会長会見
井上会長会見
【日 時】 平成27年6月12日(金) 午後3時30分~4時
【場 所】 ホテルニューオータニ ガーデンコート「シリウス」
“政治とメディアの距離”について
・記者:報道番組のコメンテーターの発言などを問題として、自民党が関係者に説明を求めたが、“政治とメディアとの距離”について、どうお考えか。
・井上会長:長年にわたって議論されてきた問題であるが、個別番組のことで政党が放送事業者を呼ぶのは行き過ぎではないかと思う。公の場で番組問題を説明せざるを得ない場合は、個別社ではなく民放連として対応するのが基本姿勢だと考えている。一方で、当該社の立場もあるので、その判断は尊重しなくてはいけない。また、政治と放送の関係について言えば、第三者機関であるBPOに対する政治の介入は避けなければならない。あくまで自主・自律の精神で、放送事業者自らが放送倫理の向上を図っていくのが基本であり、会員社にも努力をお願いしている。
・記者:個別社を呼ぶのが行き過ぎであれば、民放連として、自民党に対して何か行動を起こすことはあるのか。
・井上会長:民放連で対応するとの考え方は、自民党にも伝えてある。それを踏まえて、いろいろと検討しているのだろうと思う。
・記者:自民党の会合では、BPOについて「お手盛りだ」などの意見もあり、在り方に関する議論が行われるようだが、どうお考えか。
・井上会長:民放連とNHKが自主的に設置したBPOは、世界に類を見ない第三者機関であり、公権力の関与によらずに放送の質を保つために我々が自ら作った優れた仕組みである。放送事業者はBPOの委員会の判断を尊重し、重く受け止めて、自主的に改善策を講じ、放送の質の向上に努力している。その仕組みは十分に機能していると考えている。また、お手盛りと言われるが、放送事業者にとっては厳しい存在である。濱田理事長も「放送局が有利になるように判断することはない」と言っておられるし、放送事業者の側もBPOの審議・審理にかからないようにと日々心がけている。抑止力になっており、お手盛り、との指摘は的外れではないか。
NHKについて
・記者:NHKの「クローズアップ現代」で、“やらせ”が行われたのではないかとの問題に関して、一連の動きをどのようにお考えか。
・井上会長:個別の事案に対するコメントは差し控えたいが、NHKは自主的に調査委員会を設置し、報告書をまとめられており、対応としては問題ないのではないか。また、BPOでも審議・審理入りしたので、その判断を待ちたいと思う。
・記者:安倍首相の米国議会での演説をNHKが「国民の関心事」だとして事前通告もなくインターネット同時配信したが、これをどうお考えか。
・井上会長:民放連は、NHKがインターネットを活用すること自体を否定しているわけではない。本年4月1日の改正放送法の施行で、NHKはインターネット実施基準に則ってインターネット活用業務を実施している。今回のインターネット同時配信も、実施基準に則り特別なケースとして実施された「特例」と認識している。NHKのインターネット活用は「放送の補完」という大原則を踏まえた限定的、抑制的な運用を期待する。
JASRACの最高裁判決について
・記者:日本音楽著作権協会(JASRAC)の著作権使用料の徴収方法が他事業者の新規参入を排除しているかが争われた訴訟で、最高裁は、独禁法違反にあたらないとした公取委審決を取り消す判決を行ったが、放送事業にどのような影響があるのか。また、どのように対応するのか。
・井上会長:今回の判断は、JASRACと放送事業者の「包括契約」そのものを否定したものではない。包括契約による使用料徴収であっても、それが新規参入を妨げないような形に修正すれば問題はなくなるので、そうした方向へと関係者間で検討を行っている。
ネットフリックスについて
・記者:アメリカの動画配信大手の「ネットフリックス」が今秋日本に進出するが、この影響はどのようにお考えか。
・井上会長:どう対応するかは各社の経営判断だが、我々も、例えば在京キー5社で「CM付き無料見逃し配信サービス」を検討しており、努力をしているところだ。これからもこのような事業者が現れてくるだろうが、競争相手になるか、ビジネスパートナーとなるかは、経営判断次第だと思う。
・記者:ネットフリックスのような動画配信事業者と競合する場合のテレビの強みとは何か。
・井上会長:我々は長年にわたって放送事業に携わり、日本の視聴者の趣味・趣向を熟知している。経験では一歩有利であるし、そのつもりで対応を考えたい。
・記者:動画配信やVOD、タイムシフトなど、テレビの編成表に合わせて生活する習慣が変化しているが、世帯視聴率を基本としたビジネスモデルを考え直すきっかけとなるのか。
・井上会長:テレビの見方が変化してきていることはわかっているし、その対応のひとつとして「CM付き無料見逃し配信サービス」の検討もある。また、現在の世帯視聴率を基本としたビジネスモデルが急に変化するとも思えない。しかし、今後、このままでいいのか、ということを考えるきっかけであるし、その転機にきているとは思っている。
FIFAの汚職事件について
・記者:FIFAの汚職事件は、今後の放送権交渉に影響を与えるのか。
・井上会長:サッカーは人気競技であり、放送権料が高騰しているのは事実だ。下がってほしいとは思うが、正直、今回の影響はわからない。
(了)