一般社団法人 日本民間放送連盟

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会長会見

定例記者会見

【日 時】 平成17年11月17日(木) 午後3時45分~4時30分
【場 所】 民放連地下ホール

1.第53回民間放送全国大会について

  • 記者:11月1日、2日に大阪で開催された今年の民放大会について、その成果や感想を聞きたい。
  • 日枝会長:5年ぶりに東京圏を離れての開催であったが、地方の香りがするよい大会であった。時節柄をとらえて、「放送の公共性」「テレビとインターネットの融合」「ラジオのデジタル化」をテーマに、3つのシンポジウムを企画・開催したが、いずれも充実した内容で、反響もよかった。大会式典での会長あいさつでは、放送界が当面する課題として、①放送は、ハードとソフトが一体となって公共的使命を全うしていること、②そうした使命があるからこそ、我々は中継局の整備などデジタル化に一生懸命取り組んでいること、③放送と通信が「融合」する時代に、放送事業者としても、国民・視聴者に放送と通信の「連携」の成果を実感していただける新しいサービスを提示していくことが大事であること、④NHKについては、民放とNHKの二元体制によって、放送番組の多様性を確保することが重要であること、などを申しあげた。①では、わが国の放送は、50数年にわたってハード(放送設備)とソフト(番組)が一体となって国民の生命を守るライフラインとなり、あるいは豊かな放送文化を作り上げてきたわけで、今後もハードの整備とソフトの充実を一体として進めることで公共的・社会的責任を果たしてゆくことを会員各社とともに誓い合った。②については、アナログ放送のネットワークを50年かけて築いてきたのに対し、デジタル放送では2011年までの6年間で完成させるということであり、経営的には極めて厳しいが、関係者の皆さんと協力し合って中継局を整備し、国策であるテレビのデジタル化を進める決意を申しあげた。③では、放送と通信は決して対立しているわけではなく、役割が違うのであり、それぞれが補い合って国民・視聴者の目に見える形で新しいサービスを具体的に創出していくことが大事であることを申しあげた。④については、これまで財源も制度も異なる民放とNHKがうまく役割分担し、切磋琢磨しながら、世界に冠たる二元体制を築いてきたのであり、この二元体制によって、放送番組の多様性を確保することが重要であることを指摘した。今回の大会を通じて、出席者が、放送50年の歴史の中で今が大変な激動期にあるのだという認識を改めて共有できたものと思う。

 

2.日本放送文化大賞について

  • 記者:第1回日本放送文化大賞のグランプリ、準グランプリが決まった感想はどうか。
  • 日枝会長:大会式典の席上、第1回日本放送文化大賞のテレビとラジオのグランプリ、準グランプリ作品を発表した。私自身も発表当日まで審査結果を知らなかった。放送の質を高めることを目指して今年から始めた賞であるが、日本放送文化大賞によって、関係者の番組づくりの意欲がますます湧いてくるものと思う。テレビについては、今年はドキュメンタリー番組が多かったが、審査員の皆さんには、今後とも放送界全体に目を光らせていただき、番組ジャンルを限定せずによい番組を選考していただくようお願いしたい。受賞番組は全国で再放送することになっており、まもなく放送日が決まるものと思う。

 

3.NHK受信料をめぐる諸問題について

  • 記者:NHKの民営化について与党内にも議論があるが、日枝会長の考えはどうか。
  • 日枝会長:国会議員の有志による「NHKの民営化を考える会」ができ、NHKの民営化について話し合っていくとのことだが、先日、私も、自民党の小委員会に出席し、NHKに関する諸問題についてご質問を受けた。席上、私からは、日本の放送体制は、財源と制度が異なるNHKと民間放送が互いに切磋琢磨し、ハードとソフトが一体となって作り上げてきたことと、これが国民・視聴者にとっても望ましいシステムであると考えているので、こうしたことをご理解のうえ、諸外国の例なども見ながら議論していただきたい、と申しあげた。いろいろな議論がなされることは結構なことであるので、注目して行きたいと思っている。
  • 記者:「NHK新生プラン」についてどのような考えか。
  • 日枝会長:「NHK新生プラン」には、大きく分けて、①NHKだからできる放送の追求、②組織業務のスリム化、③受信料の公平負担への取り組み、の3つにポイントがあったと思うが、来年1月に新しい「経営ビジョン」が公表される予定と聞いているので、それを待ちたいと考えている。受信料不払いに対する「民事手続き」の問題については、これは橋本会長ご自身が仰っているように、「最後の最後」の手段であり、慎重の上にも慎重を期していく必要があると思う。却ってマイナスとなって、多様な番組を提供できている二元体制の崩壊へつながることにならないよう願っている。

 

4.スポーツ放送について

  • 記者:ワールドカップ・サッカーの放送計画はどうなっているのか。
  • 日枝会長:出場する全チームが今日にも決定し、12月9日にドイツで抽選会が行われると聞いている。我々の放送は、ジャパンコンソーシアム(JC)で準備を進めているが、民放の放送計画は抽選会が終わってから決まることになる。放送規模については、日韓共同開催の前回大会と同程度になるだろう。
  • 記者:トリノ・冬季オリンピックの放送計画についてはどうか。
  • 日枝会長:10月20日にトリノ冬季オリンピックの民放放送枠を発表した。地上波テレビでは、NHKの地上テレビが同じ時間帯にオリンピック放送を行わない“民放単独放送枠”として「開会式ハイライト」、「フィギュアスケート男子フリー」、「録画でのフィギュア女子フリー」など8枠を放送することにしている。全体的には、競技の生中継を中心とする編成としている。BSデジタル放送については、同一系列の地上テレビの同時サイマルおよび録画放送で対応する。放送時間数は、地上テレビ・約108時間、BSデジタル・約105時間であり、いずれも前回のソルトレークシティ冬季大会を大きく超える時間数である。民放各社でも、リポーターやキャスターの人選を進めているところだ。
  • 記者:来季のプロ野球放送についてはどのように見通しているか。
  • 日枝会長:阪神がセ・リーグ優勝を決めた試合、パ・リーグのプレーオフ、日本シリーズの各試合が、それなりに視聴率をとっている事実がある。繰り返して申しあげるが、球団の皆さんには、スポーツエンターテインメント面の努力、集客増大への努力、視聴率を上げる努力をしていただき、われわれ放送事業者も、いろいろなアイデアを出して、プロ野球全体を盛り上げていくことが重要である。来年はそうした面での再挑戦の年であると思う。

 

5.その他

  • 記者:年内最後の会見となるので、この1年の放送界を振り返っての感想を聞きたい。
  • 日枝会長:繰り返しになるが、放送と通信の「融合」が時代の流れになっているが、放送と通信にはそれぞれの役割がある。日本がIT国家として世界の最先端を進んで行くには、放送と通信が互いの特色をうまく調和させて、国民・視聴者の目に見える形で、具体的に新しいサービスを提示して行くことが大事である、ということ。これが、私がこの一年を振り返って最も感じた点である。来年は、それが具体的に出てくる年になるだろうと思っている。
  • 記者:公正取引委員会の広告取引の実態調査について。
  • 日枝会長:今回の調査は、テレビ局、新聞社、広告会社、広告主を対象としたものだが、調査報告書は、競争促進のために、テレビ局が広告会社の新規参入を促すよう配慮すると共に、広告会社の報酬について共通する基準を整備すること、などを指摘している。民放連でも、同報告書をテレビ全社に送付し、周知した。近く公取委の担当者による説明会を開く予定にしている。
以 上