一般社団法人 日本民間放送連盟

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第61回民間放送全国大会/井上会長挨拶

 日本民間放送連盟会長の井上です。

 主催者を代表いたしまして、一言ご挨拶申しあげます。

 本日は、第61回民間放送全国大会式典にご参加いただき、誠にありがとうございます。

 また、お忙しい中をご臨席賜りました、総務大臣はじめご来賓の皆さま、本当にありがとうございます。

 

 先日、伊豆大島を襲った台風は、甚大な被害を及ぼしました。被災された方々に謹んでお見舞い申しあげます。また、被災地が一日も早く復興されることを期待してやみません。

 その一方、明るいニュースとしては、9月に2020年のオリンピック・パラリンピックが東京で開催されるという決定がございました。この決定は日本全国、そして経済を含めまして、私たちを本当に元気づけるものだと思っております。私たち放送事業者も、来る2020年には、トップアスリートの姿や平和や共存といったオリンピックの精神を視聴者に伝えられるよう、全力を尽くして頑張りたいと思っております。そして、放送を通じて日本の魅力、東京の魅力を全世界に発信してまいりたいと考えております。

 またその時には、現在のハイビジョンの画質を上回る「4K・8K」や、スマートテレビなど、新しい放送技術が披露される機会になると思います。さらには、現在以上に、スマートフォンやタブレットといった、新しい放送技術に対応した新しい端末が国民の皆さまにより一層親しみやすいものになっていると思います。

  民放事業者、NHK、総務省、メーカーが一体となって放送機器の開発、視聴者へのより豊かなサービスのための努力を続けてまいります。特にNHKは公共放送として、放送界の技術開発に先導的な役割を果たしてこられました。今後もより一層の役割を果たしてほしいと思っております。

 同時に、会員社の皆さまにも、新しい時代の新しい技術に対して常にアンテナを広く張って、それに適応できるような体制をとっていただきたいと思います。

 

 NHKとの関係について更に触れたいと思います。

 日本の放送は、受信料を財源とするNHKと、広告収入を主な財源とする民間放送の「二元体制」を続けてまいりました。私たちはお互いに切磋琢磨して、放送をより発展させるべく、努力を続けてまいりました。これは世界に類のない二元体制であり、世界的にも認められております。

 今後の「二元体制」の課題として、やはり最も大きいのはインターネットとの関係です。インターネットとの関係は各放送事業者それぞれの課題でありますが、NHKは全国組織であります。私たち民放事業者の規模と比べますと非常に強大でございますので、これから先、インターネットに取り組む際には、これまで培ってきた「二元体制」を十分に踏まえたうえで新しいジャンルに入っていっていただきたいと思います。そして公共放送としての“NHKらしさ”を発揮していただくことが、私たち民間放送との間での番組面の差異につながります。そういう形で今後も「二元体制」を維持していっていただきたいと思います。

 

 次に放送コンテンツの海外展開についてです。

 従来から民放事業者は様々な形で「コンテンツの海外展開の促進」に取り組んでまいりました。ところが最近アジアにおきましては、中国・韓国のメディアの台頭が著しく、日本の相対的な地位低下ということが言われております。 民放連としても、NHKや全日本テレビ番組製作社連盟(ATP)などの関係者の皆さまと一緒に「国際ドラマフェスティバルin Tokyo」を運営し、様々な形で海外展開を試みております。今年3月にはタイでイベントを開催し、大変な反響がございました。引き続いて日本のドラマを放送するとともに、その際には、当該番組のPRスポットを購入し、日本の番組を広げようという努力を行っております。

こうした私たちの努力もございますが、総務省の呼びかけで、新たに「放送コンテンツ海外展開促進機構」が発足いたしました。私たちもこの機構に協力し、これからも海外展開の努力を行ってまいりますが、これは一朝一夕にできるものではございません。長い期間継続して取り組むことが大切です。民放連としても一生懸命取り組みますので、政府はじめ関係各位のご支援をお願いしたいと思います。

 

 一方、ラジオにつきましては、私が会長に就任した際には、V―Lowマルチメディア放送への対応が非常に差し迫った問題でした。

 その後、民放連では本年3月にラジオ委員会が取りまとめた検討結果に基づき、V-Lowマルチメディア放送とAM放送の難聴対策用FM中継局の設置が両立するよう制度整備を求めてきたところであり、こうした制度整備が実現するものと思っております。

 そうしたことを機に、多様化するメディア環境の中で、民放ラジオの真価を発揮し、ラジオの持つ社会的価値や魅力を多くの方々に理解してもらうことを目的に、本年度から民放ラジオ全100局による一体的な取り組みとして“ラジオ再価値化プロジェクト”をスタートいたしました。これまでに民放ラジオ特別番組の放送や共通ウェブサイト「radioweb.jp」の開設、「ラジオ親善大使」の任命などを行ってまいりました。ここにお集まりの皆さまにご協力いただきながら、今後とも効果的かつ継続的にラジオの媒体としてのPR活動を展開していきたいと思っております。

 

 次に、取材・報道の自由についてです。

 政府は今臨時国会に特定秘密保護法案を提出いたしました。民放連をはじめメディア関係者としては、これに懸念を示しております。知る権利と取材・報道の自由は民主主義の要であり礎であります。民主主義を守るために私たち放送人は、情報の流通を阻害する要因については、しっかりと監視していかなければならないと考えております。会員各社におかれましても、取材・報道の自由に関わる法制度の動きについて、毅然とした姿勢で報道にあたっていただき、広く国民的関心と議論を喚起していただきたいと思います。

 

 次に放送倫理・番組向上機構(BPO)についてです。

 民放連とNHKが設置したBPOは、この7月に設立10周年を迎えました。BPOには、「放送倫理検証委員会」「放送人権委員会」「青少年委員会」という3つの役割の異なる委員会があり、常に私たちを叱咤激励していただいております。これは世界に類を見ない自主的な第三者機関であり、こうした第三者機関が私たちを見てくださっているということが「外部からの放送番組への関与は不要である」と主張できる重要な役割を果たしているものと思っております。会員各社の皆さまにおかれましても、これまでに示されてきた数々の委員会決定を貴重な糧として、日々の番組制作に取り組んでいただきたいと、改めてお願いする次第です。

 

 同時に、数多くのメディアがある中で、視聴者が放送に何を期待しているのか、私たちはその期待にどう応えていくのかとの問い掛けに対し、もう一度私たちはしっかり向き合っていかなければなりません。そこに向き合っていくことが、放送の広告媒体としての力をさらに一層強めることになると考えております。

 今年の上半期は「あまちゃん」、「半沢直樹」といった空前のヒットを飛ばしたドラマに恵まれました。改めてテレビの力、媒体力が再認識された年でもあります。私たち民放事業者はドラマばかりでなく、報道・情報、バラエティ、スポーツなど各種のジャンルの番組を放送しております。改めて各ジャンルにおいて、「視聴者は何を放送に求めているのか」「放送事業者の使命とは何か」をしっかり自問自答して、番組制作に励んでいただきたいと思います。

 

 最後になりましたが、本大会の実現のためにご尽力いただいた早河民放大会委員長をはじめ、一丸となって大会の準備を進めてこられた各社の皆さまに、心から感謝を申しあげ、ご挨拶とさせていただきます。

 

平成25年11月6日

 

                   一般社団法人 日本民間放送連盟

会 長  井 上   弘