一般社団法人 日本民間放送連盟

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表彰番組・事績

日本民間放送連盟賞/2015年(平成27年)入選・事績

番組部門

ラジオ報道番組

ラジオ教養番組

ラジオエンターテインメント番組

ラジオ生ワイド番組

テレビ報道番組

テレビ教養番組

テレビエンターテインメント番組

テレビドラマ番組

CM部門

ラジオCM 第1種(20秒以内)

ラジオCM 第2種(21秒以上)

テレビCM

技術部門

特別表彰部門

青少年向け番組

放送と公共性 

 

 


 

番組部門

〔ラジオ報道番組〕

 

最優秀 機銃掃射に怯えた日々~昭和20年宮崎の空の下で~

宮崎放送

 プロデューサー・ナレーション 関 知子、ディレクター 紫安伸一、編集 矢野孝光、音声 吉崎友祐

JPG 宮崎県内での空襲の体験談をもとに調べていくと、昭和20年3月から8月にかけてアメリカ軍の航空機による機銃掃射で多数の犠牲者が出ていることが分かってきた。しかし、記録は一部の地域にとどまり、記憶も失われつつある。機銃掃射の恐怖を経験した生存者の証言と手記を集め、蒸気機関車や国民学校への銃撃など、悲劇の実態を描く。
 アメリカ軍による全国の空爆にも触れながら、故郷の空の下もまた戦場であったことを伝え、戦争の惨禍を伝える意義が評価される。

 

 

 

 

 

優 秀 クマと放射能 ~マタギ村からの報告~

山形放送

 プロデューサー 伊藤清隆、ディレクター 堀田 孝、取材 松浦正登、ナレーター 小坂憲央

 日本百名山、飯豊山の山懐にある小国町小玉川地区は古くから“マタギの里”と呼ばれてきた。仕留めたクマは、その場で解体、肉や内臓を均等に分け、独特の方法でクマの霊を慰める。しかし、福島第一原発事故の後、山形県全域でクマ肉の出荷が制限されている。
 出荷制限の解除を求めて街頭で署名活動を続けるマタギたちの姿を追うことで、自然と共生するマタギの文化の危機を伝え、原発事故の影響が広範囲に及ぶことを知らされる。

 

優 秀 TOKYO FM・FM長崎 共同制作 軍艦島閉山40周年「Hashima on my mind~ふるさとの記憶~」

エフエム東京

 プロデューサー 延江 浩、ディレクター 黒川美沙子、構成 及川 中、出演 麻生祐未

 廃墟の島として人気の観光スポットとなっている“軍艦島”だが、エネルギー政策の転換による閉山によって、島を去った人たちの思いは複雑である。「島を世界遺産に!」「見世物にしたくない!」――。一見、相反する声のように見えるが、実はどちらも失われた故郷に対する切実な思いであった。
 当時の生活の様子を再現した「音風景」や音楽を多用するなど、ラジオ報道の概念を拡張する意欲を感じさせる。日本人にとって故郷とは何かを考えさせる作品である。

 

優 秀 SBCラジオスペシャル「極秘捜査・コードネーム『Y』~松本サリン事件 20年目の真実~」

信越放送

 プロデューサー 長岡克彦、取材 清水秀行、ナレーター 窪田 等

 1994年6月の松本サリン事件から20年。番組では、これまで取材を拒んできた捜査指揮官の浅岡俊安・元長野県警捜査一課長らが初めてインタビューに応じ、事件からひと月もたたない時期にオウム真理教への捜査を始めていたことを明らかにする。
 疑われた第一通報者・河野義行さんの、14年間の闘病の末に亡くなった妻・澄子さんに対する思いと、独立して松本を離れた子どもたちが語る事件への思いが、重く響いてくる。

 

優 秀 狩りと駆除のはざまで~里へ降りてくるどうぶつたち

CBCラジオ

 プロデューサー 後藤克幸、細井麻郎、ディレクター 森理恵子、音響・効果 舘 一孝

 岐阜県山県市で地元猟友会の会長を務める村瀬隆夫さんは、建設会社経営の傍ら、深刻化する野生動物による農作物被害に対応するため、市の依頼で「有害鳥獣駆除隊」として捕獲・殺処分する任務を請け負っている。しかし、本来の狩猟とは異なり、肉体的、精神的な負担は大きい。
 野生動物が人里へ降りてくるようになった背景や対策、関わる人々の葛藤を伝えることで、人間は野生動物にどのように関わるべきなのかを考えさせられる作品である。

 

優 秀 ネットワーク1・17「20年~大震災と向き合う日々」

毎日放送

 プロデューサー 森﨑俊雄、ディレクター 新川和賀子、技術 阿部雅人、ナレーター 千葉 猛

 阪神・淡路大震災で人生が一変した被災地の人たちは、今をどのように生きているのか。長男と長女を亡くした米津家は、震災後に生まれた子どもたちと今も毎月17日にカレーライスを食べている。前日、長男が母とカレーを作り、17日に家族で食べるはずだったのだ。
 震災をきっかけに始まった番組が、過去に取材した人たちが変わっていく姿を捉えている。この20年を乗り越えてきた人たちの姿に胸を打たれる。

 

優 秀 証言・棄てられた被ばく者

南海放送

 プロデューサー 小倉健嗣、ディレクター 伊東英朗、音声 山内登美子

 室戸市出身で東京在住の川口美砂さんは、マグロ漁船乗組員であった父・一明さんの被災を、室戸市で上映された映画『X年後』を観て知った。室戸市で雑貨店を営む、元マグロ漁船漁労長の山田勝利さんも、同じ映画で自身の被災を知った。なぜ父は若くして死んだのか。なぜ仲間は被災したのか。2人は被災者を探し歩き、証言集めが始まる。
 隠された真実を掘り起こそうとする2人の姿が、伝えるべきものは何かを教えている。

 

 

〔ラジオ教養番組〕

 

最優秀 未完の五線紙 ~戦没作曲家・紺野陽吉が託した音楽~

山形放送

 プロデューサー・ディレクター 鈴木啓祐、編集 阿部邦彦、ナレーション 青山友紀

JPG 昭和20年に満州で戦病死した作曲家、紺野陽吉さんの楽曲が、一昨年の4月、出身地である山形県白鷹町で初めて演奏された。音楽評論家の小宮多美江さんが20年前に偶然、楽譜を発見したことから、70年の時を経て、ふるさとで演奏される機会を得たのだ。紺野さんが出征直前に託していった楽譜はわずか3曲で、その中の「弦楽三重奏曲」は未完成のまま。番組では、数少ない証言と記録を集め、紺野さんが楽譜に込めた思いを描く。
 番組終盤、弦楽三重奏曲の明るくかつ力強い旋律が突然、途切れる。紺野さんの青春が戦争によって終わったことを、“音のない音”でリスナーに語りかける構成が秀逸である。

  

 

優 秀 三木鶏郎生誕100年記念特別番組 三木鶏郎の世界

文化放送

 プロデューサー 下田まり子、構成・出演 濱田高志、制作 土屋光弘、企画協力 竹松伸子

 誰でも一度は聞いたことがあるCMソングや、「鉄人28号」「トムとジェリー」といったテレビ主題歌など、多くの作品を世に送り出した三木鶏郎。三木が生まれてから100年となることから、60年前に文化放送でオン・エアした貴重な放送音源や、懐かしいメロディの数々を紹介しながら、日本音楽界の鬼才・三木鶏郎の足跡を辿る。
 印象に残る楽曲やフレーズが満載で、ラジオの魅力が端的に表現されている。

 

優 秀 YBSラジオスペシャル オルゴールが照らす道しるべ

山梨放送

 プロデューサー 石川 治、ディレクター 渡邉 尚、ナレーション 三浦実夏

 山梨県立盲学校では毎年、匿名の女性から届けられるオルゴールと点字の手紙が、卒業生に贈られる。50年も続くプレゼントが、卒業生にとってどんな存在であるのかをインタビューで明らかにしていく。「オルゴールの音色に元気づけられる」という卒業生たち。視覚障害者が社会に出ていくことの難しさも、彼らの言葉から明らかになっていく。
 現状を伝えるだけではなく、聴く者に、自分にできることを考えるきっかけを与える。

 

優 秀 老いて学べば、則ち死して朽ちず~今に生きる佐藤一斎の訓え~

東海ラジオ放送

 プロデューサー 北 敏明、ディレクター 岸田実也、構成 千田伸子、ナレーション 蟹江篤子

 岐阜県恵那市岩村町では、郷土の偉人である佐藤一斎の“名言”が書かれた木板が家々の軒下に掲げられている。一斎は江戸時代後期の儒学者で、著書『言志四録』は、幕末の西郷隆盛、勝海舟、坂本竜馬などにも大きな影響を与えたと言われている。一斎の訓えを広く伝えようとする地元の取り組みを紹介し、何がいまでも人々を惹きつけるのかに迫る。
 庶民教育に力を入れてきた岩村藩のメンタリティーが、いまも脈々と生きていることを明らかにし、地域社会の持つ活力を描いている。

 

優 秀 燃え尽きた…春~大阪大空襲から70年~

毎日放送

 プロデューサー・演出 佐川昌裕、ディレクター 島 修一、音声技術 阿部雅人、選曲 濱谷光太郎

 昭和20年3月13日深夜から14日早朝にかけて米国による大規模な空襲が大阪であった。大空襲は、終戦前日まで何度も続いた。「大阪大空襲を語る会」の代表として、40年以上講演活動をしている久保三也子さんへのインタビューで番組は進行。途中、空襲の夜、動いているはずのない地下鉄が人々の命を救ったエピソードをドラマ形式で挿入する。
 ラジオドラマのリアルな描写が、地元のリスナーに強く印象に残る作品であり、あらためて「いのちの大切さ」を考えるきっかけとなっている。

 

優 秀 一文字弥太郎の週末ナチュラリスト 朝ナマ!

