会長会見
広瀬会長会見
【日 時】 平成18年9月21日(木) 午後2時30分~3時30分
【場 所】 民放連会議室
1.放送制度をめぐる諸検討について
- 記者:「通信・放送分野の改革に関する工程プログラム」について。
- 広瀬会長:総務省から9月1日に公表された「通信・放送分野の改革に関する工程プログラム」は、政府が決定した「骨太の方針」をこれからどのように実現して行くのか、ということを示したものである。われわれは「政府・与党合意」と「骨太の方針」を支持しており、今回の「工程プログラム」についても異論はない。
- 記者:国際放送への民放の協力について。
- 広瀬会長:日本の国が考えていることや日本の文化を世界に発信していくことは、日本のメディアとして大事な役割であるが、検討に当たっては、国際放送が「どのような国の」「どのような人たちに」「何を発信して行くのか」から議論を始める必要がある。国際放送というのは大変コストのかかる事業であり、そこに参加するということになれば、われわれ民間企業としては採算性を考えざるを得ない。「2009年度から新組織による放送開始を目指す」とのスケジュールについても、現時点では慎重に対応する必要があると考えている。
- 記者:NHKの組織の在り方について。
- 広瀬会長:組織を「分離する」とか「分離しない」とかと言う前に、経営委員会の強化が必要であると思う。番組批評と経営責任は別個の問題である。NHK出身の方も入ってもよいが、とにかく経営委員会は常勤の経営や放送事業の専門家が任に当たる必要がある。それによって、NHKの番組の自立性、独立性も確保されることになる。
- 記者:コンテンツの外部調達について。
- 広瀬会長:「外部調達」の意味合いにもよるが、民放事業者は外部との共同作業を基本に番組を制作している。事実上は、すでに多くの番組を外部から調達している。議論の過程で期待されているレベルはすでに達成されているはずだ。
- 記者:NHK受信料の義務化について。
- 広瀬会長:負担の不公平感は無くさなければならないし、不払いが無くなれば受信料の額も今よりは下げられることを思うと、義務化ということをハッキリさせることは良いことだと思う。ただし、免除すべき方々には、きめ細かい配慮も必要である。
- 記者:放送・通信の連携に対応した総合的な法体系の検討について。
- 広瀬会長:向こう1年半程度かけて方向性を具体化し、必要な法案の提出は2010年の通常国会以降、ということである。「基幹放送の概念」や「県域免許の在り方」を明確にした上で、放送と通信を総合的に検討していただきたい。
2.地上デジタル放送の進捗状況について
- 記者:地上デジタル放送の進捗状況について。
- 広瀬会長:10月1日には、新たに8県で民放の地上デジタルテレビ放送が始まる。12月1日には、いよいよ全国展開となり、世帯数にして8割強の方々をカバーすることになる。その後が大変であるが、ここに来て、2011年までこつこつと自力で中継局を整備して行けば、現在のアナログ放送時の99%ぐらいまでカバーできる目処がついてきた。放送事業者の力の入れ様は皆さんの予想を超えるものではないかと思う。「残り1%弱」の問題については、政府や自治体に協力をお願いしているが、特に、道路沿いに敷設されている光ファイバーを利用する等のギャップフィラー等に期待している。
- 記者:受信機の普及について。
- 広瀬会長:放送事業者の役割である「電波を届ける」という部分に関しては、何とか目処がついてきた一方で、受信機普及の課題がある。放送事業者としては、デジタル放送のすばらしさを実感していただけるハイビジョン番組の拡充やPRスポットの放送、12月1日の全国展開を契機とした積極的なPR企画を進めるので、受信機価格の低廉化が進み普及が促進することを期待している。
- 記者:ワンセグの普及について。
- 広瀬会長:放送事業者が予想した以上に普及している。携帯電話は買い替えサイクルが短いためであろう。
- 記者:デジタルラジオの事業化について。
- 広瀬会長:当事者の皆さんは、極めて真剣に事業化を模索しておられる。総務省としても、2011年のテレビの完全デジタル化後の周波数割当について、真剣に考えるべき時期に来ていると思う。
3.その他
- 記者:民放BSの在り方について。
- 広瀬会長:経営環境は依然として厳しいが、ようやく単年度黒字を狙えるところまで来た。地上波と比較して編成の自由度が高いことや、制作者の知恵と努力、新たなスポンサーの開拓等によって、スポーツ、映画、旅紀行、ドキュメンタリーなどの番組をじっくり見ていただけるメディアになっている。経営的には、地上波との一体性をめざす方向があるにしても、編成面に関しては、地上波の番組とは差別化されることで視聴者の皆さんの支持が拡大して行くのだと思う。2011年以降、新たに利用できる7チャンネルの全部を一斉に利用しよう、との構想があるが、過当競争を招き、放送全体の活力を失わせるもので、危惧している。
- 記者:新政権の誕生について。
- 広瀬会長:放送が政治を劇場化しているとの意見があるが、現政権は大変劇的な政治を行い、国民の政治への関心を高めた。放送事業者としては、今後とも政治に対する「不偏不党」「中立公正な立場」を守りながら報道して行くつもりだ。
- 記者:デジタル放送の「コピーワンス」の見直し議論について。
- 広瀬会長:「コピーワンス」の運用は一番良い方法であるとの考えで踏み切ったものである。家庭内で録画機を操作する際に録画した番組が失われてしまうような事例があり、放送事業者に批判が向けられているが、機器の改善で解決できる問題なのではないか。番組に関わる権利者の皆さんも含め広く議論が進められており、妥当なところに落ち着くのではないかと思う。
- 記者:放送番組のブロードバンド配信について。
- 広瀬会長:放送事業者が一番大事に考えていることは、番組に関わる権利者の皆さんの意向や権利保護である。放送事業者と権利者の皆さんとの間の信頼関係が損なわれ、番組制作に支障が出るようなことがあってはいけない、と考える。
(了)