会長会見
広瀬会長会見
【日 時】 平成23年3月17日(木) 午後3時30分~4時15分
【場 所】 グランドプリンスホテル赤阪 別館5階「ロイヤルホール」
東北地方太平洋沖地震について
- 記者:今回の震災についての所感をうかがいたい。
- 広瀬会長:過去に「阪神・淡路大震災」の経験もあるが、今回の震災は被災エリアの広さ、避難しておられる方々の人数などが格段に大きい。本来であれば、被災者の救済に全力をあげられる時期にきているが、福島の原発事故が起こったため、それが滞っている。放送事業者も不休で情報収集を行い、情報提供に努力しているが、被災した中継局があったり、停電で放送が見られなかったりで、情報が被災者に十分に届かないところもあり、大変残念な状況だと思う。改めて津波のような災害に対する原子力発電所の弱さを痛感した。阪神・淡路の際は、ラジオがライフラインとして大変役立ったが、今回は、携帯電話は輻輳で十分に役立たなかったようだが、ワンセグが活躍したと聞いている。今後は、データ放送なども役に立つものと思う。
- 記者:民放各社のCM枠再開についてどう考えているか。
- 広瀬会長:震災当日から2日間は全くCMなしで報道した。商業放送である以上、どこかの時点でCMを再開するかについて考えざるをえない。視聴者から民放連にも、“元気が出るように通常の番組を放送してほしい”とか“震災報道を輪番制にできないのか”など、さまざまなご意見があった。14日からはACジャパンの公共広告も含めてCMが放送されている。これについては賛否様々だ。個人的には、ある時期からは、通常の番組と災害報道を両立していくのが望ましいと思っているが、原発の動きが激しいので、目が離せない。これが安定してくればメドが立ってくるのではないか。
- 記者:放送対応として、阪神・淡路の際の教訓は活かされたのか。
- 広瀬会長:大災害というのはそれぞれに状況が違うので、過去の経験を生かしつつ、今回は今回なりの対応が必要だ。特に、原発事故という大きな特徴があるので、過去の経験云々ということではないように思う。
- 記者:民放連で被災地への義援金を贈るとのことだが。
- 広瀬会長:被災地に対し1億円を贈ることとした。なるべく早くお贈りしたいと考えており、詳細を調整しているところだ。
- 記者:燃料の確保などの問題もあるが、被災者への情報提供のため、民放連内部で支援体制を組んだり、政府への支援を求めていくような動きはあるのか。
- 広瀬会長:道路が規制されているので、民放連から政府に、東京から被災地の放送局への燃料輸送について要請した。重要なのは、被災地の末端にまで情報を伝えるべく放送手段を確保することだと思う。
- 記者:中長期的に電力不足が続くと、放送が困難になるのではないか。震災以前の状態を維持できるのか。
- 広瀬会長:節電のために深夜番組をやめて、電力消費を抑えたらどうか、との意見もあるが、全国的にみれば、何年間にもわたって電力不足が続くようなことは心配していない。
地デジへの完全移行への影響について
- 記者:今回の震災が地デジ完全移行に影響することはないのか。
- 広瀬会長:震災や津波によって中継局が倒壊した事例はなく、停電による一時的な機能喪失が大半で、それも電力供給の再開で回復しつつあると聞いている。昨日、地デジ関係者の打合せ会合があったが、ここにきて大変デジタル化対応が進んでいるとの報告があった。完全移行の条件は十分に整ってきたと思う。会合では7月の完全移行に向け、粛々と進めていくことを確認した。
- 記者:今回の震災で被害を受けた方々はデジタルテレビの購入が困難だと思うが。
- 広瀬会長:被災した方々には、色々な形で政府の施策が講じられる。今までも弱者対策として、チューナーやアンテナの支給等が行われてきたが、被災者へのデジタルテレビの贈呈なども政府に求めて行きたいと思う。
- 記者:今回の震災があっても、7月24日に一斉にデジタル移行する方針を変えるべきではないという考えか。被災地を別枠にするような考えはあるのか。
- 広瀬会長:我々は、デジタル化するために十分な環境を作っていくことを目標にしており、今、“あの地域は無理”という理由もない。3県の被災地に対して費用や人手を投入して、地デジへの切り替えができる環境を整えるべきだと思う。
- 記者:7月24日が再考される余地はあるのか。
- 広瀬会長:被災地だけを残して先に行きましょうということではなく、全国一斉が大原則。被災地に対しては、最大限の支援をし、完全デジタル化移行の環境をつくるのが第一。
- 記者:7月24日の完全移行の期日を延ばすことはないのか。
- 広瀬会長:難問とみられた「ビル陰」「集合住宅」「新たな難視」といった問題も解決策が見えている。今回の問題も 今からダメという前提に立つべきではない。
ACの公共広告CMについて
- 記者:ほとんどのCMがACの素材になっている。視聴者からのクレームが多いようだが。
- 広瀬会長:民放連の内部にも、ACのCMの種類が少ないのではないか、多様性が必要とか、CMの最後に入っている「AC」という音はあまりよくないのではないか、といった意見があった。一方、AC側からも民放連に対し、局側で音を消してほしいとの要請がきている。ACのCMは、通常のCMを再開する前の過渡的なものであり、これを足がかりにこれから徐々に震災前の状況に戻っていくものと考えている。そのためにも、原発問題に早くメドが立って欲しい。
- 記者:原発問題が長期化すると、民放局の経営にも影響するのではないか。
- 広瀬会長:円高や電力不足による経済活動の停滞、消費の低迷といった状況をいつまでも続けているわけにはいかない。何かきっかけをつかんで、国民の気分を明るくするような番組を放送したいと思う。そのためには、誰かがふんぎりをつけなければ前に進まない。そのお役に立つのであれば、ある意味で放送は大胆であってよいと思う。ただし、被災者への情報をきちんと伝えることが前提である。