中国放送

 プロデューサー 増井威司、ディレクター 板倉由布子、角 賢直、出演 一文字弥太郎

 加藤りつこさんは、阪神大震災で長男の貴光さんを下宿先の神戸で失った。番組では、加藤さんに電話で参加してもらい、息子の思い出や、その後、どんな時間を過ごしてきたかを語ってもらう。生前、貴光さんが母にあてた手紙を取り上げ、それがきっかけとなって多くの人々とつながりができたことを紹介。震災から20年目となる1月17日に放送した。
 “生き残った人が、その後の人生をどう歩んでいくのかが大切なのだ”という番組のメッセージが、リスナーの胸を打つ。

 

優 秀 封印された 三十一文字

ラジオ沖縄

 プロデューサー 前川英之、アナウンサー 金城奈々絵、小橋川響、出演 福島 智

 不発弾で失明した真喜屋実蔵さんは、文学者を志して早稲田大学に入学するも、生活の困窮などから昭和43年に自ら命を絶ってしまう。大学時代の友人の塩谷治さんは、晩年、預かっていた短歌や詩を集めて歌集「春想」を出版。平成27年2月、「おきなわ文学賞」の表彰式で、沖縄盲学校の生徒によって真喜屋さんの作品が朗読され、封印が解かれる。
 戦争の不条理さを、障害者の視点を交えて伝えている。「春想」を手に取り、真喜屋さんが伝えたかったことにもっと触れたくなる。

 

 

〔ラジオエンターテインメント番組〕

 

最優秀 高原SONGS ~富山に歌う~

北日本放送

 制作統括 土肥尚彦、構成・演出 柴田明夫、ナレーター Tomomi、取材 五十田真和

JPG 「完全無欠のロックンローラー」から30余年。元アラジンの高原兄さんは、現在は富山県にある実家の電設工事会社で社長を務める傍ら、県内各市町村のイメージソングやCM曲など地域に根ざす曲を作り続けている。学生時代の恩師・林雅諺先生による楽曲解説、奥さんが語るエピソードなどから、人々から愛される曲作りの秘密に迫っていく。
 番組から高原さんの暖かい人柄と、地元で尊敬されていることが伝わってくる。紹介される美しく清らかな楽曲も魅力的。高原さんの郷土愛を感じさせる珠玉の作品である。

 

 

 

優 秀 3.11みやぎホットラインスペシャル「夢の行方」

東北放送

 制作・演出 鈴木俊樹、技術 伊藤直樹、構成 北阪昌人、ナレーション 小関里恵

 東日本大震災で被災した故郷で、新たな道を歩み始めた2人の若者が、それぞれの思いを打ち明けていく番組。震災を機に、自分の将来について考えるようになった2人。彼らを追いかけることで、震災から4年がたった宮城の今が見えてくる。
 素朴なナレーションが心に染み、海の音が効果的に番組を演出している。制作者が時間をかけて若者2人を取材したことで、東北の今を伝える意義深い番組に仕上がっている。

 

優 秀 スタア伝説・永遠の高倉健

文化放送

 プロデューサー 斉藤清人、ディレクター 岩田 清、出演 吉田照美、佐藤利明

 昨年(2014年)亡くなった、日本を代表する映画俳優・高倉健さんの追悼特別番組。初期の東映任侠映画から1980年代以降の出演作までを3部構成で紹介。吉田照美さんと娯楽映画研究家・佐藤利明さんのトークで高倉健さんを考察していく。
 インタビューと貴重なラジオ音源をめぐりながら、高倉健さんの素顔や人柄を浮かび上がらせるつくりは、王道ながら圧巻。誰も知らない高倉健さんに迫ろうとする制作者の意欲を感じる。各部の構成テーマに合わせた選曲も見事である。

 

優 秀 都留文科大学Presents YBSラジオ スペシャルドラマ 生と死の狭間に~戦場ジャーナリスト山本美香

山梨放送

 制作統括 石川 治、ディレクター 大久保達朗、脚本 成田はじめ、出演 藤原紀香

 ジャーナリスト山本美香さんの生きざまをたどるドキュメンタリードラマ。母校の演劇部の学生、地元の市民劇団員がドラマに参加した。両親、パートナーである佐藤和孝氏のインタビューを織り交ぜながら、山本さんの人柄を立体的に描いた作品である。
 番組から「山本美香を忘れないで」という地元の思いが伝わってくる。飾らない山本さんを描いている点が高く評価される。

 

優 秀 フロム・カツウラ~ギタリスト 濱口祐自~

和歌山放送

 プロデューサー 柘植義信、ディレクター 花井歩高、ナレーター 中川智美

 紀州・熊野のギタリスト、濱口祐自さん。去年、還暦を前にメジャーレーベルからCDデビュー、現在は全国で演奏活動を行う。そんな濱口さんの人生とこれからの夢を、ギター演奏とともに伝える。
 勝浦弁でのインタビューを通じて、自然とともにあるがままに生きること、地域に暮らす意味を考えさせる。濱口さんの素晴らしいギター演奏に聞き惚れる番組である。

 

優 秀 宇和島伊達家入城400年 COME TOGETHER

南海放送

 プロデューサー 小倉健嗣、ディレクター 乗松佳洲彦、アナウンサー 松岡宏忠、リポーター 清家夕貴

 宇和島藩の初代藩主である伊達秀宗は、仙台藩祖伊達政宗の長男で、宇和島に入部して今年で400年になる。その入部から幕末までの宇和島藩を、ビートルズの名曲をモチーフにドラマ仕立てで回顧する。
 過去をニュース番組風に紹介するアイデアと企画が面白い。時代小説を読むような痛快感が光る作品である。

 

優 秀 岩﨑弘志のTEGE2ハイスクール ~高校生限定!トークスペース テゲハイものまね選手権スペシャル~

南日本放送

 プロデューサー 住吉大輔、ディレクター 立和名梨絵、神宮司明人、アナウンサー 岩﨑弘志

 MBCアナウンサー岩﨑弘志が鹿児島県内の高校生と共に制作する1時間の生番組。スマートフォンのSNS音声アプリ「トークスペース」を利用し、全国の高校生ユーザーから「ものまね」を募集した。番組に寄せられた「ものまね」を7部門に分けて紹介し、スタジオの高校生たちが感想を言い合う。
 スマートフォンアプリを使って、若者を番組に巻き込んだ仕組みがうまい。若い人が支える未来志向の番組である。

 

 

〔ラジオ生ワイド番組〕

 

優 秀 とんちゃん かおりの ウィークエンドスクランブル

山形放送

 プロデューサー 伊藤清隆、ディレクター 芳賀道也、アナウンサー 佐伯敏光、小川香織

 土曜日/15時~17時の放送。放送26年目を迎えた長寿番組。地元カーディーラーのショールームのサテライトスタジオからの生放送。この日のテーマは「情けは人の為ならず」『つながる・つながろう・ありがとう』。隣県、福島県の浪江町で、国の殺処分命令に反対し、献身的に牛の命を繋いでいる牧場代表の思いを、山形県民に届けた。
 普段着の番組で山形の地域性が出ている。パーソナリティ二人のコンビネーションが絶妙で、飽きさせない。

 

優 秀 発信型ニュースプロジェクト 荻上チキ・Session-22

TBSラジオ&コミュニケーションズ

 プロデューサー 長谷川裕、ディレクター 服部貴普、パーソナリティ 荻上チキ、ゲスト 青木 理

 月~金/22時~24時55分(金曜日は23時55分)の放送。37年前に成田空港が開港したこの日は、「成田闘争(三里塚闘争)」を特集。辺野古基地移設問題や安保法制などにも同期するアクチュアルなものとしてとらえ、その運動論を総括した。
 生放送の中での当時の様々な立場の当事者への電話取材は、生々しい内容で、聴き応えがある。パーソナリティの知的好奇心は素晴らしく、自身の実体験の無いテーマをよく勉強し、丁寧に扱っている。

 

