一般社団法人 日本民間放送連盟

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会長会見

定例記者会見

【日 時】 平成17年9月15日(木) 午後3時~4時
【場 所】 民放連地下ホール

1.日本放送文化大賞について

  • 日枝会長:「第1回日本放送文化大賞」の地区審査が終わり、グランプリ候補作品が出そろったのでご報告する。民放連が設置した「視聴率等のあり方に関する調査研究会」から番組・顕彰制度の充実について提言をいただいて以来、さまざまな準備を進めてきたが、このほどグランプリ候補作品が決定した。グランプリ、準グランプリは、11月2日に大阪で開催する民放大会の式典のなかで発表・表彰するので、御期待いただきたい。

 

2.日本民間放送連盟賞について

  • 日枝会長:日本民間放送連盟賞の作品・事績が決まったので発表させていただく。連盟賞は昭和28年に創設された、歴史ある賞である。ことしは、「番組」「CM」「技術」「放送活動」「統一キャンペーンスポット」の各部門を合せて103の作品・事績に授賞することになった。

 

3.BSデジタル放送について

  • 記者:BSデジタル放送の普及が1000万件を突破したという発表があった一方で、各社の累積赤字も相当な額になっている。現状をどう見ているか。
  • 日枝会長:「1000日で1000万世帯」という掛け声で始まり、それが4年9ヶ月で実現でき、皆で力を合わせてやってきた甲斐があったと思う。白黒テレビ、カラーテレビ、BSアナログ放送、あるいは携帯電話など、他のメディアの普及スピードと比較すれば、非常に早かったと率直に認めてよいと思う。これまでの赤字については、かつての白黒テレビやカラーテレビの時代とは異なり、メディアの数が多い中で普及を進めていかねばならない事情がある。私の経験から言わせていただくと、新しいメディアは1000万台を越えると普及が一気に拡がると考えている。地上波デジタル放送の世帯カバー率が60%位まで来たので、これからは地上波とBSが相互に補完し合うことになると思う。2つのデジタル放送がうまくシナジー効果を生みながら視聴者に受け入れられ発展していくためには、地上波とBSそれぞれの活性化、コンテンツの有効利用、通信との良い形での補完関係が重要である。必要に応じてマスメディア集中排除原則を見直していただくことで放送全体がより元気になれば、BSデジタル放送も今回の1000万件を契機に発展していくと思う。
  • 記者:地上波キー局系のBS各社が来年3月までにラジオ放送を終わることになったが、BSでのラジオというものについてはどのように総括しているか。
  • 日枝会長:率直に言って、経営的には難しい面があった。新しい事業は挑戦であるから、やってみなくては分からない部分もあるだろう。
  • 記者:総務省が13日まで受け付けていた新たなBS事業者の認定申請に4社が名乗りを挙げた。2007年以降ライバルが増えることになるが、どう考えるか。
  • 日枝会長:放送に対しては「排他的」とか「規制緩和が必要」などという声もあるようだが、新しいチャレンジャーが次々と出て、新たなビジネスを発展させ活性化していくことは、放送界全体にとって大変良いことだと思う。
  • 記者:BSについてのマスメディア集中排除原則の緩和を、民放連として、いつ、どのように総務省に要望していくのか。キー局が2波を持つことについて地方局には反対する声があるのではないか。
  • 日枝会長:総務省にはかねがね検討をお願いしている。民放連でも会員各社の意見を充分聞きながら議論を進めていきたい。

 

