一般社団法人 日本民間放送連盟

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(報道発表)「国民の保護に関する基本指針(要旨)」に対する民放連意見について

2005年1月20日

「国民の保護に関する基本指針(要旨)」に対する民放連意見について

 社団法人 日本民間放送連盟〔民放連、会長=日枝 久・フジテレビジョン 会長〕は本日、政府の意見募集に応じて、国民の保護に関する基本指針(要旨)に対して意見(別紙)を提出しましたので、お知らせいたします。
 国民の保護に関する基本指針は、国民保護法にもとづいて政府や都道府県・指定公共機関の対応を具体化するものです。政府はその要旨を12月14日に公表し、一般を対象に意見募集を行っておりました。その内容を報道委員会〔委員長=石黒大山・東海テレビジョン放送社長〕で検討したところ、報道の自由を確保する観点から問題点がありましたので、意見をとりまとめて提出したものです。


平成17年1月20日
(社)日本民間放送連盟
 
国民の保護に関する基本指針(要旨)に対する意見

 当連盟は国民保護法を含む有事法制が成立するまでに、本法制度が報道の自由・表現の自由を侵すことがないように要請してきた。こうした要請を踏まえて国民保護法第7条第2項には、放送事業者の言論その他表現の自由に特に配慮することが明記された。また、今回の「国民の保護に関する基本指針(要旨)」の中でも、国および地方公共団体は「放送の自律を保障する」としている。われわれは、こうした観点から個別の項目について下記のとおり意見を申し述べる。

第1章 国民の保護のための措置の実施に関する基本的な方針
 3 国民に対する情報提供
 高齢者、障害者、外国人その他に対するきめ細かな情報提供に向け、努力する必要があることは十分認識している。しかし、その実行に当たる個々の放送事業者の対応はその能力や状況の推移に応じて、一律のものとはならないことに留意していただきたい。

 8 対策本部長の総合調整等
 総合調整権は法的拘束力のないものとされており(平成15年5月13日、衆院武力攻撃事態対処特別委員会、福田康夫官房長官)、政府は「放送機関に対しまして、総合調整があるからといって、指示をしたり強制したりするということは考えておりません」(平成16年5月13日、衆院武力攻撃事態対処特別委員会、井上喜一国務大臣)とも答弁している。
 ところが、「要旨」では、事前に意見を聴くものの、指定公共機関は総合調整の結果を無条件で受け入れることが規定されている。総合調整の結果を受け入れることが義務付けられると、放送内容について対策本部長が指示することと実質的に変わりがなく、報道の自由・表現の自由を侵すことになりかねない。
 「要旨」の記述は「指定公共機関は、総合調整の結果に基づき、所要の措置を的確かつ迅速に実施するよう努めるものとすること」と改められるか、もしくは、法第7条で特に配慮が求められている放送事業者等については、他の指定公共機関と一線が画されることを明確にされる必要がある。例えば、「指定公共機関(放送事業者を除く)は、総合調整の結果に基づき、所要の措置を的確かつ迅速に実施するものとすること。また、放送事業者である指定公共機関については、総合調整の結果を尊重して所要の措置を実施するよう努めるものとすること」といった表現に改めるべきである。
 なお、このことは都道府県知事による指定地方公共機関となった民放局に対する総合調整権にも波及する問題であり、修正が不可欠である。

第3章 実施体制の確立
第1節 組織・体制の整備
 「業務計画」については、首相への報告ならびに公表義務が課されている。武力攻撃事態・緊急対処事態を想定した組織の整備を行うことは当然としても、放送局内部の具体的職員の配置を報告・公表することは、報道機関としての自律および取材・報道活動を損なうことにつながりかねない。指定公共機関の「業務計画」には、職員の配置方針などについて定めることで十分である。
 後段の「また、それぞれの機関の実情~」のなかで、「服務の基準に関し必要な事項を併せ定める」とされているが、この部分については、公表を前提とした「業務計画」とは別に内規として定める事項であると理解するが、この趣旨をより明確にすべきである。

第4章 国民の保護のための措置に関する事項
第2節 避難住民等の救援に関する措置
 6 安否情報の収集及び提供
 放送事業者は行政と一線を画すべき報道機関であり、取材・報道目的で収集した情報を一律に行政機関に提供することはできない。「報道の自由に十分な配慮」とうたわれたことは評価できるが、放送事業者については、自らの判断で安否情報の提供に応ずるかどうか判断するとの趣旨を、基本指針により明確にうたうべきである。

第3節 武力攻撃災害への対処に関する措置
 3 生活関連等施設の安全確保
  (1) 生活関連等施設の安全確保
 国民保護法第102条は、「武力攻撃事態等において」のみ、都道府県知事による施設管理者に対する要請権限を認めている。ところが、「要旨」においては、平素から「生活関連等施設の管理者に対し、資機材の整備、巡回の実施など武力攻撃事態等における安全確保措置について定めるよう要請する」としている。法の規定を踏み越えており、この部分は要請ではなく、「安全確保の留意点の通知」にとどめるべきである。

第4節 その他の国民の保護のための措置の実施に当たっての留意事項
 1 情報の収集及び提供
 (2)被災情報等の収集及び提供
 「安否情報の収集及び提供」の項目で申し述べたとおり、報道機関として行う取材・報道活動によって得られた被災情報を無条件で行政機関に提供することは、独立した報道機関によって報道がなされているという視聴者・市民の信頼を揺るがし、取材の自由・報道の自由を妨げることにつながりかねない。一部の県の国民保護計画素案では、ヘリコプターによる空撮映像を無条件に県庁に伝送すべきとの記述も見られる。報道機関の自律、取材の自由を確保する観点から不適切であり、放送事業者による被災情報の提供は自らの判断で行われるべきことが基本指針において明確にされるべきである。

第7節 訓練及び備蓄
 1 訓練
 指定公共機関・指定地方公共機関としての放送事業者に課せられた国民保護措置は、警報・避難の指示・緊急通報の放送に限られており、実際に資機材を用いた実践的訓練との「要旨」の記述にはなじまない。一律に同一レベルでの訓練の実施を求める要旨の記述は不適切であり、指定公共機関・指定地方公共機関は関係機関と相互に連携しながらも、それぞれ特性に応じて自らの判断で訓練を実施するとの趣旨に改めるべきである。

以上

この件に関する問い合わせ:民放連[番組部]