一般社団法人 日本民間放送連盟

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表彰番組・事績

日本民間放送連盟賞/2008年(平成20年)入選・事績

平成20年日本民間放送連盟賞 ”NAB Awards 2008” 入選・事績

番組部門

ラジオ報道番組

最優秀 <文化放送> 文化放送報道スペシャル 死刑執行

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プロデューサー 関根英生  ディレクター 相笠淳一  構成・取材 植松敬子  ナレーター 鈴木純子

2009年5月から裁判員制度が始まり、国民が重大な刑事事件の裁判に参加し「死刑」判定を下すケースも生じる。しかし、死刑執行の実態に関する情報が充分に開示されているとは言い難い。死刑はどこでどのように誰が執行するのか、執行時の死刑囚の心情は、執行に直接あたった刑務官の思いは……。番組では、元刑務官、ノンフィクション作家、元最高検検事への取材音声を、死刑と裁判員裁判に関する街頭インタビューを挿入しながら紹介。最後に、1950年代に録音されたと思われる死刑執行の録音を放送する。実態を知らされないまま、多くの国民が死刑制度を支持する社会の空気に一石を投じた。ショッキングな内容ながら、“放送する勇気”と“命をもって償う刑罰への怨念”が感じられる。

優 秀 <北海道放送> ふさがれた耳 ~偽装の聴覚障害~

プロデューサー 藤木俊三  ディレクター 森 創一郎、森内 満  ナレーター 赤城敏正

聴力検査や診断が不正に行われ、最重度の「聴覚障害等級2級」の身体障害者手帳が大量に交付されていた北海道芦別町。疑惑の手帳の交付数は旧産炭地を中心に812件。背景には、健常者に近い元炭鉱マンを特定の医院に送り込んで仲介料を得ていた労働組合元幹部、手続を代行していた社会保険労務士、音の聞こえる“患者”に「2級」の診断書を乱発していた医師、そして、「社会保障の有効利用」を取り違えた元炭鉱マン、行政の怠慢と不作為が――。行き届いた取材で核心に迫る中で、手帳を持つ人がカラオケに通い、手帳申請時に医師の問診に答える「証言」も挿入。テンポが良く、構成・編集が秀逸な番組。

優 秀 <山梨放送> 失われた言葉をもう一度 ~ある言語聴覚士の挑戦~

プロデューサー 浅川俊介  ディレクター 石川 治  ナレーター 塩沢 未佳子

全国で約50万人と言われ、高齢化や脳疾患などで増え続けると見込まれる失語症患者。平澤哲哉さんは、自らが交通事故で失語症になった経験を生かし、全国初のフリーの言語聴覚士として訪問ケアで患者に発語訓練を施している。病院や介護施設に所属しない言語聴覚士が増えない原因は医療体制にある。平澤さんは患者の話す意欲を引き出そうとし、患者は生きる気力に火を灯す。患者の心を音で感じさせる、ラジオならではの番組。

優 秀 <北日本放送> イタイイタイ病は終わらない ~小松義久 40年の闘い~

プロデューサー 尾崎義文  編集 荒山知徳  構成・取材・ナレーター 数家直樹

国が初めて公害病と認定してから40年、患者が出現して約100年を経過するイタイイタイ病。今後20年は新たな患者が出続けると言われる中で、行政による患者認定は進まず、被害者や住民の死亡などにより歴史は風化し始めた。訴訟当時から人生を賭けて闘ってきた小松さんの足跡を声で振り返る。環境が一度破壊されると、こんなにも長く続くのか――。丁寧で静かな語りは聴く者の心を離さず、こつこつと取材した制作者の姿勢が伝わる。

優 秀 <朝日放送> 動かない救急車 ~救急医療崩壊の現場

プロデューサー 戸石伸泰  ディレクター 鈴木崇司、阿部成寿  ミキサー 山辺 明

2007年末に大阪府で、89歳の救急女性患者を30以上の病院が受け入れることができずに女性が翌日死亡する、という問題が発生した。番組では、救急搬送の要請を断られ続けた救急隊長、受け入れた病院・断った病院、患者と家族の様子を語る女性の孫(救急医療に携わる医師)らの証言で現場の状況を再構成し、救急医療現場が疲弊した原因、医師不足や医療体制に対する国・行政の政策の遅れに迫る。課題を整理して伝え、聴き応えがある。

優 秀 <山口放送> 十字架を背負って ~光母子殺害事件・遺族の9年間

プロデューサー 伯野茂樹  ディレクター 谷本啓之  ナレーター 福谷貞夫  ミキサー 香川慶一

衝撃を与えた光市母子殺害事件。被害者遺族・本村洋さんは裁判をめぐる会見で「誰のための裁判なのか」と訴え、以降、日本の司法制度、判例主義に疑問を投げかけ、犯罪被害者の権利確立、死刑制度、そしてメディアの刑事裁判報道のあり方などに対してさまざまに問題提起した。番組は、「命」という十字架を背負って発言し続ける本村さんの重い問いかけ、心の動きを自身の声を核に構成。多角的な取材と引き締まった作りが光る。

優 秀 <九州朝日放送> 「私は兄を殺していない」北九州殺人・放火事件~逮捕から無罪判決まで1400日の軌跡~

制作  臼井 賢一郎  プロデューサー 大迫順平  ディレクター 安川裕之  ナレーター 沢田幸二

2004年3月に起きた同事件で、殺害された男性を看病していた実の妹が逮捕された。「無実の母を助け出したい」と願う家族は支援者とともに無罪判決を求める街頭活動を続ける。取材は事件直後から始まり、代用監獄制度を乱用した警察のでっち上げだったことが明らかになる。起承転結、メリハリのある構成で、冤罪を考えさせる力作。

ラジオ教養番組

最優秀 <文化放送> 魂の46サンチ砲 ~戦艦大和に想いを乗せた男たち~

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プロデューサー 長谷川 実  ディレクター 村田武之  構成 石井 彰  ナレーター 山本モナ

戦艦大和の46サンチ(センチの海軍式呼び方)主砲の発射音を収録したとされる1本のカセットテープの真偽を探りながら、悲劇的な運命をたどった大和の乗艦員に取材し、生の声を伝える。薄れつつある戦争の記憶を“音の記録”として残そうとする番組。轟音とともに広がる重低音の波――たしかに凄まじい音だが、本当に46サンチ砲の発射音なのか? 大和の主砲音を録音したテープの存在は確認されていない。真相は、戦後20年を機に制作された自社のラジオドラマのために、さまざまな音源を駆使しながら創作したものだったと判明する。主砲音の真偽を探る取材を重ねる中から、戦艦大和と46サンチ砲に想いを込めた人々の姿を浮かび上がらせる構成に、ラジオの特性がいかんなく発揮されている。

優 秀 <北海道放送> まだ見ぬ我が友と少年へ

プロデューサー 壱岐 聰  ディレクター 澤出 寛  語り 桜井 宏  ナレーション 阿部彩子

番組に届いた一通のメール。「私たち夫婦の宝でもある一人息子がジャーミノーマという悪性の脳腫瘍になった」。番組のメインキャスターは、放送前にこのメールに目を通したが、すぐに放送で紹介することができない。キャスターにも同じように受験を控えた息子がおり、自分のことのように衝撃を受けたからだ。ラジオとメール、二つのメディアの“双方向性”を生かしながら父親とキャスターの心の交流を描く構成が、リスナーの胸に迫る。

優 秀 <ベイエフエム> I’m Alive!校歌作ろうぜスペシャル!「産まれたての校歌 ~歌い継がれる思いをのせて…」

プロデューサー 鈴木路子  ディレクター 太田英之  出演 小島嵩弘、酒井道代

県内二つの高校が合併して新たに「千葉県立大網高等学校」が誕生することとなり、その校歌作りが、番組DJでミュージシャンの小島嵩弘に託されることに。しかし、二つの高校の卒業生、在校生、教師、地元の人たちそれぞれに思いがあり、その思いを番組で伝えると、さらに波紋は広がった。悩みながらも小島は、校歌「萌黄の丘に」を完成させる。校歌が産まれる瞬間に立ち会うことができた生徒の高揚感が肌に伝わる。

優 秀 <東海ラジオ放送> 太夫(たゆう)と才蔵(さいぞう)の村

プロデューサー・ディレクター 秋田和典  構成 川崎慎也  出演 天野鎮雄、北川 幸太郎

愛知県知多地方の民俗芸能「尾張万歳」は、正月の祝福芸能として伝えられてきた。鎌倉時代に仏教を親しみやすく説くために誕生し、最盛期の明治から大正には、農閑期の出稼ぎ芸として関東・関西に出かけて演じられるようにもなった。その歴史を紹介しつつ、尾張万歳保存会会長で尾張万歳家元である北川幸太郎さんの“次世代の育成”への思いと“文化遺産の継承”の姿を伝える構成は、聴く者の想像力をかきたてる。