優 秀 Tresen+「第5回 トレセン鉄道王決定戦」

横浜エフエム放送

 プロデューサー 渡邉陽介、多喜井徹、ディレクター 青山鉄兵、出演 光邦ほか

 月~金/16時~20時の放送。若者をターゲットにした人気番組。この日は年に一度の「鉄道クイズ」の特別版。予選を勝ち抜いた猛者たちがスタジオに集結した。
 内輪で盛りあがっている感がなく、鉄道ファンではない人にも楽しめる内容である。「年齢や世代を超えてつながりを持てる」「音で遊べる」「ニッチな内容を深く掘り下げつつ一般目線でも楽しめる」といった点で、ラジオの生命線ともいえる番組である。

 

優 秀 五月病なんて吹き飛ばせ! でるラジ うつ病SP

北日本放送

 制作統括 土肥尚彦、ディレクター 堀田圭子、司会進行 小林淳子、庄司幸寛

 月~金/12時30分~16時の放送。「いつでも誰でも、楽しく気軽に出るラジオ」がコンセプトの午後ワイド。この日のテーマは「うつ病」。経験者への電話インタビューやリスナーからのメッセージを紹介し、うつ病の詳細や患者の話を聞くことの大切さを伝える。
 しっかりと話し合ってテーマを定めているスタッフの取り組みが伝わってくる。パーソナリティの喋りが思いやりに満ちていて、聴き応えがある。時代に合った番組で、新型うつへの理解が深まり、うつ病対策にも役立つ。

 

優 秀 桑原征平 粋も甘いも

朝日放送

 プロデューサー 奥川和昭、出演 桑原征平、永田まり、構成 柳田光司

 水・木曜日/12時~14時54分の放送。名物アナウンサーがフリーに転身後、初めてのレギュラー番組。文字通り「酸いも(粋も)甘いも」かみ分けた熟年パーソナリティとして、世のあらゆる事象に対して示唆に富んだメッセージを発信する。
 パーソナリティのキャラクターが前面に出て、話題の幅もひろく、おもしろく話に引き込まれる。父親の軍隊経験の日記を何カ月にもわたって放送していることからは、戦争を知らない若い世代にも戦争を伝えたいという意図も伝わってくる。

 

優 秀 平成ラヂオバラエティ ごぜん様さま

中国放送

 プロデューサー 増井威司、手島啓介、ディレクター 豊後美羽、出演 横山雄二

 月~金/9時~11時30分の放送。昨年8月20日未明に広島市で発生した大規模土砂災害の当日の、番組の緊迫した対応をまとめた作品。
 災害の全体像が分からない中でのラジオの“同時性”が強く伝わってくる。克明なリポートや、「ツイッターやフェイスブックにいい加減なことを書かないでください」といった的確な呼びかけ、パーソナリティの対応ぶりが素晴らしく、“生放送の使命感”といったスタッフの高い意識を感じさせる。 

 

優 秀 坂口卓司・富永倫子 二丁目お茶の間劇場

RKB毎日放送

 プロデューサー 柴田喜之、ディレクター 家村裕之、パーソナリティ 坂口卓司、富永倫子

 月曜日/18時~20時30分の放送。「お茶の間」で繰り広げられる世間話を通じて“今”を伝える生ワイド番組。仕事を終え、我が家へと帰るリスナーに“笑いと癒し”を届ける。この日は、“あなたのお宅に番組がお邪魔して放送します!”と、スタジオを飛び出す企画を考えたものの、応募は1件のみ。窮したスタッフが市内の団地を突撃訪問した。
 パーソナリティの人柄で、他人の家に土足で入り込む不快感がない。臨機応変に内容を軌道修正するところ、またそこを隠さないところがラジオらしい。

  

 

〔テレビ報道番組〕

 

最優秀 奥底の悲しみ ~戦後70年、引揚げ者の記憶~

山口放送

 プロデューサー 渡部雅史、ディレクター 佐々木聰、撮影 山本 透、山本健二

JPG 太平洋戦争の終結後、外地に暮らす多くの日本人が本土に引き揚げてきた。41万人の引揚者を受け入れた山口県の仙崎港。同港の引揚援護局の記録に見つけた「特殊婦人」という言葉を発端に、旧満州などでのソ連軍による戦時性暴力の悲惨さや、日本が行った戦争の実態が、これまで語られなかった数々の証言により明かされていく。
 生存者への丁寧な聞き取りと、その貴重な証言を勇気をもって現代に伝えるという姿勢から、ジャーナリズムとしての責務が存分に伝わってくる作品である。

 

 

 

優 秀 イチゴと妻と ~失われた集落 気仙沼・杉ノ下 遺族の4年~

東北放送

 プロデューサー 米村旅人、ディレクター 野口 剛、ナレーション 林 朝子、制作 今井 敦

 気仙沼市階上地区の杉ノ下集落。約300人が暮らすこの小さな集落は、東日本大震災の津波で全ての住宅が被害を受け、93人もの命が奪われた。地域再生を目指し、集落でのイチゴ栽培を再開させた佐藤信行さんや、集落を離れたものの、杉ノ下の記録集作りに取り組む小野寺敬子さんらの姿を通じ、被災地が抱える課題と人々の葛藤を記録する。
 地域に密着した長期にわたる取材・観察により、外部から通うことでは捉えられないリアリティが確かに描かれている。

 

優 秀 戦後70年 千の証言スペシャル 私の街も戦場だった

TBSテレビ

 プロデューサー 田代秀樹、松井督治、総合演出 山岡陽輔、ディレクター 住友洋介

 太平洋戦争では、日本中のさまざまな街が米軍機の「機銃掃射」に襲撃されていた。番組は、機銃の引き金に連動して録画が始まる米軍機搭載の「ガンカメラ」の映像を主軸に、全国各地の被害の実態を紹介するとともに、機銃掃射を行った米軍の元パイロットの思いにも迫っていく。
 新しい事実や映像が発掘されており、報道としてのクオリティが極めて高い。間に挿入されるドラマ部分にも吸引力があり、多くの視聴者を引き込む作品である。

 

優 秀 チャンネル4 御嶽山噴火 9・27記録と証言

テレビ信州

 プロデューサー 伊東秀一、ディレクター 久和健一郎、撮影・編集 藤塚 隆、望月治隆

 戦後最悪の火山災害となった2014年9月の御嶽山の噴火は、デジタル機器の普及により、多くの写真・動画に記録された。これらの記録の背景や細部を、登山者の証言を通じて描きつつ、噴火のメカニズムなどをCGで解説。大規模噴火の実像を多角的に伝える。
 観光や行政への影響なども幅広く取材し、噴火のもたらした課題と教訓を浮き彫りにすることで、地域に根差す放送局としての責任を十全に果たしている。

 

優 秀 ヤクザと憲法 ~暴力団対策法から20年~

東海テレビ放送

 プロデューサー 阿武野勝彦、ディレクター 土方宏史、撮影 中根芳樹、編集 山本哲二

 大阪の暴力団「清勇会」の事務所に入り、ヤクザの実態を内側から捉えたドキュメンタリー。暴力団対策法の施行以降、その実像が見えにくくなったヤクザは、銀行や保険の口座を開けないなど、日常のさまざまな場面で不利益を被っていた。番組はそこに、法の下の平等を謳う憲法との矛盾を見出す。
 挑発的な企画を実現させた制作者と放送局の意気込みが見事であり、“そこでしか生きられない人々”の表情や言葉から、社会の在りようを考えさせられる作品である。

 

優 秀 ザ・ドキュメント 想いを伝えて ~阪神淡路大震災・父子が歩んだ20年~

関西テレビ放送

 プロデューサー 兼井孝之、ディレクター 迫川 緑、撮影 吉川浩也、編集 野上隆司

 阪神淡路大震災で妻と三男を亡くした長谷川博也さん。関西テレビは、残された長谷川さんと、震災時小学生だった長男・次男の日常を2000年に放送していた。続編となる本作は、震災20年後の一家を再訪し、家族への思いや薄れることのない喪失感などを取材した。
 三者三様の震災の受け止め方をそれぞれのインタビューからすくいあげることで、ごく普通に生きることのかけがえのなさを、あらためて教えてくれる作品である。

 

優 秀 終われ戦世~証言記録 太平洋を越えて~

琉球放送

 プロデューサー 砂川 裕、ディレクター 原 義和

 甚大な犠牲を生み出した沖縄戦は、これまで多数の調査が行われてきたものの、元米兵や移民2世の戦争体験などはほとんど知られて来なかった。番組は、その実態をさまざまな立場の視点から多角的に捉えた。
 個々人によって戦争の“終わり”は違うことを、濃密な証言に基づき訴えており、それを的確に表すタイトルも素晴らしい。伝えるべきことを次世代にどう伝えていくか――。重い課題に真正面から取り組んだ姿勢が高く評価される。

 

 

〔テレビ教養番組〕

 

