表彰番組・事績
2019年日本民間放送連盟賞
番組部門
〔ラジオ報道番組〕
最優秀 消せない記憶~元学徒兵の苦悩~
琉球放送
制作・構成・取材 狩俣倫太郎、ナレーション 諸見里杉子、出演 宮平盛彦
沖縄戦で学徒動員された中学生たちは、法的根拠もないまま「志願」の名目で召集され、軍隊と行動を共にして多くの犠牲者を出した。一方で、生き残った元学徒たちもその後の人生で下ろすことのできない十字架を背負わされることになる。73年前、14才で戦場に駆り出された宮平盛彦さんはこれまで語ることができなかった「消せない記憶」に向き合う。
声だからこそ“戦争の狂気”を生々しく伝えることに成功している。「あなたならどうするか」と問いかけてくる、心を揺さぶる力作である。
優 秀 弾圧 ~表現教育は踏みにじられた~
山形放送
取材・構成 伊藤清隆、編集 奥山 剛、語り 青山友紀
昭和初期、山形県の小学校で、自分の目で社会を見つめ、絵や文章で表現する教育が進められていた。「想画」約900点と「生活綴り方」と呼ばれる詩や作文は、いまも小学校に受け継がれている。当時、これを実践していた国分一太郎は、その教育が治安維持法違反であるとして検挙される。絵画や作文教育が罪に落とされた「時代」を掘り起こす。
自由に表現できる社会の大切さをリスナーに訴えかけることは、ラジオメディアの重要な使命であると言える。絵画を言葉や音で伝える試みも成功している。
優 秀 報道ドキュメンタリー SCRATCH 差別と平成
TBSラジオ
プロデューサー 竹島史浩、鳥山 穣、ディレクター 神戸金史
RKB毎日放送との共同制作番組。津久井やまゆり園に押し入り、46人を殺傷した植松聖被告は「障害者は生きている価値がない」と語った。「自分と他者との間に線を引き、向こう側の人々の尊厳や存在を認めない言動」(スクラッチ行為)と相模原事件は底流でつながっていると感じた神戸金史記者は、真の動機を探るため、植松被告と面会を重ねる。
接見でのやりとりは、再現であるとわかっていても、その時の緊張感が伝わってくる。誰もが自らの差別意識と向き合うことになる、優れた作品である。
優 秀 SBCラジオスペシャル 獄窓のレジスタンス~檻の俳句会
信越放送
プロデューサー 小林徳明、ディレクター 清沢康夫、ナレーター 久保正彰、出演者 マブソン青眼
太平洋戦争開戦への空気が高まる中で、治安維持法により44人の俳人が特高警察に検挙された「新興俳句弾圧事件」。この事件で弾圧された俳人17人の名誉を回復するため、2018年冬に「俳句弾圧不忘の碑」と俳人たちの作品を紹介する「檻の俳句館」が生まれた。俳句館の館主である俳人・マブソン青眼さんが主宰する俳句会を1年にわたって取材した。
俳句をベースに、平和や民主主義を語り合う自由な雰囲気が、番組を通して伝わってくる。埋もれた事実を掘り起こし、多くの人に伝えていくこともラジオの重要な役割である。
優 秀 CBCラジオ特集「あなたとわたし」
CBCラジオ
プロデューサー・ディレクター・音響効果 菅野光太郎、構成 尾関功次、ナビゲーター・テーマソング 河原崎辰也
日本では地域に住む外国人労働者の数が増え続けている。ごみ問題や騒音など、地域住民とのトラブルも起こっている。パーソナリティの河原崎辰也が、30年前から外国人移住者が増えた豊田市保見団地の住民など、外国人移住地域の先輩たちの生の声を取材。地域の人たちからの目線で、外国人労働者移住の問題点を掘り下げる。
タイムリーなテーマ設定で、多くの人が関心を持って聞くことができる番組である。インタビューを重ねることで、法律の不備といった制度上の課題も明らかにしている。
優 秀 「10.19」 ~7時間33分の追憶~
朝日放送ラジオ
プロデューサー 八木原明俊、ディレクター 石原正也、構成 岡内義人、出演者 伊藤史隆
昭和63(1988)年のパ・リーグの優勝争いは最終盤に来て熾烈を極める。10月19日「ロッテ対近鉄」のダブルヘッダーで近鉄が連勝すれば近鉄の優勝、それ以外は西武の優勝という状況になっていた。吹石徳一、村上隆行、梨田昌孝、阿波野秀幸、大石大二郎、中西太……。選手らがどんな思いでゲームに臨んでいたのかをインタビューで明らかにする。
丁寧な取材で番組に深みが出ている。近鉄の豪快な野球が当時の実況とともによみがえり、当時のファンにはたまらない作品となっている。
優 秀 緊急放流=逃げろ!~誰が命を奪ったのか~
南海放送
プロデューサー 松本直幸、ディレクター 植田竜一、取材・リポート 百合田彩、ナレーション 松岡宏忠
2018年7月7日、西日本豪雨により愛媛県では肱川が氾濫。西予市野村町で5人、大洲市で3人が死亡した。住民への取材で、野村ダムが緊急放流をしたために肱川が氾濫したという事実が明らかになる。しかも、西予市が野村地区の住民に避難指示を出したのは、緊急放流のわずか1時間10分前であった。
遺族や住民、行政などに丹念な取材を重ね事実を明らかにしていく、まさに報道番組であると言える。リスナーが一緒に取材しているような気になる構成も巧みである。
〔ラジオ教養番組〕
最優秀 マリエのように
CBCラジオ
プロデューサー 森合康行、ディレクター 森理恵子、取材協力 太田哲太郎、語り 増田喜昭
小崎麻莉絵さんは余命5年の宣告を受けたものの、療養生活を経て社会復帰を果たした。この体験を契機に、外見では病気・障害とわかりにくいが本当は周囲に援助や配慮を求めている「ヘルプマーク」の普及活動に尽力する小崎さんの前向きな思いを描く。
小崎さんの言葉の貴さ、美しさ、今生きているということがみずみずしく描かれている。さまざまな場面で引用される谷川俊太郎さんの詩や、小崎さんを際立たせるナレーションなど構成的にも優れた番組。
優 秀 らじ丸スペシャル おひさまのあたる場所
青森放送
プロデューサー 山本鷹賀春、ディレクター 夏目浩光、構成 小山田文泰、出演 松山明絹子
児童養護施設で生活していた子どもたちは、高校卒業、高校中退などを機に施設を出て、自立することが求められる。しかし、退所後にトラブルが起きた時には親がいないため相談する人がいないことがある。そうした子どもたちのため、アフターケア活動に取り組もうとする主婦の松山明絹子さんの姿を描く。
日本社会の盲点に光を当てた番組。取材者として松山さんの取り組みを伝えたい気持ちが伝わってくる。構成も巧みで「おひさまのあたる場所」がどんな場所かよくわかる。
優 秀 朝の小鳥 65年のコーラス
文化放送
プロデューサー・ディレクター・構成 中場健太、監修 松田道生、出演 石川真紀、鈴木寛子
「朝の小鳥」は1953年5月に放送がスタートした文化放送の最長寿番組。爽やかな野鳥の声を毎週届けている。放送65周年の本記念特番は「故・蒲谷鶴彦氏ドキュメンタリー」「65周年 特別鼎談」「都立浜離宮恩賜庭園バードウォッチング」の三部で構成。
現在では録音することが難しい貴重な野鳥の音源が番組随所にうまく盛り込まれている。エンディングで流れる50年前に軽井沢で録音された野鳥たちの大コーラスは圧巻。
優 秀 SBCラジオスペシャル「あ、あ、あ、あのね~間違いだらけの吃音理解」
信越放送
プロデューサー 小林徳明、ディレクター 笠原公彦、スタジオ進行 飯塚敏文、スタジオ出演 餅田亜希子
吃音の症状がある人は100人に1人、国内でおよそ100万人と言われるが、正しく理解している人は200人に1人もいないかもしれないという。言語聴覚士が正しい知識を解説するとともに、吃音に対する周りの理解の必要性や、そうした環境整備の難しさを、実例を交えて紹介する。
多くの人にとって普段あまり意識していない吃音を考えるきっかけとなる番組。番組後半で、前半の解説を整理するなど、聴取者の理解が深まる番組構成となっている。
優 秀 上野誠の万葉歌ごよみ 令和記念スペシャル
毎日放送
プロデューサー・ディレクター 嶋田美希、出演者 上野 誠、上田悦子、東儀秀樹
番組は毎週一首の万葉歌を詠みながら季節の移ろいや、古代の人々の心のありようを伝えている。新元号「令和」が万葉集から採られたことを記念したスペシャル番組では、東儀秀樹さんをゲストに、雅楽を交えながら、令和の元となった「梅花の歌」序文の意味などを解説し、万葉集の魅力を伝えていく。
難しい万葉歌を親しみやすく解説し、気軽に楽しく聞くことができる。令和改元にふさわしい、「今の関心」に応える番組。
優 秀 流川教会に響くハレルヤ~ヒロシマに届いたクリスマスプレゼント~
広島エフエム放送
プロデューサー 屋形英貴、企画・構成・演出・ナレーション 中川真由美、音声収録 神崎修平、音声収録監修 草田 智
原爆投下から2年後の1947年、広島市の広島流川教会にアメリカからヘンデル作曲の讃美歌「メサイア」の楽譜が届いた。現在まで大切に歌い継がれている曲である。メサイアと広島流川教会の牧師であった谷本清さん一家にまつわる物語を紹介していく。
2018年12月に広島流川教会で行われた「アドヴェント音楽礼拝メサイア」の音源を織り交ぜながら、巧く構成されている。当時コーラスに参加した男性や、谷本牧師の長女である近藤紘子さんの証言は、広島の原爆を語るうえで新たな材料を与えてくれる。
優 秀 延岡大空襲追悼企画『うまれたまちで』
宮崎放送
企画・構成・演出 小倉 哲、原作・脚本 やぐちむつみ、主演 池田知聡、音楽・主題歌 INO hidefumi