優 秀 <エフエム滋賀> Dream of Antarctica ~南極大陸の夢~

プロデューサー 萬木吉人  ディレクター 奥田宗照  構成・脚本 松丸元気  出演 木谷美帆

社員が「第49次南極観測隊」に参加したのをきっかけに、今年2月からワイド番組内に南極レポートコーナーをスタートさせた。日々番組を放送するうち、日本の南極観測が多くの問題を乗り越え、かかわった人がいかに大きな夢と情熱をもって取り組んだのかが実感されてくる。南極に魅せられ夢を追い求めた人たちのストーリーをラジオドラマでつづりながら、観測隊員へのインタビューを通じて南極の魅力を紹介する力作。

優 秀 <南海放送> 宙弥、岡田の勉強しますSP(スペシャル) ~カラス何故鳴くの?松山篇~

取材・構成・プロデューサー 山内孝雄  ディレクター 岡田耕一  出演 中井宙弥

大都市でのカラスの被害の深刻化が言われるが、近年、松山市でも不気味なくらいカラスの数が増えている。もともと松山城にはカラスのねぐらがあり、たくさんのカラスが生息している。カラスの生態から、童謡『七つの子』、神話・民話の中のカラス、電力会社のカラス対策の実情など、カラスのいろいろをゲストを招いて楽しく紹介し、都市生活を好むようになったカラスと人間の共生について、さりげなく考えさせる。

優 秀 <エフエム福岡> 聞こえない声 ~有罪と無罪~

プロデューサー 首藤 裕  ディレクター 大塚和彦  作・演出 阿久根 知昭  出演 永淵幸利

ラジオドラマの形式をとりながら、来年から始まる「裁判員制度」の実際について理解を深めてもらおうと制作された番組。山中で男性が女性を絞殺した事件で、野鳥愛好家が仕掛けた録音機がその模様を偶然とらえていた。男性の有罪は確定的と思われたが、テープを何度か聞くうち不思議な音が混在していることがわかり物語は急展開、衝撃のラストを迎える。“聞こえない音”を使ってラジオドラマの新領域に挑戦した意欲作。

ラジオエンターテインメント番組

最優秀 <山口放送> 中四国ライブネット 山口発・地球も財布もエコロジー

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プロデューサー 伯野茂樹  ディレクター 花野秀明  出演 高橋 裕、青木京子

「無理せず楽しくエコロジー」をテーマに、パーソナリティ高橋・青木の小気味よいトークと専門家の話を通じて、地球にも財布にもやさしい、ちょっとしたエコ活動を紹介していく番組。真面目なテーマを説教くささなく最後まで心地よく聞かせ、身近な話題を所々に散りばめていくラジオならではのセンスが光る。青木をあえてエコに無頓着な立場に置くことで、リスナーの自然な感情移入にも成功している。娯楽に教養を結びつけた、ラジオの新しい可能性を感じさせる作品。

優 秀 <IBC岩手放送> IBCラジオスペシャル 生きてるだけで金メダル ~笑ってがんを生きる~

プロデューサー 姉帯俊之  ディレクター・ナレーター 高橋典子

生存率が極めて低いという「肺小細胞がん」を告知されながらも、奇跡的に克服した樋口強さんは、自らの体験を落語にして、“笑い”でがん患者たちに生きる勇気を与えている。番組では、樋口さんと、彼に影響を受けた患者や医師たちの話も織り交ぜ、人間の強さと、どんな時でも明るく前向きに生きることの素晴らしさを伝える。難病を経験した者だからこそ発することのできる、樋口さんの温かい言葉一つひとつが心に響き、希望を感じさせる。

優 秀 <エフエム東京> SCHOOL OF LOCK!

チーフプロデューサー 森田 太  プロデューサー 宮野潤一  ディレクター 横川 涼  構成 諏訪 勝

「未来の鍵(LOCK)を握るラジオの中の学校」という設定で10歳代のリスナーに向けて連日、熱い授業を展開している同番組では毎年、卒業シーズンに“卒業ライブプロジェクト”を決行している。3年目となる今回、多数の応募の中から選ばれたのは、浜松海の星高等学校の吹奏楽部。ロックバンド「くるり」が学校に乗り込み、数日にわたる泊り込み合宿の末、「くるり」の名曲『ブレーメン』の演奏で卒業生を送り出す。「くるり」と部員とのふれあいや、一曲に込めるそれぞれの熱い想いに、すがすがしさが溢れている。

優 秀 <FM NACK5> Human Relation ~母校が消える~

プロデューサー 村木益美  ディレクター 唐崎則明、平石成範  出演 長谷川 啓雄

アーティスト「サスケ」の番組に届いた一通のファクス。「サスケ」の出身高校が統廃合により今年限りでなくなるため、最後の感謝祭に出演してほしいという。同窓生たちの熱意に応えるように出演を快諾した「サスケ」は、実行委員会と力を合わせてイベントを作り上げていく。背景にある少子化問題にも焦点を当てながら、母校がなくなることの意味を探る。ストリートライブで培った「サスケ」の爽やかなメロディーが、母校を同じくする人々の絆を一層強いものにしている。

優 秀 <北日本放送> 旅立ちのとき ~白石康次郎5つの海を行く~

ディレクター 柴田明夫  出演 白石 康次郎  構成・ナレーター 武道 優美子  電話インタビュー 相本芳彦

2006年10月、世界で最も過酷といわれる単独世界一周ヨットレースがスペインでスタートした。番組は、これに挑戦し見事2位で走破した、富山育ちの海洋冒険家・白石さんと衛星回線を通じてリアルタイムで結んだ記録を、帰国後のスタジオインタビューと合わせてまとめた。過酷な環境下にありながら、淡々として温かみのある白石さんの語りと、大海原の光景が眼前に広がるような詩的な音楽の組み合わせが、聴く者を魅了する。

優 秀 <朝日放送> なんでこんなに巧いんやろ! ~暁照夫60年・わたしの舞台は道頓堀~

プロデューサー 市川寿憲  ディレクター 浦田 拓  ナレーター ナオユキ  出演 暁 照夫

350年続いた道頓堀五座の面影を遺す小さな演芸場「B1角座」が2008年5月31日で閉館することになった。そこで三味線を弾き、唄い続ける暁照夫72歳。芸能生活60年に及ぶ彼の半生を通して、文化・芸能の発信地として栄えた道頓堀の歴史・変遷をたどる。ナレーション、音楽・音の使い方が秀逸。暁さんが奏でる魂を揺さぶる三味線と芸への執念が丁寧に描かれ、重厚で良質な人間ドキュメンタリーとして仕上がっている。

優 秀 <ラジオ沖縄> アイモコの大宜味(おおぎみ)MyLove ~歌と野菜が生まれる場所~

プロデューサー 森田 明  ディレクター 真栄城 正樹  ナレーター 金城 奈々絵

「ハルサーミュージシャン」をキャッチフレーズに活動する夫婦デュオ「アイモコ」が、沖縄県内で人気を集めている。ハルサーとは沖縄の表現で「農業を営む人」。「本業は農業」と言う彼らの音楽は、日常の農作業や沖縄の豊かな自然を歌い込んだものばかり。月に一度、マーケットで披露するライブコンサートの後に販売するのも、音楽CDならぬ自慢の農作物だ。まさに“歌と野菜が生まれる場所”を実感させ、ほのぼのとした雰囲気に浸れる構成の作品。

ラジオ生ワイド番組

優 秀 <青森放送> 岡田照幸とサタデー夢ラジオ ~想い出の学び舎~

プロデューサー 橋本康成  ディレクター 山本 鷹賀春  パーソナリティ 岡田照幸、田村啓美

小学校での演奏活動を続けるピアニストの岡田照幸がパーソナリティを務め、「校門前に卒業生が集まって校歌を歌おう」と呼び掛ける企画。応募で選ばれた54歳の男性が、40年前に通った小学校を子どものころ歩いた通学路を歩きながら「集まってください」と生放送で呼び掛ける。訪れたその場所は過疎化の中で閉鎖され、すでに校舎も残っていないが、原風景ともいえる学び舎の記憶は確かめることができた。

優 秀 <ニッポン放送> 上柳昌彦のお早う Good Day!

