会長会見
広瀬会長会見
【日 時】 平成18年11月16日(木) 午後2時30分~3時30分
【場 所】 民放連地下ホール
1.民放大会を振り返って
- 記者:民放大会の感想について。
- 広瀬会長:今回の民放大会は、昨年来の放送と通信をめぐる議論を総括した大会であった。地上放送は、一連の議論の結果、基幹放送と位置づけられ、通信とは一線を引いた形となっている。放送と通信の総合的な法体系づくりの議論が始まっているが、今後の議論においても地上放送は基幹放送と位置付けられるものと思う。基幹放送というのは、民放事業者の現状、例えば地域免許制度を今後とも維持することと同時に、放送をあまねく普及させる、といった努力義務を課すということで、放送事業者の役割と義務が明確になっていくということである。大会では、そうした基幹放送としての役割をキチンと果たしていくことを宣言したつもりである。もう一つは、12月1日に47都道府県のすべてでデジタル放送が始まるという、大変歴史的な時期であることから、スムーズにアナログからデジタルへの移行を進めていくための民放事業者の努力目標と、自助努力ではできない部分については政府・自治体と一緒にやって行きましょう、との呼びかけを行った。地上テレビ放送のデジタル完全移行に向けて今後やっていかなくてはならない事柄はまだまだ多いので、それを一つずつ挙げながら頑張って行こうという決意を申しあげたつもりだ。
2.地上デジタル放送の全国展開と普及について
- 記者:地上デジタル放送が12月1日に全国展開することと今後の普及見通しについて。
- 広瀬会長:2003年12月に関東、中京、近畿の三大広域圏で放送がスタートして以来、ちょうど3年で全国展開の日を迎えることができた。放送事業者はこの3年間、この日に向かって邁進してきたといってよい。12月には、80%を超える世帯の方々にデジタル放送を受信していただけることになるが、親局と大規模な中継局の建設は未だ1000局にも満たない。残る1万以上の中継局で残り1割強の世帯をカバーするということは、大変地味であり、コストのかかることではあるが、放送事業者は2011年までには自力で99%まで普及を進めていきたいと思う。残る1%については、ここはムリだ、というようなことを早めに政府、自治体に報告し、一緒になって進めていく必要がある。最後まで放送の波が届かないまま、何の前触れもなく2011年7月にアナログ放送が終了する、というようなことがあってはならない。視聴者の皆さんが色々な場面でデジタル放送に触れていただいた結果、デジタル化の意義もこの3年で浸透した。放送事業者は視聴者の皆さんを失望させてはいけないし、なるべく早い時期に受信機を買いやすい価格にしていただき、アナログ受信機同様の1億台は厳しいかもしれないが、デジタル受信機を各世帯に必ず1台は普及させるとして、その倍ぐらいは普及させたいというのが念願である。
- 記者:BSデジタル放送の展望について。
- 広瀬会長:2006年度上半期の各社の収支をみると、2局が黒字に転換している。通年では、2ないし3局が黒字となるかもしれない。2000年の開局以来、5年強でこうした状況を迎えられた訳で、BS事業者のご苦労を評価したい。普及も2000万件の大台が間近である。2000万といえば、存在価値のあるメディアとして充分な規模であり、実際に番組を見ても、独自番組の制作も増え、地上波とは違った道を探り当てたような気がする。ただし、2011年以降、新たに利用できる衛星用の7チャンネルの全部を一斉に利用する、との構想については、過当競争を招き、放送全体の活力を失わせるものになると危惧している。
3.NHKをめぐる動きについて
- 記者:NHKに対して放送法による放送命令が行われたことについて。
- 広瀬会長:放送における表現・報道の自由は、憲法や法律に書いてあるから守ってもらえる、というものではなく、侵害があればそれに抵抗しながら、放送事業者自身が守っていくべきものである。一方、NHKの音声の国際放送に関しては、放送法33条で政府が放送実施を命じることができることになっている。どのような手続きを採るのか、政府がどのようにコスト負担するのか、についても規定がある。問題は、国際放送に対するこうした特別の制度が妥当なものであるのか、という制度上の問題と、その場合の仕組みとして、政府が勝手に命令できるわけではなく、審議会で命令の妥当性を審議したうえで、命令が行われるとの運用上の問題である。私は、今回の場合、電波監理審議会はNHKに対して、NHKがこれまでにどのような拉致に関する放送を行ってきたかをキチンと質したうえで、命令の妥当性を判断すべきであった、と思うし、国民に対して納得できるような説明を行うべきであった。また、電波監理審議会は「命令の必要なし」と答申すべきであったと思う。この問題に関しては民放各社トップの会見でも慎重であるべきことが表明されており、私も全く賛成である。私としては、それに加えて制度、運用上の問題や、こうした命令を好ましくないとするのであれば、海外邦人の生命・財産に危険が及ぶような事態などを想定した場合に、政府が国営の放送局を持つべきかどうか、といった点も合わせて検討してみる必要があると思う。NHKの幹部が役所に招かれて要請を受けるといったことや、要請に対してNHK側もイエス、ノーを表明しない、といったことが続くと、いつまでたっても編集の独立がハッキリしない。なし崩しで影響力が発揮されることが長い目で見て一番悪いことと思う。映像国際放送に関していえば、民間の参加も念頭に置いた議論の最中に「命令」が行われたことで、映像国際放送にもそうした命令の仕組みが入ってくると、放送事業者は視聴者の皆さんから余りにも大きな誤解を常に受けることになり、こうした問題を内在するシステムには逃げ腰にならざるを得ない。今回の事例をもとに大いに議論してみたい。
- 記者:NHKが受信料の民事督促手続きを行う方針を表明したことについて。
- 広瀬会長:できる限り今の受信料制度の範囲内で、信頼回復をもとに収納率をあげていこう、という考えの下での判断であると思う。法的措置が不要であるならばそれに越したことは無い。不払い、未払いによって受信料が高くなっていることや莫大な収納費用がかかる不合理が解消される必要がある。NHKは「皆さんに受信料を支払っていただければ受信料をここまで引き下げます」というようなメッセージを、支払っている方、支払っていない方の両方に、数字でキチンと明確に示していく必要がある。「割増金」の制度化なども支持できない。
4.その他
- 記者:個人情報をめぐる状況について。
- 広瀬会長:内閣府の国民生活審議会が取りまとめた『個人情報保護に関する主な検討課題』に対して意見募集が行われたことから、民放連も意見を提出した。個人情報保護法が全面施行されて以降、社会全体が不健全に匿名化していると思う。例えば、不祥事を起こした公務員や事件・事故の被害者の氏名が公表されないなど、国民が知るべき情報が個人情報保護を理由に隠される出来事が相次いでいる。「過剰反応」の実態を踏まえ、法律の内容と運用の両面から見直しが必要であると思うし、この点は新聞界も同様の認識であると思う。
(了)