延岡出身で特攻隊長として知覧基地から出撃した黒木國雄さんと、父・黒木肇さんとのたくさんの手紙に綴られた家族の物語を基に作られた戯曲をベースにしたラジオドラマ。黒木國雄さんの弟で、延岡市に住む黒木民雄さんの証言を交えながら、1945年6月29日未明の「延岡大空襲」にも迫っていく。
戦争体験者が少なくなる中、ドラマ形式で語り継いでいく新たな試みである。声優に延岡市在住の役者らを起用することで、自らの町で起こった事を伝えたい気持ちが伝わる。
〔ラジオエンターテインメント番組〕
最優秀 あの小説の中で集まろう
横浜エフエム放送
プロデューサー 神戸竜太、ディレクター 林 久美、DJ 燃え殻、秀島史香
地元在住の会社員であり作家でもある燃え殻氏を起用した深夜番組。ツイッターのハッシュタグ「#あの小説」で募集した「あなたのおすすめ小説」を紹介しながら、その小説にまつわるリスナーの思い出や音楽、燃え殻氏が小説の出版で変わったことや取り戻したこと、深夜ラジオへの思いなど夜明けに向かってさまざまな言葉が交わされていく。
パーソナリティーの「教えてください」というスタンスはリスナーとの関係性が絶妙で、ラジオの中のワークショップとなっているとして高い評価を得た。
優 秀 絆みやぎ明日へ 陽はまたのぼる
東北放送
ディレクター・ナレーション 古野真也、ミキサー 長田英之、プロデューサー 鈴木俊樹
気仙沼市階上地区にある地福寺の片山秀光住職は音楽で仏教の教えを説く音楽説法グループ「カッサパ」で活動。東日本大震災で寺は全壊、多くの檀家も犠牲となる。遺族に寄り添い祈り続ける中、「カッサパ」は震災を語り継ぐグループとして再び活動を始める。
構成と編集の技術が素晴らしく、震災を伝え続けていく番組としての視点が優れており、聴きごたえがある。
優 秀 神田松之丞 問わず語りの松之丞
TBSラジオ
ディレクター 戸波英剛、AD 持田 徹、構成 佐藤 研、笑い屋 重藤 暁
いま最もチケットが取れない講談師が語る「生命(いのち)」。初めての子どもが誕生した松之丞。産後、自宅に戻った妻が出血多量で意識を失い倒れてしまう。真っ青になって救急車を呼び、泣きわめく乳飲み子を抱えて右往左往。10分も経たぬうち玄関の呼び鈴が鳴り、ドアを開けたら……。一本の映画にも匹敵するジェットコースターのような30分。
フリートークと講談が融合した見事な語り芸。トークで取り上げる市井の人々が、まるで物語の登場人物のように生き生きしており、新しいラジオの語り芸だと感じさせる。
優 秀 富山すみます芸人フィッシュ&チップスのこのままじゃ、すみません! ~すみます住職探訪篇~
北日本放送
ディレクター 柴田明夫、出演 フィッシュ&チップス(金本和幹、伊藤委裕)、ナレーション 柳川明子
富山住みます芸人の二人が、同じく県外から移住して新しい風を吹き込む3人の住職を訪ねて紹介。日米ハーフの住職は祈願寺としての再生に奮闘。既婚だが出家した住職は単身赴任で終活の普及に注力。歌人としても活動する住職。変わりゆくお寺の姿を伝える。
登場人物がいずれも魅力的で、さりげない語りの中に法話が織り込まれた住職の話が興味深く、知的好奇心をくすぐられる秀作である。
優 秀 Whisky a Go Go
大阪放送
プロデューサー 藤野浩史、DJ・制作 土山和子、ディレクター 伊藤佳代子
音楽とウイスキーの意外な繋がりを掘り下げ、ウイスキーのプロたちがセレクトするウイスキーと音楽を届ける番組。酒を酌み交わす空間に火をつけるよもやま話と、日本人初のウイスキー殿堂入りを果たしたブレンダー輿水精一氏のウイスキー作りへの思いを紹介。
テーマが明確でウイスキーにまつわる薀蓄や情報を含んだ演出と選曲が素晴らしく、輿水氏のインタビューを挿入することで深みを増しているとして評価を得た。
優 秀 スペイン音紀行 「Viva La Vida ~魂のフラメンコ~」
広島エフエム放送
プロデューサー 屋形英貴、パーソナリティー 神原隆秀、ディレクター 森島隆宏、音声 西村 卓
フラメンコ発祥の地スペイン・アンダルシア地方南部のセビリアで、歌と踊りとギターがかみ合ったとき感じられる幸せな瞬間である「ドゥエンデ」という言葉に出会う。それは「自分の内側から出てくるもので、学校で学ぶと消えてしまう」という。フラメンコを生み出した流浪の民ロマの集落に向かい、フラメンコに宿る魂に触れる旅を伝える作品。
現地の音を丁寧に録音した取材が素晴らしく、旅情感やワクワク感がうまく表現されており、同行している気分にさせてくれる構成が見事な力作である。
優 秀 ~さようなら九電記念体育館~プロデューサーNが残した宝物の木箱から
RKB毎日放送
プロデューサー 藤井義久、制作・構成 津川洋二、技術 塩塚実納、ナレーション 田中みずき
2019年3月末、55年の歴史に幕を閉じた福岡・九電記念体育館で1981年に開催されたRKB主催「九州ニューミュージック・フェスティバル」。南こうせつ、海援隊、井上陽水らの出演で5000人のファンが詰めかけた。残された音源を紐解き、出演者の思い出話から、企画したRKBラジオのプロデューサーNこと野見山実へと話が広がっていく。
残されていたライブ音源とNの偉業を掘り起こすことで、九州の音楽家とスタッフが日本の音楽界に影響を与え続けた事実を現代に伝えているとして評価を得た。
〔ラジオ生ワイド番組〕
最優秀 平成ラヂオバラエティごぜん様さま 4000回記念大感謝祭
中国放送
プロデューサー 手島啓介、ディレクター 馬越弘明、村山太一、黒元敬太
月~金/9時~11時32分の放送。昨年7月に広島県内全域で甚大な被害を及ぼした西日本豪雨から3カ月。放送4000回を記念した5時間半にわたる特別番組では、パーソナリティが運転を再開したJR在来線に乗り、各市町のリスナーと触れ合いながら、戻りつつある日常の風景を中継レポートした。
放送4000回目という節目の回にもかかわらず、過去の放送の振り返りではなく、広島の“いま”に焦点を当てる姿勢に感銘を受けた。
優 秀 GO!GO!らじ丸 なつめ広告代理店 平成最後の昭和の日
青森放送
プロデューサー 山本鷹賀春、パーソナリティ 夏目浩光、アナウンサー 筋野裕子、ミキサー 大嶋耕介
月~金/11時55分~16時の放送。「昭和の日」にピアノがある場所で歌声喫茶をやりたいとして情報を呼びかけたところ、15年前に閉校となった小学校に古いピアノがあることが分かった。番組では企画を変更し、小学校の卒業生やゆかりのある人に集合するよう呼びかけ、小学校の思い出を語り合う時間にした。
企画の出発点にこだわらない柔軟な番組作りが光る。想像をかきたてる生放送ならではのレポートや情景描写など、耳にしたことが目に浮かぶようであり、引き込まれる。
優 秀 GOOD NEIGHBORS
J-WAVE
プロデューサー 蛇草有里子、ディレクター 廣木卓也、構成 下田恵美、ナビゲーター クリス智子
月~木/13時~16時30分の放送。「人を通していまを知る」がキーワードの番組。2つの生ゲストゾーンではさまざまなジャンルのゲストを“ネイバーさん”と称しトークを展開する。平日の午後に合った選曲とともに、番組を作り上げる。今回の放送ではカメラマンの矢巻美穂氏やジャズピアニストの大江千里氏と国際色豊かな会話を繰り広げた。
ナビゲーターがゲストの魅力を引き出し伝えている。どのシチュエーションでも気持ちよく聞くことのできる選曲が優れている。
優 秀 はみだし しゃべくり ラジオ キックス
山梨放送
プロデューサー 佐藤かおり、ディレクター 渡邉 尚、パーソナリティー 梶原しげる、アシスタント 塩澤未佳子
月~金/13時~16時30分の放送。「電話詐欺」について取り上げた今回の放送では、リスナーが録音に成功した、山梨放送のアンケートを騙る「アポ電」の音声データを入手。専門家による対処法や寸劇による啓発活動など、番組全体を通して、分かりやすくリスナーへの注意喚起を行った。
さまざまな角度から問題を取り上げている。地域での活動も多く紹介され、すぐに実践できる話題が凝縮されている。
優 秀 つボイノリオの聞けば聞くほど 休日特集 大人だって困っているんだぞ
CBCラジオ
パーソナリティ つボイノリオ、プロデューサー 佐藤陽介、構成 加藤正史、ディレクター 日野靖子
月~金/9時~11時55分の放送。つボイノリオと小高直子アナウンサーがパーソナリティを務め、リスナーから送られてくるお便りをもとにみんなで語り合う番組。今回は「性の先進国」と言われるスウェーデンへ嫁いだ日本人女性や、YouTubeで正しい性の知識を発信する大学生にインタビューし、「子どもと性」について考える。
日本では「性」について、被害・加害と結びつけられる議論が多い中で、日常の悩みをラジオで扱うことに大変意義があった。上から目線の評論にならない進行が秀逸。
優 秀 よなよな・・・
朝日放送ラジオ
プロデューサー 鈴木洋平、ディレクター 篠原そわか、出演者 鈴木淳史、原 偉大
月~木/22時~1時の放送。音楽を中心に少し濃い目のカルチャーを扱うトーク番組。今回は、その年に番組がよく関わったバンドやアーティスト2組をスタジオに迎え、音楽業界で言うところの“対バン”の形で生演奏する年に一度の企画を放送した。
学園祭のような空気感を感じ、痛快に笑える番組。リスナーがこの企画を楽しみにしていることがひしひしと伝わってくる。
優 秀 たけまる商店 営業中!