プロデューサー 菅沼尚弘  ディレクター 江尻秀昭、太田英之  パーソナリティ 上柳昌彦

「ニュースを武器に今日一日の作戦会議」を標榜し、アンカーマン上柳昌彦が政治・経済・社会・スポーツなどあらゆるジャンルのニュースをいち早く、鋭い視点で伝える。日替わりのコメンテーターも強力だが、注目は「気が付けば現場にいる男」藤原記者。北京五輪の聖火を取り上げた4月25日の放送では、前日までの北京の取材から戻り、羽田に到着した聖火の模様をリポート、そのままスタジオから北京の魅力を報告する活躍ぶりだ。

優 秀 <山梨放送> ラヂウス ~ちょいエコ☆グランプリ~

プロデューサー 丸茂幸司  ディレクター 依田 司  パーソナリティ 浅川初美、酒井康宜

「音を楽しむ」「楽しいおしゃべり」というラジオの原点をコンセプトに、一昨年春スタートした番組。ラヂウス(Radius)はラテン語で「ラジオ(Radio)」の語源となる言葉。リスナーが実践している「ちょいエコ」を募集しグランプリを決定する。文化人類学者で環境運動家のゲストのトークなど、コーナー企画にはメリハリがある一方で、押し付けがましくならない構成。二人のアナウンサーのやりとりも楽しい。

優 秀 <北日本放送> とれたてワイド朝生!「富山の女ちゃー・・・」スペシャル

プロデューサー 柴田明夫  ディレクター 佐伯 和歌子  アナウンサー 陸田陽子、木下一哉

ニューヨークヤンキース松井秀喜選手のお相手が富山県の女性だったことから、この際、富山県の女性について掘り下げてみようと企画された。「嫁をもらうなら富山から」と、隣りの石川県では言われるとか。富山の女性は本当に結婚するのに最適なのか? 働き者、忍耐強い、ケチで締まり屋、しっかり者などなど、リスナーからさまざまなメッセージが届けられる。富山の女性代表の著名人、富山の女性を結婚相手に選んだ有名人の声を織り交ぜながら考える。

優 秀 <ラジオ関西> 谷五郎のこころにきくラジオ

プロデューサー 国広正夫  ディレクター 佐々木 孝昌  パーソナリティ 谷 五郎  アシスタント 中野涼子

加古川市在住で“同社の顔”として15年、隣のおっちゃん的キャラクターで愛される谷五郎と、ほんわかしつつキツイつっこみのアシスタント・中野涼子が、地域の情報や旬の話題を送り届ける。笑い、怒り、感動、ナンセンス、そしてちょっぴりお色気ありで、老若男女が楽しみながら時間を共有できる番組。企画のよさとバランスのとれた構成には、“効く・聞く・利く”ラジオのコンセプトが生きている。

優 秀 <中国放送> 「秘密の音園」番組コラボディスカッション“携帯電話”

プロデューサー 井上英司  ディレクター 吉冨克利、猪野竜平  パーソナリティ 青山高治

親世代がリスナーの番組『さくらいの全力投球』と、子ども世代が聴く番組『秘密の音園』が、携帯電話をめぐって4日間コラボレーション。携帯を持つのに適当な年齢は? 1日に何通メールのやり取りする? 学校裏サイトでいじめられた経験は? などを事前に調査し、それぞれの世代の特徴、意識の違いを浮き彫りにする。最終日に両番組のパーソナリティがお互いの番組に出演してトークを展開し、賢いケータイとの付き合い方を探る。

優 秀 <琉球放送> かでかるさとしのチムどんぱあく

プロデューサー 安谷屋 英作  ディレクター 宮国宏美  パーソナリティ かでかるさとし、前田リナ

“沖縄一の沖縄ファン”を自称する、かでかるさとしと前田リナの二人が土曜の午後に、元気、やる気、勇気を届ける3時間。今年で8年目に突入。「心がドキドキ踊りだしそうになる」ことを「チムどんどんする」と言う。最近は沖縄の人でも使えなくなってきた沖縄言葉をリスナーと一緒に学ぶ「チムどんぱあく的 うちな~ぐち教室」などコーナー満載で、沖縄という地域のカラーを大切にした沖縄ならではの番組。

テレビ報道番組

最優秀 <東海テレビ放送> 光と影 ~光市母子殺害事件 弁護団の300日~

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プロデューサー 阿武野 勝彦  ディレクター 齊藤潤一  撮影 岩井彰彦  編集 山本哲二

1999年に起きた光市母子殺害事件。一、二審は被告に無期懲役の判決を下すが、最高裁は死刑含みで広島高裁に審理を差し戻した。こうした中、21人の弁護団が結成され、接見などを通し、被告に殺意がなかったこと、未熟な精神年齢などが明らかになる。弁護団は内部で真摯に意見を戦わせつつ、争点を「殺意」「計画性」に絞り、明らかになった新事実を証拠に法廷で争うが2008年4月、広島高裁は差し戻し審で死刑を下す。番組は、「荒唐無稽」などと世論の激しいバッシングを浴びた弁護団の側から同事件を取り上げ、深く掘り下げた。裁判取材・報道のあり方にも警鐘を鳴らしている。

優 秀 <北海道放送> 命をつなぐ ~臓器移植法10年 救急医療の現場から~

プロデューサー 溝口博史  ディレクター 山裕侍  撮影 米澤清和  編集 八尾拓郎

市立札幌病院は、心肺停止患者の生存率が全国トップクラスである一方、臓器提供では家族から高い承諾率を得ている。その裏には、40年前の「和田心臓移植」を乗り越えようとする医師らの取り組みがあり、同病院の鹿野恒医師は、本人、家族の意思をくむことの大切さを説く。番組は、ある患者の脳死判定から臓器提供に至るまでの鹿野医師らの行動と、家族の姿を刻々と追うとともに、日本の臓器移植の問題点を探った。

優 秀 <東京放送> 3月10日・東京大空襲 語られなかった33枚の真実

プロデューサー 島田喜広  ディレクター 真木 明  出演 仲村トオル、筑紫哲也

1945年3月10日の東京大空襲は、一夜にして10万人もの命を奪った。直後の凄惨な状況をただ一人、ある警察官が33枚の写真に収めていた。彼の名は石川光陽。番組は、石川の数奇な運命をドラマ化して描き、ネガを求めるGHQに対し「後世に残すべき歴史の証明」と提出を拒んだエピソードなどを伝えた。また、東京を焦土と化すために作られた実験施設にカメラを入れるなど、知られざる大空襲の真実に迫った。

優 秀 <テレビ新潟放送網> ドキュメント’08 命のかぎりムスタンに生きる

プロデューサー 堀 直規  ディレクター 坂上明和  撮影 計良 昇  編集 岩崎 功

主人公は、新潟出身の近藤亨さん。家族と別れ、単身ネパールの秘境ムスタンに渡り、誰も成し得なかった標高2700メートル以上の土地での米づくりに挑戦し、成功させた人物だ。その後、果樹園から学校まで、長年地元の人々の幸福を願い働いたが、86歳を迎え、農場に上る体力が失われた今、近藤さんには無念が残る。12年にわたる長期取材で、ムスタンを愛し、この地に生きた一人の日本人を美しい映像とともに描いたドキュメンタリー。

優 秀 <毎日放送> 映像’07「夫はなぜ、死んだのか ~過労死認定の厚い壁~」

プロデューサー 里見 繁  ディレクター 奥田雅治  カメラ 廣田智生  出演 内野博子

自動車会社に勤めていた内野博子さんの夫は2002年、残業時間中に倒れ、死亡した。当初は夫の過労死を認めていた会社側だったが、その後、内野さんが労災認定を申請した際、地元の労働基準監督署はこれを退けた。内野さんと会社で確認した残業記録と、会社が労基署に提出した記録に隔たりがあったのだ。国を相手取った訴訟と労災認定の再審査請求――内野さんの長い戦いが始まった。大企業の「労災隠し」の実態や過労死認定の問題点に果敢に迫るとともに、労働保険審査会の存在など、行政側の現状を明らかにした。

優 秀 <高知放送> 聴診器一本の地域医療 ~耳と心で患者を診て~

プロデューサー 竹島章記  ディレクター 田中正史  撮影・編集 田所 康  ナレーター 秋山陽子

200以上あるという微妙な心音の違いを聴き分け、疾患を的確に発見する大脇嶺医師は、聴診器のスペシャリスト。高知の大病院で副院長まで勤めた大脇医師は、患者と直接向き合える地域医療を望み、医師不足に悩む長野県信濃町の病院に赴任する。聴診器を使わない診察が増える中、機器のそろわない地域医療こそ、聴診器の重要性は増すと話す大脇医師は、人材育成などにも力を入れている。「聴診器」をキーワードに、新研修医制度によって地方病院に研修医が行かなくなった現状など、多角的に地域医療の問題をとらえた。