4.デジタル放送の推進について

  • 記者:情報通信審議会が7月29日に公表した「地上デジタル放送の利活用の在り方と普及に向けて行政の果たすべき役割」第2次中間答申では、地上デジタル放送普及のために、IP伝送やCSによる再送信の話が出ている。民放連としてはどのような見解か。
  • 日枝会長:民放各社は、これまで50年かけて、多い社では1社で170から180の中継局を建てて全国をカバーしてきた。今度のデジタル化はそれをあと6年間で全て切り替えなくてはならない。今回の中間答申では、中継局の建設がどうしても間に合わない場合には補完的な手段としてIP伝送を利用してはどうか、と提言している。我々としても、国民・視聴者の間に情報格差が生じないよう努力しつつ、補完的にIP伝送を利用する場合には放送対象地域を限定すべき、というような意見を述べることになるだろう。
  • 記者:来年春に携帯端末向け放送が始まるが、現状はどうなっているか。
  • 日枝会長:特許管理団体との協議や、携帯端末向けにふさわしい放送サービスの内容の検討が順調に進んでいる。来春までには必ずサービスが開始されるだろうと思う。
  • 記者:携帯端末向け放送は、単に「どこにいてもテレビが見られる」ということなのか、それとも一歩進んで、「今のテレビとは異なるメディアになる」のか。
  • 日枝会長:画面が小さいからこそ携帯端末向け放送の意味がある。家庭のテレビと全く同じ使い方であれば、あえて小さな画面で見る人は多くないかも知れない。しかし、様々なデータ、例えば番組情報やスポーツの途中経過、災害時の情報などを手元で簡単に得ることができ、テレビの使い方が変わってくるだろう。「放送と通信の融合」という言葉が独り歩きしているが、実際には「融合」ではなく、このように相互に「補完」し合いながら発展していくと考えている。
  • 記者:総務省の来年度予算要求のなかに地下街などでの電波の不感対策費が盛り込まれたが、事業者としてはどのような考えか。
  • 日枝会長:地下や電車内で視聴できるのは視聴者にとって大きなメリットであり、ラジオ、テレビともにぜひお願いしたいと思う。
  • 記者:移動体向けの放送では、衛星のモバイル放送が始まっている。普及という点で非常に苦戦しているが、携帯端末向け放送に何か経験が活かされる面があるか。
  • 日枝会長:個別の事業者のことに言及するのは差し控えるが、地上デジタル放送の携帯端末向け放送は、全国で受信できるようになれば必ず普及していくと思う。
  • 記者:ラジオのデジタル化については。
  • 日枝会長:東京・大阪のデジタルラジオは、すでに東京のラジオ社が中心となって事業化の準備が進んでおり、民放連としてもこれを応援していく。

 

5.NHK受信料をめぐる諸問題について

  • 記者:NHKが受信料の不払い者に対して法的措置を取る方針を明らかにしているが、どのように考えるか。
  • 日枝会長:現時点では一つの選択肢であって、決定したことではないと理解している。我々も、この問題を単にNHKだけの問題だとは思っていない。国の基本方針である放送の二元体制にまで影響してくるのではないかと思う。NHKは近く「新生プラン」を公表すると聞いているので、それを見てからお話しするのがよいと思う。
  • 記者:二元体制は民放にとってもNHKにとっても大事なことであり、健全な二元体制のためには、NHKの経営基盤がしっかりすることが大事であるとすれば、受信料の督促もやむを得ないということではないのか。
  • 日枝会長:橋本会長は、まだ「督促する」とはおっしゃっていないのではないか。どうして受信料がこのような問題になってきたのか、それに対してNHKはどうすべきか、国民にどう理解を求めるか、それを具体化したものが「新生プラン」として出てくると思う。国民との信頼関係の中で、「やはり受信料は払うべきだ」という雰囲気を育てていくということではないだろうか。
  • 記者:政府の「規制改革・民間開放推進会議」でもNHKのスクランブル化が検討されているようだが、この点についてどう考えるか。
  • 日枝会長:予定されていた「中間取りまとめ」の発表が延期されているので、それが出る前に申しあげるのは差し控えたい。いろいろ議論されていることは聞いているが、この問題は、過去50年の放送の歴史、諸外国と比較して健全な体制で行われている日本の放送の実態、放送が担う公共性など、様々なことを勘案して考えなくてはいけない。放送のあり方は、単に経済効率だけで考えるべきものではないと思う。

 

