡村雅子(電通)

「地元のことも、世界のことも、もらさずお伝えします」という自社の姿勢を、漁師にたとえて表現する。漁の網にかかった獲物は、魚をはじめ、フルコースの料理、健康器具、Jリーガーなどのほか、果ては“あの大統領”まで。そんなありえない設定をリアルな演出で伝える。アイデアにあふれた内容で、静岡に暮らす人々に必要な情報であれば、どんなものでも伝えるという並々ならぬ心意気が、画面から伝わってくる。

技術部門

最優秀 <日本テレビ放送網>地上デジタル放送用ギャップフィラー装置(チャンネルイレーサー「凸凹くん」)の開発

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研究・開発担当者 佐藤 誠、鈴木寿晃、浅見洋介

チャンネル毎にアナログフィルタを用いた従来方式を一新し、10チャンネル分を一括してデジタル信号処理を行う方式により不要チャンネルを除去する、高性能で小型な地上デジタル放送用ギャップフィラー装置を開発・実用化した。  これにより、電波が遮蔽されている地下街やビル内などでも、ワンセグを含む地上デジタル放送の再送信が低コストで可能となり、地上デジタル放送の普及に大きく貢献した。

優 秀 <テレビ朝日>マーカーレストラッキングシステムの開発と運用

研究・開発担当者 酒井陽寿、坂田敏治、島田了一

D’ Fusion技術を活用し、マーカーレス3Dトラッキングアルゴリズムとバーチャルスタジオシステムを組み合わせることで、手持ちオブジェクトへのCG合成やセンサーレスカメラでのバーチャルCG制作を可能とするシステムを開発・実用化した。
これにより、各種テレビ番組でのフリップボードや模型、人物などをターゲットにした新たなCG演出が可能になるなど、テレビ番組制作技術の高度化に貢献した。

優 秀 <フジテレビジョン>Live OA Hand(新型ハンドガンバッテリーシステム)の開発

研究・開発担当者 河村清太郎

発光特性や演色性に優れたセラミックメタルハライドランプを使用し、電源装置の工夫と、ニッケル水素電池を使用した長時間使用が可能なバッテリーを組み合わせることにより、機動性に富み、生放送に最適なバッテリーライトシステムを開発・実用化した。
これにより、電源環境の悪い状況や屋内のみならず屋外においても、様々な照明プランが可能となり、テレビ番組制作技術の高度化に貢献した。

優 秀 <フジテレビジョン>FileCastの開発

研究・開発担当者 木村好信、稲田智徳、小島敏裕

インターネット網を利用し、ノートパソコンで動作するソフトウェアにより、長距離や衛星伝送でも伝送速度低下がなく、追っかけ伝送や継ぎ足し送信、受信途中再生などの機能を持った、誰もが簡単に使える素材伝送システムを開発・実用化した。
これにより、専用回線を確保することなく、安価で高品質な映像伝送が可能となり、番組制作の高度化・効率化に貢献した。

優 秀 <中京テレビ放送>字幕放送監視システムの開発

研究・開発担当者 高橋隆平

サイマル放送されているアナログ・デジタル・ワンセグの字幕データを受信し、各字幕サービスのデータが同一であること、および字幕放送が行われている時間帯に正常に送出されていることを、リアルタイムに監視する字幕放送監視システムを開発・実用化した。
これにより、マスターでの字幕放送監視業務の負荷が軽減されるなど、社会的ニーズの高い字幕放送の送出業務の省力化・効率化に貢献した。

優 秀 <読売テレビ放送>違法動画サイト対策に絶大な威力「とりし丸」の開発

研究・開発担当者 谷知紀英、近藤五郎

インターネット上の動画投稿サイトに違法で投稿されているテレビ番組等の動画を効率的に検索し、削除が必要なものについては動画IDを取得して、自動的に削除要請メールを作成するシステムを開発・実用化した。
これにより、インターネット上の違法動画対策に有効なツールが提供され、著作権侵害対策業務の効率化に貢献した。

優 秀 <テレビ西日本/仙台放送>FNS標準編成営放システムの構築と成果

研究・開発担当者 冨田良彦(テレビ西日本)、柴谷 徹(仙台放送)

発局データの編成枠情報やEPG情報等を積極的に取り込んで業務に有効活用する発局データ連携機能や、放送システムの中心と位置づけて放送設備と一体化した送出機能を持つ、ネットワーク内ローカル局の標準営放システムを開発・実用化した。
これにより、ローカル局における業務が標準化され、情報の共有化が可能になるとともに、コスト削減や安全運行を実現するなど、放送システムの発展に貢献した。

特別表彰部門

青少年向け番組

最優秀 <中京テレビ放送>でんじろう先生の日曜実験室 ラブラボ!

