一般社団法人 日本民間放送連盟

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第66回民間放送全国大会/大久保会長あいさつ

 日本民間放送連盟会長の大久保でございます。

 主催者を代表いたしまして、一言ごあいさつ申しあげます。

 

 本日は、ご多忙の中、日頃ご指導、ご支援をいただいております各界の方々に、多数、ご臨席をいただいております。佐藤総務副大臣、上田NHK会長はじめ、壇上と会場の双方のご来賓の皆様に、心より御礼を申しあげます。

 

 さて、この機会に、民放事業が直面している状況について、考えてみたいと思います。

 日本の放送は戦後、公共放送のNHKと民放との二元体制で、成長し、発展してきました。しかし、近年は、情報通信技術の進展、特にインターネットの普及、発達によって、民放の事業環境は厳しさを増しています。

 

 「放送と通信の融合」が進む中で、国民・視聴者は、多様な伝送路、多様なデバイスで、多様なコンテンツを、いつでも、どこでも、時間や場所に制約されずに、手軽に楽しむようになりました。

 その結果、ラジオやテレビの視聴時間が減り、インターネットの利用時間が増え、民放の最大の収入源である広告売り上げも、ここしばらく頭打ちの状況が続いています。伸び続けるインターネットは、イギリスやアメリカに続いて、日本でも間もなく、地上波テレビの広告売り上げを上回ると見られています。

 こうした変化に、率直に言って私たちは、なかなか効果的に対応できていません。

 

 私たちも、決して、技術革新に背を向けてきたわけではなく、例えば、大きな費用負担をして、地デジを完遂しました。今、4Kにも取り組んでいます。

 しかし、通信の世界、IoTで全てのモノと人がつながる「ソサエティ5.0」の社会をもたらす技術革新は、地デジなど放送の枠組みの中での技術ではなく、放送の需要を奪う、対応を誤れば民放事業の存立を揺るがしかねない、影響がきわめて大きい新技術です。

 

 このような、企業の存立を脅かす破壊的イノベーションが登場した時には、「優良な企業ほど、正しく、合理的に対応するために、失敗する」と言われています。いわゆる「イノベーションのジレンマ」です。

 これを放送業界に置き換えて見ると、私たちの放送事業は、これまで比較的、利益率の高い、広告媒体の中では圧倒的なシェアを誇る優良な業界です。それだけに、合理的に考えれば考えるほど、既存ビジネスにしがみつくことが正しい経営判断だ、ということになりかねません。

 

 もちろん、私たちはいま、失敗しているわけではありません。しかし、IoTやAIの進歩、そして放送と通信の融合が急速に進む環境の変化を考えれば、あまり時間のゆとりはないと言ってよいでしょう。インターネットと共存し、それを活用して、成長、発展していくために、私たちが自ら変わることを、恐れないようにしたいと思います。放送と通信の融合に対し、民放が足並みをそろえて対応していきたいと考えています。

 

 もう一つ、放送の公共的役割が、これまで以上に重要になっていることを再確認したいと思います。

 今年も、地震や台風、集中豪雨といった自然災害がたくさん発生しましたが、その都度、民放事業者は、国民の生命と財産を守る情報の発信に全力を挙げてまいりました。北海道全域で停電が発生した先の地震では、ラジオが伝える情報が大きな役割を果たしました。

 

 一方、ネット上では、フェイクニュースや真偽のはっきりしない情報がたくさん紛れ込んでいます。健全な世論形成、健全な民主主義の発展に悪影響を与えかねません。こうした情報に惑わされないためには、事実に基づいた、正確で公平な情報を絶え間なく送り届けるメディアの存在が不可欠です。そして、それこそが私たち民放事業者の役割であり、こんな時代だからこそ、その社会的責任は、ますます重くなっていると思います。

 総務省の調査によると、放送の信頼度は依然として国民の6割を超える高水準にありますが、残念ながら昨年は、前年より約2ポイント低下してしまいました。この信頼度を引き上げることが急務です。

 

 最後に、民放連の当面の課題について申しあげます。今年7月に、6本柱33項目からなる「放送の価値向上・未来像に関する施策」を公表し、具体化に向けて検討を進めています。サイバーセキュリティー対策、テレビの媒体価値を高めるための指標、ラジオの将来像など難しい課題ばかりです。さらに、働き方改革の円滑な実施、放送コンテンツの海外展開、憲法改正の国民投票運動に関するテレビCMの取り扱い、BPOと番組審議会の連携なども大事な課題です。来月には、新4K8K衛星放送も始まります。

 

 NHKの常時同時配信の問題については、先に8項目の要望書を提出させていただきました。NHKとの間では、放送の二元体制を堅持する観点から、競争するところは切磋琢磨し、協調分野では連携をとりながら、これまで以上に、互恵の関係を深めていきたいと考えております。

 

 いま私たちの目の前にある課題は、複雑で困難なものばかりですが、共に知恵を出し合い、共に連携し、勇気と使命感をもって、厳しい、この変化の時代を乗り越え、民間放送事業の明るい未来を、共に築いていこうではありませんか。

 

 本大会の成功のためにご尽力いただいた宮内民放大会委員長をはじめ、各社の関係者の皆様に、心より感謝を申しあげ、私のご挨拶と致します。ご清聴ありがとうございました。

 

平成30年11月7日

                   一般社団法人 日本民間放送連盟

会 長  大久保 好 男