最優秀 TUFルポルタージュ ふつうの家族 ある障がい者夫婦の22年

テレビユー福島

 取材ディレクター 深谷茂美、撮影 渡辺真敏、遠藤善哉、構成 菊池 豊

JPG ともに脳性まひの重い障害を持つ秋元さん夫婦は1992年に結婚。2人の子どもを授かり、多くの困難を乗り越えながら子育てに奮闘してきた。番組は、子どもの成長にあわせて撮影を控えた期間も含め、一家の22年間の暮らしを一貫して見つめ続けた記録である。
 長期間の取材の蓄積がよく表現されており、視聴者の同情を誘わない客観的な描き方に、被写体と取材者との信頼関係が垣間見える。“子は親を強くする”とのメッセージが感じられる、力強く前向きな作品である。

 

 

  

優 秀 笑顔の約束 ~難病ALSを生きる~

テレビ朝日

 プロデューサー 伊藤賢治、ディレクター 毛利哲也

 富川睦美さんは、ALS(筋萎縮性側索硬化症)の6年間の闘病生活を笑顔で生き抜き、2014年8月に亡くなった。高校時代の親友たちは富川さんの約束に従って笑顔の葬儀を実現。番組も、「自分の闘病を通じてALSを世の中に伝えたい」という遺志を継いだ。
 ALSの治療や研究の最前線などの情報も盛り込みながら、困難に直面しても前を向いて生きることの大切さを伝えている。

 

優 秀 SBCスペシャル 「棄民哀史」

信越放送

 プロデューサー 堀内 宏、ディレクター 手塚孝典、ナレーター 三島さやか、撮影 米山博昭

 日中戦争では多くの人々が満州に入植し、戦後、多大な犠牲を出しながら帰国。帰る故郷はなく、日本各地に再入植した。生存者の多様な視点を通して、開拓の持つ侵略としての側面、更には東日本大震災での原発事故まで、国策に翻弄される人々の歴史を検証した。
 国民に犠牲を強いるシステムの変わらなさを大きなスケールで捉え、それを明確な意志と勇気を持って描いている。ジャーナリズムがなすべき仕事を全うしており、現代の日本社会に必要な番組である。

 

優 秀 メ~テレドキュメント 奪還 「英雄」の妻 佐々木敦子の70年

名古屋テレビ放送

 プロデューサー 城田達康、ディレクター 村瀬史憲、カメラマン 浅井大輔、編集 世古和弘

 1944年に満州で生まれ、戦争や文化大革命など、中国の近現代史と絡む数奇な運命を生きてきた佐々木敦子さん。愛知で開かれた世界卓球選手権で来日した際に佐々木さんと出会い、後に結婚する荘則棟も、中国卓球界の“伝説、英雄”とされながら、毛沢東の死後は一転して冷遇されていた。
 国家に翻弄され続けた佐々木さんの人生経験に裏打ちされた怒りを映しながら、日中の近現代史を辿ることで、個人と国家の関係とその過酷さを壮大な時間軸で描き出している。

 

優 秀 映像記録 あの日あの場所、あの人と

毎日放送

 ディレクター 山田裕朗、カメラマン 和田 浩、原 淳二、古東千由

 阪神淡路大震災から20年。当時、毎日放送が取材した50人を超える人々に、震災時の取材経験のない現在のカメラマンたちが再び取材を試み、大震災をどう生き抜いてきたのか、この20年をどのような言葉で語るのか、“その後”を記録した。
 人々の振り返りを淡々としたトーンで描写し、震災を経験した人々の共感を呼ぶ構成となっている。膨大な震災の記録を有効活用することで、在阪局の公共的使命を果たしており、労作と言える。

 

優 秀 ヒロシマを遺した男~原爆資料館 誕生秘話~

テレビ新広島

 プロデューサー 大藤 潔、ディレクター 前田典郎、撮影 渡辺椋介、編集 山本 龍

 原爆投下の10年後に開館した広島平和記念資料館は、初代館長となった地質学者・長岡省吾さんの、平和への信念と熱意によって生まれた。現在ではほとんど知られていない事実を拾いあげながら、長岡さんと資料館が歩んだ軌跡を辿った。
 広島だけでなく長崎やアメリカへの取材から、多角的な視点が表現されている。誰もが知る施設にまつわる知られざる背景や、埋もれた功績を紹介することで、資料館の意義をあらためて示すきっかけを与えてくれる作品である。

 

優 秀 まちかんてぃ ~明美ばあちゃん 涙と笑いの学園奮闘記~

沖縄テレビ放送

 プロデューサー 大濱直樹、ディレクター 平良いずみ、撮影 山田耕平、編集 古謝有智

 沖縄にある民間の夜間中学校「珊瑚舎スコーレ」では、平均年齢76歳のお年寄りたちが“まちかんてぃ”(待ち続けていた)学園生活を送っている。その多くは、戦争によって子ども時代に学校に通えず、学ぶことを奪われた過酷な経験を背負った人々である。
 想像を絶する沖縄の過去を、戦争が残した傷跡として描きつつも、学べる喜びに目を輝かせて青春を謳歌する生徒たちの現在の姿には、未来への希望を見い出すことができる。“教育が生きる力になる”ことを伝える、テレビの力が存分に発揮された番組である。

 

 

〔テレビエンターテインメント番組〕

 

最優秀 家、ついて行ってイイですか?

テレビ東京

 プロデューサー・総合演出 高橋弘樹、プロデューサー 岡田英吉、ディレクター 朝比奈諒、渡邊 麗

JPG

 駅で終電を逃した人に、「タクシー代を払うので、家、ついて行ってイイですか?」とお願いし、“その場で自宅について行くだけ”の番組。
 ありのままの部屋で披露される人生のドラマや思い出の家財や品々は、どれもが何気ない日常のワンシーンであり、リアリティがある。シンプルな構成だが、出演の難しい一般人を前面に押し出した企画は独自性が高く、ユニークな番組である。

 

 

 

 

優 秀 津軽のミサオさん 笹餅、ときどき五・七・五

青森放送

 プロデューサー 小山田文泰、ディレクター 對馬 敬、カメラマン 藤林国仁、音声 脇坂幸司

 五所川原市で1人暮らしをしている桑田ミサオさんは88歳。早朝から深夜まで、2個で100円の笹餅を1人で作り、朝市に卸したり、笹餅を待っている人たちに直接届けたりしている。笹餅を通した人と人のふれあいを、ミサオさんがしたためた17文字とともに描く。
 ミサオさんの日々の暮らしから、生きることや働くことの大切さや面白さ、意味が伝わってくる。また、高齢化社会の現状を再考させられる内容でもある。

 

優 秀 チャンネル4 人生の湯~午後3時のしあわせ~

テレビ信州

 プロデューサー 伊東秀一、ディレクター・撮影・編集 久和健一郎、MA・音効 渡辺一郎、ナレーター 杉山裕子

 明治から続く松本市の銭湯「塩井乃湯」の開店は午後3時。地域のお年寄りの憩いの場となっている。4代目となり跡継ぎのいない女性経営者を、近所の常連さんたちが助けている。湯気の向こうの春夏秋冬、悲喜こもごもの物語を描く。
 人々の身も心もあたたまる交流が脈々と続いていることを丁寧に映しており、見る人に懐かしさを覚えさせる。

 

優 秀 HAB特別番組 9回裏 ~星稜vs小松大谷 大逆転の明暗~

北陸朝日放送

 プロデューサー 黒崎正己、ディレクター 橋本和芳、カメラ・編集 庄田英喜

 2014年の全国高校野球選手権石川大会の決勝戦、星稜vs小松大谷の試合では、小松大谷が8点リードで迎えた9回裏、星稜が一挙9点を得点し逆転優勝した。
 敗者の目線を中心に、キーマンとなる監督や選手、OBへのインタビューを積み重ね、逆転劇の真相を明らかにしている。ただ試合を振り返るのではなく、当事者一人ひとりの思いを万遍なく引き出すことで、厚みのある番組に仕上がっている。

 

優 秀 ちちんぷいぷい特別編 南極文通ものがたり おとうさん、ぼく・・・

毎日放送

 プロデューサー 田渕伸一、村田 元、ディレクター 木越健太

 毎日放送の山中真アナウンサーが南極を旅し、感情豊かにリポートする。旅の途中で見聞きしたことをしたためた手紙と写真を大阪の絵本作家の長谷川義史氏に送付。それに長谷川氏が絵手紙を返信しながら、旅が進んでいく。番組の最後には、山中アナウンサーと待っている家族との関係を1冊の絵本として作成した。
 言葉では伝えきれない南極で感じたこと、家族に対する思いをのせた手紙や絵があることで、南極の景色に深みが増し、今までにない旅番組となっている。

 

