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(報道発表)ケーブルテレビ区域外再送信の「大臣裁定」答申に関する会長コメント
本日、総務省の情報通信行政・郵政行政審議会は、高知県ならびに山口県のケーブルテレビ事業者からの「総務大臣の裁定」申請に対し、それぞれ答申をおこないました。これに関する社団法人 日本民間放送連盟〔民放連、会長=広瀬道貞・テレビ朝日顧問〕の会長コメントは次のとおりです。
本日、答申された2つの事案は、ケーブルテレビ区域外再送信の大臣裁定申請の審議において、「放送の地域性に係る意図」と「(ケーブルテレビの)受信者の利益」の比較衡量が争点となった初の事案であります。
高知県の事案において、民放テレビ事業者は区域外再送信に同意しない「正当な理由」があると認められたことは、「放送の地域性に係る意図」に関する当該事業者の主張を認めた妥当な判断であるとともに、大臣裁定申請に対する初めての「不同意答申」であり、評価するものです。
一方、山口県の事案(山口ケーブルビジョン株式会社の申請)について、民放テレビ事業者は区域外再送信に同意しなければならない旨が答申され、“無秩序な区域外再送信”が容認されたことは極めて遺憾であります。この事案には、二つの問題があります。一つ目は、再送信先に同じ民放テレビ系列のチャンネルがあるにもかかわらず隣接地域の同じ系列のチャンネル(重複波)の再送信を強引に求めたことであり、二つ目は、5波目(テレビ東京系列)の再送信に関して民民協議ではなく裁定によって強制的に再送信を実現しようとしたことであります。無秩序な区域外再送信は、到底容認できるものではありません。当連盟としては答申の内容を精査したうえで、関係する放送事業者と相談しながら、法的措置も含めて、今後の対応を検討します。
全国各地で、ケーブルテレビ事業者から区域外再送信の要請があれば、民放テレビ事業者は地域の実態を踏まえ十分に協議しており、多くの場合、無秩序な区域外再送信を抑制する方向で関係者の認識が一致し、解決に至っています。同じ地域におけるケーブルテレビと地上民放テレビの関係は本来、地域の発展に貢献する地域放送メディアとして連携すべきところですが、無秩序な区域外再送信は民放テレビ局の存立基盤を危うくするばかりでなく、双方の対等かつ良好な関係構築を阻害するものです。
当連盟はかねてより、放送法に基づく「地域免許制度」と有線テレビジョン放送法に基づく「大臣裁定制度」の重大な不整合を指摘しており、問題の所在は広く知られるところでありました。有線テレビジョン放送法を廃止して新放送法に統合するにあたり、有線テレビジョン放送法のみに依拠した“再送信に関する行政指針”について十分な吟味のないまま、不整合が新法にそのまま引き継がれてしまったことは、合理性や適切さを著しく欠いています。新法のもとで、行政は両制度の不整合を速やかに解消するとともに、「あっせん・仲裁」という新たな紛争処理制度の活用を促すことを含め、民間同士の協議が基本であることを改めて確認すべきだと考えます。また、今般の事案において、重要な利害関係者である再送信先の地元民放テレビ事業者からの意見聴取が行われなかったことは極めて遺憾であり、新たな紛争処理手続きにおいては、地元局の意見を必ず聴取するようにしていただきたい。
今般、大臣裁定が下されたことで、各地域の民間同士の協議の意欲が失われ、安易な大臣裁定申請が増加し、地域メディアの将来に禍根を残すことを深く憂慮します。
高知県ならびに山口県におけるケーブルテレビ区域外再送信の「大臣裁定」答申に関する会長コメント(PDF/118.3KB)
この件に関する問い合わせ先:民放連〔企画部〕