南日本放送
ディレクター 相原尚典、メインパーソナリティー 桂 竹丸、アシスタント 米澤瑠美、気象予報士 増永吉亨
日曜/10時30分~12時50分の放送。落語家真打の桂竹丸をメインパーソナリティーに、落語家ならではの噺や「なぞかけ」のコーナーなどを展開している。今回の放送日は、屋久島で50年に1度の記録的大雨が観測されるなか、通常の生ワイド放送を維持しつつ、屋久島からの中継などを交え、大雨に対する情報を臨機応変に提供し続けた。
記録的な大雨のなか放送していることを意識しつつ、なぞかけコーナーなど、通常の放送も維持したバランスは見事である。
〔テレビ報道番組〕
最優秀 聖職のゆくえ~働き方改革元年~
福井テレビジョン放送
プロデューサー 横山康浩、城戸利仁、ディレクター 小川一樹、カメラ・編集 斎藤佳典
現在、教員の超過勤務は約80時間の過労死ラインに達しているが、現実の過労死認定には1971年制定の「給特法」が立ちはだかる。即時改正を求める現職教員の姿を追って立法の経緯に迫る一方、1年間にわたり学校現場の実態を取材。そこでは多くの教員が休憩も取らず、残業という感覚もなく、早朝から深夜まで働き続ける姿が浮き彫りとなった。
取材が困難な学校にカメラを入れるとともに、給特法成立の経緯を詳らかにし、歴史的経過が生み出した今日的で普遍性のある問題に焦点を当てたことが高く評価された。
優 秀 原発避難家族の挑戦!-福島・愛媛 岐路に立つ二重農業生活-
テレビユー福島
プロデューサー・記者 桶田 敦、記者 森田雅章、カメラマン 吉田尚史、矢野誠二
福島県南相馬市小高区は2011年3月の原発事故直後に強制避難となったが、2017年にはコメの作付け制限が解除。渡部寛志さんは、避難先の愛媛でも農業を続けながら福島でのコメ作りも再開させたいと春と秋だけ戻ることを決断。コメ作りは上出来の1年となったが、夫婦の断絶という現実が横たわっていた。8年間の密着で人生の岐路を描いた作品。
何かに突き動かされるような主人公の姿と、両親の間で揺れる思いを抱える長女が印象的で、長期間にわたる取材で対象者との信頼関係が伝わる良作である。
優 秀 NNNドキュメント18 首都圏の巨大老朽原発 再稼働させるのか‘東海第二’
日本テレビ放送網
チーフプロデューサー 有田泰紀、ディレクター 川崎正明、撮影 副枝保孝、編集 小林弘幸
首都圏に最も近い東海第二原発で、東日本大震災では津波で一時、外部電源が喪失したことは知られていない。茨城県の10市町村トップは避難計画策定の困難さを指摘。シミュレーションでも避難が困難であるにもかかわらず、再稼働を目指す国の姿勢を伝える。
論点を整理し、視聴者が考えるための材料が提示されており、社会や視聴者に対する問題提起としての機能を果たしていることに評価を得た。
優 秀 SBCスペシャル 汐凪の花園~原発の町の片隅で~
信越放送
プロデューサー 上條剛正、ディレクター 手塚孝典、取材・語り 三島さやか、撮影 橋爪忠博
福島第一原発の事故で避難を余儀なくされた木村紀夫さん。長女と移り住んだ長野県白馬村から毎月、帰還困難区域の大熊町に通い、津波で壊滅した自宅近くの瓦礫の中から次女・汐凪さんの遺骨の一部を見つけた。その周辺に汚染物質の中間貯蔵施設設置を求められて拒んでいる。長女の東京進学を機に大熊町に戻る木村さんの8年に寄り添った作品。
いまなお続く原発事故の中を生きることを強いられる主人公にとって、言葉にならない人生の不条理を映し出している映像は力があり、高い完成度に評価を得た。
優 秀 筆で伝える想い~ダウン症の書道家がつなぐ被災地~
サンテレビジョン
プロデューサー 永谷和雄、ディレクター 橋本陽子、撮影 鎌田一成、湯浅輝美
神戸市に住むダウン症の隅野由子さん(34歳)は書道家として国内外で広く認められている。東日本大震災の発生以降、希望していた東北行きが実現。被災地での交流を通して感じた「命」についての想いを伝える、隅野さんの「魂の活動」に密着した番組。
障害のある書道家から発せられる言葉が素晴らしく、それらが作品として多くの人の心を掴む力を示した感動作である。
優 秀 メッセージ「引き裂かれた家族~ハンセン病孤児たち 初めての告白~」
RSK山陽放送
プロデューサー 佐藤紳朗、ディレクター 米澤秀敏、撮影 宮﨑 賢、ナレーション 竹下景子
医学的根拠のないハンセン病の隔離政策で過酷な差別にさらされた元患者の家族560人余りが国に謝罪と損害賠償を求めた裁判。国は「隔離政策の対象は患者であり、家族ではない」などと責任を認めようとはしない。勇気と覚悟を持って告白した家族の証言を集め、差別と偏見で苦難を強いられた姿を浮かび上がらせた作品。
カメラの前で被害を語ってくれる人は少ない中、丁寧な取材で実態を明らかにし、視聴 者が自らの人権感覚を問いただす機会となる力作である。
優 秀 軽傷ではない~奪われた夢 希望の帆~
長崎文化放送
プロデューサー 関川修一、ディレクター 志久弘樹、カメラマン 小川 豪、ナレーター EXILE TAKAHIRO
プロのトランペット奏者を夢見て音大の推薦入試に向かう18歳の女子高生は突然、交通事故に遭う。母親が運転する乗用車と飲酒運転の対向車の正面衝突が夢を奪った。大人になり、教師としてわずか17人の吹奏楽部を率いてコンクールの金賞に挑む。恩師の「諦めなければ終わりじゃない」の言葉を胸に、夢の続きを追う姿をとらえた作品。
たとえ軽傷であっても不慮の交通事故が被害者の人生を大きく狂わせる理不尽さと、主人公の無念さを滲ませながらも再起にかける情熱が伝わってくる秀作。
〔テレビ教養番組〕
最優秀 第33回民教協スペシャル 想画と綴り方 ~戦争が奪った子どもたちの“心”~
山形放送
プロデューサー・チーフディレクター 伊藤清隆、ディレクター 奥山 剛、熊坂太郎、ナレーター 余貴美子
昭和初期、山形県では「想画」や「生活綴り方」という、自らの目で社会を見つめ、表現する教育が進められていた。その中心の一人が国分一太郎という青年教師だ。表現への統制が強まる中、国分は治安維持法により検挙される。綴り方教育がなぜ罪になるのか、表現による教育が罪に落とされた時代を掘り起こし、今の日本を見つめ直す。
国からの弾圧や表現の自由についての考え方を想画や時間軸でまとめて表現している。想画が画面に映え、当時の子どもたちの心情を見事に映し出している。
優 秀 ノンフィクションW 野村家三代 パリに舞う ~万作・萬斎・裕基、未来へ
WOWOW
制作統括 射場好昭、監督 稲垣綾子、プロデューサー 長野公美
人間国宝の野村万作、さまざまなジャンルで活躍を見せる萬斎、狂言師として歩みだしたばかりの裕基。フランス・パリにて親子三代で“狂言師・究極の舞”と呼ばれる「三番叟」を日替わりで舞うという前代未聞の舞台に挑む。三代が現役として共有する「挑む」という姿勢を特別な公演を通して描き、生きた伝統の現在と未来を伝える。
伝統がどのように伝承されていくか、野村家三代を通して表現されている。臨場感のある三者三様の舞台がカメラワークにより美しく表現され、引き込まれる。
優 秀 チャンネル4「人生の湯 城下町の一角で・・・」
テレビ信州
ナレーター 杉山裕子、音効MA 渡辺一郎、ディレクター・撮影・編集 久和健一郎、プロデューサー 松岡 隆
長野県松本市で明治時代から続く老舗の銭湯「塩井乃湯」。常連客の協力とともに、お湯を守り続け、笑顔の花を咲かせてきた。しかし、高齢化の波は容赦なく銭湯を襲い、みるみるうちに見慣れた顔が消えていく。城下町の一角に残る銭湯と常連客を5年間にわたり記録し、抗えない現実の中で、そこに生きる人々の姿を伝える。
