一般社団法人 日本民間放送連盟

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(報道発表)「個人情報保護基本法制に関する大綱」に対する見解の発表について

 社団法人 日本民間放送連盟〔民放連、会長=氏家 齊一郎・日本テレビ放送網社長〕は、10月16日、政府の情報通信技術〔IT〕戦略本部・個人情報保護法制化専門委員会が11日に発表した「個人情報保護基本法制に関する大綱」に対して、以下のとおり『見解』をまとめ、公表しました。


平成12年10月16日
(社)日本民間放送連盟
「個人情報保護基本法制に関する大綱」に対する見解

 政府の個人情報保護法制化専門委員会は10月11日に「個人情報保護基本法制に関する大綱」をまとめ、総理大臣に提出した。大綱の決定にあたり、民放連としての見解をあらためて表明したい。

 高度情報通信社会を推進するための環境整備にあたり、個人情報保護の法制化が喫緊の課題となっていることは明らかであるが、一方では、民主主義社会を支える根幹とも言える憲法21条の「表現の自由」が法制化の際には十分尊重されなければならないことも自明の理である。したがって、当連盟では、「表現の自由」を確保するために、専門委員会への意見表明などで、『報道取材・番組制作分野を法律の対象外(全面適用除外)とすべきである』ことを繰り返し主張してきた。

  こうした主張を踏まえ、専門委員会が「表現の自由」に一定配慮した大綱をまとめた労を多としたい。大綱では、報道分野等を「取扱事業者の義務」規定の適用除外とし、「基本原則」については、適用除外とはしなかったものの、報道分野における取材活動を制限するものではないとし、自主的な取組による努力を課した。

 われわれは、専門委員会としての「表現の自由」への配慮を理解しながらも、大綱では、あいまいな表現のままのとりまとめとなり、具体的な対応を今後の法案化作業に委ねたことに大きな危惧を抱いている。園部法制化専門委員会委員長が大綱発表後の記者会見で「憲法で保障された自由を侵害する意図はない」と述べたが、その見解は大綱には明文化されていない。
  また、大綱では、「報道分野」あるいは「報道の自由」の表現はあるが、「表現の自由」は明記されていない。放送の場合、取材・報道活動だけでなく、さまざまな番組制作に関する「表現の自由」活動があり、これらも「報道」と同様に扱われるべきことを特に付言しておきたい。   なお、大綱の提出を受けた中川官房長官が「報道分野における行政の関与は避けるべきだ」と語ったとされるのは、今後の法案化に向けて重要な発言である。

 これまでもことあるごとに指摘してきたが、「基本原則」が報道分野に適用されることになった問題は極めて大きい。例えば、基本原則が「報道の自由」に係わる活動に適用された場合、取材する側と取材される側との間で解釈の相違による確執が生じる危険性をはらんでおり、この法律を根拠に取材拒否や取材した情報への介入、さらにわれわれの活動の基本である取材源の秘匿をも危うくしかねない。われわれは国民の知る権利に応える責務があり、いささかでも「表現の自由」を侵すような規制には反対する。

  「表現の自由」への配慮が不十分なまま、「宗教、学術、政治の分野における個人情報の取扱い」が今後の政府の立案作業に委ねられたことも遺憾であり、委員会の議論不足を指摘せざるを得ない。われわれは今後の法制化の過程をこれまでにも増して注視していく。

  あらためて言うまでもないが、「表現の自由」にかかわる活動は、国民・市民の信頼なしには成立せず、われわれがそうした信頼をかちえるためには、自主的・自律的な取組が基本になる。当連盟や加盟各社が「放送基準」や「報道指針」を制定したり、さらには、取材・放送等に関する視聴者からの苦情処理機関として、NHKとともに「放送と人権等権利に関する委員会機構(BRO)」を設立したのも自律的な活動の表れである。個人情報保護についても、われわれ自身が自らを厳しく律し、国民の知る権利にただしく応える責務を遂行しなければならないことは当然である。

 民放連と加盟全社は、個人情報保護の法制化について、「報道取材・番組制作分野をこの法律の全面適用除外(法の対象外)とすべきである」との考えが変わらないことを確認するとともに、この主張を実現すべく、国民の十分な理解を得ながら、今後の法案化に向けてあらゆる機会をとらえて働きかけていきたい。

以上

この件に関する問い合わせ:民放連[業務部]