会長会見
井上会長会見
【日 時】 平成26年9月18日(木) 午後2時~2時30分
【場 所】 民放連会議室
オリンピックのメディア権などについて
- 記者:オリンピックについて、2018年の平昌(ピョンチャン)大会以降、東京と開催地未定の2大会を含めた4大会のメディア権を一括して獲得した理由、および1100億円という金額についての評価をうかがいたい。
- 井上会長:1984年のロサンゼルス大会以降、NHKと民放でジャパン・コンソーシアム(JC)を組むことで、他国に比べ、より多くの競技を視聴者に提供できていると思う。この4大会もJCを組んで対応することで、視聴者の期待に応えることができると考えている。メディア権料は、平昌と東京は時差がないこともあり、これまでに比べると破格の金額だが、日本選手の活躍を余すことなく伝えるために、大きな決断をした。早く放送体制を整え、セールスにも好影響を与えることを期待している。
- 記者:ワールドカップサッカー・ブラジル大会のセールス結果はどうだったのか。
- 井上会長:時差の関係や日本代表チームが予選リーグで敗退したこともあり、視聴率的には厳しい結果であったが、決勝戦の視聴率をみると早朝にも関わらず高く、依然としてコンテンツとしての魅力は大きいと感じている。収支は2012年の南アフリカ大会と同様、赤字となった。放送権料の高騰と生中継が深夜・早朝となったことが、赤字の主な原因だ。
番組のインターネット配信について
- 記者:NHK会長はテレビ番組のインターネット同時配信に前向きな考えを持っているが、どのように受け止めているのか。
- 井上会長:まだNHKが具体的な方針を示していないので、明らかになった時点で考えたい。これまでも民放連はNHKがテレビ同時配信を受信料財源で行うことに反対してきており、受信料制度との整合性については今後も意見を述べていきたい。
- 記者:民放として、番組のインターネット配信についてどう考えているのか。
- 井上会長:放送を取り巻くメディア環境は大きく動いており、その中で放送のメディア価値をいかに高めるかを会長就任時から目標としてきた。現状では、インターネット上でテレビ局のコンテンツの違法動画配信が増えるなど、我々放送事業者が看過できない問題がある。また、タイムシフト視聴のように、テレビ・コンテンツの価値が経済的価値に反映されない問題もある。そこで、本日の理事会の最後に、私から対応策として二つのことを申しあげた。一つは、民放連事務局に対して「放送のメディア価値向上に関する幅広い検討」を指示したということだ。インターネットをはじめとする新しいメディアに対してどのように放送のプレゼンスを示すのか、課題と問題点を包括的にまとめてもらい、会員各社で共有したい。もう一つは、民放連の業務としての位置づけではないが、昨年末から在京キー5局で放送のメディア価値向上のためにどうすればよいかを協議していただいてきた。その中から、インターネットを使ったテレビ番組配信の一つとして、見逃し視聴サービスについての検討を5局で行うことで意見がまとまった、と説明した。これまでも各社が個別に取り組んではいるが、まとまって実施することまでは考えていなかった。民放内でも利害がからむ面もあり、難しいことは承知しているが、メリット・デメリットを含めて検討していただき、少しでも前へ進めるよう、理事の方々に理解を求めたところだ
- 記者:在京キー5局がまとまって実施するということは、システムを統一するということなのか。
- 井上会長:技術面はまだわからないことが多いが、投資を抑え、視聴者が使いやすいものにしたいと考えている。違法動画対策も同時にやっていく。権利者とも話し合い、利益をリターンしていきたい。
- 記者:見逃し視聴サービスが、どのような価値向上策につながるのか、あわせて検討スケジュールはどのようになっているのかを教えていただきたい。また、NHKの参加は考えているのか。
- 井上会長:CMをスキップされずに番組を視聴者のもとへ届けることができるので、新たなビジネスの方法があり得るのではないか。タイムシフト視聴では収入につながりづらい。多くの視聴者がインターネットで動画コンテンツを視聴している現状では、可能性はあると考えている。個人的には、来年度中くらいには実験レベルのことができればと思っているが、今後の検討による。NHKとは一緒の方が全体として有利かもしれないが、NHKには「あまねく普及」義務などがあり、設備が膨大になる可能性がある。
- 記者:CM付きの無料配信ということか。
- 井上会長:そうだ。CM付き無料見逃し配信サービス、を想定している。
- 記者:番組のジャンルは、どのようになるのか。
- 井上会長:著作権などクリアしなければならない各種の問題もあり、対象番組の時間帯やジャンルなどは今後の検討となる。
- 記者:在京キー5局がまとまって、どのようなことができると考えているのか。
- 井上会長:さまざまな問題点を一緒に考えよう、ということがまとまったということで、具体的には今後、検討していくことになる。
4K・8K放送への民放の取り組みについて
- 記者:4K・8K放送について、新しいロードマップの発表があったが、総務省主導でメーカーの意向に沿っている印象がある。民放として今後どのように取り組んでいくのか、所感をうかがいたい。
- 井上会長:4K・8K放送については、オールジャパンの体制で、一般社団法人次世代放送推進フォーラム(NexTV-F)を設立して取り組んできた。国としても、新たなビジネスの創出にもつながると考えているのだろう。しかし、相当な予算措置が必要だ。民放としては、4K・8Kにどのように投資していくのか、そしてそれが二重投資にならないように考えていきたい。現状では使用できる帯域は衛星しかなく、地上波で実施が可能なのか、未整理の部分が多いと思っている。
AMラジオ放送のFM補完中継局について
- 記者:9月3日にTBSラジオ&コミュニケーションズ、文化放送、ニッポン放送のFM補完中継局に予備免許が交付されたが、どのように受け止めているのか。
- 井上会長:災害対策や難聴対策のために、民放連がかねてより要望してきた制度整備であり、ありがたいと思っている。ラジオは経営的に厳しい状況にあり、AM・FM両波を維持するのは難しい面もある。在京局の取り組みはモデルケースとなるので、3局にはしっかり取り組んでほしい。
(了)