同じコミュニティーを追い続け、急速に進む高齢化と地域コミュニティーの衰退について、地域の温かみを交えつつ、ローカル局ならではの切り口で問題提起している。
優 秀 沈黙の山
チューリップテレビ
制作統括 服部寿人、プロデューサー 中村成寿、ディレクター 五百旗頭幸男、撮影・編集 西田豊和
突然持ち上がった「立山黒部の世界ブランド化」計画。豪雪地帯で知られる立山では、その過酷さを知る周辺宿泊施設は冬季の営業を休止する。多くの危険が潜む厳冬期の立山に観光客を呼び込もうという構想はなぜ生まれたのか、県が進める計画の陰を追う。
重要な課題を丁寧に説明し、視聴者に対し説得力を持って問題点を伝えている。立山の厳しく美しい環境を映し出す映像も圧巻である。
優 秀 ザ・ドキュメント ファミリー 2人のママがいる
関西テレビ放送
プロデューサー 萩原 守、ディレクター 宮田輝美、撮影 粟村文彦、編集 樋口真喜
樋口家は特別養子縁組で2人の乳児を迎えた。真実告知され、2人のママがいることを理解しはじめ、人とは違うことに戸惑う兄のいっちゃんと、障害を持つ妹のみぃちゃん。血のつながらない家族がなんでもない日々を重ね、本当の家族になっていく様を見つめ、“家族”とは何かを考えていく。
特別養子縁組に関わる人々の事情を多角的に伝えている。不妊治療や児童虐待が社会問題となっているなか、家族のあり方とは何かを問いかけている。
優 秀 「回天 二つの心」
山口朝日放送
プロデューサー 諸岡 亨、ディレクター 高橋 賢、ナレーター 山根基世、音響効果 渡辺真衣
人間魚雷・回天の搭乗員、塚本太郎さんが残した約2分半の肉声は、前半と後半の内容で大きく異なる内容のメッセージであった。家族や故郷に対する惜別の念と、殉国の精神、肉声を聞いたさまざまな立場の人とともに家族とは何か、戦争とは何かを考える。
塚本さんの本心はどちらであったのか、その解釈を幅広い世代に問うことで、残された肉声が昔と今をつなぐ貴重な媒体となっている。戦争体験者が少なくなる中で、あらためて戦争について考えさせられる。
優 秀 タミばあちゃんの終活 ~いのちと向き合った1年~
宮崎放送
プロデューサー 馬登 貴、ディレクター 堺 玲奈、撮影・編集 松尾定紀、MA 守安 章
軽度の認知症を患う89歳のタミばあちゃんの「終活」を孫がディレクターとして記録した作品。残された時間で、「パラオに行こう」という口癖をかなえるべく、祖母の生まれ故郷、パラオへ向かう。誰しもに訪れる身内の死と向き合うドキュメンタリーである。
パラオに到着後、自分自身がパラオにいることを理解した際に見せた祖母の明るい表情が鮮明に映し出され、胸を打たれる。
〔テレビエンターテインメント番組〕
最優秀 ぶちかませ!小町~泣き虫相撲っ娘の挑戦~
山形放送
プロデューサー 山内正俊、ディレクター 佐藤愛未、撮影 齊藤 正
酒田市の小学校5年生・秋葉小町ちゃん。アマチュア相撲で世界一に輝いた兄に魅せられ、6歳の頃から相撲を始めた。相撲を通じて心身ともに成長していく小町ちゃんの4年間を、彼女を相撲道に引き込んだ「男」たちとの出会いと別れとともに見つめた。
個性豊かな登場人物それぞれの物語を織り交ぜながら、小町ちゃんの4年間が巧みに描かれている。ナレーションに地元の小学5年生の女の子を起用したことも物語を引き立たせている。さまざまなライバルの出現といったドラマ的な要素も楽しめる番組。
優 秀 日曜ビッグバラエティ 日本→欧州20000km!巨大コンテナ船に乗せてもらいました!
テレビ東京
プロデューサー 越山 進、水村由貴子、演出 加藤裕之、ディレクター 古郡武昭
「アレって何をどこに運んでいるんだろう?」そんな疑問を解決すべく、日本最大級の巨大コンテナ船アドニス号の40日間に及ぶ航海に密着した。日本の海運を支える海の男達の知られざる仕事の実態や、巨大コンテナ船の内部、乗組員の苦労などが明らかになる。
海賊の出る海域「ハイリスク・エリア」の通行など、命がけで運ばれる積荷。乗組員の努力によって日々の生活が成り立っていることをあらためて考える契機になる。コンテナ船に40日間もの長期間密着するという前代未聞の企画に感服させられる。
優 秀 SBCスペシャル 1日だけの背番号~佐久長聖と上田西・ベンチ外の球児たち~
信越放送
プロデューサー 手塚孝典、ディレクター 中村一貴、取材 熊崎陽太、ナレーター 萩原聖人
部員数160名の佐久長聖高校と94名の上田西高校。夏の県大会を前にベンチ入りを果たせなかった両校の3年生に1日限りの背番号が渡された。事実上の引退試合となる「交流戦」。そこには仲間や両親に感謝を伝えるために全力でプレーする彼らの姿があった。
選ばれなかった側にフォーカスするのは新たな視点。ベンチ入りを果たせなかった選手たちが見せるすばらしい笑顔、熱い姿を見ると、結果だけではない、一生懸命やることの大切さを教えられる。
優 秀 富山どきゅめん旅~!!ドライブするだけですけど…
北日本放送
制作統括 桐谷真吾、プロデューサー 守護真一、ディレクター 長谷直裕、撮影 相澤秀定
険しい道“剣道”として道路マニアが注目する県道67号線を「富山県住みます芸人」のフィッシュ&チップスが悪戦苦闘しながらも、ひたすらドライブする。地元の人々との出会いや、小さな気付きを通して富山県の魅力を再発見していく。
身近な中から面白いものを発見し、伝えていくことがテレビの魅力の一つ。それをうまく体現できている番組である。富山県の広々とした空や自然を堪能できる。
優 秀 〇〇発東京行き2019春
関西テレビ放送
プロデューサー 泉 雄介、演出 友岡伸介、出演者 陣内智則、語り 吉岡里帆
さまざまな想いが集まる街「東京」。今も昔も地方出身者にとってそこは特別な場所。出会いと別れの季節で平成最後となる「2019年の春」に、北海道・小笠原諸島・大阪・島根の全国4か所のターミナルで東京へと向かう人に密着取材した。
850人という膨大なインタビュー、制作者の努力があったからこそ、選りすぐりの人間ドラマに仕上がっている。さまざまな思いを持つ人たちに焦点を当てたことで、多くの人が共感を持って視聴できる番組。
優 秀 日本のチカラ 再発見!土佐備長炭~若き炭焼き職人の夢~
高知放送
プロデューサー 越智義久、ディレクター 篠原 新、ナレーター 有吉 都、撮影 貞岡秀昌
高知県では近年、若い世代が地元で働きたい若者に炭焼き技術を教え、職人を育てる活動によって、「土佐備長炭」の生産量が増えつつある。番組は、炭焼きの苦労や喜びを伝えるとともに、若者たちのふるさとへの思いを映し出していく。
地域の発展の地元産業が育成しないと難しい。その産業としてITではなく、炭焼きに焦点を当てたことが逆に新しい視点であり、素晴らしい選択。炭焼きを通じて、ふるさとを盛り上げたい若者たちのあつい気持ちが伝わってくる。
優 秀 コッコデショ~平成最後の宝船~
テレビ長崎
ディレクター 佐藤有華、撮影・編集 増山裕介、プロデューサー 松本祐明、ナレーター 浦里和弘
長崎の秋の伝統行事「長崎くんち」の中でも高い人気を誇る「太皷山・コッコデショ」。40人の屈強な男達が1トンを超える太皷山を放り投げ、片手で受け止める。世帯数の減少など太皷山を奉納する町の姿が変わる中、平成最後の奉納を前に、太皷山を担ぐ男達の挑戦に密着取材した。
ふるさとにかける町の人の思い、祭りを通じて地域が一つになり、絆が強まっていく姿に感動する。祭りの映像は息を飲む美しさ。
〔テレビドラマ番組〕
最優秀 HTB開局50周年ドラマ チャンネルはそのまま!