6. 放送事業に対する外資規制、企業買収対策について

  • 記者:外資規制対策については、衆議院の解散によって法案が流れてしまったが、どのような見解か。
  • 日枝会長:特別国会で改めて審議されるよう努力してくださっていると聞いている。間接支配、直接支配を合わせて20%未満に改正するのは非常に大事なことだと思う。外資規制は世界各国で実施していることであり、特別国会では是非成立させていただきたいと思う。
  • 記者:フジテレビがニッポン放送を子会社化したり、TBSが第三者割り当て増資を行なうなど、企業買収対策の動きは今後とも増えてくると見ているか。買収されたくないのならば上場しなければよい、との発言もあるが、どう考えるか。
  • 日枝会長:民間放送は免許事業であると同時に、民放各社は株式会社でもある。株式公開したからといって公共性が失われるものではない。従って、上場するかしないかも含めて、様々な問題は各社の経営判断に任せるべきものだ。M&Aが時代の主流だとする考えもあれば、最近ではそうとも言えないとの意見もある。また、買い占められるのが嫌なら上場しなければいい、というのも一つの意見ではあろう。ただし、放送事業について言えば、安定した財源基盤が必要だ。デジタル化をどう進めていくのか、良いコンテンツをいかに確保するか、全て資金が必要になる。公共の電波を預かる放送局が上場するのは、要は経営者の判断と覚悟の問題であると思う。やれると思えば上場すればよいし、難しいと判断すればやめればよいと思う。

 

7.その他

  • 記者:プロ野球についてだが、このところ巨人戦の低視聴率が話題となっている。そろそろ来シーズンに向けて議論しなくてはいけない時期になっていると思うが、民放連としてプロ野球機構と対応を協議するといったことは考えていないのか。
  • 日枝会長:民放連がプロ野球機構と話すことではない。ただ、巨人戦の視聴率が4%台、5%台となり、夜9時以降は放送を延長しなくなるなど、シュリンクした形になってきているのが現実だ。私は、プロ野球は放送にとって大事なソフトであり続けると思うが、球団の皆さんには、もっとスポーツエンターテインメントという認識を持っていただき、観客を増やし、視聴者も増えるように御努力いただきたいと思う。プロ野球はエンターテインメントとしての話題作りを真剣に考えるべき時期にきているのではないか。関係者の努力があれば、われわれも一生懸命に中継し、盛り立てて行きたいと考えている。
  • 記者:CMのCMキャンペーンの反響はどうか。
  • 日枝会長:営業委員会や事務局から聞いている限りでは、なかなか反響はよいと思う。CMの役割をもっと国民に理解していただきたい。CMには販売促進に繋がるもの、企業イメージを上げるものなど様々だが、多様なCMが競い合うことは、放送全体の活性化のためにも必要だと思う。今回のキャンペーンは功を奏していると理解している。
  • 記者:解散から結果まで何かと話題の多い総選挙であったが、テレビ的にいうと「ワイドショー選挙」などと言う向きもあったようだ。今回の選挙報道についての全般的な印象や感想はどうか。
  • 日枝会長:経済問題、政治問題を含めて、情報番組が取扱う話題は多岐にわたっている。今回の総選挙は一面から見ると劇場型選挙などと言われ、そういう状況があることは否めないが、放送の影響力の大きさを考えるとき、我々としてはいつも自戒の念を持っていなければならないと思う。これは選挙に限ったことではない。災害時はもちろん、経済や政治など様々な問題を情報番組が大きく取扱う。それ自体はもちろん悪いことではない。しかし、「政治に興味を持たせた」からといって、劇場型の扱いを全てよしとしてよいのか。影響力の強い放送が公共的な責任を自覚しなければ、国民・視聴者との間に乖離が生じる恐れがある。もう少し踏み込んで申しあげると、視聴者の信頼を失えば、そこに公権力が入る隙を与える危惧もある。各々の社で振り返り、反省すべきことは反省するのではないだろうか。
以上