会長会見
2019.1.24大久保会長会見
【日 時】 2019年1月24日(木) 午後2時~2時35分
【場 所】 民放連地下ホール
年頭にあたって
◆記者:年頭にあたって、1年の抱負・所感をうかがいたい。
◆大久保会長:今年は大きな節目の年になる。今上天皇が退位され、平成からの改元があり、新しい時代が始まる。参議院議員選挙のほか、G20大阪サミット、ラグビーワールドカップ2019日本大会の開催など大きなイベントも開催される。米中関係、米朝関係など国際問題も動いており、そのような中、放送は報道機関として公共的な役割を果たす意義をあらためて自覚しなければならない。近年、自然災害が多く発生しており、国民の生命、暮らし、財産を守るためにも、放送事業者の社会的役割を果たしたいと思っている。
デジタル化やグローバル化が進み、放送事業者が置かれている環境は激変している。インターネットとどう共存するか、環境の変化にどう対応するか、放送事業者にとって大きな課題だと考えている。今年は、そのような放送事業者を取り巻く諸課題に取り組み、成果を出したいと考えている。
NHKの常時同時配信について
◆記者:通常国会に放送法の改正が上程される見込みだが、あらためてNHKの常時同時配信についての考え方をうかがいたい。
◆大久保会長:NHKの常時同時配信に関して民放連は昨年秋に、区分経理の採用によるインターネット活用業務の見える化や、受信料収入の2.5%上限の維持など8項目の要望をNHKに伝えた。総務省の諸課題検討会においても、永原専務理事が「8項目は今後も重要なチェックポイントとなるので、検討会の議論や総務省の対応を引き続き注視したい」と述べている。この考えは今も変わっていない。放送法改正の検討の中で、どのように民放連の要望が反映されるのかを今後とも見守っていきたい。
◆記者:「8項目」はどこまで実現できているとお考えか。
◆大久保会長:NHKは来年度のインターネット活用業務の実施費用は収入の2.4%としており、現行の受信料収入の2.5%の上限枠について、今後も順守してくれるものと信じている。NHKのインターネット活用業務は「放送の補完」として制度上認められているものであり、補完であるからこそ、NHKは自ら定めるインターネット実施基準において費用の上限を設けて、それを守ってきたという経緯がある。したがって、新たなサービスを始めるにしても、まずは現行の基準である2.5%を順守し、抑制的に運用するところから始めなければ、業務の肥大化という批判を受けかねないと思う。「受信料の値下げ」などの負担軽減策は民放連もかねてより要望してきたことだが、値下げ幅が適正かどうかは国民・視聴者が判断することである。
◆記者:NHKは受信料の値下げによって赤字の予算編成となるにもかかわらず、支出は増加している。これをどのようにお考えか。
◆大久保会長:どのような事業に資金を投入するかは、すぐれてNHKが説明すべきことであり、私からコメントすることはない。
◆記者:NHKが常時同時配信を開始するとなると、視聴者としては民放も実施してほしいと思うが、どのようにお考えか。
◆大久保会長:かねてより、民放の常時同時配信への対応は各局の経営判断だと申しあげてきた。民放連会長として、考えを申しあげるべきことではないと考える。現時点では、各局とも事業性を見出せないと判断しているのが実情ではないか。同時配信については、さまざまな局がソフトを選んで実施しているので、事業性との兼ね合いを考えながらトライアルが増えていくのではないかと思う。
自民党「放送法の改正に関する小委員会」の提言について
◆記者:自民党「放送法の改正に関する小委員会」第二次提言について、どのようにお考えか。また、どのように対応するのか。
