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(報道発表)総務省「通信・放送の在り方に関する懇談会」の報告書案に対する民放連意見について
総務省「通信・放送の在り方に関する懇談会」の報告書案に対する民放連意見について
社団法人 日本民間放送連盟〔民放連、会長=広瀬道貞・テレビ朝日会長〕は、6月2日、総務省「通信・放送の在り方に関する懇談会」の報告書案(6月1日公表)に対して、以下の意見を発表いたしました。
総務省「通信・放送の在り方に関する懇談会」の報告書案(以下、報告書案)が6月1日、公表された。報告書案では、通信・放送サービスの向上の必要性を訴えると同時に、関係事業者の国際競争力の強化への強い期待も表明している。特にこのソフトパワーの強化という観点は、我が国の国際的なプレゼンスと、文化面での対外貢献という両側面において非常に重要な要素であり、民放連も推奨するものである。また、報告書案ではコンテンツ産業の強化や情報発信の充実、そして文化の発掘等には放送事業者は重要な役割を担うとしており、そのための環境整備の必要性を明確にしている。
これまで、民放連は「通信・放送の在り方に関する懇談会」のヒアリングなどの場で、地上波デジタル化に向けた放送事業者の取り組みをはじめ、その全体計画における地方局の役割、そしてそれぞれの地域で果たしている報道・文化・経済機関としての重要な役割についても説明を重ねてきた。
しかし、報告書案の中には、いくつかの項目において懇談会の真意が必ずしも明確でなく、解釈次第では、懇談会が目指すところのソフトパワーと情報発信力の強化との整合性を欠いており、私ども民間放送事業の将来に不安を感じさせられるところである。ついては、民間放送関連の項目に絞って、以下のとおり当連盟の意見を表明する。
懇談会においては、現在の地上放送のデジタル化をコンテンツ産業の基盤構築の第一歩と位置付けた上で、将来の我が国のソフトパワーと情報発信の充実に向けた基本政策の策定を期待したい。
(1)「通信・放送の法体系の抜本的見直し」について
- 報告書案で「基幹放送の概念の維持等を前提に必要な法制的手当てを措置」、 「法律、規制の見直しであり、事業者が垂直統合的な組織・サービスを志向することを妨げるものではない」とあるのは、基幹放送たる地上放送について「ハード・ソフト一致原則」を堅持する旨を述べているものと理解できるので、この旨を報告書に明記していただきたい。
(2) 「地上波デジタル放送のIPマルチキャストによる再送信」について
- 地域を限定しない地上波放送のIPマルチキャストによる再送信は、懇談会が目標とするところのソフトパワーの強化や情報発信の充実に逆行するものと強く危惧する。特に地上放送のデジタル化の真っ只中にある地方局にとっては、このようなIP再送信は大きな障害要因として立ちはだかるものと思われ、国全体の制作力・情報発信力を上げていこうという段階においては有効な政策とは思えない。
- 報告書案は、「技術の観点からは、再送信に地域限定を設けるべきではないと考えられる」としているが、地上テレビ放送の「再送信」である以上、放送事業者の再送信同意が不可欠であることはもとより、これまでのそれぞれの地域における政府の置局政策や地域放送免許との整合性、放送番組に係る著作権・放送権の保護の観点からも、元の放送サービスが行われている地域に厳に限定すべきである。
- IPマルチキャストによる地上デジタル放送の再送信は、「2011年完全デジタル化」に向けた補完措置として、条件不利地域における難視聴解消を第一義として行われるものである。
- 報告書案に「地方局が希望する場合は自主制作番組のIPマルチキャストによる発信エリアを拡大できるようにすべき」との記述があるが、これは地方局による「番組の二次利用」であり、ブロードバンドを使った動画配信サービスとして現行制度においても実施可能である。放送の「再送信」との混同は避けるべきである。
(3) 「未利用周波数帯の有効利用の促進」について
- 松原座長は会見で、未利用周波数帯を有効利用する主体はその周波数を割り当てられている放送事業者である旨を言明しているので、先の報告書骨子案のように「当該事業者」などの文言を補うことによって、報告書ではこの旨を明確にしていただきたい。
- 「電気通信役務利用放送法の地上波放送への適用」とあるが、地上放送に「ハード・ソフト分離型」の役務利用放送法を適用することには反対である。電気通信役務利用放送の利点は事業者の参入や退出が比較的容易にできる簡便性にあり、基幹放送として国民に安定的かつ恒常的にサービスを提供する役割を担う地上放送に、役務利用放送の規律を持ち込むことは不適当である。
(4) 「コンテンツの流通環境の改善」について
- 民放事業者はこれまでも多くの番組制作会社など外部制作者の協力を得ながら放送を送り出してきた実績があり、優越的地位の濫用と言われない仕組みも整備してきた。放送番組の外部調達のあり方について、特段の見直しの必要はないと考える。