優 秀 <RKB毎日放送> 母は闘う ~薬害肝炎訴訟原告 山口美智子の20年~

プロデューサー 貞刈昭仁  ディレクター 大村 由紀子  構成 松石 泉  編集 川路幹夫

次男の出産の際、血液製剤投与でC型肝炎に感染した山口美智子さんは、薬害肝炎の責任を国に認めさせるため、人々の支援を得ながら、訴訟原告としての活動を活発化させる。次々と明るみに出る製薬会社と厚生省(現、厚生労働省)のずさんな対応、責任逃れ、隠蔽。各地で被害者勝訴の判決が下される一方で、投与の時期などで救済対象の線引きが行われる。番組は、全員救済を求め、国を動かし、2008年1月に「薬害肝炎救済法」を成立させるまでの山口さんの苦悩、次男の葛藤など、20年の軌跡を描いた。

テレビ教養番組

最優秀 <毎日放送> 映像'08 家族の再生 ~ある児童養護施設の試み~

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プロデューサー 里見 繁  ディレクター 米田佳史  カメラ 原 淳二  出演者 桑原教修

京都府舞鶴市の児童養護施設「舞鶴学園」は「小舎制」を実践している。かつては大きな施設で集団生活を送る「大舎制」をとっていたが、より家庭に近い環境の中で育てることで、子どもの自立を促そうとしている。乳児院からやって来た一組の兄弟と、17年間生活した学園を巣立つ女子高生の姿を追い、擬似家族で学ぶ“家族のかたち”を伝えることで、家族を知らない子どもたちに「家族とは何か」を学ばせようとする小舎制の理念が明確に表現される。撮影に制限がある中、子どもたちの一瞬の表情や親への思いがしっかりとらえられており、児童養護施設の実態をじっくり見せることに成功している。

優 秀 <仙台放送> なじょすっぺ先生 ~医師 富永忠弘80歳~

プロデューサー・ディレクター・撮影 岩田弘史  撮影 渡辺勝見  音響効果 佐々木 学  整音 小峰義央

12年前、宮城県石巻市の小さな浜の診療所にやってきた一人の医師。富永忠弘、当時68歳。東北大学教授で、大病院の院長も歴任した高血圧治療の権威が、最後の仕事場に選んだのは人口わずか400人の小さな漁村。それは、ずっと心の中で目指していた本当の医者になるためだった。80歳となった今も、坂道ばかりの漁村の路地をゆっくりと巡り往診に励む姿は、“命とは何か”を問いかけている。四季折々の営みの中、老いと死に寄り添う老医師の姿を静かに見つめる中で、地域医療の現実と問題を浮かび上がらせた。

優 秀 <BS朝日> 世界の好奇心 ミュージアム・ジャーニー in ドイツ博物館

プロデューサー 岡田 亮  プロデューサー・構成・演出 三室 雄太郎  企画 重延 浩  出演 浅井愼平

子どもにも大人にも想像力や知的興奮を呼び起こす科学を求めて、世界中の博物館を旅する2時間スペシャルのシリーズ企画第2弾。今回は、世界最大の科学技術ミュージアム「ドイツ博物館」を浅井愼平さんとミュンヘン日本人国際学校の子どもたちが訪ねる。子どもたち一人ひとりの好奇心の行方を感じさせるとともに、科学技術とは、人間が豊かな生活を送るために段階を経て発展してきた道具であることを再発見させてくれる。

優 秀 <信越放送> SBCスペシャル あなたらしさを守りたい ~認知症グループホームは問う~

統括 岩井まつよ  プロデューサー 善財 優  ディレクター 手塚孝典  ナレーター 三島さやか

長野県松本市の認知症介護専門グループホーム「ひだまりの里」は、入居者が重度になると入院が増え、介護報酬が入らない厳しい施設運営に直面している。安曇野市のグループホームでは訪問看護ステーションとの医療連携を整えたが、対応が思いどおりに進まない。支えているのは献身的な介護員だ。お年寄りの話に耳を傾け、歩き回る時にはそっと寄り添う。延命治療、終末期ケア、看取り、重度になれば一人ひとりの人生と命に向き合う。制度の不備を訴え、介護とは何か、介護の社会化とはどうあるべきかを考えさせる。

優 秀 <東海テレビ放送> 黒と白 ~自白・名張毒ぶどう酒事件の闇~

プロデューサー 阿武野 勝彦  ディレクター 齊藤潤一  編集 奥田 繁  ナレーター 原田 美枝子

47年前、三重県で起きた「名張毒ぶどう酒事件」。82歳になる死刑囚は、今も獄中から無実を訴え続けている。弁護団は科学的証拠を積み上げ、再審を請求。裁判所は「疑わしきは罰せず」の原則に戻るかと思われたが、名古屋高裁は再審の扉を閉ざした。昨年は、鹿児島の志布志事件、富山の氷見事件など、自白の強要による冤罪が続発した。名張の事件を追い続ける同社は今回、事件の闇の部分である「自白」に焦点を当てながら、事件と自白と判決の構図を解き明かし、現在の刑事裁判へと続いている問題を浮かび上がらせた。

優 秀 <山口放送> 山で最期を迎えたい ある夫婦の桃源郷

プロデューサー 竹村昌浩  ディレクター 佐々木 聰  ナレーター 中谷隆宏  撮影 山本宏幸

「自分らしく老いてゆきたい」。電気も水道も通っていない山で暮らす老夫婦の17年にわたる記録。それは、信念を貫いて手を取り合って生きる夫婦と、親とのかかわり方や自分自身の生き方を模索する娘夫婦たちとの軌跡でもある。「山を下りてほしい」――3人の娘たちは言い続けたが、90歳に近づいてもなお山の暮らしにこだわり続ける両親を見て、気持ちが変化していく。「いい人生の歩き方を教わった」。親と向き合い、親を看取ることで、自らの生き方と向き合った娘たちの姿は、深い共感を呼び起こす。

優 秀 <大分放送> 子どもたちへ ~がんと闘う山ちゃんの想い~

フプロデューサー 兼子憲司  ディレクター・ナレーター 井口尚子  撮影・編集 佐藤 拓

大分県豊後高田市に住む山田泉さんは、2000年に乳がんを発症し、死を身近に感じたことがきっかけで、養護教諭として市内の小中学校に勤務する傍ら、命の大切さについて教える「いのちの授業」を行ってきた。彼女は、子どもたちに「自分のがんは治る見込みがなく、残された時間はあとわずか」と包み隠さず話す。そうした彼女の姿に、子どもたちが命の大切さを学び、“何か”を感じたことが強い印象を与える。

テレビエンターテインメント番組

最優秀 <長崎放送> いつも心にジャグリング

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プロデューサー 大田 壽満夫  ディレクター 古川恵子  カメラマン 宮崎陽平  ナレーター 花田千種

長崎大学医学部附属病院には、長期入院中の患者をジャグリングでなぐさめ、勇気づける活動を続けている医学部生のサークルがある。番組は、そのメンバー3人を主人公に、児童施設、老人ホーム、離島の病院、あるいは路上などでの地道な活動や、練習や勉強に励む日常生活を追いかけ、地味ながらもまっすぐな姿を爽やかに描き出す。ジャグリングという素材をうまく使い、現在の医療問題を浮かび上がらせる構成に、意外性と新鮮さが感じられる。地域医療の崩壊などが指摘される昨今、「すべての医者にこういう心を持っていてほしい」と思わせる。

優 秀 <青森放送> 聴いてください!私の津軽民謡

プロデューサー 黒滝久可  ディレクター 對馬 敬  撮影 棟方直樹  ナレーター 秋山博子

栃木から青森に移り住み、津軽民謡の修行に打ち込む須藤かすみさん。中学生の頃に聴いた民謡の迫力に圧倒された彼女は、じょんから節発祥の地で母と二人の質素な生活を送りながら、津軽の風土を身に付けようと、農作業や巡業にいそしむ。そして、天性の声の良さと人一倍の努力により、ついに青森県民謡グランプリ第54代民謡王座を勝ち取る。起承転結のしっかりした構成、若者へのメッセージ性、さらに、「貧乏の中でもとにかく歌いたい」という主人公の一途な姿勢が、強い共感を呼び起こす。

優 秀 <ビーエス・アイ> 北京への道2008 こんな凄い奴がいた

プロデューサー 浦城義明、田嶋 敦  総合演出 佐野岳士

110年を超える歴史を持つ近代オリンピックは、1896年の第1回アテネ大会以来、激動の20世紀とともに揺れ続けてきた。「国家の枠を超えた平和」という当初の理念が時代とともに変貌していくありさまを縦軸に、そして、アスリートたちの極限までの肉体的・精神的挑戦を描いた人間ドラマを横軸に、スポーツの素晴らしさ、アスリートたちのメダルにかける英知を紹介。繊細な視点からダイナミックなスポーツの魅力を訴えかける。

