会長会見
広瀬会長会見
【日 時】 平成19年1月18日(木) 午後2時~3時
【場 所】 民放連3階会議室
1.今年の民放連の課題と取り組みについて
- 記者:今年の民放連の課題と取り組みについて。
- 広瀬会長:いろいろ課題があるなかで、特に2つ申しあげる。一つはデジタル化に関するものである。昨年12月に、すべての民放テレビ局でデジタル放送が始まり、いわば、第1フェーズが終わり、第2フェーズに入った。そのなかでの課題は、まず、デジタル波の100%カバーに向けて頑張ることである。親局からの電波で全国の84%の世帯がカバーできた。ちなみに、去年の12月1日までに作った親局や大規模中継局は約1千局である。残り10%強の世帯をカバーするためにこれから作らなければならない中継局は約1万局であり、大変な作業となる。デジタル化に関しての2番目のテーマはデジタル受像機の普及である。第1フェーズではなかなかそこまでは手が回らなかったが、これからは電波が届くだけではなく、どれだけの家庭で実際にデジタル放送の番組を見ていただけるかの勝負になってくるものと思う。地上デジタル放送全国会議の『第7次行動計画』にもあるが、当面目標となる普及台数は、全世帯普及を想定して5千万台であろう。経済的弱者への支援などについても、これまでは議論が行われてこなかったが、2010年、11年になって慌てないように、放送事業者が率先して問題提起していく必要がある。地上テレビ放送のデジタル化は国のIT戦略の大きな柱であり、国として負担すべき部分もあると思うし、こうした点は国としても積極的に対応していただけるものと思う。デジタル化に関して、もう一つ特に大きな課題は、政府が「残り1%」の条件不利地域のカバーに関して、公的助成を19年度予算案に組んだことへの対応である。親局、大規模中継局、中小の中継局と整備を進め、そこで残るのが「残り1%」、つまり最後に手がけるテーマであると思ってきたところ、早々と予算が措置されることになった。予算の性格上、年度内に使い切らなければならないものと思うが、この問題にも早めに着手しなければならない。
デジタル化とともに今年のもう一つのテーマは、放送法の改正への対応である。放送と通信の融合法制の方は「将来のテーマ」になったようだが、持株会社を認めることや、民放経営に関わるいくつかの重要な事柄が提起されている。一連の議論の結果、基幹放送と位置づけられた地上波放送の姿が、どのような形で法律に実際に盛り込まれて行くのかを充分注意して見て行きたい。マスメディア集中排除原則を緩和して持株会社制度を導入することについては、経営の選択肢を広めるものとして歓迎するが、これまでの体制を大きく変えて行くことにもなる。法改正もさることながら、そういう事態を受けて、放送事業者がどのように対応して行くのかを、民放連としても充分に関心を払って行きたいと思う。持株会社化を認める以上は、放送局の番組制作力、情報提供力がアップする形で制度を活用しなければならないし、それが放送界に新たな競争と活力を生むものと思う。
2.NHK改革をめぐる議論について
- 記者:菅総務大臣が受信料の義務化とあわせて額の引き下げを求めていることについて。
- 広瀬会長:私自身は、これまでにも「NHKの運営コストを、結局は受信料を支払っている人たちだけが負担することになる不公平は解消した方が良い」と申しあげてきたし、「支払の義務化で収入が増え、徴収コストも節約できるようになるのであれば、その分は視聴者に還元することを、NHK自身がメッセージとして発信すべきである」とも申しあげてきた。今でも、「円満に受信料が徴収できる時期になれば、その分は還元できるのではないか」と思っている。NHKとしても「すぐに引き下げます」とは言えないと思うので、言い方としては「今後ここまで徴収が進めば、ここまで引き下げます」ということを言えば充分であろうと思う。いま一番不幸なことは、NHKが自らメッセージを発しないことで、改革議論に対して「あれもいや、これもいや」と言っているように世間に受け止められている点ではなかろうか。
- 記者:アーカイブスの有料配信解禁について。
- 広瀬会長:民放事業者も、過去の番組を有料配信することの試行、研究を行った結果、アーカイブスの構築・維持や配信、権利処理の費用を勘案すると、とても利益が上がるような事業ではないことを経験している。おそらくNHKも、この分野で黒字は見込めないのではないか。「受信料で作られた番組であるのだから活用せよ」というのは理解できるが、「有料とすべきか、無料で良いか」といえば、私としては、有料とするのが必然であるように思う。配信による赤字分を、皆が負担した受信料で補填するのではなく、費用は費用として別に徴収する方が良い。民業圧迫云々ということから申しあげるのではなく、放送番組をできるだけ広く提供してゆくためには、アーカイブスの利用者にもコストを負担していただくのが良いのではないか、との考えからである。
3.その他
- 記者:北京オリンピックへの対応について。
- 広瀬会長:NHKとともにジャパンコンソーシアム(JC)を組織して対応を進めている。一番残念であるのは、競技スケジュール問題について、ご存知のとおり、IOCが多くの決勝戦を午前中に行うとの結論を出したことであり、我々としては、大変遺憾であると思っている。引き続き、他国の放送機関とも連携して善処を要望していくことにしている。
以 上