一般社団法人 日本民間放送連盟

MEMBER'S ROOM
  • サイトマップ
  • お問い合わせ
  • ENGLISH PAGE

トピックス

民間放送70周年記念全国大会/大久保会長あいさつ

 日本民間放送連盟会長の大久保でございます。

 民間放送70周年記念全国大会の開催にあたりまして、主催者を代表して、ごあいさつを申しあげます。

 

 本日は、ご多忙の中、金子総務大臣、前田NHK会長にご臨席をいただきました。岸田内閣総理大臣からは、ビデオでご祝辞を賜っております。厚くお礼を申し上げます。また、本日、70周年を記念して功労賞を差し上げることになっている日本アドバタイザーズ協会の鈴木専務理事、日本広告業協会の五十嵐理事長にもご出席いただき、感謝申しあげます。

 

 昨年は新型コロナウイルス感染拡大の状況を踏まえて、民放大会は中止し、オンライン配信でみなさまにご挨拶をしなければなりませんでした。今年は、ここにきて、感染者が急速に減ってきたことも考慮し、ウェブによる配信を併用しながら、人数制限付きとはいえ、各社の方に会場にお集まりいただくことができました。百年に一度というパンデミックですが、ウイズ・コロナの新しい日常への移行を本格的に始める時期に来ていると思っています。

 

 さて、民間放送がうぶ声をあげてから今年で70年となります。民間放送は、日本放送協会が放送を独占していた戦前への反省から、民間主導の放送局の必要性を痛感した経済界の人々や新聞人が中心となって、1951年に生み出されました。

 それ以来、民放は、自由で闊達な放送により、国民、視聴者に確かな情報と健全な娯楽を、無料でお届けし、民主主義社会を支える社会基盤としての使命を果たしてまいりました。もちろん、この無料広告放送というビジネスモデルの確立には、広告主や広告会社のみなさんのご理解とご支援が不可欠です。改めて心より御礼を申し上げます。

 また、NHKと民放による放送の二元体制も、日本の放送文化の発展に大きな役割を果たしてきました。NHKの皆さんとは、今後も、切磋琢磨し、競争と協調の健全な関係を深めていきたいと思います。

 AMラジオから始まった民放は、1953年のテレビ放送開始をはじめ、FM放送、テレビのカラー化、衛星放送、地上放送のデジタル化と、新しい技術を取り入れながら進化を続けてきました。情報通信にかかわる技術の最先端を歩いてきたと言ってよいと思います。

 しかし、この10年間、放送の外側で、スマートフォンの普及をはじめとした情報通信の劇的な技術革新が起こり、放送事業を取り巻く環境は大きく変化しました。

 テレビ受信機のネット接続率は伸び続けており、総務省の令和2年通信利用動向調査によれば、テレビ受信機でインターネットを利用したことのある人は2割に達しています。そして、コロナ禍によるステイホームの影響で、テレビ番組の視聴時間とともに、動画配信サービスの利用時間が伸び、それもいわゆるリビングデバイスでの視聴が伸びているというデータも出ています。人々は既に、テレビを放送受信専用の機械ではなく、多機能・高品質な大画面モニターとしても使い始めていることを示すものです。

 ラジオはいち早くradikoという新たなサービスに乗り出し、スマートフォンを通じて若い世代との接点を生み出すことに成功しています。テレビ事業も、技術の進展がもたらす環境変化に、自ら進んで積極的に対応することを迫られています。

 

 こうした変化の時代にあって、私は2018年に民放連会長に就任した際、「自らの道は自ら切り開く」との方針に基づいて、民放の価値を高め、民放の未来像を自らの手で描く施策に取り組みたいと考えました。そして、各専門委員会のご協力を得て、第1期、第2期の施策を進め、昨日の「放送の価値向上・未来像に関する検討推進会議」で最終報告を行いました。

 

 この間、私たちが常に念頭に置いていたのは、次の2つの視点です。

 一つは、影響力の大きい放送の社会的責任を自覚し、公共的役割をしっかりと果たすということです。

 民放連の施策のトップには、「放送に対する国民・視聴者の信頼の確保」を掲げました。そして、「新型コロナウイルス感染症の差別・偏見」を防ぐ取組みや、番組審議会の見える化など、放送倫理の向上に関する様々な施策を実施してきました。

 インターネットの発展により、人々が受け取る情報のパーソナライズ化が進み、趣味や嗜好にあわせて細分化した情報を受け取ることができるSNSサービスが隆盛を極めています。しかし、便利な一方で、その弊害も次第に顕著になってきました。とくに、事実に基づかない情報や極端に偏った見方がSNSを通じて瞬時に拡散し、他人を傷つけ、社会の分断を招いています。

 これに歯止めをかけ、健全な民主主義社会を維持していくためには、事実に基づいた、公正で信頼される情報を、国民に絶え間なく届けるメディアが不可欠です。

 幸い、民放各社の情報は国民から高い信頼を得ています。読売新聞が10月に発表した世論調査では、「ニュースを知るために主に利用するメディア」のトップが民放テレビでした。また、「新型コロナに関する情報を得るうえで特に信用している」メディアでも、昨年に続き、民放がNHKや新聞を抑えてトップでした。

 技術革新によって放送と通信の垣根は今後、一段と低くなることが予想されますが、そうであればこそ、健全な民主主義社会のインフラとしての民放の役割は一層、重要になると確信しています。その要請に応えることこそが、私たち放送事業者の最も重要な使命であり、また事業の永続に繋がる生命線だと思います。

 

 もう一つは、放送事業を取り巻く厳しい経営環境をどう乗り越えていくか、という視点です。

 私たちの事業を明日につなげていくために、民放連の各委員会は、「放送・通信融合への対応」「放送広告の価値向上」「放送コンテンツの海外展開」「ラジオの将来」「ローカル局の業務支援」など多岐にわたる施策を展開いたしました。

 具体的には、テレビの広告効果に関する研究を進め、テレビの媒体価値がインターネットを大幅に上回ることを実証しました。ローカル局の業務支援では、人材採用支援事業の展開やローカルテレビの経営基盤強化策の共有など、着実な成果をあげています。

 この場を借りまして、取り組みを具体化していただいた各専門委員会ならびに関係者のみなさまに、改めて御礼を申しあげます。

 

 民放連は来年以降も、こうした課題に引き続き取り組んでいかなければなりません。大きな転換期を迎えるなか、それぞれの会員社の求めるものが多岐にわたることも想定されます。そうした場合においても、民放各社が取りうる経営の選択肢を共有・研究し、制度的な妨げがある場合には経営の選択肢を拡大する方向で、改革していくことが必要だと考えます。むろん、この点に関しても、外部から指示されるのではなく、「自らの道は自ら切り開く」という自助の精神で取り組まなければなりません。

 時代の変化を見据え、「挑む勇気と使命感」を忘れずに、「変える勇気」と「守る勇気」を併せ持って、民間放送100年をめざして歩みを進めていきたいと思います。

 最後になりましたが、本大会の実現のためにご尽力いただいた石川・民放大会委員長をはじめ、大会の準備を進めてこられた関係者の皆さまに、心から感謝を申しあげ、ごあいさつといたします。ご清聴ありがとうございました。

 

2021年11月9日

                   一般社団法人 日本民間放送連盟

会 長  大久保 好 男