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総務省「通信・放送の在り方に関する懇談会」の報告書に対する民放連会長コメント
総務省「通信・放送の在り方に関する懇談会」の報告書に対する民放連会長コメント
社団法人 日本民間放送連盟〔民放連、会長=広瀬道貞・テレビ朝日会長〕の、総務省「通信・放送の在り方に関する懇談会」の報告書(6月6日公表)に対する会長コメントは、以下のとおりです。
総務省「通信・放送の在り方に関する懇談会」の報告書(以下、報告書)が6月6日、公表された。報告書では、通信・放送サービスの向上を訴えるとともに、国際競争力の観点から、喫緊の課題として我が国のソフトパワーの強化・拡充をあげ、その対応には基幹放送である地上放送事業者が重要な役割を果たすとしている。さらに、放送事業者が文化の発掘・創造と情報発信の担い手として存分に活躍できるような環境を整備することが必要だとしている。これらの認識は、我々と同じである。
報告書では、今後、通信・放送の法体系の見直しは、「現行制度のような基幹放送の概念の維持や放送規律の確保等を前提に」行うとしており、現在有効に機能している基幹放送の重要性を再確認している点は評価する。また、我が国のソフトパワーの強化・拡充の観点から、ローカル局の経営基盤の強化を促す政策の一環としてマスメディア集中排除原則の緩和を打ち出した点も同様に評価する。
民放連はこれまで、NHKを含めた全国の放送事業者の当面の経営上の優先事項は地上波の完全デジタル化であると述べてきた。現状においてもこの認識は変わっておらず、今後5年間、各放送事業者は経営資源の大部分をこのデジタル化に充てる計画である。デジタル化が完了した暁には、我が国は世界でも有数のテレビ放送網を有する国となり、ソフトパワー国家としての産業基盤も整備されることとなる。
他方、報告書ではいくつかの点において明確さを欠いている。例えば、「地上波デジタル放送の一定割合以上はハイビジョン放送とする基準を緩和すべきである」と進言しているが、これは現在全国の放送事業者が推し進めているデジタルハイビジョンを基本とする放送のデジタル化計画との整合性を欠いている。世界で最も鮮明な映像を配信する地上テレビジョン放送ネットワークを実現し、テレビ大国を目指している我が国の基本政策に合致しないと思われる。
我々が危惧するもうひとつの点は、地上波放送のデジタル化後に、NHKの伝送部門を本体から分離し、新たな事業主体に未使用帯域を活用した第三者への貸し出しや融合サービスを認めようという点である。これは、運用次第では現在の放送制度の基本である置局政策との整合性を欠く可能性もあることから、受信料の低減や公共放送による電波の有効活用といった限られた目的だけで判断すべきものではないと考える。
また、2010年に向けた法体系の見直しについて、「伝送・プラットフォーム・コンテンツといったレイヤー区分に対応した法体系とすべきである」とされているが、解釈次第では基幹放送のハード・ソフトの分離にもつながりかねない。今後の法体系の見直しの際には地上波放送を基幹放送と明確に位置付け、ハード・ソフト一致原則を堅持すべきと考える。
IPマルチキャストの著作権法上の扱いについては、報告書では電気通信役務利用放送を著作権法上も放送と同等の扱いにすべきとしているが、充実したコンテンツを安定的に提供するためには権利者側と事業者側との良好な関係が不可欠であり、この点については関係方面に十分な配慮を求めたい。
民間放送は、地域に根ざし、信頼される情報と豊かな番組を国民・視聴者に提供する役割を、これからのIT社会においても果たしていきたいと考えている。今後の通信・放送の在り方をめぐる議論においては、国民・視聴者の意見を幅広く聞くとともに、我々の主張にも耳を傾けていただくよう、強く求めるものである。