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大久保会長年頭あいさつ
一般社団法人 日本民間放送連盟
会 長 大 久 保 好 男
2021年の年頭に当たり、謹んで新年のお慶びを申しあげます。
昨年は新型コロナウイルスの影響で、これまでに誰も経験したことのない厳しい一年となりました。年初には想像もしていなかった事態に直面し、私たち民放事業者はそれぞれの地域において、住民の健康と暮らしを守るためにどのような放送をすべきか、どのように公共的役割と社会的使命を果たすべきかを改めて考えさせられました。
この非常時に多くの人々は放送に情報を求めました。テレビ離れ、ラジオ離れが指摘されている若者世代でさえ、放送局が伝える情報を頼りにしていたことは、各種の調査結果が示しているところです。これに応えるべく、全国の民放事業者は、報道機関としての強い責任感に基づいて、正確で信頼されるニュース・情報の提供に、これまで以上に力を入れてきました。
また、各地の放送局は、コロナウイルスに関する情報をいち早く伝えただけでなく、売り上げが減少した飲食店や商店を応援する企画、さらに休校中の児童・生徒の学習支援番組などを通じて、社会・経済活動の維持に貢献してきました。
インターネット上に真偽不明の情報があふれる中、私たちはこれからも、人々の生活を支え、産業と経済の繁栄に寄与する情報と、一つでも多くの明るい話題を、視聴者・リスナーの皆さんに届けていきたいと思います。
一方、コロナウイルスの感染拡大は、私たちの事業に大きな影響を与えています。広告収入は大幅に落ち込み、イベントも中止や延期を余儀なくされました。新年も厳しい経営が続くことは間違いありません。
この難局を乗り越えるには、何よりもまず民間放送の広告媒体としての価値を高めることが重要です。民放連研究所が昨年8月に発表した「テレビの広告効果に関する研究」では、テレビは、幅広い年齢層および購買のプロセスにおいて、インターネットを大きく上回る広告効果を持っていることが立証されました。この研究は今後、広告主の皆様との共同作業を通じて、さらに発展させていきます。
またラジオでは、radikoが昨年、設立10周年を迎えました。民放連に加盟する民放ラジオの全99局が参加しており、ラジオ業界のさらなる発展のための強固な土台となっています。民放連はスポンサーの皆様にとってラジオが一層魅力的な広告媒体となるように支援していきます。
新たな事業分野を広げる取り組みも進んでいます。在京キー局を中心としたTVerは、ローカル局の参加も得ながら着実に発展を続けています。技術の進歩に背を向けることはできません。デジタル分野での技術革新を、より多くの皆様に、私たちのコンテンツに触れていただくための原動力にしていきたいと考えます。
民放連では昨年、新たに「コンテンツ海外展開委員会」を設置しました。積み重ねてきた実績と知見を共有しながら、各放送局の魅力あるコンテンツの海外展開を、これまで以上に支援していきます。
今年の夏には、延期された東京オリンピック・パラリンピック大会が予定されています。練習や調整の環境が激変する中、多くの困難を乗り越えて、この舞台を目指す選手の皆様に心から敬意を表します。民放はNHKと協力して世界のトップ・アスリートの活躍を内外の多くの人々に伝え、日本を元気にする一翼を担いたいと思います。
昨年はNHKの改革に注目が集まりました。日本の放送文化の向上には、引き続き民放とNHKによる放送の二元体制の維持が欠かせません。私たちは今後もNHKとの対話を深め、切磋琢磨しながら放送の社会的使命を果たしていきたいと考えています。
今年は民放連発足70年の節目の年です。AⅯラジオ16社が集まって1951年にスタートした民放連の加盟社は現在、地上放送193社、衛星放送11社の合計204社に広がりました。放送と通信の垣根が低くなり、放送事業者を取り巻く環境が大きく変わる中で、民放連は2018年から、「放送の未来像は自らの手で描く」との考え方に基づき、幅広い分野にわたる「民放連の施策」の検討と具体化に取り組んできました。今年も着実に前に進めていきます。
コロナ禍の中で迎えた丑年ですが、困難な状況にあっても課題を先送りすることなく、勇気と使命感を持って、一つずつ乗り越えていけば、民放事業の明るい未来は必ず拓けてくると信じています。禍転じて福となす。そんな新年にしていきましょう。皆様のご健康と事業の発展を祈念して年頭のご挨拶といたします。本年もどうぞよろしくお願い致します。