優 秀 <信越放送> SBCスペシャル 福太郎の家

統括 岩井 まつよ  プロデューサー 善財 優  ディレクター 手塚孝典  ナレーター ayako_HaLo

2歳の福太郎と母親のたまちゃん、そして友人のあやちゃんの3人は、長野市善光寺の古い民家で暮らしている。一方、父親のケンイチは、結婚どころか同居もしていない。普通の家族の形にとらわれず、仲間や地域の人々と交じり合いながら、「福太郎の家」の生活は淡々と営まれてゆく。番組からは、切羽詰まった時代だが、ゆるい空気の中にこそ大切なものがある、というメッセージが伝わる。肩ひじを張らない制作手法で、地縁・血縁について考えさせる点など、不思議な魅力を放つ番組。

優 秀 <三重テレビ放送> 親父もラガーマン ~もうひとつの花園~

プロデューサー 山田享司  ディレクター 脇 こず恵  カメラマン 深田満彦

高校ラグビーの名門、四日市農芸高校ラグビー部。花園の常連校である同チームに対抗して、3年生部員の父親たちがラグビーチームを結成し、「親父の威厳をみせるため」「息子の成長を体で感じるため」、卒業式の日に親子決戦を挑むことになった。ラグビー経験の全くない父親たちが仕事の合間にトレーニングを重ね、息子との真剣勝負に臨む。番組は、父親と高校生のぶつかり合いという好素材をもとに、現代における親子、家族の絆の大切さをあらためて問いかける。

優 秀 <毎日放送> ~たむらけんじの学校に行こッ!~ イマドキのセイシュン

プロデューサー 田渕伸一  企画 水野雅之  演出 末吉明人  出演 たむら けんじ

いじめ、受験戦争、教師の不祥事など、教育に関する暗いニュースが多い昨今。そんな中でも熱い青春時代を過ごしている高校生の学校生活を、たむらけんじが体当たりのリポートでナビゲートし、元気、笑顔を届ける番組。たむらの輝く個性が、高校生たちの明るい姿をエンターテインメント性たっぷりに映し出している。素材がよく吟味されており、おおいに好感が持てる。

優 秀 <高知放送> 遥かゴールへ君とともに ~第13回四万十川ウルトラマラソン

プロデューサー 西村良文  ディレクター 中嶋淳介  ナレーター 井上琢己、秋山陽子

60km、100kmなど、フルマラソンを超える距離を走破するウルトラマラソン大会の一つに、「四万十川ウルトラマラソン」がある。番組は、同大会に出場した4人にスポットを当て、マラソンにかけるそれぞれの思い、ゴールに向けて走りぬく姿を追いかけ、過酷なレースに挑む人間模様に迫る。それぞれのドラマを抱えた登場人物たちが素晴らしく、気配りの行き届いた演出、構成も効果的。静かな作品ながらも、最後までひき込まれ、文句なく感動を呼び起こす。

テレビドラマ番組

最優秀 <テレビ東京> 山田太一ドラマスペシャル 本当と嘘とテキーラ

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チーフプロデューサー 佐々木 彰  ディレクター 松原信吾  脚本 山田太一  出演 佐藤浩市ほか

主人公は、不祥事を起こした企業の謝罪会見を演出する危機管理コンサルタント。しかし、ビジネスでは有能な彼も、自分のひとり娘が“危機”に瀕している現実には、なす術を持たない。内部統制・コンプライアンスなど企業が直面する課題と、親子関係のあり方をオーバーラップさせ、山田太一作品らしいメッセージ性と完成度が際立った。  同級生の自殺の真相をめぐる娘と父のやりとり、関係者の虚実入り乱れた駆け引き。企業と家族という二つの舞台が絡み合いながら、“本音を隠し表面を取り繕う”という日本的な風土をあぶり出す。脇役陣の好演も出色で、特に主人公の娘を演じた少女が、作中人物としてだけでなく、女優として成長していく姿が忘れがたい。“いま”という時代をドラマの形ですくい上げるテーマ性と娯楽性のバランスも優れている。

優 秀 <テレビ朝日> テレビ朝日開局50周年記念ドラマスペシャル「点と線」

プロデューサー 五十嵐 文郎  ディレクター 石橋 冠  脚本 竹山 洋  出演 ビートたけしほか

福岡の海岸で発見された心中死体。二人の刑事がその謎を追う。時刻表のトリックやアリバイ崩し、背景には汚職事件を絡ませ、社会派推理小説ブームを巻き起こした松本清張のベストセラーを初めてテレビドラマ化した。2部構成のうち第2部が受賞対象。  昭和30年代の日本が綿密な時代考証で再現され、世代を超えて引き込まれる。半世紀前の名作を、日本がたどった歴史を概観する社会的な視点を取り入れながら蘇らせた。忘れ去られようとする昭和という時代の光と陰を語り継ごうとする骨太な姿勢が感じられる。ビートたけしの存在感が圧倒的で、人間ドラマとしても申し分ない。

優 秀 <フジテレビジョン> ガリレオ

プロデューサー 鈴木吉弘  ディレクター 西谷 弘  脚本 福田 靖  出演 福山雅治ほか

さまざまな難事件を天才的物理学者が豊富な科学的知識を駆使して解決する、直木賞作家・東野圭吾の連作ミステリーが原作。1話完結・全10話の連続ドラマの第1話。  ドラマオリジナルの登場人物として、主人公の相方に新米の女性刑事を配し、謎解きだけでなく、男女のかけあいの楽しさも加味。男女の新しい関係性にも言及して、今日的な批評性がある。繊細でテンポのある脚本は人間ドラマとしても秀逸で、隅々まで行き届いた映像の濃密さと情報性は日本の連続ドラマの一つの到達点といえる。1話完結でありながら、次回を観たいと思わせる連続ドラマとしての醍醐味がある。

優 秀 <WOWOW> パンドラ

プロデューサー 青木泰憲、小椋久雄  監督 河毛俊作  脚本 井上 由美子  出演 三上博史ほか

長年の研究の末、がんの特効薬を発見する内科医。殺人事件を機に新薬をめぐる渦に巻き込まれる刑事。研究の横取りを狙う女性外科医……。がん特効薬という“パンドラの箱”が開けられたことで巻き起こる人間模様をスリリングに描いた。全8話中、第1話が対象。  人類にとって最も切実ながん撲滅や不老不死というテーマに着眼した社会性。それをファンタジーに陥らず、治験など薬事行政などのリアリティにも配慮しながら、生と死の問題を視聴者に訴えかける。ダークサイドに引き込まれた人間の欲望や狂気が、個性豊かなキャラクターによって活写され、上質なエンターテインメントといえる。

優 秀 <中部日本放送> ガラスの牙

プロデューサー・ディレクター 堀場正仁  脚本 金子成人  出演 高畑淳子、蓮佛 美沙子ほか

宮城県で活動する実在の女性保護司を主人公にした作品。地元コミュニティFMのDJをしながら、東北地区の少年院向けに院内放送の制作にも携わる主人公。少年少女たちの更正に向けて奮闘する姿を通じ、青少年が抱える現実と社会とのかかわりを描いた。  保護司という“人を見守る”職業、特に少年院向け院内放送という知られざる素材へのアプローチが興味深い。社会問題に正面から取り組み、主人公の前向きな人柄を押し出すことで、難しいテーマをうまく着地させている。少年少女たちキャラクターの描き分けも見事で、それぞれのひたむきな演技にも好感が持てる。

CM部門

ラジオCM 第1種(20秒以内)

最優秀 <ニッポン放送> ファミリー引越センター 思い出篇(20秒)

プロデューサー 高橋晶子、林 尚司(電通)  ディレクター 松田哲雄(サウンドマン)  構成・コピー 廣瀬泰三(電通)

引っ越しのための荷造り。それは、さまざまな思い出の詰まったものを整理する作業でもある。(女性)「この箱には元彼の写真が……」、(業者)「壊れ物ですね」。(女性)「これは今の彼の写真が……」、(業者)「生ものですね」。(女性)「彼、奥さんいるんです」、(業者)「危険物じゃないですか……」。ありふれた引っ越しの1コマを、ブラックな笑いを入れて描き出し、インパクトのあるラジオCMに仕上げている。

優 秀 <STVラジオ> 自社媒体PRスポット 法廷対決~存在価値の証明 編(20秒)

プロデューサー 岡崎みどり  ディレクター 大針三治   出演 明石英一郎(札幌テレビ放送)、森中慎也(札幌テレビ放送)

