会長会見
広瀬会長会見
【日 時】 平成23年5月26日(木) 午後3時45分~4時30分
【場 所】 明治記念館 1階「末広」
東日本大震災の影響について
- 記者:震災による民放の被害状況はどうか。
- 広瀬会長:被害の大きかった岩手、宮城、福島の被災3県の設備被害の合計は9億2千万円、この他に震災被害のあった青森、茨城、栃木、千葉県の被害も合わせると9億4千万円に達する。ただし、流失した中継局以外は既に復旧しており、放送への影響はない。今回の震災で痛感したことが2点ある。ひとつはプラス面で、ローカル局は社員数も限られる中で取材力が危惧されたが、ただちに各系列局から200名規模の応援がかけつけた。まさに阿吽の呼吸で体制が組まれたことだ。一方で、放送局の自家発電機の燃料枯渇の問題があった。通常の備蓄量では間に合わず、他県から補給しようとしたが緊急措置としての車両通行は認めてもらえなかった。燃料対策については、放送に限らず、病院や自治体でも困惑したと思うので、国としても考えてはいかがかと思う。反省材料として、今後に活かしたい。
- 記者:営業や決算への影響はどうか。
- 広瀬会長:2010年度決算はまだ出揃っていないが、震災の発生が年度の最後だったこともあり、目下の数字でみると概ね良好である。特に2月までは前年に比べ2桁の伸びで、リーマンショックで落ち込んだ分を回復できるのではないかと考えたが、震災でそこまでには至らなかった。ただ利益ベースでは売上以上に回復していると思う。一方、4月以降は大変厳しい状況だ。例えば被災地の4月のスポット投下量は前年の半分から60%台で、いかに打撃が大きいかと心配になる数字だ。東北にとどまらず、多くの地区でマイナス10~15%、関東でもマイナス10%程度で、5月はさらに厳しいということで、今後、悪化することを覚悟しなければならない状況だ。
地上デジタル放送への移行について
- 記者:被災3県のアナログ放送延長が決まったが、具体的な対応方法は。
- 広瀬会長:延長するアナログ放送について、民放はデジタル放送を変換して放送するという方法を選んだ。あえてアナログ放送を延長するという政府の要請に応えるので、その支援を政府に申し入れている。延長経費を精査したところ、最長1年間延長した場合、放送設備の改修、保守、ランニングコストなどで4億円程度かかる見込みだ。
- 記者:被災局の負担軽減策はどのようになっているのか。
- 広瀬会長:自助努力だけで乗り切れる状況ではないので、例えば、取材のほかにも、番組制作の委託など系列をあげた支援が考えられる。自治体や電力会社には生活情報を出稿することも考えていただきたい。1日も早くアナログ放送を終了して、通常の環境を作ることが重要で、その支援もお願いしている。アナログ放送の1年延長は長過ぎる。年内終了を目標に政府と折衝をしていきたい。
- 記者:3県以外の44都道府県のデジタル化進捗状況はどうか。
- 広瀬会長:被災3県を除き、4月24日からPRを再開し、各地の活動も活発になってきた。デジタル化は大きく進捗している。4月末の戸建住宅やビル陰共聴施設、集合住宅の地デジ未対応世帯は約70万まで減少した。その8割が関東ブロックなので、これからは関東を中心にPR強化を行う。これまで、23区内や市街地は電波状況がよく、いつでもデジタル化対応が可能なので、そうした世帯についてはPRだけで進展するとの考えもあったと思うが、対応が遅れている。キー局で企画して実行すればPR強化を機動的に行える。今週(5月23日~29日)を強化ウィークとして、各キー局はそれぞれ合計で10分間のアナログ放送のみのPRを実施している。
政府の節電対策への対応について
- 記者:政府から夏期の節電対策として15%削減が示されたが、民放はどのように対応するのか。
- 広瀬会長:在京キー局はいずれも契約電力500kW以上の大口需要家だが、15%削減はほぼ実現できる見込みだ。大きなイベントを計画している放送局もあるが、自家発電で賄うことでクリアする予定と聞いている。東北電力管内にも大口需要家に該当する放送局があるが、電力のほとんどを放送の維持に使っているので、15%削減が難しいところもある。いずれにせよ、各局で対応していくことになる。
- 記者:「家庭の節電対策メニュー」には、必要のないときにはテレビを消すとあるが。
- 広瀬会長:その一方で、政府の節電対策には、必要な情報を伝達するように書かれている。私たちは自主判断で情報提供をしていく。また、政府は6月から電力使用制限の緩和要望を受け付けるが、放送メディアとしては緩和を要望することなく、節電の努力をしたい。