優 秀 山の神祭り~祭りと暮らす山里~

山口放送

 プロデューサー 渡部雅史、ディレクター 白石則明、編集 本村 治、カメラ 山本 透

 岩国市由宇町清水地区には、12世帯、19人が住み、大半が80歳代である。800年以上守り伝えてきた「山の神祭り」に1年間密着した。5年に一度の祭りで今年「当屋」を務める矢野家は、病に倒れ体にマヒが残る父の嘉一さん(77歳)と、息子の直紀さん(48歳)の二人暮らし。祭りの魂を受け継いでいく様子を中心に、番組は進む。
 祭りの持つ神秘的な魅力を、地域の営みやぬくもり、親子の絆を通し描いている。伝統文化を継承することの大切さや意義を教えてくれるローカル局ならではの作品である。

 

優 秀 中倉さんちの食べ物絵ごよみ

長崎放送

 プロデューサー 大田壽満夫、ディレクター 斉藤礼子、撮影編集 井川裕喜、ナレーション 染矢すみれ

 佐世保市に住む中倉家は夫婦2人と幼い子ども4人の6人家族。季節ごとの年中行事を大事にし、食材は自給自足を心がけ、家族一緒での食事を大切にしている。中倉家のお母さん、奈津美さんがそうした様子を記録した絵には、家族のほのぼのとした雰囲気がそのままにじみ出ている。中倉家の1年を、奈津美さんの絵とともに描いた。
 子育てや食育など、家庭にまつわる日常的なテーマを丁寧に描いている。教育的要素も多く含まれており、大人のみならず青少年にも見てもらいたい番組である。

 

 

〔テレビドラマ番組〕

 

最優秀 中京テレビ開局45周年記念ドラマ「マザーズ」

中京テレビ放送

 プロデューサー 栗田美和、藤原 努、黒沢 淳、脚本 吉田紀子、監督 谷口正晃

JPG 19歳の浪人生、山瀬健太はある日、ひょんなことから自分が養子であることを知る。にわかには信じがたい自分の過去を確かめたいと、健太は特別養子縁組の仲介を行ったNPO「スマイルベビー」を訪れる。どうしても赤ちゃんを育てられない妊婦たちは、出産後すぐに「スマイルベビー」代表の奥田貴子の仲介で特別養子縁組を行い、養父母に赤ちゃんを託す。しばらく「スマイルベビー」で過ごすことになった健太は、貴子や妊婦たちとふれ合うなかで、産みの母、育ての母、そして自分とその2人を結びつけてくれた母(貴子)がどんな思いで自分に愛情を注いでくれたのかを知る。
 丹念な取材に裏打ちされた脚本とともに、自然な演技を引き出す巧みな演出が、見ごたえのあるドラマを作り出している。

 

  

優 秀 TBSテレビ60周年特別企画 日曜劇場 天皇の料理番

TBSテレビ

 プロデューサー 石丸彰彦、ディレクター 平川雄一朗ほか、脚本 森下佳子

 明治37年、福井県武生。秋山篤蔵は、何をやっても長続きしない性格で、修行先の寺も三月ともたず破門になってしまう。困り果てた父・周蔵は、篤蔵を婿養子に出す。俊子と結婚した篤蔵はそれなりの幸せを感じていたが、ある日、偶然食べた一口のカツレツがきっかけで、「自分もこんな料理が作りたい」と新たな“夢”を抱く。料理を愛し、ついには天皇の料理番を勤め上げるまでに成長していく男と、彼を支えた人たちの物語である。
 あらすじが分かっていても、視聴者を惹きつける俳優陣の演技が見事である。映像の美しさも相まって完成度の高いドラマとなっている。

 

優 秀 テレビ東京開局50周年特別企画 ドラマスペシャル 永遠の0

テレビ東京

 チーフプロデューサー 岡部紳二、ディレクター・プロデューサー 佐々木章光、プロデューサー 阿部真士、近見哲平、脚本 櫻井武晴

 特攻隊員として戦死した祖父・宮部久蔵のことを調べるため、姉弟が元戦友たちを訪ねる。当時を知る元戦友から「臆病者」と評された久蔵は、一方で「天才的なパイロット」「生徒想いの教官」でもあることが次第に明らかになる。ただ、「必ず、生きて帰ります」と妻に言い続けていた久蔵が、なぜ自ら特攻隊員として命を落としたのかという謎は深まっていく。愛する者のために、壮絶な運命に挑んだ男が伝えたかった思いを明らかする。
 計7時間の長尺ドラマとしたことで、原作の魅力を十分に伝えることに成功している。ミステリー仕立ての演出も、最後まで視聴者を引っ張っていく。

 

優 秀 ドラマW 十月十日の進化論

WOWOW

 プロデューサー 植田春菜、角田朝雄、監督 市井昌秀、脚本 栄 弥生、主演 尾野真千子

 東京で独身生活を送る昆虫分類学博士・小林鈴は、勤めていた大学を突然解雇されてしまう。その夜、鈴は昔の恋人・安藤武と偶然、再会。2人は酔った勢いで一夜をともにし、その後、鈴の妊娠が発覚する。“人間は胎児の間の十月十日で生命30数億年の進化を再現する”という神秘を書物から知り、鈴は子どもを産む決意を固める。マイペースで不器用な鈴が、新たな命を宿したことで自分も“進化”していく物語。
 印象的なシーンや会話を盛り込み、オーソドックスなテーマを扱っていながらも新しさを感じさせる作品に仕上がっている。

 

優 秀 名古屋行き最終列車

名古屋テレビ放送

 プロデューサー 大池雅光、監督 神道俊浩、脚本 菊原共基、カメラ 恒川正次、出演 六角精児ほか

 名古屋行きの最終列車に乗る人々にまつわる30分のドラマを、オムニバス形式で構成。40年近く続けたラーメン店を閉じることにした店主のドラマ、寸借詐欺師の老人と反撃に出る女性の話、鉄道会社の忘れ物係である森本の物語――の3話からなる。
 列車での“忘れ物”をきっかけに物語が始まり、名古屋行きの最終列車で終了する、楽しくも、ちょっとほろ苦い人間模様が綴られている。個性的なドラマであり、回を重ねるごとに完成度が上がっている。ディテールがしっかり描かれており、地元で愛される番組となっていることが画面からも伝わってくる。

 

優 秀 めんたいぴりり2

テレビ西日本

 プロデューサー 瀬戸島正治、監督 江口カン、脚本 東 憲司、出演 博多華丸、富田靖子 

 戦後、復興半ばの中州に店を構えた海野俊之・千代子夫婦が、思い出の味をもとに「明太子」を作り出し、福岡を代表する食べ物に育てあげる姿を、笑いと涙を交えて描くシリーズ。前編は、戦後の闇市で世話になった亀山を、俊之が「ふくのや」で働かせることから物語が展開。後編は、長男の同級生・薫の父親が、出稼ぎ先の炭鉱事故で亡くなったことから、薫と父親との夢を実現するため「ふくのや」の面々が東奔西走する姿を描く。
 出演者のハイテンションな演技が、ドラマに圧倒的なパワーをもたらしている。明るいシーンだけではなく、時代の影もさりげなく表現している点が物語を立体的にしている。

 

 

 CM部門

※各作品のタイトルは、「広告主名(非商業スポットは省略) 商品名/作品名(秒数)」の形で掲載。

〔ラジオCM 第1種(20秒以内)〕

 

最優秀 春華堂 夜のお菓子 うなぎパイ/セクハラ篇(20秒)

ニッポン放送

 プロデューサー 高橋晶子、巻島英司(電通)、ディレクター 松田哲雄(サウンドマン)、コピーライター 富 剛(電通東日本静岡支社)

JPG うなぎパイの代名詞ともいえるキャッチフレーズ“夜のお菓子”。本来は家族団らんのひとときに召しあがってもらいたいとの意味だが、ここでは別の解釈で、お土産として渡すと“セクハラと受け取られる人”と“そうでない人”に分けられると説明。「さて、あなたは?」と問いかけ、「社会的地位をかけてお試しください」とたたみかける。あらぬ解釈をあえて前面に打ち出す着想と、リスナーの印象に残る大胆なコピーが高く評価された。

 

 

 

 

  

優 秀 味の素 ぷるぷるアミノとコラーゲン/生年月日(20秒)

エフエム東京

 プロデューサー 石井利始(アサツー ディ・ケイ)、ディレクター 林屋創一、コピーライター 三井明子(アサツー ディ・ケイ)

 とある高級店で、女性が会員カードを作る場面。店員が生年月日を確認すると、女性は「5月10日よ」としか答えない。困った店員が「何年の5月10日ですか?」と尋ねると、女性は「もちろん、毎年よ」と言い切る。商品のターゲットは主に中高年の女性であり、日常生活の中で年齢を意識するシーンをユーモラスに描くことで、対象とする消費者層の共感を得ることに成功している。

 

優 秀 ソニー損害保険 ソニー損保の自動車保険/「クルマの一週間」(20秒)

エフエム東京

 プロデューサー 林屋創一、ディレクター・コピーライター 荻原 努、CM本編ナレーター 松本考平(青二プロダクション)、音響効果 鈴木隆弘(フリー)