ある法廷でのやり取り。被告人は午後1時頃、このニュースを知ったに違いないと主張する検察官に対し、弁護人は、その時間に被告は車を運転中であり、車にテレビはなく、ケータイも操作できない、と異議を申し立てる。異議を認める裁判官に、検察官が「みなさんお忘れじゃないですか?」。STVラジオの存在を、ユーモアを交えつつアピールすることに成功している。

優 秀 <ニッポン放送> 帝都自動車 タクシー乗務員募集/なれ初め篇(20秒)

プロデューサー 高橋晶子、林 尚司(電通)  ディレクター 松田哲雄(サウンドマン)  構成・コピー 荻原 努(ランダムハウス)

「お客さん、どちらまで」「もう、どこへでも……」と、投げやりな女性客とタクシー乗務員の間のよくありそうな会話。ただ、ちょっと違うのは、これがタクシー乗務員である山田さんとその妻の“なれ初め”だったこと。ドラマのような意外な展開を、落ち着いた演出で淡々と進めながら、さまざまな乗客と出会うタクシー乗務員という仕事の魅力を伝え、応募者を誘う秀逸な作品。

優 秀 <ニッポン放送> 日本用品 温暖化篇(20秒)

プロデューサー 高橋晶子、林 尚司(電通)  ディレクター 松田哲雄(サウンドマン)  構成・コピー 秋永 寛(電通)

地球の温暖化が進み海面が上昇し、陸地がどんどん沈んでしまったら、どこに住むか。この問いに、男性がけだるそうに「んー、……山?」と答える。この答えに「なるほど」と感心していると、唐突に「山の道具なら何でもそろうニッピン」というアナウンスが入る。力の抜けた男性同士の会話からの意外な展開により、インパクトのあるラジオCMに仕上がっている。

優 秀 <エフエム東京> 味の素 Jinoフォレスティーノ薬用アミノ育毛ローション/身体測定(20秒)

プロデューサー 石井利始(アサツー ディ・ケイ)  ディレクター 林屋創一  構成・コピー 三井明子(アサツー ディ・ケイ)  出演 一木美名子(大沢事務所)

“カシャ”という測定器が頭上に落ちる金属音とともに、それぞれの身長がアナウンスされる、という身体測定の1コマ。自分の順番になった男性の頭に測定器が下りた瞬間、「冷て……」と一言。頭髪に悩む男性であれば、必ず体験しているであろうシチュエーションを巧みに構成し、育毛ローションのPRに無理なく結び付けている点が、高く評価された。

優 秀 <中部日本放送> 自社媒体PRスポット/5秒でもさびしいがや(20秒)

プロデューサー 松本 徹  ディレクター 大園康志、森合康行  構成・コピー 松永英隆(ホーボーズ)  音楽・サウンドエフェクト 今井志のぶ(東海サウンド)

スポットでは初めに、“地球上の言語は約6700種類存在するが、グローバリゼーションの波が押し寄せ、少数民族の言語は2週間に1つ消失している”ことを伝える。その後、5秒間の沈黙をはさんで、おばあちゃんの「5秒でもさびしいがや」という語りが続き、「ことばをつなぐCBCラジオ」というアピールが入る。CBCラジオの言葉に対する熱い思いを伝えるスポット。音のメディアであるラジオで、あえて静寂を用いる意表を突いた演出が功を奏している。

優 秀 <愛知国際放送> アルペン アルペンフィットネスクラブ/エスカレーター(20秒)

プロデューサー 伊藤浩司、庫元正博(電通中部支社)  ディレクター 杉田幸博(アセント)  構成・コピー 藤岡 哲(電通中部支社)

東京でエスカレーターに乗ると、「すみません、右側あけてもらえます?」言われ、大阪だと、「すんまへん、左、あけてもろてよろしいか?」と声をかけられるという、よくある風景。でも言われた本人は、いつもちゃんと片方を空けているつもりだったのだ……。巧みな構成で、特に男性のメタボリック対策の必要性を、嫌味なく伝えることに成功している。

ラジオCM 第2種(21秒以上)

最優秀 <エフエム東京> 味の素 プレッシャー電鉄/黄昏(120秒)

プロデューサー 石井利始(アサツー ディ・ケイ)  ディレクター 林屋創一  構成・コピー 田中壮太郎(アサツー ディ・ケイ)  出演 原金太郎(大沢事務所)

帰りの電車の中。いつもとはちょっと違う車内アナウンスが流れる。「え~、間もなく、60代、60代でございま~す」。車掌のアナウンスはどんどん脱線し、定年を間近に控えた主人公の人生をおもしろおかしく語っていく。サラリーマン人生の縮図ともいえる通勤電車を舞台にしながら、“新たな一歩を踏み出して、自分でも料理を作ってみませんか”と呼びかける味の素の企業CM。効果音の使い方や、奥行きのあるセリフまわしなど、ラジオCMの楽しさを再認識させてくれる作品となっている。

優 秀 <ニッポン放送> 喜代村 すしざんまい/会話ネタ篇(60秒)

プロデューサー 高橋晶子、林 尚司(電通)  ディレクター 松田哲雄(サウンドマン)  構成・コピー 佐藤延夫(大日)

築地の寿司店「すしざんまい」のラジオCM。(男)「今日の君はとってもカレイだよ」。(女)「そんなホタテに乗らないわ」。(男)「ホヤホヤ、困った人だ。ブリしなくていいんだよ」……などなど、60秒の全編、寿司ネタのダジャレで押し通す。このCMを聴いたリスナーが、思わず寿司を食べたくなってしまうような、楽しい雰囲気作りに成功している。

優 秀 <エフエム東京> コスモ石油 コスモ アースコンシャスアクト/自然から生まれた音色(120秒)

ディレクター 山口景子  構成・コピー 鷺田千登勢(フリー)  音楽・サウンドエフェクト 近藤浩章(C・オーグメント)  録音技術 田中誠記(音響ハウス)

オーボエ、ヴァイオリン、ピアノ――これらの楽器は、葦の茎や松の木など、自然の産物を材料に、人が命を吹き込み生まれたものである。これらの楽器のすばらしい音色を聴かせながら、地球環境と人との共存を訴える。4月22日の「世界アースデー」に企画されたコンサート「コスモ アースコンシャスアクト」の生中継の中で放送するために制作されたラジオCM。生音の美しさと、メッセージが巧みに合致した作品である。

優 秀 <J-WAVE> サラヤ あなたはケーキを篇(90秒)

プロデューサー 大谷恭代  ディレクター 中山佐知子(ランダムハウス)   出演 大川泰樹(MMP)  録音技術 森田仁人(フリー)

アブラヤシは、安価で環境にも良いとされるため、加工食品、化粧品など、生活にかかわるものによく使われている。しかし、原料となるアブラヤシは、ボルネオの熱帯雨林を切り開いて育てられている。自然環境に配慮した商品が、実は原産地の自然環境を破壊して作られているという現実を正直に示しながら、自社は自然環境保護にも努力しているというサラヤの企業姿勢を、押し付けがましくなく伝える作品である。

優 秀 <J-WAVE> 公共キャンペーン・スポット/キッズプロジェクト「むかしむかし」篇(100秒)

プロデューサー 大谷恭代  ディレクター 福本ゆみ(福本ゆみ事務所)  音楽・サウンドエフェクト 佐々木聖子(音ランド坂井)  録音技術 安田慎一(フリー)

「耳で聞いた物語は、頭の中で絵本になった」。子どもの頃、母親が読んでくれた昔話が、効果音と相まって、まるで実体験であるかのように感じられる。同社は、ラジオを通じて子どもたちの五感を育てるKIDSプロジェクトを進めている。ラジオから流れる音により、子どもたちの豊かな想像力が育まれることを実証するキャンペーン・スポット。

優 秀 <愛知国際放送> コーミ コーミこいくち/帰ってきたコロッケ(90秒)

プロデューサー 伊藤浩司、庫元正博(電通中部支社)  ディレクター 杉田幸博(アセント)  構成・コピー  藤岡 哲(電通中部支社)

幼稚園の息子がお弁当の中の大きなコロッケをそのまま残してきた。具合が悪いのか、友達とケンカでもしたのかと心配し、それとなく息子に尋ねる母親。実は、息子はコロッケを誤って落としてしまい、先生に汚いので捨てるように言われたものの、捨てられずに持って帰ってきたのであった。日常の何気ない1コマを描きつつ、コロッケと相性がよいこいくちソースを主力商品とするコーミの企業イメージアップに貢献している。

優 秀 <南日本放送> 南日本総合サービス 統一キャンペーン・スポット/守ろう地球環境~ウミガメと環境問題~(59秒)

