会長会見
広瀬次期会長就任会見
【日 時】 平成18年3月29日(水) 午後0時30分~1時15分
【場 所】 民放連地下ホール
就任にあたっての抱負について
- 記者:民放連会長就任にあたっての抱負について。
- 広瀬会長:今、民放テレビ各社は、デジタルへの移行のためにあらゆる面で大変な作業を行っている。例えるならば、ちょうど“胸突き八丁”に来たあたりで、これを何としても成功させなければならない。それが同時に日本のu-Japan計画の大きな支えになるだろうと思う。アメリカやヨーロッパでは、日本よりも早くデジタル化がスタートしたものの、進み具合は決してはかばかしくない。私の役割は、デジタル化という大事業を、頂上近くまで持っていくということである。放送事業者の負担、受像機の価格など、まだまだ課題があり、机上の計画通り簡単にいくものではないし、この先も、放送事業者だけでは手に負えない問題が出てくるだろうと思う。エリアカバー率についても、ラスト5%というか、100%に至る最後の部分は、地方自治体や通信の事業者との協力が必須となる。こうした問題への取り組みが、これからの民放連のいちばん大きな仕事ではないかと覚悟している。デジタル化を成し遂げるためには、国民の皆さんにも政府にも、自治体にも通信の事業者にも、積極的に協力を求めていきたいと考えている。
- 記者:放送と通信の連携に関する議論について。
- 広瀬会長:放送事業者にとって非常に不幸であったことは、この問題がインターネット系の会社による放送局株の買い占めというようなところから急に浮上してきたことである。例えば、キー局から全国のローカル局に番組を伝送する、あるいは取材現場から本社に映像を送るというような基幹的な部分で、放送と通信は共同の作業しているのが実態であるにもかかわらず、ここに来て、テレビ番組を通信を利用して流通させる問題だけがクローズアップされたために、放送事業者だけでなく、番組プロダクション、あるいは権利者のみなさんも、議論の行方を警戒せざるを得なかった、というのが実情であったと思う。しかし、事の始まりがそうであったにしても、放送事業者としては、いつまでもそれにこだわらずに、これからは率直に話し合って行けば良いし、そうすれば、双方に利益になる部分が多々あるのではないかと感じている。
- 記者:民放とNHKとの関係について。
- 広瀬会長:私が民放連で長く放送計画委員長を務めてきたなかで、主たるテーマのひとつは、NHKと民放の二元体制をいかに維持し、いかに発展させていくか、ということであった。NHKには、分かりやすく言えば拡張主義的な面があり、ローカル民放の皆さんから民放連に対して、NHKが主催するイベントのあり方などについて厳しい考えが寄せられていたのは事実である。しかし、大きな目で見れば、日本の放送業界は、この二元体制の下でここまで成功してきたし、これからもこれを守っていく必要がある。そのためには、NHK自身がその役割や事業領域を見直し、整理して、視聴者・国民の皆さんに分かりやすい形での運営をやる必要がある。民放事業者は、今あるNHKに関する議論に一方的に与するつもりはなく、NHKの自主的な検討を見守りたいと思っているところだ。
- 記者:竹中総務大臣の「通信と放送の在り方に関する懇談会」について。
- 広瀬会長:政府の規制改革議論が、「放送の世界でもハードとソフトを分離すべきである」とか、「免許更新に当たって電波利用の入札制を導入すべきだ」といった極端な考えや、「放送事業者がコンテンツを囲い込んでいるから通信事業の発展が阻害されている」といった誤解にもとづいて進んでいることを心配しながら見ていたところ、竹中大臣が懇談会を設置し、議論を引き継がれた形となった。放送事業者、通信事業者の双方から事業の実態を十分にヒアリングしていただければ、極めて常識的な結論に落ち着くであろうと期待している。ただし、ここ数年、審議会等の議論の公開性というものが定着しつつあるなかで、この懇談会に関しては、若干違和感を覚えている。
- 記者:マスメディア集中排除原則について。
- 広瀬会長:ローカル局が十分な取材、よい番組作りを進めるためには、ある程度の財政的な基盤が必須である。キー局の電波を中継的に流しているだけ、やっとマスター設備が維持できるだけ、ということでは、存在意義を問われかねない。そのときに、純粋持ち株会社というのは、それぞれの放送事業者が自主自律の番組制作を維持しながら経営基盤を安定させてゆく方法として、経営の選択の幅を広げ、民放連としても結構なことだと考えている。そのうえで、ローカル局には、番組づくりや地域でのイベント活動などで、もっと地域との密着度を強めていただきたいと思う。
- 記者:地上波放送のハード・ソフト分理論について。
- 広瀬会長:地上放送のデジタル化も、テレビ事業者自身が、番組送出装置から始まり、可能な限り自ら中継局を整備することがあるから可能なのであると思う。ラスト5%のところでIPや衛星を使う議論が出ているが、放送事業者が必要と考えている条件がクリアできるのであれば、そうしたものの活用はあってしかるべきだと思う。そのうえで、その時のコストを誰がどのように負担するのか、ということについても議論が進めば、もっと分かりやすくなると思う。
- 記者:アナログテレビが多数市場に残ることで2011年のアナログ終了は無理との見方について。
- 広瀬会長:冒頭にデジタル化の作業が胸突き八丁であると申し上げたのはその点である。デジタルの電波は届いているのに肝心の受像機が普及しない、実際に見ているのはアナログだ、という状況が2011年まで続くということでは、大変な問題になる。そういうことの無いように、まだデジタル放送が始まっていない地域にも、「2011年7月にアナログ放送は終了します」「だから、受像機を更新するときには、デジタル受像機を買ってください」といったメッセージを確実に届けていかなければならない。
(了)