 自動車が自ら「私の一週間は、日曜日、スーパーへ買い出し。月曜日から金曜日は、車庫。土曜日はドライブか…車庫」と、持ち主に使われていない現状を語り、これを受けて「だから保険料は走る分だけがいい」と紹介。使用頻度の低い自動車にも保険料を払っていることを分かりやすく喚起するとともに、走行距離に応じた保険料設定となる商品特性を短時間で効果的に伝えている。

 

優 秀 長谷川工業 脚軽ブラック/持論 篇(20秒)

朝日放送

 プロデューサー 野本友恵、コピーライター・クリエイティブディレクター 森田一成(ビッグフェイス)、ディレクター 村上正道(ビー・ジー・エム・サービス)、田中啓介

 父親が息子に説教しているシーン。世の中には上に立つ人間とそうでない人間の2種類しかなく、「父さんは運良く、今、上に立っている。お前もそうなれるように頑張れ」と説く。すると母親が「分かったから早く脚立の上から降りてきなさい」と諭し、父親は単に脚立の上に立っていたというオチ。軽くてスタイリッシュな商品であり、家庭内でも使ってほしいというメッセージを、意外性のある場面設定で愉快に表現している。

 

優 秀 ぼんち ぼんち揚/心躍る 篇(20秒)

朝日放送

 プロデューサー 野本友恵、コピー・クリエイティブディレクター・作曲 田中啓介、ディレクター 村上正道(ビー・ジー・エム・サービス)、プランナー 三田秀平

 「ボン、ボン、ボン、ボンボボン…」との男性の低音に続き、「ッチ、ッチ、ッチ…」とのボイスパーカッションを加え、リズミカルに“ぼんち”を連呼するCM。ぼんち揚げを食べたことがある人には共感を誘い、口にしたことがない人には美味しさを期待させるよう、最後は「うまー」という男性コーラスで締める。つい口ずさみたくなるようなシンプルなメロディが記憶に残る、秀逸な出来映えとなっている。

 

優 秀 自社媒体PRスポット/和歌山放送です(20秒)

和歌山放送

 プロデューサー・ディレクター・コピー・作曲 三宅良治、出演 赤井由賀里、ナレーター 寺門秀介、作詞 足立浩一(元和歌山放送)

 4種の異なる声で、次々に「和歌山放送です」とのコメントが流れる。実はそのうち3つはコンピュータによる合成音声。本当の人間の声は1つだけで、リスナーに「どれだかお分かりですよね?」と問いかける。合成音声と肉声との比較で“ぬくもりが伝わる放送を心がけている”という放送局の姿勢をストレートにアピールしている。解答となる肉声の「和歌山放送です」で締めることで、最後までリスナーの関心をひく構成も見事。 

 

優 秀 京塚質屋 質屋/本当の大人(20秒)

エフエム熊本

 プロデューサー 伊佐坂功親、ディレクター 池上大介、録音 松下和浩(MONOQLO SOUND)、コピー 清水利昭(フリー)

 「一杯飲み屋ののれんをくぐったぜ。俺も大人かな」と言う若造に対して「何だって。本当の大人は、質屋ののれんをくぐった時だ」と切り返す大人。質屋に行くことを大人のたしなみのひとつとして紹介するとともに、内容が重くなり過ぎないよう、ムーディーかつコミカルな雰囲気が漂うBGMをタイミング良く用いることで、質屋が持つ近づきづらいイメージを払しょくする作品に仕上がっている。

 

 

〔ラジオCM  第2種(21秒以上)〕

 

最優秀 和歌山放送事業センター 和歌山放送朗読教室/ぎなた読み(60秒)

和歌山放送

 プロデューサー・ディレクター・コピー 三宅良治、出演 福山秀見(グループエコー)、高倉大輝(キャラ)、ナレーター 中川智美

JPG 和歌山放送事業センターが開講している朗読教室の生徒募集CM。「ゆで卵。ゆでた、孫。」「おかんむり。おかん、無理。」「浅い、眠り。朝、居眠り。」と、文章の区切りやアクセントを変えるとまったく違う意味になる「ぎなた読み」を集め、日本語を正しく読むことの大切さを伝える。いったいいくつ出てくるのか、気になって思わず最後まで聞いてしまう。長尺を活かしたCMとなっている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

優 秀 よつ葉乳業 北海道十勝100 3種のチーズ のびーる/「よく伸びる」篇(50秒)

エフエム北海道

 プロデューサー・ディレクター 春潮楼哉子、コピーライター 東井 崇(フリー)、出演 箕輪直人(フリー)、技術担当 山田英行

 ナレーターが商品名を「のびーーーーーる」と息の続く限り伸ばしてPRする。しかし、あまりに伸び続けるため、途中同社の牛乳のCMを挿入。その後も「ーーーーーる」と伸び続け、ようやく商品名を「のびーる」と紹介する。商品名以外に具体的な説明をしなくとも、間にほかのCMが入ってもさらにまだ伸び続けるという構成でチーズののびの良さをユニークに表現した。

 

優 秀 自社媒体PRスポット/ラジコのススメ(60秒)

青森放送

 プロデューサー・ディレクター・出演 橋本康成、出演 筋野裕子、吉田真優子(フリー)

 女性アナウンサーがおじいさんにラジコを説明するシーン。PCやスマホで高音質のラジオを聴くことができるラジコ。その特徴を分かりやすく説明するアナウンサーに対し、「つまりラズオが男でラズコが女子(おなご)だんだが?」「隣の家の正夫の歌よりも、その嫁の正子の方が上手だっつうのど一緒だが?」とややずれながらも納得するおじいさん。その掛け合いが簡潔かつ絶妙にラジコのサービスを伝える内容となっている。

 

優 秀 NTTドコモ VoLTE/ユミの父篇(100秒)

ニッポン放送

 プロデューサー 高橋晶子、林 尚司(電通)、ディレクター 松田哲雄(サウンドマン)、コピーライター 魚返洋平(電通)

 彼女の携帯電話にかけてみると、出たのは彼女の父親だった。携帯電話が普及した今、電話をかけたい相手にかけたら本人が出るのは当たり前である。しかし、昔はそれが当たり前ではなかったんだ、と父親は娘の彼氏に諭し、彼女の家への電話のかけ方を熱くコミカルに指導する。「気持ちって案外、音質で伝わったりします。」と結び、携帯電話がなかった世代への共感を誘いつつ新しい高音質サービスを楽しくアピールしている。

 

優 秀 自社媒体PRスポット/ステキな音に出会える FBCラジオ(120秒)

福井放送

 プロデューサー 稲木 聡、ディレクター・企画・構成・録音 岩本和弘

 足羽山は、福井市の中心部に位置しながら、たくさんの動物や昆虫、鳥、植物の生息する豊かな自然に恵まれ、市民の憩いの場として古くから親しまれている。シジュウカラの特徴的な鳴き声や、風がそよいで若葉が擦れる音とともに、福井市自然史博物館館長の吉澤康暢さんがそんな足羽山を案内してくれる。目の前に広がる情景を想像しながら、自然の作り出す音に聞き入ってしまう、心安らぐCMである。。

 

優 秀 長谷川工業 脚軽ブラック/誕生日 篇(120秒)

朝日放送

 プロデューサー 野本友恵、コピーライター・クリエイティブディレクター 森田一成(ビッグフェイス)、ディレクター 村上正道(ビー・ジー・エム・サービス)、田中啓介

 カフェで女子会をする関西人女性3人。急に店内の照明とBGMが消えると、2人からバースデーサプライズが。プレゼントは、誕生日ケーキと、脚立。貰う本人は思わぬプレゼントに驚き困惑するも2人は“この脚立なら大丈夫!”と関西人らしく強引に納得させる。女性をターゲットにしたこのCMは、最後まで脚立のCMだとわからない意外性があり、友人2人のテンポの良いトークによっておしゃれで軽いという商品の特徴を見事に表現している。

 

優 秀 アレフ レギュラーバーグディッシュ/大人の仕事~大川ミサキ 篇(120秒)

 朝日放送

 プロデューサー 野本友恵、コピーライター・クリエイティブディレクター 森田一成(ビッグフェイス)、ディレクター 村上正道(ビー・ジー・エム・サービス)、田中啓介

 ハンバーグレストラン・びっくりドンキーのラジオCM収録現場。子役の大川ミサキは、“大人が書いた原稿を子供っぽく読むのがわたしの仕事”と自負し、周りを少し大人びた目線で見ている。収録では冷めた内心を隠しながら子役を演じきる。収録後、母親に「ご褒美にびっくりドンキー行く?」と言われ、子供らしく無邪気に喜ぶ姿は果たして素のミサキなのか。ミサキのキャラクターがリスナーの興味をひき、CMの中でCMを収録するという斬新な構成が評価された。

 

 

〔テレビCM〕

 

最優秀 ポーラ ポーラ/キレイに、定年はない。(60秒)