北海道テレビ放送
プロデューサー 福屋 渉、嬉野雅道、脚本 森ハヤシ、総監督 本広克行、演出 藤村忠寿 ほか
物語の主人公は北海道ホシテレビ(HHTV)の新人記者・雪丸花子。同期の仲間たちは着実に成長しているが、彼女は失敗ばかり。そんな花子が次から次と起こす騒動に、周囲はいつも振り回されるが、なぜか彼女の周りにはスクープが発生したり、感動がわき上がったりする。そんな彼女の活躍を、「報道」と「営業」の対立や、ライバル局・ひぐまテレビとの情報番組戦争、キー局との緊張関係などを織り交ぜながら、コメディタッチで描いていく。
北海道テレビ放送でなければできない、作り手の熱量が伝わってくるドラマであると同時に、誰が見ても楽しむことができるエンターテインメント作品に仕上がっている。
優 秀 義母と娘のブルース
TBSテレビ
プロデューサー 飯田和孝、中井芳彦、脚本 森下佳子、演出 平川雄一朗、中前勇児
バリバリのキャリアウーマンである亜希子が一生懸命母親になろうとする10年間の物語。また、義母を一生懸命受け入れようと考える娘・みゆき、それを一生懸命見守る夫・良一、一生懸命支える周りの人たちの物語でもある。良一の上司から再就職という思いもよらぬ提案を受ける亜希子。そんな中、みゆきは大学に見事、合格するが、大学進学が亜希子の決断の邪魔になるのではと思い悩む。やがて、義母と娘はそれぞれの道を歩み始める。
主人公の心の動きをさまざまなかたちで表現するなど、工夫が施されており、感動的なラストシーンにつなげる構成は、さすがの演出力である。
優 秀 テレビ東京開局55周年特別企画ドラマスペシャル「Aではない君と」
テレビ東京
プロデューサー 稲田秀樹、新井順子、脚本 山本むつみ、演出 塚原あゆ子
大手建設会社に勤める吉永圭一のもとに、別れた妻である青葉純子から電話が入る。離れて暮らす中2の息子・翼が同級生への殺人容疑で逮捕されたと告げられる。突然、人生の歯車が狂い、翻弄されてゆく父親。世間の目を恐れ、苦しい現実から逃げ出そうとしたこともあったが、子どもと正面から向き合うことで、事件の裏側に隠された『真相』へと迫っていく。
作り手が真摯にテーマと向き合い、心を込めて制作していることが画面から伝わってくる、重厚なドラマとなっている。
優 秀 連続ドラマW 坂の途中の家
WOWOW
プロデューサー 岡野真紀子、黒沢 淳、脚本 篠﨑絵里子、監督 森ガキ侑大、出演 柴咲コウ
山咲里沙子は3歳の娘と夫・陽一郎とで平穏な日々を送っていた。そんな時、里沙子は、裁判員が欠席せざるを得ない時、代わりに裁判員を務める「補充裁判員」に選ばれる。対象となる事件は、里沙子と同じ年頃の専業主婦の安藤水穂が、生後8カ月の娘を浴槽に落として虐待死させたという衝撃的なもの。水穂に対し強い嫌悪感を抱いていた里沙子だが、裁判を通して彼女の苦悩が見えるたびに、他人事とは思えない自分に戸惑いを抱いていく。
“事件を起こす人は特別な人なんだ”というのはただの思い込みであることを、ドラマが進んでいく中で、静かに訴えかける演出が見事である。
優 秀 BS笑点ドラマスペシャル 五代目 三遊亭圓楽
BS日本
プロデューサー 栖川一郎、脚本 寺田敏雄、監督 猪股隆一、出演者 谷原章介
50年を超えいまなお愛され続ける「笑点」。現在の「笑点」のスタイルを作ったと言われる四代目司会者、故三遊亭圓楽の波乱万丈の生涯を描く。1966年の第1回から大喜利初代メンバーとして出演したものの、2年後には初代司会者の立川談志と対立し降板。その後も落語協会分裂騒動や落語家タレントとしての活躍などを経て、1983年から「笑点」の司会を務め、現在にも受け継がれる番組のかたちを確立していくのだった。
コメディタッチでありながら、落語界の光と影をさりげなく切り取る演出が巧みである。今後も、さらに継続した取り組みが期待される。
優 秀 メ~テレ開局55周年記念ドラマ 乱反射
名古屋テレビ放送
監督 石井裕也、脚本 成瀬活雄、石井裕也、プロデューサー 太田雅人、出演者 妻夫木聡
強風で倒壊した街路樹の下敷きになり、幼い男児が命を落としてしまう。新聞社に勤める主人公は、息子を喪った事故の真相を明らかにするために、自ら犯人探しに乗り出す。しかし、そこで明らかになるのは、本当は悪いことだとわかっているけれど、目をつむってしまうような“小さな罪”の連鎖が、思わぬ結果を招いてしまったという“事実”であった。
徐々に明らかになっていく出来事によって、繰り返される街路樹の倒壊シーンが、その都度、異なる意味を帯びてくる、見ごたえのあるドラマである。
CM部門
※各作品のタイトルは、「広告主名(非商業スポットは省略) 商品名/作品名(秒数)」の形で掲載。
〔ラジオCM 第1種(20秒以内)〕
最優秀 恵心会 小坂の郷 企業CM/「あの人は今」篇(20秒)
静岡放送
プロデューサー 菊池 勝、ディレクター 大澤真依、コピーライター 新井奈生(電通)、出演 秀光(アミューズ)
「GO TO HELL!」「お前ら、地獄へ行きたいかァァァ!」とライブでシャウトするヘビメタのボーカル。やがて月日は流れ、かつてボーカルだった彼が「こんな天国みたいなところで暮らしててもいいんかのう」とつぶやくその場所は、特別養護老人ホームだった。天国と地獄を対比させたインパクトある構成によって、老人ホームを明るく楽しい場所として鮮やかに描き出している。限られた時間でしっかりとドラマを構築している点も見事である。
優 秀 知床鮭鱒舎 鮭、鱒/初見で読んでみた(20秒)
STVラジオ
プロデューサー・ディレクター・コピー・編集 岡崎みどり、編集 中林純子(開発センター)、NA 室本名由紀(知床鮭鱒舎)
知床鮭鱒舎は北海道知床で鮭と鱒を販売する会社。取締役自らが場所・商品・社名を伝えるだけのシンプルな構成だが、「けいそんしゃ」という社名を商品である「鮭」「鱒」と組み合わせて巧みに表現。社名の読みにくさを逆手にとって、社名と事業内容を確実にリスナーに印象付けている。原稿を初見で読むことによって生まれる独特の緊張感にも惹きつけられるものがある。
優 秀 公共キャンペーン・スポット/熊に注意しましょう。山菜取り篇(20秒)
ラジオ福島
ディレクター 渡邉啓人、ミキサー 伊藤直樹、ナレーション 森 和美(声優)
山菜採りを誘いに訪れた友人。山菜採りには道具だけでなく、熊避けとして鈴やラジオといった音が出るものが必需品であるという。近年、福島県でも人里近くでの熊の目撃情報が急増している中、高齢者に熊への注意喚起を促すキャンペーンを展開。県民にお馴染みの声優が福島弁で伝えることによって、啓発効果を一層高めている。今、聴いているラジオが役に立つという着想が面白く、地域社会の問題を取り上げた点も評価された。
優 秀 東京タワー 東京タワー60周年/お疲れさま(20秒)
文化放送
ディレクター 見目幸伸、プロデューサー 南 理子、ミキサー 上原裕司、アカウントプランナー 原 敏生
舞台は夜の都心のオフィス。部下たちは次々と帰り、最後に一人残された課長が、軽い孤独感を感じながらため息とともにつぶやく。「ま、お前がいるから、いっか」。お前とは、窓の外にいつもと変わらぬ姿でたたずむ東京タワーだった。60周年を迎えた東京タワーの魅力を、外から眺めるという視点で訴求。東京タワーという存在に憧れや励ましを感じる世代の気持ちに寄り添った佳作である。
優 秀 enn ことぶき寿司・一心寿司/何観てる?(20秒)
新潟放送
ナレーション 麦島 侑、企画・立案 石井倫之(BSNウェーブ)、ディレクター 佐藤智也(BSNウェーブ)、田村友季子(BSNウェーブ)
いつも土曜夕方6時半に何を観ているか尋ねる男性に対し、ニュース番組やグルメ番組との声が上がる中、最後に「マグロの解体」と答える男性。地元のお寿司屋が毎週土曜の6時半にマグロの解体ショーを実施していることを、20秒という短い時間で効果的に訴求している。マグロの解体と番組を「観るもの」として並べることによって、観るお寿司という「食のエンターテインメント」のイメージづくりにも成功している。