プロデューサー 田上憲一郎  ディレクター・出演 竹下裕理  出演 大和隆信

鹿児島県は日本一のウミガメの産卵地であるが、その数は年々減り続けている。40年近くウミガメの産卵を見守ってきた大和隆信さんに、ウミガメが減っている理由や、砂浜や環境を守るために、何ができるかを語ってもらう、キャンペーン・スポット。波の音や地元の人の言葉など素朴でかつリアルな音声を効果的に使うことで、リスナーに対して、より身近な問題として捉えさせることに成功している。

テレビCM

最優秀 <中部日本放送> 共和 オーバンド/ゴム銃名人が愛用するのは…(75秒)

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プロデューサー 藤井 稔  ディレクター 宇佐美浩伯  出演 内田保男  撮影 松岡 豊(東海ビデオシステム)

木や金属を材料にした自作の銃で輪ゴムを飛ばし、その正確性を競う「ゴム銃射撃」。競技の勝敗を決める大きな要因のひとつは“輪ゴム選び”である。ゴム銃名人で、日本ゴム銃射撃協会愛知県武豊支部長でもある内田保男さんが選ぶのが、天然ゴムにこだわって輪ゴムを製造している共和の「オーバンド」。ゴムの素材によって異なる飛びの違いを、ハイスピードカメラを駆使して巧みに見せる。ハードボイルドを連想させる演出と、映像へのこだわりがうまく調和され、エンターテインメント性の高い作品となっている。

優 秀 <北海道放送> 公共キャンペーン・スポット/DOエコプロジェクト・太郎の物語(60秒)

プロデューサー 小野垣親士  ディレクター 田中 敦  撮影 岡田嘉一(フリー)  ナレーション 堀 啓知

北海道の海で、水温の上昇が原因と考えられる数々の“異変”が起きている。昨年10月、稚内に近い海岸で、熱帯の海で暮らすはずのアオウミガメの子が、瀕死の状態で保護されたのもそのひとつである。片方の前足がちぎれた姿で「おたる水族館」に保護されたアオウミガメの太郎は、半年に及ぶ治療の結果、水槽を自由に泳ぎ始めるまでに回復した。傷ついた太郎の姿をあえて隠すことなく映像化し、回復していく様子を丁寧に記録することで、地球環境を守ることの大切さを視聴者に訴えている。

優 秀 <東海テレビ放送> 自社媒体PRスポット/開局50周年自社PRスポット「わんだほ」(60秒)

プロデューサー 喜多 功  ディレクター 小関亜紀(コセキキカク)  アイデア・企画 高柳亮二(電通中部支社)  CGアニメーター 吉田正明(フィニット)

「わんだほ」は、“雲”をイメージした不思議な生き物で、東海テレビが開局50周年を機に制作した新キャラクターである。名前は「Wonderful」からきていて、テレビを通して「ちょっとした“ワンダフル”を届けたい」という思いが込められている。その「わんだほ」が主役となって登場し、春編・夏編など、それぞれの季節、場面で不思議な魅力を振り撒く。アニメーションの完成度が高く、視聴者に自社イメージをPRすることに成功している。

優 秀 <東海テレビ放送> 公共キャンペーン・スポット/「つたえる つなぐ」木魚篇(105秒)

プロデューサー 水田尚孝  プロデューサー・アイデア・企画 伊藤順子  ディレクター 伊藤 誠(オフライン)  撮影 原田浩二

木魚職人である加藤春男さん・寿和さん親子に焦点を当てる。親から子に木魚作りの技と心を伝える様子を取り上げることにより、「今という時代を伝え、人の思いを伝える。そして、伝えることで人と人をつなぎ、時と時をつないでいく」という自社のキャンペーンに込める思いを表現している。加藤親子の魅力的な人柄が、作品を一段と心温まるものにしている。

優 秀 <中京テレビ放送> 公共キャンペーン・スポット/中京テレビエコキャンペーンスポット「ストロマトライトの呟き」(60秒)

プロデューサー 伊豫田祐司、通木芳之(中京ビデオセンター)  ナレーター 川村博信  ディレクター 小島英幸(中京ビデオセンター)  クレイアニメーション 稲積君将(フリー)

オーストラリアの世界遺産「ストロマトライト」が、地上の環境汚染が進む現状を嘆くという内容。ストロマトライトが酸素を吹くという貴重な映像を用いながら、同時に粘土や砂を使ったモデルアニメーションも盛り込むことによって、わかりやすい演出となっている。ストロマトライトに環境問題を語らせることで、視聴者に地球環境の大切さを押し付けがましくなく伝えている。

技術部門

最優秀 <フジテレビジョン> 映像ダイナミックレンジ補正装置「D-Rex」の開発

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研究・開発担当者 西川 寛

画素単位で輝度レベルを最適化することにより、明部の階調を保持したまま、ノイズの発生を抑えつつ暗部を持ち上げるといった映像ダイナミックレンジの補正を低遅延・リアルタイムで行うシステムを開発・実用化した。  これにより、逆光など明暗のコントラストが大きな撮影環境における番組制作の自由度を向上させつつ、映像品質を高めることに成功し、映像技術の高度化に大きく貢献した。

優 秀 <岩手めんこいテレビ> P2 ID送出システムの構築 ~サーバーレスワークフロー~

研究・開発担当者 坂本 淳、佐々木雅啓、菊池拓司、佐藤貴広

報道設備のHD化に伴い、P2(メモリーカード)デッキを送出サーバーの代わりに採用し、オンエア中の素材の差し替えや緊急時の“撮って出し送出”等にも対応可能な、安価で安定した送出システムを開発・実用化した。  これにより、業務規模に応じた完全テープレスワークフローを実現し、送出業務の効率化・省力化に貢献した。

優 秀 <日本テレビ放送網> 超低遅延放送素材伝送用コーデックの開発

研究・開発担当者 牧野鉄雄、宮内 聡

医療・車載用の低遅延コーデックに着目し、これをワイヤレスカメラやFPU等に応用するための技術開発を行い、圧縮・伸長による遅延を10ミリ秒に抑えながらFPUやIP伝送などの狭帯域な伝送路に対応するHD伝送用MPEG-2コーデックを実用化した。 これにより、中継番組における掛け合いやワイヤレスカメラと有線カメラの併用などにおいて低遅延化の期待に応え、テレビ番組制作の高度化に貢献した。

優 秀 <日本テレビ放送網> MPEG2・H.264簡易モニタシステム「多重TS-IP変換装置」の開発

研究・開発担当者 土居清之、宮内 聡

複数のプログラムが多重されたTS信号から各プログラムを自動抽出し、IPパケット化してマルチキャスト配信を行うことにより、民生用の安価なIPTV-STBでデコード・表示が可能となる変換装置を開発・実用化した。  これにより、ロードレース中継において、複数のマイクロ中継ポイントで安価かつ簡便に映像確認が可能となるなど、テレビ番組制作の効率化に貢献した。

優 秀 <フジテレビジョン> 新照明システムの開発(湾岸スタジオ照明設備)

研究・開発担当者 植松晃一

スタジオ上部のグリッドを、照明設備の昇降装置等を設置するメンテナンスエリアと、日常の番組制作作業を行うワーキングエリアに二層化するとともに、ワイヤの巻き取り機構などに工夫を凝らし、パッケージ化しつつ汎用性を持たせた省エネ型の昇降装置を開発し、新スタジオの照明システムとして実用化した。  これにより、運用上の安全・安定性を確保しながら創造的かつ効率的な番組照明が可能となり、テレビ番組制作の高度化・効率化に貢献した。

優 秀 <東海テレビ放送> 大型船の反射による品質劣化現象の解析とアレーアンテナを使用した放送波中継の実現

研究・開発担当者 坪井 純、臼井正年

岐阜県での放送波中継の品質劣化現象について、長期にわたる観測・解析作業を地道に行い、原因が伊勢湾上の大型船による反射であることを突き止めたうえ、小型アンテナを並列配置して合成し、大型アンテナ並みの水平指向性能を確保して放送波中継を実現する受信システムを開発・実用化した。  これにより、放送波中継が困難とみられていた土岐南中継局で、民放4局による放送波中継を安価に実現し、テレビ送信技術の高度化に貢献した。

優 秀 <朝日放送> 『ABCチャンピオンシップゴルフトーナメント』におけるショットメイクCG

研究・開発担当者 中山 裕、秋山泰彦、水町勝利

ゴルフコースを3次元で完全にCGデータ化し、バーチャルスタジオ技術と組み合わせることで、実写空間とCG空間を自由に違和感なく行き来する表現を可能とするゴルフ番組解説ツールを開発・実用化した。 これにより、プレーヤー目線でのコース確認や、CG映像を参照した効果的な解説がリアルタイムで可能となり、スポーツ中継における演出の可能性を広げ、テレビ番組制作の高度化に貢献した。

