会長会見
定例記者会見
【日 時】 平成18年1月19日(木) 午後3時~3時45分
【場 所】 民放連地下ホール
1.今年の課題と取り組みについて
- 記者:今年の民放連の課題と取り組みについて聞きたい。
- 日枝会長:今年は、放送のあり方について、民放とNHKのあり方や、放送と通信の連携、公共性、ジャーナリズム、地域性など、さまざまな視点から、国民的広い立場に立っての議論が行われる年となろう。放送事業者としては、放送には産業と文化の二つの側面があることを理解していただき、単なる産業論や経済合理性だけでなく、幅広い視点から議論していただきたい。繰り返し申しあげてきたが、日本の放送制度は、広告によって成り立つ民放と、受信料によって成り立つNHKが、非常にうまくバランスをとってきたため、豊かな放送文化を培ってくることができた。この両者のバランスが大事であるということを、われわれ自身も再認識すべきであり、また、各方面にも理解を求めて行きたいと思う。地上放送がデジタル化しても、24時間、放送を続け、国民の生命・財産を守るライフラインとしての機能には変わりない。こうしたことをベースにした議論をしてほしい。放送事業者自身も、放送に求められる公共性や、国民に信頼されるための自浄作用を改めて確認しながら、放送に取り組んで行かなければいけない。以上が大きくとらえた今年の課題だと思う。個別のテーマとしては、デジタル化の推進がある。12月にはいよいよすべてのテレビ放送事業者がデジタル放送を始める。トリノオリンピックやワールドカップサッカーもあるので、かなり普及が進むと見ているが、より一層の普及を図っていく必要がある。2011年にアナログ放送が終了することの国民・視聴者への周知は非常に大きな問題であり、今年はより本格的にパブリシティー、告知に取り組んで行く。電器店の店頭でも、「このテレビは2011年にこのままでは見られなくなる」というステッカーの貼り付けも始まっているが、放送事業者としても、D-PAを中心にPRスポットの制作準備を進めているところだ。デジタル化をきっかけに新しいサービスも具体化させなければいけない。4月には、ユビキタス社会の入り口である「ワンセグ」がスタートする。これをきっかけに新しいサービスが出始める年になるだろう。
2.放送事業をめぐる議論について
- 記者:「放送と通信のあり方に関する懇談会」の開催について。
- 日枝会長:国民・視聴者が疑問に思っておられることをオープンに議論していただくのは結構なことだと思う。
- 記者:NHKの民営化議論についてはどうか。
- 日枝会長:繰り返し申しあげているが、広告放送を財源とする民間放送と、受信料収入を財源とするNHKが、バランスをとりながら日本の放送文化をここまで発展させてきた。これからもNHKはNHKらしく、民放は民放らしくありながら、放送文化の向上に取り組んでいくということが大事だと考えている。
3.スポーツ放送について
- 記者:世界的スポーツイベントの放送権料の高騰について伺いたい。
- 日枝会長:スポーツイベントの放送権料が高騰していることは一致した認識だが、大変な交渉を経た結果であることもまた事実である。ジャパンコンソーシアム(JC)を組織して対応してきた結果、何とかやむをえない範囲で収まっていると思う。北京オリンピックまではJCで取り組むことをNHKとも決めている。その先についてはまだ決まっていないが、このJCで放送権を確保する方法しかないのではないかと思っている。
4.日本放送文化大賞について
- 記者:日本放送文化大賞の再放送への反響について。
- 日枝会長:第1回日本放送文化大賞については、昨年の民放大会でテレビとラジオのグランプリ、準グランプリ作品を発表した後、再放送の調整を進め、12月9日放送のテレビ・グランプリ番組を皮切りに、1月29日前後に各社が放送するラジオの準グランプリ番組まで、全国で順次再放送が行われている。テレビの2番組については放送が終わり、現在はラジオの受賞作品の放送が行われているが、民放連にも、番組をご覧になった皆さんからメールが届いている。数多くある番組コンクールのなかでも受賞番組の再放送を規定しているのはこの賞が唯一だと思うが、「再放送が行われる番組コンクール」ということに関しては、多くの方々から高い評価をいただけたのではないだろうか。なるべく見ていただきやすい時間に再放送することが、制作者の励みにもなるので、第1回としては成功であったと思う。
5.その他
- 記者:ライブドアが東京地検ほかの家宅捜索を受けたことについて。
- 日枝会長:個々の問題についてコメントは控えたい。結論を言う段階ではないが、一般論としては、明るみ出ていることが事実であるなら、大変由々しき問題であると思う。東京証券取引所で全銘柄の売買が停止されるという異常事態を引き起こすなど、経済的、社会的に重大な影響を与えたことを、当事者は深刻に反省すべきだと思う。企業には、法の遵守はもちろんだが、それ以前に、道徳観、倫理観をもって行動することが求められている。
以 上