CBCテレビ

 プロデューサー 藤井 稔、ディレクター 尾田真一、撮影 鈴木幹也、音効 斉藤 元(東海サウンド)

JPG 89歳のポーラの化粧品訪問販売員、伊沢タツ子さんを取りあげた企業CM。「化粧をしたら往復ビンタ」される戦争の時代を経験し、逆に美しさへの興味がわき販売員となった伊沢さんは、販売歴63年。顧客もほとんどが80歳以上である。生き生きと働く伊沢さんの姿を通して、「キレイに、定年はない」というメッセージをうまく表現している。化粧ができる“平和”がいつまでもあってほしいと考えさせられる印象深い作品。

 

 

 

 

優 秀 自社媒体PRスポット/忘れない3.11 わたしの一言~ヨシさんの“てんでんこ”~(90秒)

IBC岩手放送

 プロデューサー 堀米道太郎、撮影・構成 千葉佳史、ナレーター 神山浩樹

 IBC岩手放送が2012年から続けるキャンペーンの一環で制作されたスポット。岩手県宮古市の仮設住宅に住む97歳の女性、赤沼ヨシさんは、東日本大震災発生時、“津波てんでんこ”――他人にかまわず、てんでんバラバラに逃げよ――の教えを守り、必死に逃げた。震災から4年。「復興はてんでんこではできない」と語る赤沼さんを通して、早期復興への願いを訴える。当事者の声で防災や風化防止を訴える継続した取り組みが評価された。

 

優 秀 自社媒体PRスポット/メロンに寄り添う男(105秒)

CBCテレビ

 プロデューサー 宇佐美浩伯、ディレクター 萩原雄太、構成 八木晴彦(フリー)、撮影 谷口たつみ(たにぐち)

 冒頭、登場したのはビキニパンツだけを穿いた男性。静岡県袋井市のメロン農家、名倉正司さんだ。この格好になるとメロンの気持ちがよく分かるという。もう25年もこの姿を続けており、妻の光子さんは、その姿に呆れつつも41年間を共にしてきた。名倉さん夫婦の絆を引き合いに、視聴者や地域に寄り添うテレビ局でありたいという想いを、インパクトのあるビジュアルも活かして面白おかしく伝えている。

 

優 秀 公共キャンペーン・スポット/戦争を、考えつづける(345秒)

東海テレビ放送

 プロデューサー 土方宏史、取材 繁澤かおる、クリエイティブディレクター 都築 徹(電通中部支社)、ディレクター 清水淳之介(ソアズロック)

 20代の女性記者が取材を通し、戦争について考える姿を捉えたキャンペーン・スポット。戦争体験を語りたくないという高齢男性や「殺したり殺されるのはもういやだ」と語る記者の祖母などに話を聞いた。その一方“ネット右翼”と呼ばれる人や“在特会”のメンバーなども取材し、戦争を一部肯定するような意見もあえて紹介した。戦後70年を迎えた日本が安全保障の議論に揺れる中、多角的に判断材料を提示する意欲的な取り組みが光った。

 

優 秀 鳥羽水族館 鳥羽水族館/猫2匹入りました(60秒)

東海テレビ放送

 プロデューサー 伊藤芳人、ディレクター 西村 大(オーシャン・アンド・リバー)、カメラ 山崎浩二(フリー)、構成 橋本吾市(スクワイア)

  三重県鳥羽水族館の開館60周年の目玉展示を3部構成で紹介するCM。2匹のネコが水族館に連れてこられた、と会話している。なぜネコが水族館にいるのかと思っていると、1匹が水に飛び込み、魚を口にくわえて出てきた。ここでテロップが表示され、“スナドリネコ”という前足で魚を捕まえるのが特徴のネコだと分かる。ネコの正体に注意を引きつける構成と野性味あふれる映像で、水族館に行こうという好奇心を引き出す作品である。

 

優 秀 自社媒体PRスポット/RCC被爆70年プロジェクト「未来へ」プロジェクトスポット(60秒)

中国放送

 プロデューサー 亀井弘龍、ディレクター 越智和寛(RCCフロンティア)、撮影 的場泰平(RCCフロンティア)、ナレーション構成 角田雅子(フリー)

  広島への原爆投下から70年。中国放送は、被爆地の放送局として、あらためて被爆の惨禍と復興の過程を次の世代に伝えるプロジェクトに取り組んだ。スポットでは、現在の広島がむかえる“朝8時15分”の日常風景を切り取り、それが一瞬で奪い去られる恐怖を想像させる。「核兵器のない世界」を目指す意思が伝わる作品であり、結びの「戦争のない未来は、まだやってきていません」の言葉により、世界の現状についてはっとさせられる。

 

優 秀 公共キャンペーン・スポット/RBCおきなわ健康長寿プロジェクト「歩くーぽん 歩いてますか沖縄」(165秒)

琉球放送

 プロデューサー 真栄喜啓介、前迫篤男(博報堂DYメディアパートナーズ)、クリエイティブディレクター・コピー 河西智彦(博報堂)、ディレクター・編集 原田 塁(RBCビジョン)

 昨年から続く「みんなで歩こうキャンペーン」の第2弾スポット。30秒以上歩くなら原付バイクに乗るという太めの男性や、常にエレベーターを使うため故障した時のことは考えられないという人などをインタビュー形式で取り上げ、県民がいかに歩かないかを表現。個性豊かなキャラを揃えて笑いを誘い、キャンペーンの認知度向上に大きく寄与した。

 

 

技術部門

 

最優秀 1.2GHz/2.3GHz帯 受信アンテナの開発

フジテレビジョン

 研究・開発担当者 青木良太、佐川幸栄、森本 聡

JPG 1.2GHz帯および2.3GHz帯において、①FPUの移動中継に適した「高利得型」、②ワイヤレスカメラやラジオマイクの受信に適した「広半値角型」、③両者の「中間型」、の3つのタイプのコンパクトな受信アンテナを、新規に開発・実用化した。
 これにより、700MHz帯からの移行途上にあるFPU/ラジオマイクの運用において、実務面の安全性とさまざまな環境下での伝送安定性を両立し、番組制作・中継技術の高度化と周波数の有効利用に大きく貢献した。

 

 

 

 

優 秀 デジタル連絡無線音声改善技術の開発

日本テレビ放送網

 研究・開発担当者 牧野鉄雄、藤 雅樹、穗坂 怜、田上由起子

 放送事業用のVHF帯デジタル連絡無線が採用している音声圧縮技術(ボコーダ方式)の弱点である音質を、送信側における母音の明瞭化と受信側における倍音の付加により、無線機のハードウェアに手を加えることなく改善する技術を開発・実用化した。
 これにより、災害報道時に命綱となる放送事業用連絡無線の信頼性や利便性が高まり、他用途への応用も期待されるなど、無線機器の高度化に貢献した。

 

優 秀 3Dシミュレータと連動可能な次世代調光操作卓

朝日放送

 研究・開発担当者 瀧本貴士、兼岩 克、道本啓介、葛原宏一

 従来、一般調光卓とムービング卓を併用して行っていた作業を副調整室の1台の照明卓に集約し、照明専用CADソフトと3Dシミュレータを連動させることで、多彩な演出をワンマンオペレーションで実現可能な次世代調光操作卓を開発・実用化した。
 これにより、準備作業のオートメーション化と直感的な操作環境を実現し、LEDライトやムービングライトも簡便に使用できるなど、照明業務の効率化と高度化に貢献した。

 

優 秀 マスターにおける字幕付きCM監視システムの開発

読売テレビ

 研究・開発担当者 松田慎一郎、川上淳平、久保健太、谷知紀英

 字幕付きCMの送出上の適合性をマスター最終段で自動的に確認・判定するとともに、オンエアのタイミングや検知された異常を的確に通知する、汎用性の高い監視システムを開発・実用化した。
 これにより、マスター監視のワークフローが効率化され、字幕付きCMのさらなる普及に向けた環境整備と送出業務の高度化に貢献した。

 

優 秀 画像認識による対象検出を利用したクロマキーカット割りシステムの開発

関西テレビ放送

 研究・開発担当者 栗山和久

 クロマキースタジオにおいて2台のカメラ映像のみを比較して、バストショットに切り替えても適切な背景映像を自動生成することにより、バーチャルシステムを用いることなく、クロマキーでカットを割る演出を低コストで実現するシステムを開発・実用化した。
 これにより、クロマキー合成の表現の幅が広がり、情報番組などで気軽に活用できる環境が整い、テレビ制作技術の効率化と高度化に貢献した。

 

優 秀 ラジオ移動測定装置と検証ツールの開発

山口放送

 研究・開発担当者 山﨑浩介、惠良勝冶

 中波ラジオの受信状況を短時間に効率よく測定するシステムを保守車両内に低コストで構築し、各地点の電界強度に加えて受信音声を自動記録、さらに夜間・早朝の外国波混信を分析できる検証ツールを開発した。
 これにより、FM補完局整備の前提となる中波放送の都市型難聴および外国波混信の状況を効率的に把握する方法を確立し、ラジオ聴取環境の向上に貢献した。

