会長会見
2025.5.22早河会長就任会見
【日 時】 2025年5月22日(木) 午後3時~3時30分
【場 所】 民放連地下ホール
○新会長就任の抱負について
◆記者:新会長就任にあたり抱負を聞かせてほしい。
◆早河会長:本日の理事会で会長に選定された。3月に遠藤前会長から就任の相談を受けて、会長推薦委員会からの指名があり、熟慮した結果、放送界にとって非常時であるので、何かお役に立てるならと考え引き受けた。フジテレビの人権侵害問題を契機に民間放送全体の人権意識やコンプライアンスを疑問視する声が視聴者・リスナーやステークホルダーの間で高まっていると受け止めている。本日の理事会で民間放送への信頼を回復するために、人権を尊重し、コンプライアンスを徹底することを決議した。具体的取り組みとして、人権尊重・コンプライアンス等特別委員会を設置し、私自身が委員長として責任を果たすことになった。今後1年の間で民放連の全会員社が緊急対応していく覚悟を表明したものだ。民放連はフジテレビの人権侵害事案と類似の事案が業界内にもあるのではないかとの疑惑を持たれていると捉え、会員全社に調査を実施した。その結果、これまでのところ117社から報告があり、同様の事案はなかった。
今回の事案を受けて、フジテレビの経営陣と株主の対立などもあり、経営自体が根底から揺さぶられているような事態となっている。1月以降、スポンサー離れが始まり、現在も多くのスポンサーが広告出稿を止めている。民間放送の歴史の中で、放送倫理上の重い事案はあったが、今回は経営全体を直撃する例のない重大事案になっているのではないかと思っている。経営サイドは外資提案の役員体制案を退け、独自のメンバーを候補とする案を確定するとともに、“楽しくなければテレビじゃない”という番組編成から脱却する方針など、詳細な改革案を明らかにしている。この先、6月下旬の株主総会まで経営陣と株主のせめぎ合いが続くのではないかと見られている。
民間放送は基本的には営利事業であり、利益を上げなければ事業の継続ができない。しかし、利益の最大化ばかりを追求しているわけではない。私たちは報道機関として国民の知る権利に応えるとともに、例えば、大規模災害発生時には、被害の軽減を図るための防災機関としての役割、さらには障害のある人々への字幕放送や解説放送などを日常的に放送している。極めて高い公共性が求められ、それを実践している事業体と言える。フジテレビと株主とのやり取りの中に、「公共性」という視点に立った議論があるのかどうか不明だが、放送事業者の重要な役割、使命であることを念頭に置いていただき議論してほしい。これはお願いのようなものだ。
今回、フジテレビの企業体質に対する批判が渦巻いているが、テレビ業界に長く身を置く私から見ると、フジテレビは1980年代、開局20年余りで三冠王を連続して達成しテレビ文化の一時代を築いた。この偉業の主役はなんといっても現業の社員が作り出したものであり、これからのフジテレビの再生のカギは、社員一人ひとりが、現在の危機に正面から向き合い、再びモチベーションを高め、仕事をしていくかにかかっている。経営陣や株主には、彼らの情熱をきちんと受け止め、改革・再生の力にしてほしい。その意味であえて申し上げれば、フジテレビの社員の皆さんには「頑張れ」と申し上げたい。
繰り返しになるが、フジテレビ問題を契機に民間放送への信頼・信用が大きく揺らいでいると認識している。視聴者やリスナーの厳しい声も聞く。何より、多くのアドバタイザーがフジテレビの広告出稿を取りやめている。こうした閉塞的な状況を一日も早く正常化したい。それが民放全体のために私に課せられた仕事だと思っている。よろしくお願いいたします。
<参考>理事会決議、特別委員会の設置を含む緊急人権アクションはこちら
◆記者:フジテレビの改革案をどう評価しているか。
◆早河会長:第三者委員会の指摘を受けて、同社の取締役会が判断したことであり、私が評価するのは控えたい。
◆記者:高齢での会長就任には批判もあるが、どう考えているか。
◆早河会長:テレビ朝日は10年以上前から指名・報酬委員会を置いている。役員体制は、私の人事を含め第三者の価値判断を重視したうえで適材適所で配置しており、そのような批判は当たらないと考えている。
また、誤解のないように言えば、民放連の会長に立候補して就任したわけではない。推薦をいただき、社内でも議論をして民放全体の問題に向き合う必要があると考えて、お引き受けした。
◆堀木専務理事:会長推薦委員会は、長年にわたり放送業界で仕事をしている早河氏の知見・経験を評価して、この局面を打開する方として推薦した。
◆記者:今後、民放連はどのようにこの課題に向き合っていくのか。
◆早河会長:緊急人権アクションを打ち出し、経営基盤を揺るがすような人権侵害やコンプライアンス違反が二度と起こらないように民放連の会員全社で取り組んでいきたい。
◆記者:フジテレビは“楽しくなければテレビじゃない”からの脱却を掲げているが、このような姿勢をどう考えているか。
◆早河会長:同社経営陣の相当な決意だと受け止めている。今後どのような番組を編成するのかは視聴者や広告主からも注目されていると思う。
◆記者:総務省がフジテレビに対して行政指導を行ったことは妥当と考えているか。
◆早河会長:厳しい行政指導だが、多くの広告主が広告宣伝活動を止めざるを得ない状況は前例のない出来事だ。そのような重大な事案について、所管官庁が注意をすることはやむを得ないと感じる。
(了)