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(報道発表)武力攻撃事態法案における指定公共機関制度に対する民放連意見について
社団法人 日本民間放送連盟〔民放連、会長=氏家 齊一郎・日本テレビ放送網CEO・会長〕は、7月18日開催の本年度第3回理事会において、国会審議中の「武力攻撃事態における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律案」(武力攻撃事態法案)に関して、次のとおり『民放連意見』をとりまとめました。本意見は、衆議院「武力攻撃事態への対処に関する特別委員会」委員および衆参両院議長、各政党党首(政策責任者を含む)、内閣官房長官、総務大臣、防衛庁長官にお送りすることにしております。
現在、国会で審議中の武力攻撃事態法案には、政府に協力する「責務」が課される「指定公共機関」を政令で指定する仕組みが盛り込まれている。その例としてNHKが明示されているが、政府は民間放送をはじめとする他の報道機関も指定の対象になりうるとしている。この法案がこのまま成立した場合、放送が首相の権限の下に置かれ、国民の「知る権利」に奉仕する報道機関が、政府に奉仕するものに変質しかねない。
仮に日本が軍事的な攻撃を受けるような事態が起きれば、放送局は政府に命じられるまでもなく自らの判断で、市民に対して正確な情報を迅速に提供することは当然である。政府は必要な情報を国民に開示・提供する義務を負っており、放送局を「指定公共機関」に指定する実質的な意味はない。この制度が政府による情報統制を意図したものではないのかという懸念を持たざるを得ない。
しかも、内閣は事実上独断で「武力攻撃事態」と宣言することができ、これを宣言すれば、「指定公共機関」の業務について「総合調整」を行い、それが実施されない場合には指示を出し、さらに指示に応じない場合は、その業務を代執行する権限が首相に付与される。国会の審議において政府は、「言論の自由を制約することは考えていない」との抽象的な見解を繰り返すのみで、この見解を担保する具体的な根拠を示しておらず、われわれの懸念を増幅させている。
われわれは、上記の懸念が払拭されない限り、民主主義の根幹である報道の自由にかかわる領域で、「指定公共機関」を法制化することは受け入れられない。有事であっても、「知る権利」に奉仕する報道の自由が確保されることが、究極的には国民の生命・安全を守ることにつながる。表現の自由・報道の自由が制約される事態を招かないよう、国会において慎重な審議を行うことを求める。
この件に関する問い合わせ:民放連[番組部]