特別表彰部門

青少年向け番組

最優秀 <山梨放送> ともちゃん家の5時「森で遊ぼう」

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プロデューサー 中島一彦  ディレクター 久保島 一彦、荻野弘樹、加藤哲郎

核家族化が進む中、家族そろってお茶の間で見ることができる番組。“五感体感”をモットーに「家族」を大きなテーマに据え、東京から引っ越してきたという設定の3世代家族が進行する。一般公募の子役たちを主役に、身近な食べ物から地域の歴史まで幅広く取り上げる。 今回の放送は「森と遊ぼう」。自然から何を学び、どんな遊びができるのかを、子どもや親たち目線で取り上げた。主役の2人が森林インストラクターから森での遊び方を学び、初めての焚き火やロープを使った「ツリークライミング」を体験。五感を使って自然を体験する楽しさが伝わってくる。

優 秀 <札幌テレビ放送> D!アンビシャス ~熱きどさんこ魂~ 夕張相撲少年団 夕張相撲の灯りは消させない

プロデューサー 平山大策 ディレクター 三野宮 晃 番組出演ナビゲーター・ナレーター 明石 英一郎 カメラマン 桜井大祐

北海道の自然や人、ブランドなどに情熱を注ぎ込む“どさんこ魂”をクローズアップしたドキュメンタリー・シリーズ。今回は、相撲王国と呼ばれた北海道で角界にも力士を送り出す一方、夕張市で20年もの間、小中学生に相撲を教え続けてきた蓮間満さんが主人公。財政破綻で体育館が閉鎖されて教える環境も最悪の状態となり、自身の健康状態も悪化する中で、子どもたちの相撲にかける熱い思いが蓮間さんの心を打ち、しっかりと前を向いて頑張り続ける姿が描かれる。「王国」復活に向けて、皆で協力して突き進む姿、あきらめず夢に向かって努力することの大切さを伝える。

優 秀 <信越放送> SBCスペシャル

プロデューサー 善財 優、野沢喜代  ディレクター 池上英樹

木曜午後7時台の青少年が見やすい1時間枠。「喜怒哀楽を伝えよう」をキイワードに、社会性のあるドキュメンタリーから紀行、グルメ、地域文化など、さまざまな角度から今の信州を伝えている。今回の放送は「君の痛みは僕のもの~いじめと闘う~」で、子どもたちを守るために奮闘する秦健二さんの取り組みを追った。自身が小学生のころ受けた「いじめ」の後遺症に今も苦しむ秦さんは、各地の学校を訪ね、生徒の前で自分が受けたいじめの悲惨さを訴え、いじめをなくすために立ち上がろうと呼びかける。「行動を起こせば何かが変わっていく」と渾身のメッセージを送る姿が、問題に対する切実さを感じさせる。

優 秀 <中部日本放送> ボクがみた花鳥風月

プロデューサー 稲垣邦広  企画 伊藤 司  ディレクター 増田達彦、柴田知宏

気象にかかわる自然や環境をテーマにした、お天気情報番組『そらナビ』の人気コーナー「今日の花鳥風月」。毎週、一人のディレクターが自らカメラを担ぎ、しゃべり、編集して、その日のうちに放送するスタイルをとっている。今回は、春夏秋冬3めぐり分から一部をまとめた特別版。身近な場所を地道に探して見つけた季節感あふれる映像や、けなげに生きる動植物たちの姿は、“よく見ること”“ちゃんと聞くこと”の大切さを伝えている。

優 秀 <東海テレビ放送> 「夢のちから」~連凧に挑む中学生~

プロデューサー 水田尚孝、川瀬隆司  ディレクター 大倉章弘

毎回、東海地方で夢に向かって挑戦し続ける人たちにスポットを当てる番組。夢を追いかける人たちの姿と思いを描き、未来を担う子どもたちに「夢のちから」を伝えていく。今回の主人公の夢は「連凧揚げ」の記録づくり。全校生徒168人の豊橋市立五(い)並(なみ)中学校は、小さな学校から大きな話題を発信しようと、23年前から毎年、この記録に挑戦している。1998年には1万5,585枚の世界記録を達成、ギネスブックにも認定されている。今回も記録更新を目指して、半年にわたる準備期間をかけて挑戦する中学生の姿は、大きな感動を呼び起こす。

放送と公共性

最優秀 <北海道テレビ放送> 市民たちを動かした「政務調査費報道」

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実施責任者 寺内達郎

同社でこれまで積極的に取り上げてきた「議員と金」の問題。特に2007年からは政務調査費に焦点を当て、北海道議や札幌市議のほか、今まで検証される機会のなかった旭川や釧路など、道内中核都市の政務調査費についても、情報公開制度を利用して詳細に調査。数々の疑惑支出をあぶり出した結果、各地で住民監査請求や住民訴訟が相次ぎ、市民たちが地方自治のあり方を問い直す原動力となった。ローカル局ならではのスタンスで、一連の報道により地域の公権力のチェック機能を遺憾なく発揮し、市民との信頼を築き住民の行動につながった功績は大きい。夕方のローカルニュース枠において的確に事実関係を積み上げることで、地方政治の質を浮かび上がらせた点も、日本中の地域メディアの模範となる取り組みとして高く評価された。

優 秀 <STVラジオ> ドライバーズネットワークとスピード取締まり情報 STVラジオ 交通安全キャンペーン14年間の取り組み

実施責任者 坪内弘樹

1992年、北海道は交通事故死者数で全国ワースト1となり、その不名誉な記録は毎年続いていた。ラジオの力で交通事故を減らすことを目指し、かねて生番組に道路情報や事故情報を提供しているドライバーリスナーに会員カードを発行、年1回の会員向けイベントなどを通して仲間意識の熟成を図る「ドライバーズネットワーク」を立ち上げ、1万人近いリスナーが自発的に情報を伝える協力体制を築いた。またスピード出し過ぎの抑止力とするため、この会員を母体に、スピード取り締まりの現場情報を寄せてもらう呼びかけを行い、年間約1,800本の取り締まり情報を放送したほか、パーソナリティが各地で交通安全啓発イベントを展開。今後の更なる発展が期待される事績として評価された。

優 秀 <テレビ朝日> 素敵な宇宙船地球号 ベナン共和国 ノコエ湖水質浄化プロジェクト

実施責任者 安田裕史

場所はアフリカのベナン共和国。首都に隣接するノコエ湖が深刻な水質汚染に見舞われ、漁獲量の低下のみならず人体への悪影響を及ぼすレベルに悪化している。今回の企画では、過去に番組で取り組んだ河川浄化プロジェクトの成果を、開発途上国の環境改善に役立てようと、地元住民の理解を得ながら湖底のゴミ除去作業を行うとともに、現地で入手できるカキ殻を利用した水質浄化方法を実践し、一定の効果をあげた。大上段に構えた環境報道が多い中、廃棄物とみられていたカキ殻の活用や、地元住民が総出でゴミ集めを行うなど、身近な取り組みを、娯楽性ある親しみやすさも交えて紹介し、環境問題の解決の糸口を示した事績として評価された。

優 秀 <テレビ金沢> 「向こう三軒両どなり」~共同体の復活を願う放送活動~

実施責任者 本 秀一

家庭の茶の間に、失われた人情豊かな近所付き合いや人付き合いを伝えることが、崩壊しつつある地域の再生のきっかけや様々な社会問題の解決の糸口になるとの視点で、平日夕方放送のローカルニュース情報番組内のシリーズ企画として、2006年7月の放送開始以来、月1回、8~12分のVTRを主体とした構成で、地域の温かい人情物語を伝える。“公共性”とは決して難しいものでなく、暮らしの中の安心や助け合いということが肝要であることを気づかせてくれる取り組みは、何より制作者の視点が優しい。ローカル局ならではの感性で、住民の日常生活を巧みに映し出しており、今後も継続してほしい事績として評価された。

優 秀 <読売テレビ放送> 不透明な契約を解除に至らせた、「グリーンピア南紀」に関する疑惑の追及報道

実施責任者 宮澤真史

和歌山県那智勝浦町にある大型年金保養施設「グリーンピア南紀」の地元払い下げをめぐる不透明な動きに注目し、丹念な関係資料の収集や関係者への取材から、自治体と企業との間に結ばれた契約の実態をつかみ、様々な番組を通じてキャンペーン報道を展開。その結果、地元議会が自治体に契約の打ち切りを要求し、自治体は不明朗な契約を見直し、破棄するに至った。“消えた年金”問題の報道は、国会での追及をメディアが追いかけるという構図が大半の中、様々なプレッシャーをはねのけつつ、渦中の取材対象に真っ向から迫る一連のキャンペーン報道は、公権力の監視という放送の公共性、ひいてはジャーナリズムの在り方をあらためて知らしめる事績として評価された。