一般社団法人 日本民間放送連盟

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会長会見

定例記者会見

【日 時】 平成17年3月17日(木)午後3時30分~4時15分
【場 所】 赤坂プリンスホテル ロイヤルホール

1.人権擁護法案への対応について

  • 記者:自民党内を中心にメディア規制を絡めて、人権擁護法案の論議が再発している。昨日、民放連と日本新聞協会が共同声明を出したが、現在の会長の感想を聞きたい。
  • 日枝会長:我々マスコミは、言論・表現の自由が根幹になっており、国民の知る権利を担うという使命を持った報道機関である。昨日、新聞協会と民放連の共同声明を発表したが、結論から言えば、メディア規制条項を削除して欲しいということである。
     放送による人権問題は、民放とNHKが設置したBPO(放送倫理・番組向上機構)のBRC(放送と人権等権利に関する委員会)で自主的に取り組んでいる。したがって、この人権擁護法案は、報道機関を対象としないでいただきたいという主旨であり、これまでの意見と全く変わっていない。人権擁護については、言論表現の自由に関わる重要な問題であるので、民放連としては、報道委員会を中心に常に議論を深めるものである。

 

2.NHKに関連する諸問題について

  • 記者:前回の民放連会長会見の翌日(1月25日)に、NHKの海老沢会長が辞任したが、海老沢会長の辞任についての感想は?
  • 日枝会長:同じ放送人として、あのような形で辞任せざるを得なかったのは、非常に残念だと思う。橋本新会長は、受信料の問題も含め課題山積で大変だと思うが、公共放送の原点に立ち、民間放送とNHKの共存共栄を図るよう、強いリーダーシップを発揮していただきたいと思う。
  • 記者:NHKは現在懸命に改革に取り組んでいるが、NHKの改革に対し民放連として期待があれば聞きたい。
  • 日枝会長:昨年、国会で附帯決議が行われたとおり、民放とNHKの共存共栄ということに凝縮されると思う。NHKには公共放送の原点に立って国民の信頼を早く取り戻し、二元体制が健全に機能するようにお願いしたい。(注:平成16年3月23日衆議院総務委員会の附帯決議。「七 協会は、公共放送の立場を認識しつつ、民間放送との共存共栄を図ることに配慮すること」)
  • 記者:NHK受信料の支払い拒否が増加し、3月15日の衆議院総務委員会では3月末で70万件に達する可能性もあることが明らかになった。また、麻生総務大臣からは罰則規定という言葉が出たようだが、これらについて感想は?
  • 日枝会長:受信料不払いが増加しているのは、本当に大変なことだと思う。受信料の支払い拒否が増え続けると、我が国の放送を支えている二元体制の崩壊につながる可能性がある。その対応策として、"スクランブル化"、"広告放送"、"不払いに対する罰則"をあげる向きもあるが、何よりもNHKは受信料の不払いに真剣に取り組み、国民の信頼を早く回復して欲しいと考える。これまで営々と築いてきた二元体制は、国民・視聴者から支持されていると思うし、(番組の多様性を保つ意味でも)日本固有の素晴らしい体制である。NHKには公共放送としての原点に立ち、放送法で決められている業務範囲の中で透明性を確保しながら、国民の支持を得ることが大事なのではないかと思う。
  • 記者:現在の受信料制度の見直し等の話題になっている。これまで、民放連は、民業圧迫や業務内容の線引きを含めて主張してきたが、改めてどう考えるか。
  • 日枝会長:NHKは公共放送として与えられた使命があり、放送法で業務範囲が決まっている。そこをきちんと守って頂くことに尽きる。今回の問題は、職員による不正行為が発端であったが、この機会に、公共放送の原点に立ち返り、経費使途や子会社の関係などに透明性を高めていくことが、信頼回復につながると思う。しかし、罰則規定や有料放送に踏み込んでいくとなると、問題は非常に大きなものになってくる。
  • 記者:今の受信料制度そのものは守っていった方がいいということか。
  • 日枝会長:民間放送が誕生して50数年、NHKがラジオを開始して今年で80年になるが、受信料制度は日本に定着した制度であり、日本は世界においても放送先進国である。これは二元体制が国民に支持されてきたからだと考えるので、これを変える理由はない。

