会長会見
広瀬会長会見
【日 時】 平成21年7月16日(木) 午後3時15分~3時55分
【場 所】 グランドプリンスホテル赤坂
1.地上テレビ放送デジタル化の進捗状況について
- 記者:アナログ停波まで残り2年となったが、現時点の意気込みをお聞きしたい。
- 広瀬会長:日本の場合、テレビ放送のデジタル化はほぼ計画どおりうまく進んでいると思う。米国でのアナログ停波直前にFCCの調査団が来日した際に、“日本のデジタル化計画は、国民の認知度や各種対策など、あらゆる面で米国より進んでいる”との感想を述べていた。あえて懸念される点をあげるとすれば、①都市部の集合住宅の受信対策、②地デジ対応受信機の普及に関する地域間格差、③経済的弱者への対策の遅れなどであろう。①は特に関東広域圏において、UHFアンテナを設置していない集合住宅が相当数あることから、その対策が喫緊の課題である。②については、沖縄、岩手、長崎などの普及率が低いが、沖縄の場合は佐藤総務大臣が現地を訪れ、在沖縄のテレビ社と意見交換をして、原因究明を行い、対策を練っている。③については、個人情報を正確に集められるか、また、これを漏えいさせないような仕組み作りや簡易チューナーの製品化など、解決すべき課題がある。全国的にデジタル化が遅れる地域のないよう、できることはやっていきたい。
2.通信・放送の総合的法体系について
- 記者:「通信・放送の総合的な法体系の在り方 答申(案)」が発表されたが、これについてどのように評価するか。また、ハード・ソフト分離の制度により懸念されることはあるか。
- 広瀬会長:答申案には、「免許・認定にあたり、ハード・ソフト一致を希望する事業者を優先する」と明記されており、放送事業者の意向を重視する制度になっている点は評価したい。一方、これまでハード面については、免許制度のもと緻密に点検が行われてきたが、ソフトを分離した場合にこれをどのように点検するのかはっきりしていない点には懸念が残る。現行放送法では、第1条および第3条により「放送による表現の自由」などが保障されており、これらは新しい法体系に変わった後も担保してほしい。また、ケーブルテレビ区域外再送信問題については、民-民協議を前提に解決を図っているが、大臣裁定に持ち込めば全て認められてしまうような現在の硬直した制度は問題だと思っている。答申案は総合的な法体系に必要な最小限の範囲に止めた感があるので、法制度化の状況を注視し、場合によっては、民放連としてあらためて意見を表明しなければならない。
3.民放の決算状況について
- 記者:民放各社の株主総会が終了し、決算が出そろった。非常に厳しい状況だが、この結果をどう思うか。
- 広瀬会長:民放連会員社の平成20年度決算は、全201社合計で売上高が前年比4.9%減、経常利益は45.2%減と大幅な減収減益となった。また、損益を当期純利益でみると、全体の半数以上の108社が赤字となった。デジタル設備投資がどのように影響するか心配していたが、これは予想を超える数字だ。しかしながら、今後について私は必ずしも悲観すべきではないと考えている。メディアの中でももっと落ち込みの激しい業種は沢山あり、むしろ100年に1度の不況の中で“5%程度で済んでいる”とも考えられる。2009年度に入ってからのスポット広告の数字を月次ベースでみると、対前年の減少幅は月ごとに改善してきている。これは「エコポイント」など、政府の消費振興策の効き目があったのではないかと考える。あまり先のことを心配するよりも、景気が回復したときに備えて番組づくりをきちんとしていくべきと考えている。