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(報道発表)日本国憲法の改正手続に関する法律案(仮称)・骨子素案に対する報道委員会の意見について
2006年04月27日
日本国憲法の改正手続に関する法律案(仮称)・骨子素案に対する報道委員会の意見について
社団法人 日本民間放送連盟〔民放連、会長=広瀬道貞・テレビ朝日会長〕の報道委員会〔委員長=堀鐵藏・名古屋テレビ社長〕は、自民・公明両党が合意した「日本国憲法の改正手続に関する法律案(仮称)・骨子素案」に対して、「憲法改正手続きに関連して、報道機関に新たな自主規制措置を法定化する必要はない」などとする意見を本日発表しましたのでお知らせいたします。
「憲法改正国民投票制度とメディアとの関係」については、当報道委員会の堀鐵藏委員長が4月13日に開催された衆議院・日本国憲法に関する調査特別委員会に出席し、参考人として意見を申し述べた。しかし、その後、4月18日に自民・公明の両党が「日本国憲法の改正手続に関する法律案(仮称)・骨子素案」(以下、本骨子素案)について合意したとの報道がなされたので、本骨子素案に対し、報道の自由・表現の自由を確保する観点から、改めて以下の意見を表明したい。なお、改正手続きに関する議論を進めること自体に反対する意見があることも承知しているが、意見表明を行う機会を逸するべきではないとの判断から、今回、意見表明することとしたことを申し添える。
特別委員会においても述べたが、われわれは報道機関として、憲法改正という国の骨格を定める重要な問題について、国民一人ひとりが熟慮し討議するために、必要かつ十分な情報や評論を伝えることは不可欠と考えている。憲法改正手続きを考える際には、何よりも国民主権の原点に立って、自由な討議を通じて浮かび上がってくる国民の良識を信頼することが基本となる。そうした状況下において、報道機関に新たな規制は不要だというのが、われわれの基本的な立場だ。
ところが、本骨子素案には、例えば、「報道機関の自主的取組」との項目があり、「新聞社、通信社、放送機関その他の報道機関は、虚偽の事項を報道し、又は事実を歪曲して記載する等表現の自由を濫用して国民投票の公正を害することのないよう、報道に関する基準の策定、報道に関する学識経験を有する者を構成員とする機関の設置等の自主的な取組に努めるものとする」としている。憲法改正に関する報道の場合、「虚偽の報道」「事実を歪曲」といっても、その認定が事実上極めて困難なことは論を待たない。こうした訓示的な規程が実態としての規制に転化する危険性も否定できず、極めて問題だ。特に放送局の場合、放送法に基づき既に自律的な取り組みが行われており、新たな規定を設ける必要性は全くない。
このほか、公務員、教育者、外国人に対する国民投票運動の禁止の規定も、一定の条件が付されているものの、こうした立場の人々が放送を通じて意見を表明することを妨げることにつながりかねず、憲法との整合性からも疑問がある。また、国民が主体となるべき国民投票にもかかわらず、政党等が主体となって無料で意見を放送できるとの規定も、その是非について十分な議論が必要である。いずれにしても、本骨子素案には多くの疑問があり、慎重な対応を望みたい。
この件に関する問い合わせ:民放連[番組部]