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プロデューサー 後藤和史  ディレクター 田中穂積

小学生が家族と一緒になって実験を行い、遊び楽しみながら科学を身近に感じることができる番組。今回のテーマは電子レンジ。「電子レンジの四角い箱の中では一体、何が起きているのか!?」。ドライアイスや氷を使った実験で、マイクロ波が水だけを振動させる特性を利用して電子レンジで物が温まることが判明すると、それなら理論的には、水の入った容器を人が6時間休まず振り続けても沸騰するはずだが……果たして結果は。
子どもにも再現できそうな実験を通じて「やってみよう」という気を起こさせ、考える面白さを体験させてくれる。

優 秀 <札幌テレビ放送>D! アンビシャス ~熱きどさんこ魂~ 下川ジャンプ少年団 夢は世界へ!

プロデューサー 平山大策 ディレクター 水谷潤子 出演・ナビゲーター・ナレーター 明石 英一郎 カメラマン 山口亮彦

北海道の自然や人、ブランドに情熱を注ぎ込む“どさんこ魂”をクローズアップしたドキュメンタリー・シリーズ。下川町は人口4,000人の町だが、トリノ五輪のジャンプ代表4人を輩出した。五輪ジャンパーを生み、現在、小学生から高校生までが所属する「下川ジャンプ少年団」で、小学6年生の女の子・伊藤有希さんら8人の小学生がひたむきにジャンプに取り組む姿を中心に追った。世界一を目指す少年少女の素直でけれんみのない姿が清々しく、地域と子どものつながりの大切さを改めて感じさせてくれる。

優 秀 <テレビ朝日>題名のない音楽会21 ~熱血指導! 高校生吹奏楽クリニック

プロデューサー 鬼久保 美帆  ディレクター 市川幸介  司会 羽田 健太郎  出演 佐渡 裕

世界的に著名な音楽家に中高生が直接レッスンを受けるシリーズの吹奏楽版。指揮者の佐渡裕さんが、音楽の素晴らしさ、楽しさを高校生に実感してもらおうと熱血指導を繰り広げる。指導を受けたのは東海大付属高輪台高校。顧問の先生の指揮で課題曲を演奏した後、佐渡さんのクリニックを受けると、見事に演奏が変化している。見る者も思わず指導を受けている気分にさせてくれると同時に、高校生のひたむきさと、それを見守りアドバイスする指導者の姿がバランスよく描かれ、安定感を感じさせる。

優 秀 <信越放送>ZOOM UP! エコロジー最前線「ゆたかな森づくりを目指す」

プロデューサー 手塚孝典  ディレクター 伊東 聡、樽田広喜、福岡徳重

21世紀を担う子どもたちに環境に関するメッセージを伝えたいと、同局が1998年から展開しているキャンペーンの一環をなす番組。県環境保全協会の協力なども得て、市民や子ども、企業の活動を毎週、紹介している。今回は、使い道のないカラマツ材を、薪ストーブの燃料として活用する取り組み。石油ストーブとの併用で灯油を3割削減できた例などを紹介する。温暖化対策の安易な処方箋を示すよりも、地味ながら、しかし着実に身の回りから環境問題に取り組んでいこうとする姿勢が評価できる。