◆大久保会長:自民党の提言には「ローカル局が果たしている重要な役割を引き続き維持するための考え方」との記載がある。民放連としてもしっかり受け止めて、検討を進めていくつもりだ。ひとくちにローカル局と言っても、ラジオとテレビではもちろん異なるし、地域や会社の規模によっても目指す方向がさまざまであり、単純化しては語れない。民放連としての経営基盤強化の取り組みは、会員各社の経営の選択肢を広げることに尽きるのではないか。画一的な施策を進めることは無理があるし、個別の社の経営判断を縛ることはあってはならない。経営の参考になる案を打ち出せればと思う。これまで放送計画委員会などで幅広く検討してきたが、本日の理事会でローカルテレビ局の経営に特化した検討プロジェクト(「ローカルテレビ経営プロジェクト」)の立ち上げが承認された。会員社向けのセミナーの開催も検討している。さまざまな形で、ローカル局の将来に関する研究・検討を民放連の中で進めていこうと考えている。
◆記者:提言の中では、県域免許の見直しにも触れているが、どのようにお考えか。
◆大久保会長:具体的に答えられるような論議は行っていないので、コメントは控えたい。
◆記者:提言ではケーブルテレビ局との連携にも言及しているが、本日設置されたプロジェクトで検討するのか。
◆大久保会長:どの問題をどのように掘り下げていくかは、プロジェクトの検討に委ねている。これから論議していくことになる。
◆記者:提言には、このままでは「ローカル局が担っている災害報道、地域情報や文化の発信など重要な役割が失われるおそれがある」との記述があるが、県域免許は大切だとお考えか。
◆大久保会長:地域情報の発信は放送局が公共的役割を果たすうえで重要であり、軽視することはない。
◆記者:提言には、BPOの自己検証も挙げられているが、どのように対応するのか。
◆大久保会長:BPOは民放とNHKが自主自律の精神で設立した第三者機関だが、発足から15年が経った。民放連は昨年7月に公表した「放送の価値向上・未来像に関する民放連の施策」の中で、「BPOと各社の取り組みの連携と情報発信」を掲げている。できるところから検討を始めたい。
◆記者:提言の「視聴者・スポンサーのテレビ離れ」「ローカル局のビジネスモデルが崩壊するおそれ」などの指摘は、共通の認識だと思う。しかし、提言が法改正を促すものであれば、自主自律の観点からみてどのようにお考えか。
◆大久保会長:民間事業者の経営に関わることは、自主的な経営判断に委ねてほしい。ただし、さまざまな方面から協力し、支えてくれることを拒むものではないし、積極的に受け入れたい。しかし、判断はあくまでも自主的なものだ。
◆記者:総務省「放送を巡る諸課題に関する検討会」においてもローカル局の経営問題をテーマとしているが、意見交換などを行っていくのか。
◆大久保会長:同検討会の「放送事業の基盤強化に関する検討分科会」にはローカル局から5名がオブザーバーとして参加しており、そこで議論していくことになる。
憲法改正国民投票運動CMについて
◆記者:12月に公表した憲法改正国民投票運動に関する「基本姿勢」を、9月にCMの量の自主規制を行わないことを前提に自主規制のあり方についての検討を進めていくことを公表した際に、なぜ一緒に公表しなかったのか。
◆大久保会長:9月に公表した方針に沿って担当の放送基準審議会が論議した成果のひとつが、12月に公表した「基本姿勢」だ。
◆記者:民放連が投票日前14日間以前についてはCM量の自主規制を行わないことを疑問視する意見があるが、民放連の考え方が国民・視聴者に理解されているとお考えか。
◆大久保会長:そのような国民・視聴者の声に真摯に耳をかたむけて実際に対応する、という姿勢が大切だと考えている。
視聴データについて
◆記者:在京民放5社で「テレビ視聴データに関する技術実証」実験を行っている。民放連の「施策」にも「視聴データの利活用」「媒体データのあり方に関する検討・研究」とあるが、“新しい業界ルール”を検討しているのか。
◆大久保会長:在京民放5社の取り組みについて、民放連会長としてコメントする立場にはない。民放連の中では「放送広告の価値向上」のための検討課題としているが、まだ公表できるような議論は行っていないと聞いている。
以上で民放連会長会見を終了し、引き続き、日本テレビ放送網のバラエティー番組『世界の果てまでイッテQ!』について記者から質問があり、これに同社社長の立場から答えた。
(了)