 

3.株式に関連する一連の問題について

  • 記者:マスメディア集中排除原則違反により、総務省は放送局71社(民放連会員66社)に対し行政指導を行ったが、これについて民放連の対応は?
  • 日枝会長:昨年11月にこの問題が明らかになった際、名義株自体は法令の違反ではなく、民放の開局時には"資金を出すので、名義を貸して欲しい"といった事情もあったのではないかと、会見で申しあげた。しかし、その後、マスメディア集中排除原則の省令違反の社が出てきた。我々放送事業者は、公共的、社会的に非常に重要な責任を負っている。そうした面からも、コンプライアンスが大切であるということで、11月の会見で、"正すべきものは早く正すべきだ"と申しあげた。その後、私から各社に対し、早く是正するよう依頼し、理事会決議も行った。また、個々の社の経営内容に関わる問題ではあったが、各社に報告を求め、違反している社には、可及的速やかに改善するよう要請した。その結果、1社の例外を除き今月末までに全て解消することとなった。
  • 記者:第三者名義株のあり方について、どう考えるか。
  • 日枝会長:名義株は商法上でも認められているものであるが、放送事業者が社会的使命をもった企業である以上、実質株でいくべきだと私は思う。各社もその方向に進んできている。開局の時には色々な事情があったと思うが、開局から年月が経っても正さないのは好ましいことではなく、実質株にするよう各社に協力を求めている。
  • 記者:ライブドア問題では、民放連加盟社すべてに不安が広がっているように思うが、民放連会長として、この問題に関する所見と対応を聞きたい。
  • 日枝会長:基本的には、株式を上場する以上、株主を選ぶことはできない。それぞれの会社の株主価値を上げるためのM&A(合併・買収)は、決して悪いことではないと思うが、そこには一定のルールがあることも否めない。民放連加盟社には、証券取引法、商法、電波法等に基づき、さらに自社の株式の動きについて緊張感を持って経営してもらいたいと思う。特定の問題と言うことではなく申しあげると、資本主義や証券市場活性化のために、トストネットを使う際の条件や、公開買付の義務付けなど証券取引上のルールがある。今回のケースは、予想していないことが起こったということだと思う。(法律が)予想しなかった事態について、立法府で法改正の検討がなされているのであり、こうした動きを見ながら上場している民放各社は緊張感を持って経営をしていくということだと思う。
  • 記者:今回の問題で、外資規制が浮かび上がったが、これについてはどう考えるか。
  • 日枝会長:米国、フランス、ドイツなどでは間接支配も含め、放送事業に対する外資規制がある。日本には外資による間接規制がない。イギリスは規制していない代わりに審査制度がある。間接支配における外資規制の問題は、現在総務省が検討していると思う。放送は公共的なものであり、電波は国の財産である。これは世界各国共通なものである。先進国は外資規制があるのに、日本だけ無くてよいのか、また、規制緩和への流れと言っても、国民の財産である電波を自由に外国人、外国法人に解放してよいとは言えないと思う。
  • 記者:民放連の中で、M&Aについてはどのように議論していくのか。
  • 日枝会長:M&Aについて議論してはいないが、新たに、「株式等経営戦略検討プロジェクト」を設け、マスメディア集中排除原則や、名義株の問題などについて検討を始めたところである。メンバーは、在京テレビ5社と文化放送の役員である。
  • 記者:株式等経営戦略検討プロジェクトでは具体的にどのようなことを検討し、どのような意見をまとめようとしているか。
  • 日枝会長:マスメディア集中排除原則に関して、民放連加盟社202社のうち3分の1近くに問題があり、是正した。株式というものについて、コンプライアンスの問題も含め真剣に議論しようということで設置したが、昨日付で発足したばかりであり、これから論点整理をしながら議論を進めていく。
  • 記者:プロジェクトの検討内容は、いつ頃を目処に関係機関に要望する計画か。
  • 日枝会長:まだ昨日発足したばかりなので、方向性も決まっていない。
  • 記者:M&Aや他の企業による買収については議論するのか。
  • 日枝会長:これから検討テーマを含め議論していくので、論点整理していく中で、あるいは出てくるかもしれない。
  • 記者:今回、株の取得が時間外取引で進められたが、この手法についてはどう考えるか。
  • 日枝会長:これまでの時代では予想できなかったことが起こっている。そうでなければ、関係法を改正する必要がない。一般論としてこのように思う。
  • 記者:放送局の経営権がある特定の別の企業に移るという事態は想定していなかったと思うが、民放連の会員資格や放送免許への影響について、民放連、総務省は考え方を整理しているか。
  • 日枝会長:民放連では今回のようなことは想定していなかったので今のところ検討は始めていない。総務省が検討しているかどうかは聞いていない。
  • 記者:民放各社に違う業界から経営権を取得しようとする想定していない動きがあり、敵対的に経営権が奪われること自体を総括して、どう思うか。
  • 日枝会長:民放連としては想定していなかったことだが、新しい事態にどう対応するかについては、それぞれの社で検討していくことになるだろう。
  • 記者:予想外なので検討していないということであるが、どういうことを制度整備として要望していくのか、放送局として、制度がどうあって欲しいと思うか。
  • 日枝会長:諸外国では、放送への参入に際して様々な審査規定が設けられている例もあるので、行政は当然考えていると思う。我々もこれから検討していくことになる。
  • 記者:昨今の騒動を各種メディアはずいぶん大きく報道し、一種の社会現象になっていると思う。これについて、放送人としてどのように見ているのか。
  • 日枝会長:各社がそれぞれの編成方針に基づき放送しているのであり、私がそれについて意見を述べるのは差し控えたい。ただし、これは経済問題であり、アメリカでは日常的に起きていたことが、日本では新しく起こったため、注目されているのかと思っている。