優 秀 <南日本放送>どーんと鹿児島「それぞれのノーサイド」

プロデューサー 山崎兼敏  ディレクター 切通 啓一郎  ナレーター 松木圭介  カメラマン 江夏 豊

番組『どーんと鹿児島』では昨年春以降、高校生の部活動に注目し、年間約50回の放送のうち、1時間の部活ドキュメンタリーを5本制作。ラグビー、野球、弓道、駅伝、美術、それぞれの分野でひたむきに取り組む高校生の姿を描き、午後7時からのゴールデンタイムで放送した。そのうちの1本が、高校ラガーマンあこがれの「花園」出場を目指して最後の最後までしのぎを削った4校を1年以上の密着取材で追った、この番組。
青春の感動がストレートに伝わってくる力作である。

放送と公共性

最優秀 <山口放送>ドミニカ移民に関する報道

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実施責任者 山浩介

1956年、政府の農業開拓移民の募集に応募しドミニカに渡った249家族が現地で見たものは、無償譲渡される約束の広大な農地ではなく、荒れ果て乾燥したわずかな土地だった。その約束を信じて過酷な労働に耐えた移民たちは、2000年、ついに政府に謝罪と損害賠償を求める裁判を起こす。地元から多くの移民がいたことから、この問題を“地域の問題”ととらえ丹念な現地取材を行い、当時と今、政府の変わらぬ「嘘」を暴いていく。
権力と向き合い、追い詰めて行くというメディアの役割・使命を果たしている点や、長年にわたって継続している同社の姿勢が高く評価された。“歩みの中で視聴者の共感を得て行く、その過程が公共性なのだ”とのメッセージが伝わってくる、優れた取り組みである。

優 秀 <札幌テレビ放送>行政を動かした医師不足報道

実施責任者 東郷達郎

北海道で深刻な問題となっている、医師不足。人々の命に関わるこの問題について、解決の糸口を放送局として探り、キャンペーンや特集、企画ニュース、討論番組など、様々な方法で視聴者に提起、これにより今年の北海道知事選挙の公約に「医師確保」がとりあげられるなど、行政の動きに大きな影響を与えている。
行政が公共的な役割を以前ほど担わなくなった今日、そこにメディアならでは切り口で取り組んでいる姿勢や、解決策の事例をきちんと取材している点、地域に根ざした放送を継続して実施していることなどが高く評価された。

優 秀 <北海道文化放送>uhbスーパーニュース年間シリーズ特集「ニュースの現場」(18回)

実施責任者 田嶋眞一郎

ニュース制作に携わる全てのスタッフが、取材活動を通じて感じたニュース現場における課題を自分たち自身で検証する、というシリーズ企画。集団的過熱取材、過剰演出、人権侵害など、日々直面する問題について、なぜそのような手法をとり、結果としてどんな状況を生み出したのか、また、別の選択肢はなかったのか ――など、制作過程を検証して視聴者に提示していく。
視聴者の側にリテラシーを求めるのではなく、それより先に、まず作る側の問題を認識し、“何を悩み、そして何が出来るのか”という検証を行っている姿勢が高く評価された。

優 秀 <テレビ朝日>素敵な宇宙船地球号 シリーズ 大都会ドブ川の奇跡

実施責任者 安田裕史

人々に見捨てられ、汚れて悪臭を放つ川を再生させるため、河川浄化の専門家の知恵を借りながら、地域住民と一緒になって行ったプロジェクトの過程を番組で伝える。単発の企画ではなく、継続して行える方法を住民と一緒になって考え、地域の人々に根付いた活動となっていく過程を伝えており、その継続性のある取り組みが評価された。
番組をきっかけに広がった活動の波及力、これはテレビならではの影響力をうまく活用した一例であり、このプロジェクトによって、川だけでなく“川と人の関係”も再生している。

優 秀 <中国放送>エコに ビンカン! RCC ~この11年の取り組み~

実施責任者 原森勝成

「身近な自然や環境を大切にすることが、地域に根ざした放送局として大切なこと」との発想から、環境問題について“放送やイベントの中で取り上げ、地域に伝える”“社員の意識を高める”ことを柱として、同社では11年前から取り組みを始めている。この活動は、放送局として取り組むことが出来る様々な活動を網羅して実施されており、ISO14001の取得や基金の創設など、継続・発展させている点を含め、高く評価された。
一連の取り組みは、放送局は番組を放送する以外にも、地域に対して情報やメッセージを発信する様々な手段を持っている、ということを示している。