会長会見
広瀬会長会見
【日 時】 平成19年9月20日(木) 午後2時15分~3時10分
【場 所】 民放連 地下ホール
1.地上デジタル放送の普及について
- 記者:民放テレビのデジタル化設備投資額が1兆円を超える見通しであることについて。
- 広瀬会長:民放連の経営委員会が民放全社のデジタル化設備投資を調査した結果、総額が1兆円を超えた。2003年9月に試算した「総額8082億円」から大きく増えたが、最新の実態を反映した数字である。中継局については、置局プランが精査され、効率的な置局計画が練りあげられたおかげで、2003年試算と比べて3/4に減少したが、送出、制作設備の投資が大きく増えている。2006年度は、27のテレビ社で赤字決算となったが、今後、2007年度、2008年度にかけて一番苦しい時期を迎えることになりそうだ。しかしながら、放送事業者として「デジタル放送のカバー率を自力で99%まで実現させる」決意を表明しており、その努力を着実に果たしていくし、今回の調査結果でそれが揺らぐものでもない。
- 記者:「市町村別ロードマップ」と難視聴世帯への対応について。
- 広瀬会長:「市町村別ロードマップ」は、総務省と全国地上デジタル放送推進協議会(全国協議会)が作成したもので、放送事業者ごとに地上デジタルテレビ放送が視聴可能となる時期を市町村別に示したものである。おそらく諸外国には例が無いであろう、具体的で緻密なデータが出てきたことは画期的な成果であり、国、地方自治体のご協力に心から感謝している。ここからいろいろな数字が読み取れるが、放送事業者としては、ロードマップに書かれた目標の達成に、自信を感じているところだ。2011年時点でデジタル放送を視聴できない世帯が約60万世帯に及ぶことが明らかになったことについては、どのような解決方法があるのかを国、地方自治体と協議していきたい。
2.緊急地震速報への対応について
- 記者:気象庁の緊急地震速報への対応について。
- 広瀬会長:前回7月の会見では「心得などの認知度が低い中では、民放連としては慎重にならざるをえない」と申しあげた。しかし、その後、緊急地震速報の認知度も徐々に上がってきており、各社が前向きに準備を進めている姿勢を示すため、8月29日に報道委員長コメントを発表した。現在はスポンサーや広告会社への説明や、速報の具体的な伝え方などの詰めの作業に入っている。そうした矢先に、気象庁が気象業務法を改正し、緊急地震速報を「警報」に位置づける動きを見せている。法改正は流動的であるが、法制化に伴う論点の整理も並行して進めていくことにしている。いずれにしても、民放には「速報」を放送する義務は無いが、各社では10月以降、体制等準備が整い次第、放送の公共性を優先させる立場から、順次、実施することになる。
3.地上デジタルテレビの区域外再送信問題について
- 記者:地上デジタルテレビの区域外再送信問題について。
- 広瀬会長:8月に、福岡県の民放テレビ4社に対して、大分県のケーブルテレビ事業者4社がデジタルテレビ放送の区域外再送信を行うことについて同意するよう求めた「総務大臣の裁定」が下されたことはご承知のとおりである。有線テレビジョン放送法が制定された当時に比べて多局化が進んだ今の時代に、同法の在り方を議論するうえでは、長野県のケーブルテレビ事業者が東京キイ局の再送信を求めている裁定申請が正念場となる。情報通信審議会や総務省内の検討には、引き続き、民放事業者の立場をはっきり示していこうと思う。法の矛盾を調整、整理していくのが国の仕事であるが、長野の事例をめぐって議論が進めば、自ずと良い結論が出るものと考えている。
4.放送法をめぐる議論について
- 記者:放送法をめぐる議論について。
- 広瀬会長:関西テレビ放送による番組問題が明らかになって以降、民放は、自浄能力を発揮すべく、第三者機関である「放送倫理・番組向上機構」(BPO)に、外部有識者からなる「放送倫理検証委員会」を新たに設置した。民放各社は、同委員会の審議・審理への協力や、見解・勧告を尊重する義務を負い、万一の場合には、BPOは当該放送事業者に対して、行政処分よりも厳しい対応を迫ることになる。現時点では、政府も今後の対応を決めていないと思うが、放送事業者としては、行政処分に係わる文言が残る放送法の改正は全く不要であるという考えに変わりは無い。
- 記者:情報通信法構想への対応について。
- 広瀬会長:現在の通信・放送法制を情報通信法(仮称)に一本化し、これまでの縦割りの体系から、コンテンツ・プラットフォーム・伝送インフラの3つのレイヤー(階層)構造に転換する方向で検討が行われている。法体系の変更が目指すものや、法体系の中身そのものがはっきりしないので戸惑っているところだ。分かりやすさの点からもビジネスの実態からも、一本化にはメリットが無いし、期待もしていない。研究会からのヒアリングにも応じたが、法体系を変更しようと言うお立場の皆さんは議論が抽象的であり、早く具体的な中身を示していただきたい。
5.その他
- 記者:電波利用料について。
- 広瀬会長:放送事業者の電波利用料を増額すべきとの議論は、携帯電話とのバランスの観点から出ているものと思う。総額1兆円におよぶデジタル化の設備投資の負担が最も大きい時期の負担増には、強く反対の意思を表明していることは、皆さんもご承知のとおりである。総務省とは、双方がそれぞれの考えを主張し合ったのみであり、年末の政府予算決定時に、一気に決まる状況ではないか。
- 記者:BPO・放送倫理検証委員会の初めての委員会決定について。
- 広瀬会長:世間の関心が非常に高い中での委員会の真剣かつ厳正な取り組みに、感謝と敬意を表したい。決定は、大変厳しい、全てに行き届いた内容であったと思う。放送倫理検証委員会のシステムが世の中に定着し、発展するためには、世間の皆さんがいろいろ論評されることが必要であり、したがって、当該社が決定をどのように受け止められたかを、私がここで申しあげることもない。
以 上