一般社団法人 日本民間放送連盟

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(報道発表)「青少年社会環境対策基本法案」(素案)に対する意見発表について

 社団法人 日本民間放送連盟〔民放連、会長=氏家 齊一郎・日本テレビ放送網社長〕は、9月21日、自民党が議員立法による国会提出を準備している『「青少年社会環境基本法案」(素案)に対する意見』を以下のとおりまとめ、発表しました。

この、法案提出への反対意見は、民放連・放送基準審議会〔議長=山本 潔・RKB毎日放送会長〕で検討してきたものです。

なお、放送基準審議会では、最近の番組内容に対する規制動向を重大な問題として捉え、この反対意見発表以降の取り組み強化のため、今後、下部機構として「番組規制対策部会」を設置するとともに、報道委員会〔委員長=石川一彦・福岡放送社長〕の「報道問題研究部会」とも連携しながら、マスコミ規制を図る動向に対応していく方針です。


平成12年9月21日
「青少年社会環境対策基本法案」(素案)に対する意見
(社)日本民間放送連盟

 青少年を健やかに育てるための社会的努力が必要であることを、私たち民間放送事業者は十分認識している。しかしながら、現在、自民党内で検討されている「青少年社会環境対策基本法案」(素案)は、青少年問題の原因を、青少年を取り巻く「社会環境」にのみ求めるという短絡的な考え方の上に立って、言論・表現の自由を行政が直接に規制する内容を含んでおり、私たちはこれに強く反対する。
  青少年問題の背景には、文化的、社会的、歴史的な問題が潜んでおり、国民各層での自由な議論と、それを通じた合意の形成こそが求められている。同法案のような"官主導"の対症療法は問題解決につながらない。
  同法案は、青少年健全育成の美名に隠れた言論・表現の自由の抑制にほかならず、具体的に以下のような問題点がある。

○ 法案では、「青少年有害環境」を「性・暴力に関する価値観の形成に悪影響を及ぼす」「青少年の健全な育成を阻害するおそれのある社会環境」と定義しているが、この定義はあまりに広範かつ曖昧である。さらに、規制の対象が「商品又は役務の供給」とされており、放送番組を含む、国民の生活環境全般が規制の対象とされるおそれがある。

○ 事業者・事業者団体に、「青少年有害環境の適正化のための協定または規約」を締結・設定し、総務庁長官または都道府県知事(以下、長官・知事)に届け出ることを求めているが、言論・表現の自由にかかわる領域に行政府が直接介入することは、自由主義社会においては避けるべきことである。放送について言えば、放送法に基づき、各放送事業者は自律的に番組基準を設定しており、あらためて法律で二重に規定する必要はない。

○ 長官・知事は、「青少年の保護に関し必要と認めるとき」は、商品・役務の供給方法等について、事業者・事業者団体に「指導・助言」することができるとされている。さらに、①性的な感情を著しく刺激し、性的な逸脱行為を誘発・助長する恐れがある場合、②粗暴な又は残虐的な性向を植えつけ、又は暴力的な逸脱行為・残虐な行為を誘発・助長するおそれがある場合、③その他青少年の不良行為を誘発・助長するなど健全な育成を著しく阻害するおそれがある場合――は事業者・事業者団体に「勧告」することができ、勧告に従わない場合は、「公表」という一種の行政処分を行うこともできる。これは、憲法で保障されている「表現の自由」や「検閲禁止」に反する恐れが極めて強い。また、放送法はあらためて放送の「表現の自由の確保」「自律の保障」をうたっており、この趣旨からも疑問である。

○ 上記の手続きを行う理由について、「誘発・助長」「おそれ」など、厳密な構成要件を欠き、行政の恣意的運用に委ねられている。しかも、これらの行政行為を行う際に、審議会への諮問も行われず、異議申し立ての機会も設けられておらず、適正手続きが保障されていない。

 以上の問題点以外にも、行政主導の青少年有害環境対策キャンペーンに事業者が一方的に協力する責務を負わされている点、国が指定する公益法人が青少年有害環境に対する苦情処理を行う点―など、多くの問題点がある。

 

 冒頭指摘したとおり、わたしたち民間放送事業者は青少年問題の重要性について、十分認識しており、既に以下のような積極的な対応策を講じている。

○ NHKと共同で視聴者からの意見や苦情を受け付ける第三者機関「放送と青少年に関する委員会」を本年4月に設立。

○ 「青少年の知識や理解力を高め、情操を豊かにする番組」を各放送事業者が週3時間以上放送。(各局において平成11年秋改編から指定番組を公表)

○ 夕方5時から夜9時までの児童・青少年の視聴に配慮した時間帯の設定。(民放連・放送基準および同解説文に明記)

 こうした自主的努力を無視して、行政機関が"有害番組"を認定し、その放送のあり方について勧告、従わない場合は公表するなどの内容を含んだ、法案が検討されていることは極めて遺憾である。言論・表現の自由に国家がみだりに干渉しないことは、民主主義の基本原理の一つである。自民党が同法案の提出を撤回することを要望する。

以上

この件に関する問い合わせ:民放連[番組・著作権部]