優 秀 アートコーポレーション 企業CM/カウントダウン 篇(20秒)
朝日放送ラジオ
コピーライター・ディレクター 森田一成(ビッグフェイス)、プロデューサー 野本友恵、ディレクター 村上正道(フリーランス)、プロダクションマネージャー 東 竜太(ビッグフェイス)
唐突に彼女に同棲を持ちかけ、引っ越ししようと言う彼氏。突然の申し出に戸惑う彼女に、彼氏は3秒で決めてと言う。「0、1、2、3…」とカウントを始め、慌てて引っ越しを決めてしまう彼女。2人の小気味よい会話が、心地良いリズムを作りだしている。会社のキャッチフレーズにもなっている電話番号を巧みに使うことによって、ブランド想起のさらなる向上につなげている。
優 秀 スポーツクラブNAS キッズスクール/父の背中 篇(20秒)
朝日放送ラジオ
コピーライター・ディレクター 森田一成(ビッグフェイス)、プロデューサー 野本友恵、ディレクター 村上正道(フリーランス)、プロダクションマネージャー 東 竜太(ビッグフェイス)
子どもがお父さんに「僕、水泳したい」とおねだりする。お父さんを見てそう思ったと言う子どもと、なぜ運動していない自分を見てそう思ったのか不思議がる父親。実は、子どもが見ていたのは父親の背中ならぬ「お腹」だった…。二人の噛み合わない会話にくすりとさせられると同時に、親が反面教師になることもあるという事実にドキリとさせられる。運動好きでない子どもにも親にも、スポーツの大切さが伝わるCMである。
〔ラジオCM 第2種(21秒以上)〕
最優秀 ピタットハウスネットワーク 企業CM/玄関前 篇(120秒)
朝日放送ラジオ
コピーライター・ディレクター 森田一成(ビッグフェイス)、プロデューサー 野本友恵、ディレクター 村上正道(フリーランス)、プロダクションマネージャー 東 竜太(ビッグフェイス)
自宅の玄関前。家の鍵を忘れ、チャイムを鳴らした夫。本人か怪しむ妻は矢継ぎ早に、二人しか知らない秘密の質問を投げかける。ドアを挟んだ夫婦の関西弁でのやりとりは、テンポよくコミカルで思わず引き込まれる。本人確認のための長すぎる会話を、セキュリティがちゃんとしたお部屋の魅力へとつなげた。リスナーを飽きさせず、同時に商品の魅力も訴求する長尺を生かしたCMとなっている。
優 秀 公共キャンペーン・スポット/一緒に歩こYBC!土を求めて~福島からの移動保育園(150秒)
山形放送
プロデューサー 伊藤清隆、ディレクター 門田和弘、ナレーション 山川麻衣子、取材 齋藤 正(PRIDE TWO)
東日本大震災から8年。原発事故による放射性物質を心配する保護者の気持ちに応えるため、子どもたちが安心して遊べる場所を求めて、山形県まで移動する福島の保育園がある。ワゴン車に園児を乗せて、年間200日・往復100Kmの道のりを毎日通う。「少数派の人たちに最後まで寄り添いたい」との保育園長の言葉が印象に残る。時間の制限がある中で、上質なドキュメンタリーをCMとして制作した点が評価された。
優 秀 福井薬局 企業CM/つまらない男(85秒)
CBCラジオ
プロデューサー・ディレクター・ナレーション 森合康行、音効 今井志のぶ(東海サウンド)、ナレーション 小高直子(CBCテレビ)、宮部和裕(CBCテレビ)
毎日ダジャレを言う夫に辟易する妻は、「私の夫はつまらない男」とひとりごつ。「面白くない」との意味だと思いきや、トイレの流水音をきっかけに「お通じが良い」の意味だと分かる。そんな妻がなぜか薬局に行ってから様子が変わり、夫は「つまらない女」になったとひとりごつ。効果音によって物語を展開させるのはラジオならではの巧みな表現。ネガティブな言葉をポジティブに変換することで漢方相談薬局をより印象付けた。
優 秀 自社媒体PRスポット/@FM 企業CM「違うふたり」篇(60秒)
エフエム愛知
クリエイティブディレクター 島本英輝、プランナー・ディレクター 石本香緒理(博報堂)、プロデューサー 河合信城(アストロランド)、ミキサー 坪井大樹(ビー・ブルー)
となりのクラスの不良な彼。となりのクラスの真面目な彼女。普段は絶対に関わらない高校生の男女。ふとしたきっかけで同じラジオを聞いていることが分かり、思わず驚き…。ひとりで聞くラジオだが、同じ番組を聴いている人へ知らず知らずのうちに親近感を抱いてしまうという「人と人をつなぐ」ラジオの大きな魅力を、日常の中にあるちょっとしたドラマを通じて、上手に表現した。
優 秀 花山温泉 企業CM/怪談編(50秒)
毎日放送
プロデューサー 渥美昌泰、ディレクター 西畑風雅、営業担当 三浦 徹
おどろおどろしい音楽。男性による怪談が静かに始まる。和歌山の花山を歩いていると、霧が立ち込め、不思議に思い足を踏み入れると、そこは温泉。最後はゆったりした声色に変わり、「おぉ~気持ちいい」の一言。「シュワシュワー」というシズル感によって、炭酸泉であることを音だけでも十分に表現した。温泉の場所や特徴を巧みに怪談に盛り込み、情景を想起させ、思わず入ってみたいという気持ちを誘った。
優 秀 アートコーポレーション レディースパック/疑惑 篇(60秒)
朝日放送ラジオ
コピーライター・ディレクター 森田一成(ビッグフェイス)、プロデューサー 野本友恵、ディレクター 村上正道(フリーランス)、プロダクションマネージャー 東 竜太(ビッグフェイス)
彼氏がひとり暮らしの彼女の自宅に来る。トイレの便座が上がっていることから、浮気を疑われる彼女。言い訳をするも、説明に無理があり、ますます彼氏の疑念が深まり追及が続く。この窮地を抜け出すには…。浮気がばれて引っ越しすることになっても、女性の味方になれるという斬新な展開。ひとり暮らしの女性を応援するという企業理念を、男女の会話から上手に導き出した構成が見事。
優 秀 さつま無双 企業CM/「どの毎日にも、焼酎がいた。平成25年」篇(60秒)
エフエム鹿児島
プロデューサー 長友 翼、コピーライター 山路三保子(フリー)、演出 中村宏一郎(マクガフィン)、出演 遠山明男
平成最後の1か月。4月の30日間で平成の30年間を1年ずつ振り返る企画。4月25日の放送では、東京オリンピックが決まった平成25年について焼酎を片手に主人公が思い出す。「お、も、て、な、し」を真似していた幼かった娘といつか一緒に飲める日について想像する。平成が終わるというセンチメンタルな雰囲気を上手に使い、商品が日常に存在することを効果的に伝えた。今だからできる演出が光る。
〔テレビCM〕
最優秀 公共キャンペーン・スポット/見えない障害と生きる。(300秒)
東海テレビ放送
プロデューサー 桑山知之、コピーライター 高阪まどか(電通)、ディレクター 近藤正之(東北新社)、撮影 森恒次郎(東海テレビプロダクション)
「生きづらさ」に直面してきた6人の主人公。片付けられない、周りの音が気になってしまう、文字が読めない…。それぞれが抱える発達障害は、外からは「見えない」が、本人のフツウは周囲からは「普通じゃない」と思われ、理解されにくい。そんな「見えない」障害にスポットライトをあて、社会の理解が進むきっかけを作った。障害に向き合い、取材対象者と丁寧に関係を構築し、映像化にこぎ着けた制作者たちの努力を感じた。
優 秀 公共キャンペーン・スポット/先生・・・500人に1人です(165秒)
CBCテレビ
取材 若尾貴史、撮影 今井貴之(NTP)、編集 大谷太一(CBCクリエイション)、構成・プロデューサー 大園康志
家では話せるのに学校など特定の場面や状況で話せなくなる「場面緘黙症(ばめんかんもくしょう) 」。全国で500人に1人いるとされている。現在も症状に苦しむ女子高校生と克服した会社員の女性は、「しゃべらない子もいるんだと知ってほしい」「知ってもらうことで差別がなくなる」と言う。体験者の声をしっかりと拾い、「場面緘黙症」の認知度向上に大きく寄与している点が評価された。