 

4.放送と通信の融合について

  • 記者:最近、「放送と通信の融合」という言葉をよく耳にする。一つはライブドアの堀江氏が発言しているということもあるが、今季プロ野球でソフトバンクや楽天が試合の実況をインターネット放送する準備を進めているとも聞いている。このような中で、放送と通信のあり方について、どのように考えているか。
  • 日枝会長:私は10年ほど前から、放送と通信の融合が将来起こるだろう、と申しあげてきた。放送と通信の融合のために、我々放送事業者はデジタル化を進めている。国策として2011年にアナログからデジタルに完全移行するが、地方局も非常に苦しい経営の中で、2006年までにデジタル放送を開始すべく取り組んでいる。テレビと通信という、それぞれ性格の異なるものが、互いに補い合いながら、新しいサービスを国民視聴者に提供することによって、新しい時代が実現するというのが、21世紀の放送と通信の融合の姿だと思う。10年後にはテレビはなくなると言う方もいるが、私は民放連の会長として、そのようなことは絶対にあり得ないと断言する。デジタル化によって放送は通信の持っているメリットを大いに活用すべきだし、通信もテレビの持っているメリットをうまく使うことにより、国民の利便性がより高まるサービス、ビジネスが生まれてくると思う。これが放送と通信の融合ではないかと思う。放送と通信は性格が異なる。放送事業は放送法・電波法で規定され、免許を得て行われる。放送は全ての方々に一斉同時に情報を伝えられるが、通信は各個人が自分で情報を取りに行くのに適したメディアである。しかし、両方の利点をうまく利用することにより、国民に素晴らしい、利便性のあるサービスを提供できると思う。今、地方民放局もデジタル化を積極的に進め、早期に実現したいと大変な努力を行っている。民放連としても、これをバックアップし、早くそのような時代を作りたいと日々努力しているところだ。
以上

問い合わせ先:民放連・会長室