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(報道発表)最高裁判所への「裁判員裁判の取材にあたっての申し入れ」について
社団法人 日本民間放送連盟〔民放連、会長=広瀬道貞・テレビ朝日取締役相談役〕は2月5日午後、最高裁判所に対し、以下のとおり裁判員裁判の取材にあたっての申し入れを行いましたので、お知らせいたします。
同申し入れは、堀鐵藏(ほり てつぞう)報道委員長〔名古屋テレビ放送社長〕から、山崎敏充・最高裁判所事務総長に手交しました。
裁判員制度が本年5月21日から始まります。「国民の社会的常識と感覚を司法の判断に反映させる」という新制度の趣旨が国民に正しく理解されるためには、新聞・通信・放送をはじめ、各メディアがそれぞれの特性を活かして広く伝えることが重要であり、われわれは、その使命と責任を強く認識しています。
民放連は、「国民が参加する裁判員制度の下では、事件の真相解明とともに、司法判断に至る過程や理由が、裁判員が選ばれる母体である社会全体で共有されることが求められる」(『裁判員制度下における事件報道について』2008年1月17日)とし、取材・報道姿勢を明らかにしました。
さらに、「裁判員経験者の体験が広く国民に認識され、共有されることで、制度そのものへの関心も大きく高まる」、そのためには「取材の自由は最大限に担保されるべきである」(『裁判員裁判の取材における基本スタンス[骨子]』2009年1月15日)と表明しました。
われわれは、公判前(裁判員選任手続、公判前整理手続)、公判中(審理、評議、評決)、公判後(裁判員への取材等)など、あらゆる過程で情報が開示されることこそが、“司法制度の可視化”につながると考えています。
新制度のスタートを、公正で開かれた裁判の実現への好機と捉え、国民の知る権利に応える報道機関として、取材・報道活動をさらに充実させるため、以下の事項を申し入れます。
1.法廷内撮影も含めた裁判の全面可視化
裁判員制度の正確な理解促進のためにも、映像と音声による取材・報道は不可欠です。
法廷は原則として公開のものであると考えます。公判の過程が映像と音声によって可視化されることにより初めて、真の意味で「開かれた司法」「開かれた裁判」が実現されると考えるからです。
そのためには、裁判員選任手続、評議室、法廷における冒頭陳述、証人尋問・論告求刑など、各段階で映像と音声取材が必要であり、当事者、関係者などの同意のもと、可能な限り撮影・録音が認められるべきです。
また、新たな制度を検証するためにも、必要な情報は原則公開とすべきです。特に、公判前整理手続は運用上非公開となっているにすぎないと認識しており、さらに情報公開を進めるべきと考えます。
2.裁判員への取材について
民放連は、「裁判員については、裁判員法の趣旨を踏まえて取材・報道にあたる。検討すべき課題が生じた場合は裁判所と十分に協議する」(『裁判員制度下における事件報道について』)とし、伝えるべきことは最大限取材し、報道するとの考えを示しています。裁判員制度であっても、報道機関それぞれが自主・自律の精神に基づいて判断して、取材・報道することが第一義です。
一方、裁判員に対する取材で無用な混乱が生じることは当然、避けるべきです。裁判員のプライバシーや身の安全に配慮し、自由に意見を言える環境を整えることで、制度の定着を図ろうとの趣旨は理解しています。しかし、これらは決して相反するものではなく、報道機関の工夫や努力と裁判所側の協力によって、両立すると考えます。
その方法として、裁判官や裁判員による記者会見を開催し、裁判員の声を聞くことも意義があることです。裁判員経験者の生の体験談を知ることによって、新たな制度を社会に浸透させ、同時に検証することが可能になるからです。
記者会見の運営方法等は、第一義的には各地区の報道機関と地方裁判所との間で、個々の裁判に応じて柔軟に検討されるべきことです。したがって、記者会見運営の主体となるべき記者クラブは、各地区の任意の組織であるとの認識に基づき、対応いただけるよう要望します。
最後に、われわれは、これらの実現に向けて、今後も意見交換の場を継続するとともに、5月21日の制度開始以降も、運用状況や検証結果などを踏まえた検討が続けられるべきと考えており、同制度の定着のために努力を重ねていく所存であります。
この件に関する問い合わせ先:民放連〔番組部〕