優 秀 庭文庫 企業CM/探して!庭文庫(60秒)
CBCテレビ
ナレーション・構成・プロデューサー 大園康志、撮影 安田耕治(CBCクリエイション)、編集 大谷太一(CBCクリエイション)、音響効果 笠原貴一(東海サウンド)
「ぶらりと二人でたどり着きました」。舞台は岐阜県恵那市、山懐に抱かれた古民家で、若い夫婦が古書店を営んでいる。客が「1人しか来ない日がある」と笑う妻。それを受け「燕しか来ない日もある」と夫が言い、夫婦は笑い合う。最後は、「さがしてみてください。庭文庫」のメッセージで終わり、詳細な情報をあえて伝えない。「探した人だけがたどり着ける」特別感が、かえって行ってみたいという気持ちを誘う。
優 秀 愛知県豊橋市 野菜摂取を促進/高すぎ?低すぎ?野菜の〇〇(75秒)
東海テレビ放送
マイクロドローン撮影 増田勝彦(シネマレイ)、選曲・音響効果 柴田勇也(東海サウンド)、コピーライター 橋本吾市(スクワイア)、プロデューサー・ディレクター 猪飼健夫
両親が作業をするキャベツ畑に遊びに来た少女の目線をマイクロドローンで撮影した。父へ駆け寄ると「高い高い」の声とともに、少女は空高く舞う。すると少女は「どうしてあっちは低いの?」と聞く。マイクロドローンのダイナミックな映像によって視覚的に高さを表現することで、愛知県は野菜生産額が全国5位に対して、野菜の摂取量が最下位という意外な事実を効果的に訴求した。
優 秀 鳥羽水族館 企業CM/プロフェッショナルがいる(90秒)
東海テレビ放送
プロデューサー 岩田真理子、監督 水野有希子(東海テレビプロダクション)、撮影 村田洋平(東海テレビプロダクション)、VE 飯澤康平(東海テレビプロダクション)
真剣な表情でイカをさばく男性。ミステリアスな雰囲気に何をしている人なのかと興味を惹かれる。実は、水族館の飼育員。さばいたイカミミを絶妙なコントロールで投げ、水槽のガラスに貼りつける。そのイカミミめがけて、ラッコが勢い良くジャンプし、無事ゲット。他では見ることのできないラッコと飼育員の「餌やり」パフォーマンスの魅力を、緩急ある演出で伝えた。
優 秀 DMG森精機 企業CM/Water Colors 小豆島編 #4(90秒)
毎日放送
チーフ・プロデューサー 横田 一(MBS企画)、プロデューサー 亀井弘明(MBS企画)、大西 亮、ディレクター 遠藤伸哉(MBS企画)
風景画家のブライアン・ウィリアムズ氏が水辺を旅するシリーズの小豆島編。美しい小豆島を背景に、祭りや渡し船といったそこに暮らす人々の営みをとらえた数々の映像は、まさしく日本の原風景と言える。最後に紹介されるブライアン氏の作品は、水辺の一瞬の美しさをより一層印象付けた。優美な映像と穏やかな構成により見た人が癒されるCM。
優 秀 自社媒体PRスポット/私たちにできること(135秒)
RKB毎日放送
撮影・構成・編集 両角竜太郎(RKBミューズ)、選曲MA 寺岡章人(フリー)、プロデューサー 大村由紀子、豆田秀和
2017年7月の九州北部豪雨で、甚大な被害を受けた福岡県朝倉市。歴史が途絶えていた藍染めを復活させようと活動する女性。被災により中止した祭りを復活させようとする人々。女性は藍染めで祭りの法被を染めた。そろいの法被を着て、祭りは開催された。復興に向けた人々の小さな一歩を記録している。故郷を思うこころを伝える、日々地域に寄り添う地方局だからこそ制作できる秀作。
技術部門
最優秀 衛星回線の高効率化・IP化・運用自動化を実現した新SNGシステム(F・SAT)
フジテレビジョン
研究・開発担当者 秋信真太郎、冨吉政貴、吉村理希、雨宮 弘
最新の圧縮・変調方式を採用して周波数利用効率を大幅に改善するとともに、基本の通信インタフェースをIPとした新SNGシステムを開発・実用化した。
これにより、1トランスポンダあたりHDTV12チャンネルの高効率伝送、地上および衛星IP網と各種IP機器を組み合わせた堅牢かつ機動的な中継、利便性の高い双方向IP通信を実現するとともに、SNGオペレーションをシステムが代行する運用の自動化を実用化し、テレビ中継技術の高度化と効率化に大きく貢献した。
優 秀 マスター運行支援システムの開発
テレビ北海道
研究・開発担当者 高橋康二
マスター運行の状況に応じて、1つのコンソール上で、映像モニターポイントの切替、使用PCの切替、操作釦のタッチパネル表示を自動的に行い、迅速かつ的確な操作を促す業務支援システムを開発した。
これにより、経験の浅い担当者でも安定したマスター運行が可能となり、トラブル発生時の早期復旧に資するなど、テレビ送出の効率的運用と安全性向上に貢献した。
優 秀 テレビ局ならではの音声認識による「文字起こし」エディタ 「もじこ」の開発
TBSテレビ
研究・開発担当者 小林祥子、稲川太郎、小沢冬平、安田英史
IT各社が開発を競う音声認識エンジンを選択利用して、放送素材等の「文字起こし」を高速で作成し、動画や音声を視聴しながら、テキストの誤認識部分に手動修正を加えて完成させる、ユニークなエディタを開発した。
これにより、放送現場のニーズである「もじ見て聴ける」「じかんが省ける」「ここだけ聴ける」を具現化し、番組制作を支える文字起こし業務の迅速化と効率化に貢献した。
優 秀 画像認識AIを用いた番組応用と展開
日本テレビ放送網
研究・開発担当者 佐藤 誠、鈴木寿晃、篠田貴之、加藤大樹
画像認識AIのリアルタイム活用を進め、人物方向の自動判別などによるライブ配信用CGオペレーションの自動化や、単一映像を用いた選手間距離のCG表示を実現した。
これにより、ロードレースをはじめとする生放送において新たな表現手法を確立するとともに、把握したデータを制作支援に活用するシステムを構築し、テレビ制作技術の高度化に貢献した。
優 秀 空間認識技術を活用したバーチャルスタジオ用センサーMoVRの開発
朝日放送テレビ
研究・開発担当者 伊田俊基、長谷川将宏、土井 匠
汎用トラッキングデバイスをカメラにマウントし、自社開発のインターフェース・アプリによってCG作画機と接続して、安価で機動性の高いバーチャルスタジオシステムを開発・実用化した。
これにより、バーチャルスタジオの運用のハードルを大きく下げ、ハンディカメラにも活用の幅を広げて番組演出の自由度を高めるなど、テレビ制作技術の高度化に貢献した。
優 秀 FM送信システムの開発
山陰放送
研究・開発担当者 大村陽一
大規模FM送信システムの設計・開発・試作を行ったうえで、海外製のFM送信機を改良して採用し、自社設計した音声調整部、送信機制御部、出力モニター部、同軸切替部等と組み合わせ、大幅なコストダウンと高い信頼性を両立したシステムを製作した。
これにより、FM補完局を円滑に開局するとともに、合理的な送信システムの有効性を実証し、ラジオ送信技術の発展に貢献した。
優 秀 ブラウザの自動制御を用いたオンライン搬入ラジオCM管理システムの開発
RSK山陽放送
研究・開発担当者 大橋 慶、廣田和浩
ラジオCMオンライン送稿システムの本格運用に対応して、メール受信からCM素材のダウンロードまでの工程を自動化するとともに、送出設備への搬入を一元管理するシステムを開発し、安価に構築した。
これにより、オンライン搬入にかかる業務負担の軽減と所要時間の短縮を実現し、ラジオCM搬入・送出業務の効率化に貢献した。
技術奨励賞 テロップ校正支援ソフトウェアの自社開発
山形放送
研究・開発担当者 志田貴宙
テロップ内容のミスを自動検出するソフトを開発し、顕著な業務改善を果たした。
(技術奨励賞は技術部門の入選(最優秀・優秀)とは別に贈賞するもので、技術面の創意工夫や的確な応用による顕著な業務改善・効率化などを評価しています)
特別表彰部門
〔青少年向け番組〕
最優秀 ハイスクールは水族館!!
