会長会見
2024.03.21遠藤会長定例会見
【日 時】 2024年3月21日(木) 午後4時~4時30分
【場 所】 民放連地下ホール
○1期目の総括と次期への抱負
◆記者:次期会長候補者として選定されたことに関する所感と、一期目の総括を聞かせてほしい。
◆遠藤会長:3カ月近く任期を残しているので、2期目の抱負は次回お話ししたい。今の民放界の課題は、1月の会見でもお話しした「人権」と「デジタル」だ。「デジタル」はインターネット活用業務の在り方やプラットフォーム事業者との向き合い、生成AIや偽情報の対策など多岐にわたっている。私たち民放事業者が社会から信頼され続けるために、この2つの課題には、今の任期で全力で取り組まなければならない。次の任期になっても、重点課題であることに変わりはないだろう。先日、NHKの「放送記念日」にお邪魔し、稲葉会長とも少しお話をしたが、中継局の共同利用などでNHKとの協調についてもこれからさらに深まっていくと思う。
◆記者:偽情報対策でオリジネータープロファイル(OP)が注目されている。民放連としての取り組みはあるか。
◆遠藤会長:昨年末に設置したデジタル戦略特別部会では、偽情報やディープフェイク対策についても検討している。OPはルール作りの段階だと思うが、ディープフェイクを防止するための方法論としては有効なのではないか。
◆記者:偽情報の拡散防止について、民放連としてプラットフォーム事業者に働きかけを行うことも検討課題となるのか。
◆遠藤会長:当然検討課題だ。
○放送法改正案について
◆記者:放送法改正案が国会に提出された。NHKのインターネット活用業務を必須業務化する内容だが、改めて改正案に対する会長の所感を聞かせてほしい。
◆遠藤会長:放送法改正は一つのヤマだと思うが、道半ばという受け止めだ。この会見で何度かお話ししたが、「番組関連情報」として何をやり、何をやらないのかがまだファジーだと思う。引き続きさまざまなことをNHKと話し合っていかなくてはならない。民放連は、民放を含む送信ネットワークの整備や維持を、NHKの責務として放送法に明記することを強く求めてきた。今回の放送法改正案では、これに近い規定が盛り込まれたものと受け止めている。前進した面もあるが、積み残しの部分もあると感じている。
○「セクシー田中さん」について
◆記者:「セクシー田中さん」の原作者がお亡くなりになったことについて、会長自身はどのように感じたか、教えてほしい。
◆遠藤会長:芦原妃名子さんのご逝去は大変痛ましいことだったと思っている。心からご冥福をお祈りする。この件については、日本テレビが第3者を交えて調査を進めているので見守りたい。一般論として言えば、番組制作の過程では、クリエイティブにかかわって、さまざまなやりとりが行われる。そうしたやりとりの際に、番組制作に参加される人たちの間で、大きな行き違いが生じないように配慮していく必要があると改めて感じた。
◆記者:原作者の考えや権利を尊重するために、民放全体で取り組む考えはあるか。
◆遠藤会長:原作者の方によってさまざまな考え方があるし、作品もさまざまだ。一律のルールを作ることは難しいと思う。感情の機微の部分は、個社の作り手や番組にかかわる人たちが醸成していかなくてはならないと思う。
◆記者:民放連として議論したり方針を出したりしたことはあるか。
◆遠藤会長:それぞれの作品で原作者と制作者のリレーションが異なり、デリケートな問題もある。こまめなやり取りをしていくことが必要だと思う。民放連として共通のルールを作ったことはない。
○テレビドラマの表現について
◆記者:TBSテレビ「不適切にもほどがある!」が話題になっている。コンプライアンス重視の世の中では表現の幅が狭くなるとの見方があるが、会長はどのように感じているか。
◆遠藤会長:ドラマは時代とともに変遷していくものだと思う。かつては表現されることがなかったLGBTQの話題や、ハラスメントへの問題意識など、表現の幅が広がった面もあると思う。私は価値観の異なる方とお話しするときは、ディベートに陥るのではなく、結論を出すことを前提としない対話を大事にしたいと思っている。信頼感を構築することが大事だ。物事や情報への感度や感受性が高く、懐の深い人間が、放送局にはたくさんいなくてはならないし、私自身もそうした放送パーソンでありたい。
○NHKの経営委員長について
◆記者:NHKの新しい経営委員長が就任した。期待することはあるか。
◆遠藤会長:私自身は古賀委員長にお会いしたことはないが、野村證券で経営手腕を発揮され、経団連などでも要職を歴任された方だと伺っている。経営委員会はNHKの経営の基本方針を決め、業務の適正を確保するなど、その職責は非常に重い。今後の古賀委員長の発言や、経営委員会の動向を引き続き注視したい。
◆記者:経営委員会を巡っては、かんぽ問題報道にかかわる議事録の公開などが問題になっているが、ガバナンスにどのようなことを期待するか。
◆遠藤会長:経営委員会の今後の動きを拝見したい。
○放送100年について
◆記者:来年は放送100年の節目の年だ。NHKはイベント等を企画しているようだが、民放はどうか。
◆遠藤会長:これまでは各局がそれぞれの周年にあわせて事業を企画してきたと思う。放送100年についてNHKから働きかけがあれば民放連として柔軟に対応したい。
○スポーツ中継について
◆記者:パリ五輪ではTVerでほぼすべての競技のライブ配信を行うことについて、所見を聞かせてほしい。
◆遠藤会長:広範に取り上げることで五輪のダイナミズムを体験してもらうことができることは喜ばしい。
◆記者:3月26日のサッカー日本代表の北朝鮮戦がテレビ放映されないことについて、どのように考えているか。
◆遠藤会長:関係者が努力しているところだと思う。さまざまな事情があるのだと思うが、選手の活躍が、日本のファンの皆さんに伝わる結果になることを期待している。
○災害報道について
◆記者:災害情報をテレビ受信機から入手する人が減り、スマホで入手する人が増えている。同時配信の強化が必要ではないか。
◆遠藤会長:(発災の情報との)接点がスマホということはあると思うが、その後に続く報道については信頼性の高いテレビ・ラジオということもあるのではないか。東日本大震災の時に感じたことは、被災地の方には、キー局発の全国ニュースよりも、避難所の情報や道路状況などローカルな情報が必要だということだ。マスであるテレビとインターネットの使い分けが非常に有効だと思う。
◆記者:防災科学技術研究所の防災クロスビューに民放連も参画してはどうか。
◆遠藤会長:ご指摘は承った。
(了)