 

優 秀 従属同期方式のSFN環境でも使用可能な放送TS over IP伝送装置の開発とその運用

RKB毎日放送

 研究・開発担当者 光永直寛

 テレビ放送を支えるSTL回線のさらなる安全・信頼性向上をめざし、放送TSおよび基準信号を、従属同期方式のSFN環境においても伝送するIP伝送装置を開発・実用化し、親局と中継局2か所とを結ぶバックアップ回線を構築した。
 これにより、ベストエフォート型のIP網を利用してSTLのバックアップを低コスト
で実現する手法を確立し、放送ネットワークの安定化に貢献した。

 

 

特別表彰部門

〔青少年向け番組〕

 

最優秀 ウッティ発!アンニョンハセヨ!ワタシ桑ノ集落再生人

テレビ山梨

 プロデューサー 古屋孝樹、ディレクター 岩﨑 亮

JPG 少子高齢化が進む山梨県市川三郷町山保は、かつて国内シェア85%を占めた桑の品種「一瀬桑」の発祥地である。縁もゆかりもない集落に飛びこんだ韓国人ハン・ソンミンさんと妻の楠三貴さんは、使いみちのなくなった一瀬桑を利用した「桑の葉茶」で集落を活性化させ、若者を増やしたいと汗をかく。夫婦の奮闘の4年間を追いかけた。
 ハンさんが国境を越え、日本の限界集落を復活させようと努力する姿は、目標を実現するため、子どもたちにあきらめないことの重要性を教えてくれる。

 

 

優 秀 かりんの夢への階段

福島中央テレビ

 プロデューサー 藤田 潮、皆川実成、ディレクター 円谷浩一、ナレーター 大橋聡子

 郡山市出身の丸山夏鈴さんは、2012年、18歳の夏に念願だったアイドルデビューを果たし、輝く笑顔でファンを増やしていた。しかし、その笑顔の裏には悪性脳腫瘍をはじめ7度の大きな手術を乗り越えてきた壮絶な経験があった。試練を乗り越え、ようやくアイドルとして夢への階段を駆け上がり始めた矢先、再び発症。腫瘍が肺に転移していた。
 病と闘いながらも夢を追い続けた夏鈴さんの姿は、青少年に命の重さや夢を持つことの大切さを伝える。

 

優 秀 ガイアの夜明け シリーズ「復興への道」第17章 福島の未来のために…

テレビ東京

 チーフ・プロデューサー 野口雄史、プロデューサー 松井秀裕、ディレクター 津田友美、AP 杉田郁子

 2013年4月から、福島第一原発から20キロ圏内でも、昼間の出入りが自由になった地域がある。この地域で将来の復興を担う人材を育てるために小学生の体験学習や高校生のオープン学習を始めた元東京電力執行役員の半谷栄寿さんと、いずれ帰還できた時のために絹織物産業を復活させようとする地元出身の和田智行さんの2人に密着した。
 今なお福島が抱える問題解決のために奮闘する2人を通し、改めて震災復興とは何かを考えさせられる。また、未来を見据えた点も大きな意義を持つ。

 

優 秀 NBS月曜スペシャル 「こどもの国~仲間といた4日間~」

長野放送

 プロデューサー 上小牧忠道、ディレクター 東澤鈴美、ナレーター 大谷香奈絵、カメラマン 吉川勝義

 昨年、あるカウンセリング団体が佐久市の高原で行った「少年・少女のサマースクール」に、小学生から高校生までの男女約100名が参加し、自由な4日間を過ごした。学校や家庭の問題から、不登校や心身症を抱える子どももいたが、自然体験や仲間とのふれあいで、心情が変わっていく。
 サマースクールを通して悩みや不安を乗り越え、前向きに生きていこうとする姿は、同世代の励みにもなる。

 

優 秀 RSK地域スペシャル・メッセージ「盲目の先生 命の授業 ~見えないから見えたもの~」

山陽放送

 プロデューサー 横田 章、ディレクター 武田博志、撮影 横田康成、ナレーション 石田好伸

 岡山県の盲学校講師、竹内昌彦さん(70歳)は、幼少期に失明し激しいいじめや差別を受けてきた。また最愛の長男も病気で亡くしたが、自らの力で現実を乗り越え、克服してきた。そうした経験を通して感じた「生きる意味」「命の尊さ」を伝える講演は、23年間で2000回。講演先は小中高校を中心に、自治体や老人会など多岐にわたる。
 幾多の困難を乗り越えてきた言葉には深い重みや愛情があり、青少年自らが生きることの意義や難しさを考えるきっかけとなる。

 

 

〔放送と公共性〕

 

最優秀 アーカイブスを地域に活かす~「人道の港」番組制作と教育活用~

福井テレビジョン放送

 実施責任者 横山康浩

JPG 福井テレビジョン放送は、平成18年から、第二次世界大戦時に多くのユダヤ人難民を救済した杉原千畝の功績や敦賀港に上陸した難民たちを市民が優しく迎え入れたことなど、70年が経過し消えようとしている証言をたぐりドキュメンタリー番組を制作してきた。また、敦賀市教育委員会と協議を重ね、これらの番組の素材を授業で使用しやすいように教育素材DVDとしてリメイクし、小中学生の「ふるさと」教育などに活用している。
 人道の港と言われた敦賀港を通して史実を語り継ぐことに加え、放送後に番組を教育分野でも有効に再活用することにより、地元にとっても財産である映像素材を地域社会に還元し、郷土を誇りに思う気持ちを広く育んだことが高く評価された。

 

優 秀 ゴジてれChu!Ⅲ部 きぼう ~ふくしまのめばえ~の放送による福島での子育て応援キャンペーン

福島中央テレビ

 実施責任者 村上雅信

 福島中央テレビは、震災の10ヵ月後の平成24年1月から、福島県内で出産し子育てをする人たちを応援するため、県内で生まれた赤ちゃんとその家族を紹介するコーナー“きぼう”をニュース情報番組「ゴジてれChu!Ⅲ部」でスタートさせた。また、福島第一原発事故後、家に閉じこもりがちになった親子に外出の機会をつくり、交流の場を提供するため、自社イベントの会場に“きぼう”コーナーを設けるなどの活動も続けている。
 子供の誕生という明るい話題を通じて地域の人たちに元気を与えるだけでなく、福島がかかえる課題にもしっかりと向き合い、未来への希望を見出そうとする前向きな姿勢が評価された。

 

優 秀 夢を追いかけた少女の26年間の記録「夢は牛のお医者さん」テレビ番組と自主映画上映活動

テレビ新潟放送網

 実施責任者 坂上明和

 テレビ新潟放送網は、獣医師を目指す少女の夢のはじまりから現在までの26年間を密着取材した記録を、「県域を越えて東日本大震災の被災地に夢と希望を届けたい」という想いから、映画化した。岩手・宮城・福島各県被災地での巡回上映を含め全国各地で自主上映活動を行うとともに劇場でも公開し、観客動員は5万人を突破した。
 魅力的な主人公を発掘し長期間にわたり寄り添うことで、人びとを元気づける番組を制作し、蓄積した映像を有効に利用して映画化することにより、被災地をはじめ多くの人々に届けた。作品の素晴らしさに加え、地方局の放送外活動への取り組みが評価された。

 

優 秀 ハンセン病に対する差別解消にむけた報道

三重テレビ放送

 実施責任者 小川秀幸

 三重テレビ放送は、平成13年の国家賠償訴訟判決をきっかけにハンセン病問題を追い続け、ドキュメンタリーやニュース、情報番組などで継続して伝え、取材内容をまとめた書籍も出版した。長年にわたり療養所での生活を余儀なくされているハンセン病回復者に密着し、戦争との関係や一時帰郷の模様など様々な角度から紹介することで、ハンセン病に対する差別や偏見などの課題を明らかにしてきた。
 取材者が取材対象者と信頼関係を築き、テレビ番組では取りあげにくい題材に対して粘り強く真摯な姿勢で向き合い、弱者排除の風潮に警鐘を鳴らし差別解消に取り組んできたことが評価された。

 

優 秀 おばあちゃんの台所プロジェクト

テレビせとうち

 実施責任者 遠藤美穂

 テレビせとうちは、「おばあちゃんの味」を未来に伝えようというコンセプトのもと、ふるさとに受け継がれてきた料理とそこに込められた想いを紹介するプロジェクトを立ち上げ、これまで90人以上のおばあちゃんを番組で紹介してきた。新聞・雑誌・本・イベントなどとも連携して、核家族が増えるなかで伝承しづらくなった「家の味」を広く伝えている。
 生き生きとしたおばあちゃんの姿を通じて自分たちの住む町のよさを再認識させるとともに、視聴者だけでなく出演したおばあちゃんにも元気を与えている。家庭でできなくなりつつあることをメディアが代わって行おうとする視点と多角的な展開が評価された。