南海放送
プロデューサー 寺尾 隆、ディレクター 荻山雄一、撮影 西原智恭、ナレーター 武田雛歩
かつて四国初の水族館として存在していた「町営長浜水族館」は老朽化のため閉館した。その再建を願う地元の人々のさまざまな取り組みの中から生まれたのが、県立長浜高校の中にある「長高水族館」である。水族館部の高校生たちが運営する小さな水族館には笑顔が満ち溢れ、多くのお客さんで賑わう。教室の中の小さな水族館から生まれた3年間の物語。
高校生が主体的に活動する中、その思いが中学生へ、そして地域全体へとつながっていくのが感じ取れる。地域の特性を活かしたアイデアが素晴らしく、全体的に明るく楽しい雰囲気にあふれ、子どもたちの笑顔が印象的である。
優 秀 RABドキュ 私たちは忘れない!~高校生が向き合った青森空襲~
青森放送
プロデューサー・ディレクター 小山田文泰、カメラマン 藤林国仁、音声 脇坂幸司、ナレーター 下山寿音
2015年の春、青森中央高校の演劇部顧問の畑澤先生は部員たちに「7月28日は70年前に青森空襲が起きた日。この日に演劇をみんなで作って上演しては」と提案。部員たちは脚本を書くために、空襲を体験した方々へのインタビューを重ねる。そこで分かってきたのは、空襲の凄まじさと戦時下の理不尽さであった。高校生が戦争と向き合う姿に密着した。
地域にはそれぞれ忘れてはいけない日がある。残念ながら風化し忘れられていく中で、演劇部が自ら取材し台本を書き、演劇を通して戦争を語り継いでいくことの大切さを見事に伝えている。
優 秀 SBCスペシャル 1日だけの背番号~佐久長聖と上田西・ベンチ外の球児たち~
信越放送
プロデューサー 手塚孝典、ディレクター 中村一貴、取材 熊崎陽太、ナレーター 萩原聖人
佐久長聖高校は甲子園出場の常連校で、部員数は県内最多の160人を擁する。同じ地区の上田西高校も94名の部員を擁する強豪校。両校とも大勢の部員がベンチ入りを果たせない。夏の県大会を前に、事実上の引退試合となる「交流戦」では、メンバー外になった両校の3年生に1日限りの背番号が渡された。仲間や両親に感謝を伝えるために、そして、甲子園をかけて競うライバル校に勝つために、全力でプレーする彼らの姿があった。
記録には残らないが記憶には残る試合を、ベンチ外の球児たちが最後まで自分らしく頑張る姿が大変清々しく感じられる。OBとの心温まる交流や、親子のつながり、友人との絆など、周囲への感謝が詰まった作品。たとえ夢が破れても、かけがえのない財産が得られることを教えてくれる。
優 秀 YBSふるさとスペシャル 宙先案内人~星と人をつなぐ 出張プラネタリウム~
山梨放送
ナレーション 海野紀恵、プロデューサー 大木秀一郎、ディレクター 深澤賢吾、撮影 岡部常夫
星と人をつなぐことでみんなの幸せをつくりたいと願う宙先(そらさき)案内人の高橋真理子さん。本物の星を見ることができない人たちのために病院などへ出張プラネタリウムで星空を届ける活動をしている。高橋さんの活動を通じて他者との関わりの大切さを伝え、思いやりのある社会の醸成につながればと願っている。
主人公の人間的な魅力・生き方に深い感銘を受けた。人に寄り添い支え、幸せのメッセージを社会へ届けるという新しい取り組みに向けた意気込みの強さが伝わってくる。この活動が多くの人に広まってほしいという番組の意図が十分反映されている。
優 秀 ママ もう泣かんといてな ~12歳 全盲ドラマーが奏でる‘音の世界’~
読売テレビ放送
チーフプロデューサー 堀川雅子、プロデューサー 吉川秀和、ディレクター 安部祐真
2歳の時、小児がんで両目を失明した酒井響希くんは、「ドラムを通じて多くの人に勇気を届けたい」と、世界で活躍するプロドラマーになるのが夢だ。人気ユニット「DefTech」と出会い、4年後、約束の共演を果たした舞台でありったけの力で叫んだ、「ママ、もう泣かんといてな…!」。過酷な現実に直面しながらも家族とともに「見えない世界もいいものだよ」と前向きに生きる少年の姿を伝える。
主人公の成長を丁寧に描いた心温まるドキュメント。響希くんのハンデをハンデと思わない圧倒的な生きる力は非常にインパクトがあり、それを支える家族の絆が伝わってくる。障害者も社会の一部であることや、どんな状況におかれても自らの目標に向かい懸命に生きる姿を青少年に伝える秀逸な構成である。
〔放送と公共性〕
最優秀 家族の絆を守る小児医療体制の充実
読売テレビ放送
実施責任者 横須賀ゆきの
読売テレビ放送は、長期入院を余儀なくされる難病の子どもが家族と一緒に暮らせる「おうち診療所」(チャイルド・ケモ・ハウス)を立ち上げた医師の奮闘を11年間取材している。報道やドキュメンタリー番組などで伝え続けたことで、小児医療環境の改善は国会でも取り上げられ、2015年に「おうち診療所」は病室として認可されるなど、患者負担の軽減につながった。
プライバシーにも配慮しながら、長期にわたる丁寧な活動により、20組以上の家族に取材協力を得たことが本質的な課題を捉えることにもつながり、具体的な制度改正にも結びついた。さらなる環境改善などの課題解決を目指して活動を続けている姿勢が高く評価された。
優 秀 「新金沢小景」町物語を伝えた800話
テレビ金沢
実施責任者 蔵宏太朗
テレビ金沢は、2003年から地元の郷土史家らとともに町物語を発掘するニュース企画『新金沢小景』を放送している。金沢にゆかりのある作家の五木寛之氏を案内役に、加賀百万石の伝統文化だけでなく、真宗王国、文学の舞台、風習、軍都など、重層的に折り重なる金沢の風景を町物語として伝えてきた。
放送は17年で800回を超える。長期間にわたり放送してきたからこそ、視聴者に歴史ある町物語を伝えるのみならず、現代の町の変化をも感じさせ、町の個性を問いかけてきたことが評価された。
優 秀 戦争は過去にあらず~地方から伝えた″平成″の自衛隊~
名古屋テレビ放送
実施責任者 村瀬史憲
名古屋テレビ放送は、2013年からニュース情報番組やドキュメンタリー番組で過去の戦争と自衛隊の変化を関連づける報道を続けている。ニュース情報番組では、「兵器産業と愛知県」など自衛隊周辺で起きている事象を十数回にわたり放送。また「防衛フェリー~民間船と戦争~」「行ってみれば戦場~葬られたミサイル攻撃」などのドキュメンタリー番組では国の隠蔽を明らかにしている。
地域における自衛隊の活動を、一過性の報道に終わらせず、地道に継続して取材することで、日本の安全保障体制の現場の姿とその変容を克明に伝えたことが評価された。
優 秀 乳がん啓発活動~恩田キャスター乳がん闘病記録とススメプロジェクト~
中京テレビ放送
実施責任者 板谷 学
中京テレビ放送は、乳がんに関する正しい知識と検診の重要性を知ってもらうための啓発活動「ススメプロジェクト」を2018年に開始。自社イベントでセルフチェック体験や自社HPでセルフチェック動画を配信するなど多面的に展開している。また、同社の恩田千佐子キャスターの乳がんとの闘病を記録し、乳がん治療の現状と患者の苦悩や想いを視聴者に伝えている。
啓発ポスターやセルフチェック動画は、伝えやすくするためにデザインなどに工夫が凝らされ、また、プロジェクトを起点に放送を活用する取り組みとなっており、放送局の活動の新しい形として評価された。
優 秀 高校生パワー炸裂!「てゲてゲハイスクールフェスティバル」
南日本放送
実施責任者 岩﨑弘志・立和名梨絵
南日本放送は、2012年から鹿児島の高校生が主役のラジオ番組『岩﨑弘志のてゲてゲハイスクール』を放送。これまでに県内89校のうち、ほとんどの高校が番組に参加し、出演した生徒は1,700人を超える。2016年からは番組のイベントも毎年開催しており、今年は過去最多の42校の生徒・先生700人が参加し、来場者は約5万人にもなった。
番組やイベントを通じて現代の高校生が無関心でもクールでもなく、喜怒哀楽を感じながら過ごしていることが伝わり、ラジオのパワーで地域を盛り上げていることが評価された。